葛葉キョウジ、それは葛葉四天王の番外位。
時代の変事に現れる。最凶のサマナー。外法により体を変えるのを繰り返す、世紀末から生き続けてきた伝説だ。
その行動はこの世界を守る為。そのための犠牲も手段も選ばない。
俺が伝聞で聞いた情報だけでもそれほどのものであり、その逸話の数数から読み取れた戦闘理論は自分のものの参考にさせてもらっていた。
そして、あの日から2年間真里亞を守り続けてきた人物であるらしい。
「真里亞、伝えた通りだ。次に行くのは帝都にするしかない、でなければその前に世界が崩れて落ちる」
「はい、理解してます。ターミナルのクールダウンにはあとどれくらいかかりますか?」
「状況が状況だ。今回はターミナルの最低ラインで走らせる。3人で行くぞ。これなら残り半日で済む。
「...厳しい戦いになりますね」
「残りのメンツには付和さん...ライドウさんの捜索を本格的にやってもらう。ターミナルの使い方は...内田だな」
正直、ターミナルの使い方は俺が占有したかった。どこにでも行ける人が増えるというのは利点ではあるが、同時に
俺は、仲間として皆を信じている。
しかし、それとは別にその思想などが簡単に歪められてしまうことを知っているのだ。歪める外法を術として理解しているのだから。
そうして、隣にいる内田にターミナルに触れさせる。
使い方を理解させるにはこれが手っ取り早いからだ。
「...ごめん花咲、あんたほどうまく扱える自信はないわ」
「なら、頭の中で作ってた演算領域の代行プログラムを今組み立てる。試運転はできないが、これでだいぶ楽になるはずだ」
「しれっと頭おかしい発明しないでよ」
「俺よりも先駆者の頭のおかしさを褒めろ。俺は後追いでアレンジしてるだけだ」
「へー、そう」
「で、私がターミナル扱えるようになったって事は話す?」
「...任せる。信用できるかどうかはお前が判断してくれ」
「...ま、どっから情報が漏れるかはわからないものね」
「ああ」
「じゃあ、行ってらっしゃい。ライドウの代わりとか無理だと思うけど、あんたならやれるんじゃないかって思うから」
「いや、どっちだよ」
そんな言葉を最後に、大空洞を後にした。
「さぁ、行きましょうか千尋さん」
「ああ。皆、ターミナルの冷却にかかるのは3週間程度だ。
頷く皆。
「死なないでよー、千尋くん」
「安心して下さい。俺もそこそこ強くなりましたから」
「むしろそこが不安なんだよねー、千尋くんのしぶとさって弱者の足掻きみたいなとこがあるから」
「それも安心して下さい。向かう先は帝都です。俺より強い人なんかゴロゴロいますから...言っててしんどくなってきました。あー、なんで知っちゃったかなー」
「サマナー、言っても仕方がないさ。それに、知らないで新潟に行っていたら世界が滅んでいたのだろう?ならば、正解だよ」
そうして、皆に見送られて転送を開始する。
俺と真里亞とデオン、3人だけの厳しい戦争の始まりだ。
目的は2つ。
ファントムソサエティに奪われた必殺の国防兵器が最強の一柱、護国神マサカドを取り戻し、令和結界の機能崩壊を防ぐ事。
そして、
やってみせる。でなければこの世界は終わるのだから。
「千尋さん!」
「...どうした?縁」
「私、お帰りって言いますから!絶対の絶対に!無事に帰った千尋さんに!」
「ああ、その時は牛乳と卵とかを用意してくれてると助かる。アテルイがシュークリームを食べたいとか言い出してさ。それでどうせならいっぱい作って仲魔連中に振舞ってやりたいと思ってんだ」
「わかりました!任せてください!」
「お前の分も作るつもりだから、楽しみにしてろよー」
「「「じゃあ、行ってきます」」」
そうして、ターミナルを起動させて転送を開始する。
そうして一瞬の浮遊感の後、違った景色に変わる。
とても狭い。どこかの仮設住宅に適当にターミナルが置かれているようだ。
「真里亞、知ってるか?」
「いいえ。ですがおそらくキョウジ叔父様の隠れ家の一つでしょう。見た目は簡素ですが、強固な結界が張られています」
「外に中の気配を悟らせないタイプの結界だな。だが、この手の結界って、侵入防御紙になりがちなんだが大丈夫か?」
「...外を見ればわかりますよ」
そうして、真里亞の先導の元外に出る。
どうやらココは、避難所だった場所のようだ。
もう、破壊されて残骸だらけであったが。
「うん、田舎者としては帝都って怖いとか思っとくべき?」
「帝都では、私は隠れ住んでいました。ですが、どこにも安全などなかったようです。2年間で何度も隠れ家を変えました。それだけ、危険が大きかったのでしょう」
