白百合の騎士と悪魔召喚士   作:気力♪

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またしても時間守れなかったマンです。
いや、何が悪いといえばイベントを適役無しゴリ押しプレイやってた自分が悪いのですけどねー。意外と楽しいのです、アレ。


ガイアの街の流儀

「サマナー、行かせてくれ」

「...今は駄目だ。敵の戦力が分からん」

 

あまりにも、あまりにもな光景に力が篭るデオンの声。だが、おかげで隣にいた自分は冷静さを保つ事ができた。

 

「別れて探索しましょう。この街の様子なら、レジスタンスでもいるでしょうから」

「それ、多分希望的観測だよ」

 

俺の言葉を、所長が遮る。

 

「街が綺麗すぎる。それってつまりゲリラ戦の痕跡もないって事だよ。完全に、この街は支配されていると見た方がいい」

「それじゃあ、救いは無いんですか!」

「...とりあえず、欠片の奉納場所に行きましょう。私達の目的は世直しじゃないんだから」

 

「それに見て、這いつくばってる人達を。彼らもそれを当然だと受け入れてしまってる。これじゃあ、反逆の種火が出てこれない」

 

「...内田、所長、ありがとう。...当面は一団となって動きましょう。まずは、自分達の安全を優先しないと」

 

そうして、真里亞から教えられた欠片のある場所へ赴くと

 

そこには寺社仏閣などはなく、クレーターのようなものがあるだけだった。

 

「できてそこそこの時間は経ってるな。残留MAGの濃さから言って奪ったのはおそらくこの土地の人間。まぁ、ガイアでしょうね」

「英霊だと魔力の方が濃く出るからね。これは何かに使われてると見たほうが良いかも」

「めんどくさい話ですね...とりあえず欠片の行方を探すのが先決です。所長、ここのガイアで成り上がるのをお願いできますか?」

「いいよー。この腐った空気を作ってる連中も殺せて一石二鳥だし」

「じゃあ、俺とデオンは所長のサポート。内田、縁、志貴くんはガイアの外から情報を集めてくれ。んで、可能ならアウタースピリッツを捜索してくれるとありがたい」

「いると思うの?」

「まぁ、勘だけどな。渡来亜にもいたって事は聖杯の欠片がそういうのを引き寄せる性質を持っていてもおかしくはない」

「わかったわ。こっちは任せて」

「そういうわけだから、縁は内田のサポートを頼む」

 

「...私も、千尋さんと一緒に行っちゃ駄目ですか?」

 

その言葉に、少し驚く。その言葉に込められた感情の色が、怒りや義憤ではなく、悲しみだったからか。

 

だが、それでは駄目なのだ。

 

「ガイアに付いてないアウタースピリッツに良い印象を持たれるとしたら、それは縁だと思ってる。お前のその感性はこの街では辛いだろうけど、それを十分に活かせるとしたらそれは俺たちの側じゃない。役割分担だよ」

「...はい、わかりました」

「ま、俺たちがヤバそうなら助けてくれよ。レジスタンスとか作ってさ」

「...はい!頑張ります!」

「じゃあよろしく。それじゃあ連絡は石を使って定期的に。全員、ちゃんと持ってるよな?」

 

頷く皆、さて、行動を開始しよう。

 


 

「ちわーす、ガイア教に入りたいんですけど」

「あ?何だお前ら、見ねえ顔だな」

「流れ者ですよ。ただ、路銀が尽きたもんで、しばらくどっかに腰を据えようと思ってやってきました」

「...へぇ、ガイアに入りたいって事の意味、わかってんだろうな?」

 

そう、戦意を剥き出しにした顔に十字傷を付けている男。ガイアの門番をやっているのだから、相当の実力者の筈だ。

 

だが、力で押し通せる所なら負ける事はない強者が今俺の後ろにいる。

 

「あー、なんていうか、俺は彼方さんの所有物なので試すなら彼女にどうぞ」

「へえ、こっちの美人さんがねぇ...じゃあ、死合うか」

「話が早いのは好きだよ。それじゃあ、ね!」

 

抜き打ち一閃。唐突に放たれる所長の斬撃が男を襲い、それを男はすんでのところで回避する。

 

そして、互いに良い笑顔になっている。これがカオスか。

 

「じゃあ、試験のルールだ。5分生き残ってりゃ合格だ、手段は問わない」

「5分以内にあなたを殺しても?」

「それでも合格だよ。というわけで、名乗りな」

「浅田彼方、悪魔討伐者(デビルバスター)よ」

「志島兼続、同じくバスターだ」

 