「...あの葛葉キョウジでもか。おっかないな」
避難所の残骸を探索していく。キョウジさんからのメッセージでもあれば良いのだが、そんなものはないようだ。
つまり、帝都を探索して合流しなくてはならないようだ。
「真里亞、すまんが結構頼る」
「構いません。帝都は踏み荒らされてしまいましたが、それでも私は日の本と帝都の守護者でありたい。そうであった陛下達のように在りたいのです」
「...サマナーがこう言う時は、本当に酷使する時だよ?大丈夫かい?マリア」
「ええ、大丈夫です。命を捨てる覚悟はありますから」
「そこまでは要求してねぇよ」
そんな会話をしながら、避難所を出て帝都の状況を探る。
「お、第1野良悪魔だ」
見つけたのは、なんだかこの世に絶望している空気を醸し出している魔獣カプソ。
なんだか妙に強い力場を発しているが、雑魚悪魔である。
「ちわー」
「ちわー、軽いねキミ」
「ちょっと話聞いていいか?最近この辺りに来たもんでね」
「あー、なら早急に逃げる事を進めるよ。この辺り、もう人間住めないからねー」
「そうなのか?」
「うん、マサカド様の勅命に大体の悪魔が付いて行っちゃったからね。悪魔の国の建国だってさー。辛いなー」
「じゃあ、お前は俺を報告したりするのか?」
「やだよめんどい。サマナーとのぐだぐだな関係に慣れたインドア派ペットの僕が今更どうして野生に戻れるのさ」
「じゃあ、ウチ来る?」
「...意外とアリかも」
「お、好印象」
「だけど、それはキミの実力を見てからじゃないとねー。うん、泥舟には乗りたくないし」
「では、こちらのお方をご覧下さい」
「ん?...ミ゛ャ⁉︎」
「俺は実は、今ラストエンプレスたる右代宮真里亞様のエージェントなのさ。どうよ?」
「...うん、乗らないと僕殺されるノリだよね。秘密を話すヤクザのノリだよコレ。アニメで見たよ」
「堕落してたんだなーお前さん」
「元サマナーがアニメっ子だったからねー。僕も一緒に見たのよ」
懐かしそうに昔を語るカプソ。コイツは、良い出会いを得たのだろう。
「それで、どうする?」
「...うん、決めたよ」
「僕はカプソ、魔獣カプソ。よろしくね」
「
そうして、成り行き任せにガイドを得て旅路を行く。
どうやらこの帝都では、悪魔の悪魔による悪魔の為の国の建国が始まっているらしい。
それを主導しているのは、ファントムソサエティ。今、その大将をしているのは護国神の方のマサカド公であるが、その実務を担っているのはファントムの悪魔であるシェムハザらしい。
そして、その中で力をつけているのは悪魔人間たちだ。
元ファントムソサエティの構成員は、なんらかの処置により悪魔の力を取り込み、強化されているのだとか。
それが、ファントムソサエティの国を作る原動力となっている。
「つまり、敵はそのファントムソサエティだと言うことかい?」
「いや、シェムハザは結界崩壊を望んではいない筈だ。ファントムの理念は、悪魔上位の社会の設立。そのためにはまだ時間は必要だろうし、シェムハザはそんなに人間嫌いって訳でもない。何かある筈だよ」
「ですが、マサカド公を拐かしたのはファントムです。そこに間違いはないでしょう。どうするつもりですか?」
「...ファントムとは、いずれ会うことになるだろうよ。問題なのは、狂将マサカドの方。見かけて生き残ったやつはカプソみたく誰かのサマナーの仲魔だった奴らだけだ。正直、コイツの行動パターンを割りださないと探索どころじゃないな」
「だが、いずれ倒さねばならないのだろう?」
「まぁそうなんだが...正直囲んでボコりたい」
「サマナーって本当に人間なの?悪魔とかじゃない?」
「まだ人間だよ」
そうして、周囲を警戒しながら歩いて数十分程
自分たちは、ある光景を目にした。
「さぁ、あなた。着いたわよ」
「ア...アァ?」
それは、顔無しの夫婦が手を取り合って歩いていく光景だった。
そして、その先にいるのは悪魔人間。
嫌な、予感がする。
「サマナー、あれは毒婦の類だ。行かせてくれ」
「...その前に情報を抜きたい。カプソは潜伏モードで行けそうなとこまで近づいててくれ。真里亞は狙える位置に。俺とデオンはこっから一気に行けるように準備だ」
そうして、カプソの聞いた声が伝わってくる。
「さぁ、あなた。...私の為に、ね?」
「アぁ、あ」
「...まぁ確かに一人餌を連れてきたら良いって話だけどよ、旦那を連れてくるかね?おっかねぇ」
「不満?」
「いや、好みだよ。悪魔より悪魔らしいのは人間の良さだ」