志島さんは腰に帯びていた業物と思われる日本刀を抜き正眼に構え、それに対して所長はクレイモアを脇構えに構え直す。

 

「「死ね」」

 

そして、混じりっけなしの殺意を込めての死合いが始まる。クレイモアの斬撃の重さで防御を崩そうとする所長と、重さを華麗に受け流す志島さん。

リーチの長さはクレイモアが優っているが、それは逆に言えば刀の速さは志島さんの方が優っているという事。

 

そして、志島さんは所長同様に異能を温存している。

これが、ガイアの門番の力量か。

 

「全力で来ないとか、舐めてんのか?」

「そっちこそ、死んでからじゃ遅いんだよ?」

 

最初の一合以降防戦を強いられていた所長は疾風魔法(ガル)を使い一旦距離を取り直す。

それに対して志島さんは電撃魔法(ジオ)を放つ事で相殺した。お互い、小技もある。

 

この人、予想以上に強いかもしれない。

 

「力を隠して殺されたーとかは笑えないから、全開で行くよ」

「上等、かかって来いや!」

 

疾風剣舞(エアリアルブレイドダンス)

「電磁剣戟!」

 

かたや、クレイモアにさまざまな方向の風を纏わせる事での自由な剣舞。

かたや、日本刀にさまざまな方向の磁力を加える事での異常な剣戟。

 

どちらも、変幻自在だ。

 

高速の斬撃から始まり、それを鋭角に切り返し続ける奇怪な剣。正直、どちらも人間の動きを超えている。関節の可動域的な意味でも、速度的な意味でもだ。

 

「デオン、殺れるか?」

「やれなくはない。が、その後の事を考えると手を出し辛いね。私たちの実力は低く見られた方が良いのだろう?」

「まぁ、そうなんだが...」

 

人外の剣戟が繰り広げられているその中、正直横槍を入れてさっさと先に行きたいと思う次第だが

 

所長のペースの上げ具合から、その必要はなさそうだ。

 

徐々に差が広がっていく変幻自在の2つの剣。その原因は単純明快。身体のスペック差だ。

 

所長は、悪魔を殺し、悪魔を喰らいその力を身体に宿している。それは、あの志島という男にはないものであり

 

刀のスピードを追い越すほどの剣速を、クレイモアに与えるものだった。

 

()った!」

「あいにくと、まだ終わらねぇよ!」

 

瞬間、何が起きたのか理解できなかった。

 

だが、結果だけはわかる。

 

志島さんは一瞬のうちにクレイモアの確殺圏内から離脱し、門の前で構えを取っていた。

 

刀を鞘に収めてのその構え。抜刀術の構えを。

 

「...そこまで手を抜かれてたんだ私」

「いや、流石に試しでコレを使う気はなかっただけだよ」

 

「コイツを使って、生き残るのはどちらか1人だけだ。そんなん試験で使うもんじゃねぇだろ」

 

「殺すにしろ殺されるにしろ、一瞬でケリはつくんだからな」

 

絶殺の構え。その刀の制空権内に入れば、命はない。そんな気配を漂わせていた。

 

これが、志島さんの本当のスタイルのようだ。

 

だが、外野から見ている自分にはわかった。わかってしまった。

 

「彼方さん、それ近づかなければ大丈夫な奴です」

「鬼か手前!必殺の構えだぞ!乗って来いや!」

「いやー、ウチの千尋くんって考え方が凄いんだよねぇ。...うん、フラットに戻れた。というわけで、遠距離から終わらせよう。高位疾風魔法(ガルーラ)、乱射!」

「畜生、コイツ万能タイプかよ!高位広域電撃魔法(マハジオンガ)!」

 

鋭く志島さんの身体を裂きにいく疾風の刃を広域に張り巡らせた電撃のフィールドで相殺していく。

 

だが、それは自分にはその疾風魔法に対して同量のMAGで対処できないという事の裏返し。

 

そうして、所長優勢のままでいる時にピピピと電子音が鳴り響いた。志島さんの設定していた5分間のアラームだ。

 

その音に舌打ちをして、所長は魔法を撃つのをやめた。一応ルールは守るらしい。

 

「あっぶねー、給料日前だったら死んでたな」という声が聞こえた。

 

この街MAG給料で貰えるのか。ちょっと前なら飛びつきそうな話題だ。美遊ちゃんのいる今では何も惹かれるものはないのだが

 

「よし、合格だよあんたら。この割符を持って行きな。それがここいらでのガイア教団員の証だ」

「...1つね、聞いていた通りだよ」

「そ、所有物は所有物としてちゃんと管理しとけって事よ。顔なしなら、なおの事な」

 

これは、事前にガイア教団近くにいた下っ端にインタビュー(物理)をして聞いていた事と一致する。ガイア教団員となったものにはさまざまな優待権利があるのだとか。所有物として人を連れて行けるのもその1つなのだとか。

 

そのおかげで、俺は慣れない首輪をつけるハメになっているのは気にしないでおく。やっぱ顔なしには人権ないなー。

 

「じゃあ、中勝手に入って良いぜ。重要施設には当然警備はいるが、倒すか殺すかすればその地位や奥への侵入権利を得られる。ま、中の狂信者どもは俺とは違って本気で殺しにくるからやるなら事前準備は必要だがな」

「...ガイアの思想に狂信できるとか、前の世界では息苦しかったでしょうね」

「その辺は人それぞれだな。じゃあ、また会える事を期待するぜ」

「今度は、ルール無しで殺り合おうねー」

「やってたまるか。俺は自分の命が大事なんだよ」

 

「ちぇー」と口にしながら門の奥に入る。

 

ここからは、ガイアの街の中心部。他者を殺し、犯し、喰らう悪鬼のみが存在を許されている蠱毒の都市。

 

ここからが、本番だ。

 


 

門を開けてやってきたのは、まず奇襲。相手に対処させる余裕を持たせない高位万能属性魔法(メギドラ)の一撃だった。

正直何かやってくるとは思っていたがここまでとは思わなかった俺は一瞬固まり、情けなくもデオンに担がれてメギドラの有効範囲から逃れる事に成功した。

 

「キミ、持ち物にしておくには惜しいね。私のペットにならない?待遇は良くするよ?」

「ちょっと、ウチの子をいきなり勧誘しないで欲しいんだけど。やるなら私を殺してからにしてよ」

「ハハハ!カオスだねぇ!好きだよ貴女も!じゃあ、殺し合おうか!」

「お前、門の前での奇襲はやめろって言ってんだろ!殺すぞマジで!」

「別に良いじゃん、この程度で死ぬ奴はその程度だよ?」

「お前のメギドラで門が壊れるんだよ!せめて属性魔法にしろ!コーティングしてあっから!」

 

志島さんとのあまりにも早すぎる再開である。まぁ、門番さんだものね。

 

「じゃあ、兼続くん先に殺しちゃうよ?」

「やってみろ火力馬鹿」

 

「あのー、三つ巴になってる感じで悪いんですが、通って良いですか?拠点になる部屋を確保したいんで」

「空気詠み人知らずだなお前!...所有者が所有者だと所有物も所有物なのかね?」

「知りませんよそんな事、通りますねー」

「おう、死なないようになー」

 

急遽やってきたメギドラお姉さんは放置して先に行く。

ガイア教団員となったのなら、きちんと整理された施設を扱う事が出来るらしいのだ。

 

この異変が起こってから新たにゼロから作り出したハイテク都市の設備となれば、学べるものも多いだろう。具体的には電気工事関係の技術とか。

ウチのエレベーターまだ直っていないのだ。

 

「んで、なんで付いてきてるんですか?メギドラお姉さん」

「キミが面白そうだから」

「確かに、千尋くんなんか面白いんだよねー。上手く言葉にはできないけれど」

「後は、多分だけどキミが旅のとの取引相手でしょ?だから気になってねー」

「...花咲千尋です。お察しの通り奴とは戦争の約束をした仲です」

「へー、その時は呼んでよ。面白そうな方に加勢するから。あ、私はメギドラで通ってるよー」

「まさかの名前ですね。良いんですか?顔無しとはいえ名前くらいあっても問題はないでしょうに」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。顔無しも大変だよ」

 

名前を捨てる事で自己認識を曖昧にしているのか、なんともロックな生き方をしている人である。

 

「つまり、私のアイデンティティはぶっ放すメギドラの中にあるのよ、姿形や性別なんてかんけいないのだー」

「まさにカオスな生き方ですね、憧れます」

「千尋くん、そっちにばっか絡んでると拗ねるよー、私」

 

最初はどんな化け物かと訝しんだが、意外と話せるお姉さん(仮)である。何が彼女をメギドラに命を賭けさせるのかは知らないが、多分常人には理解できない理由だろう。

 

「じゃ、私はこの辺で。そこ右に曲がれば寄宿舎エリアだから、寝床には困らないと思うよ」

「ありがとうございました、メギドラお姉さん」

「またねー、花咲少年。それと、守るって気持ちだけだと一手遅れるから気をつけてね、騎士っ娘さん」

 

ふらりと現れてふわりと消えていく、なんとも面白い人だ。

 

「じゃ、今日はもう休もうか。縁ちゃん達の状況とかも知りたいし」

「ですね」

 

そう言って、管理人をしているミシャクジ様に割符を見せる。この街悪魔でも自由に職に就けて

 

「ふぅむ、新顔にしては空気が違うの。どこから来おった?」

「その質問、必要?」

「ではないな、興味本位じゃ」

「ま、色々あるのよ私達は。部屋はどこを使えるの?」

「好きな所を使えば良い。先客がいても殺して構わんぞ。できるものならな...と言うのがマニュアルなのじゃが、お主らならできそうじゃし、どうしようかのぉ」

「ま、空いてる所を探すわよ。揉め事は嫌いじゃないけど、雑魚相手に粋がるのは趣味じゃないからね」

 

そうして、10分ほどかけて探し出したのがこの部屋。406号室。

部屋の中に血の匂いはそんなにしなかったので、しばらくは死人の出ていない部屋なのだろう、いい部屋を引けた。

 

「にしても、ベッド1つかー。デオンくんどうする?」

「私は寝ずに番をしていよう。幸い悪魔の身だ、多少の無理は効く」

「じゃ、俺は寝袋ですかね」

 

そんな俺を見て、ニヤリと笑う魔女が1人。何を考えているのか想像はつくのが嫌だ。

 

「...一緒のベッドで寝る?」

「嫌です」

「即答⁉︎」

「だって所長寝癖悪いじゃないですか。殺人的に」

 

以前、強固なパスを結ぶ際に起きた悲劇である。長い行為が終わり眠ったかと思ったらなんと身体は戦闘態勢のまま起きていたのである。その結果寝ぼけながらしかけられた関節技(異能者仕様)により、あえなく魔石の世話になったのであった。いや、アレは本当に痛かった。

 

「じゃ、通信開きますねー」

 

通信用術式を起動する。ジャミング、盗聴の様子はなし。感度良好だ。

 

『花咲、聞こえてる?』

『ああ、問題なさそうだな』

『こっちは収穫という収穫はないわね。悪魔を殺す前に欠片の事を聞いてるんだけど、無駄みたい。相当前から奪って使ってるわね、コレは』

『とすると、怪しいのはガイアの大将ヨスガか。ありがとう、そっちの線で探ってみる』

『あとは、縁ちゃんが結構きてるわね。助けたくても助けられないってのはやっぱり辛そう』

『...しばらく縁の事頼むわ。ガイアの内情がある程度わかったら、ガイアを荒らす為に人を助ける為に動いてもらうかもしれないから、その時はよろしく』

『ええ、任せて。正直私も暴れたくて仕方ないのよ』

 

『待った花咲、戦闘音よ。切るわね』

『気をつけろよ』

 

戦闘音のことは心配ではあるが、もう日没だ。ゆっくりと休むとしよう。

 


 

手足を縛られて身動きを取れなくされた10人ほどの奴隷達、老若男女さまざまなな彼らだったが、その目には希望はなかった。

 

たとえ、今彼らを救う為に立ち上がった1人の女性がいたとしても。

 

「お前たちは、この現状がおかしいとは思わないのか!」

「知るか!力ある奴が上に立って何が悪い!弱い奴が這い蹲っている事の何がおかしい!この世界は変わったんだよ!」

 

放たれる銃撃や剣舞。その動きはどこか荒々しく、しかし高貴さもあった。

奇妙な奴だと思った。なんらかの力で後ろに庇った人々に当たりそうな弾を身体で受け止めているあたり特に。矢避けの加護ならぬ矢当たりの加護だろうか?フィンなら何か知っているかもしれないが、呼び出してしまえばこの戦闘に介入することになる。その時はその時で面倒だ。

 

「自由とは、こういうものではないだろうが!」

「知らねぇよ偽善者!手前の身体に刻み込んでやるから覚悟しやがれ!」

 

数多の銃弾を喰らい、地に膝をつく女性。

 

そんな彼女に襲いかかる男の前に、駆け出した少女がいた。

 

「馬鹿、まだ動く時じゃないでしょ!」

「知りません!私は、私に嘘をつけない!」

 

そうして、神野縁という少女は戦線に立った。女性を守るような立ち位置で。

 

「メシアンローブか、手前何もんだ?」

「神野縁。この愚行を見過ごせない、人間です!」

 

「おいおい楽しい事になったんじゃねぇかよ」と周囲で見ていたゴロツキが集まってくる。これは、動くしかなさそうだ。

 

「志貴くん、行くよ」

「ですね、目撃者全員殺しておけば問題にはならないでしょう」

「バイオレンスな思考、嫌いじゃないわ」

 

「サモン、フィン・マックール、アガートラーム、サーバ!」

「おや、久しぶりの出番だね、愛しのサーバ」

「ディムナ、私に見惚れて馬鹿やらないでよ?」

「...」

「いや、あんたは喋りなさいよアガートラーム。意味ありげに黙ってないで」

「...」

「筋金入りね、本当。じゃ、暴れるわよ!」

 

集まってきたゴロツキどもの目を引く。フィンの水流で3人、アガートラームの斬撃でも3人に手傷を負わせられたが、殺すには至らなかった。即座に対応してきたのは、流石ガイアと言った所だろうか。

 

「サーバ、あの女を治療して!縁、そいつを死ぬ気で守りなさい!走り出したんなら、あとは走り切るだけよ!」

「...はい!」

 

周囲に集まってきたゴロツキどもの数は合計で9人。遠巻きに見ているのが1人。

遠巻きの奴はこの際無視するしかないだろう。手を出せる戦力が居ない上に、かなりの実力者だ。

 

まぁ、志貴なら殺せるだろうが志貴にはゴロツキどもを暗殺して貰わなくてはならない。でないとこちらの消費が増えるだけだ。

 

「手前ら、俺らがガイア教徒だって知っての事か?」

「知ってるわ。殺せば全てを奪えるんでしょ?だからまずあなたの命を奪わせてもらう」

「...上等!ペルソナ、コロンブス!」

「サモン、ヌエ!」

「ガーディアンライド、ラームジェルグ!」

 

サマナーが1人、ペルソナ使いが1人、ガーディアン使いが1人、残りは異能者だろう。やはり、粒ぞろいだ。

 

もっとも、彼らがその実力を十全に発揮することはないのだが

 

蜘蛛のような動きで誰の目にも入らずに後ろに回り、手傷を負った6人を一瞬のうちにバラバラにしたのが、七夜志貴。この3人の中でおそらく最強の暗殺者である。

 

「行くぞ、お前ら!...あ?」

 

振り返って見た光景は、信じていた仲間が瞬殺されている光景だった。それは、付け入るには十分な隙だった。

 

「ヒノカグツチ!」

「光波の一撃!」

「舞うが如く!」

 

そうして、一瞬のうちに3人の命は絶たれ、この事件はとりあえずの終結を迎えた。

 

遠巻きに見ていた1人が、こちらにやってくるまでは。

 

「サーバ、どう?」

「駄目、霊核にダメージが入ってる。本格的な治療施設がないと死ぬわよこの女」

「見捨てるってのは縁が許してくれないわよね、じゃあもう一戦行きますか」

 

「安心して、私は敵じゃないわ。その子を助けたいの」

「じゃあ、名乗りなさいよ」

「アラクシュミー、まぁ運の悪いだけの女神よ」

 

「アラクシュミー、様?」

「よく頑張ったわね、愛しい子。私の力の欠片が響いてるわ」

 

「たとえそれが別世界のものであっても、私に連なる力なら合わせられる。だから、生きてもう少し頑張って。...まぁ、運は今よりも悪くなってしまうかもしれないけれどね」

 

そうして、アラクシュミーは女性と重なり、一体化した。

ガーディアンの憑依現象に近いが、どこか違う気がする。

 

そうして、光とともに女性は立ち上がった。赤き衣と銃と剣。それらをしっかりと携えて。

 

「ありがとうございます、アラクシュミー様」

「よくわからないんだけど、動ける?」

「ああ、問題ない。すぐに戦闘しろというのは難しいが、彼らを背負って逃げるくらいはできそうだ」

「じゃあ、とりあえず離れるわよ。あんた、名前は?」

 

「ラクシュミー、ラクシュミー・バーイーだ」

 

予想していなかった新たな出会いが、新たな戦いの始まりを告げていた。




またちょっと短いですが、まぁ導入なので許してくださいな。

調整平均8.9とかいう作者的にはヤバイ数字出しているこの作品の評価について、評価機能がどれほど使われているのかの個人的興味からのアンケート。暇な時にでもどうぞ。

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