「じゃあ、餌は連れてくぜ。お前はファントムの施設にこの入館証で入りな。それで、処置はしてくれるだろうよ」
「ありがとう、悪魔さん...あぁ、これで私は成れるのね!踏みにじる側に!」
そうして女性の手から離れた瞬間に、男の様子が変わった。
まるで、何かが孵化しようとしているかのように思えた。
人間に使う言葉ではないが、直感的にそう思ったのだ。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、」
「...オイ、この餌腐りかけじゃねぇかよ面倒くせぇ」
「腐りかけ?」
「...」
「...あー、駄目だコイツは。入館証返せ。人間は美味いから良いんだよ」
「成った後の奴は、クソ不味いんだとよ」
「...え、あなた?」
そうして、男は変わった。内側から弾けるように、見たことのないタイプの悪魔へと。
「我は全、全は我。我は心の海より出でし者なり」
アンリマユの泥を見た今の俺には、なんとなく感じられる。
あれは、意思の混沌だ。命が混ざり合って、しかし反発しあっている。
「チッ、強いなコイツ!おい、クソ女!お前戦えるか⁉︎」
「...戦えるなら、もっと早くに貴方達の元に行ったわよ!」
「あー、タイマンかよクソが!」
「デオン、予定変更だ。悪魔と女を助けるぞ」
「...そうだね。アレは、間違いなく敵だ。それに、話が通じる相手でもなさそうだ」
そうして、男だった者から放たれる魔法。珍しい事に、重力魔法系統だったようだ。女と悪魔は地面に貼り付けられている。
しからば、その隙に行くとしよう。
「受け取れ!
「任された!」
瞬間、最高速に達したデオンが異形に切りかかる。
だが、どこかで感知していたのか即座に重力魔法を放ってくる。広範囲に対しての重力増加により、デオンの足を止めるつもりだろう。
しかし、こちらにも伏せている札はあるのだ。
「カプソ、合わせろ!」
「なんか流れ込んで来たぁ⁉︎...うん、行けるね!
演算を代行して放たせた氷結魔法が、重力魔法の干渉により急速に落下して異形を押しつぶす。
そして、その氷結魔法により一瞬重力魔法のコントロールが外れ
その瞬間、溜め込んだ力が爆発するかのようにデオンが神速で距離を詰め、一太刀で異形を肩口から2つに切り裂いた。
瞬間、感じる何か。
言葉にできない何かの思いが、デオンのラインを通じて俺に伝わってくる。
数多の情報の奔流、数多の感情の波、そんな表現が適切だろうか。
意思の混沌の流入、これは正直二度と味わいたくはない。が、今特に変化はないので問題はないのだろう。
心配なので、拠点を手に入れたらセルフチェックはするが。
何はともあれ戦闘は終了だ。デオンも訝しげな表情をしているが、特に問題はないように見える。
「デオン、無事か?」
「ああ。だが、私を通じて何かの呪いが通った気がしたのだが、サマナーは無事なのかい?」
「まぁ、びっくりしたがそれだけだよ」
そうして、カプソとデオンを自分を守れる位置に置いて悪魔の彼に話しかける。
「どうも、流れのサマナーです」
「どうも、ファントムの悪魔人間です」
特に理由もなくお辞儀をして挨拶をすると、向こうもお辞儀をして挨拶を返してくれた。
意外と話が合うかもしれん。この人。両手を合わせておけば良かったかもしれない。アイサツで伝わるものがある!
「最近この辺りに来たばかりで右も左もわからない...って程じゃないですけどそれなりにわかってないんですよ」
「その割には覚悟決まってたがなぁ。お前、アレに成った男をあっさり殺れたんだし。自分もいつかああなるかもしれないってのによ」
「...まぁ、今は一応人間ですから」
気になるワードが出てきたが、今は知らない事を隠しておくべきだ。
顔無しはアレになるのだろうか。
思い返せば、アレに似た悪魔を遡月で殺した事があった。その時はあの意識の感染はなかったが、だが人が、もっと言えば顔なしが悪魔になった事あった。
それはつまり、なんらかの条件で顔無しがああなるという事。
人を悪魔にするのとは違う現象だろう。あれは自我境界を曖昧にして自分を悪魔だと錯覚させる事が大体の原理だ。
だが、それではあの未確認の意思の混沌になるとは思えない。
アレは、ただの悪魔とは違うものだ。
サンプルがあれば解剖なりして確かめたい所だが、まぁそれは後で良いだろう。多分いっぱい出会う事になるのだろうし。
「じゃあ、命を助けたって事でファントムの話聞かせてもらって良いですか?」
「いや、餌持って来てない奴は基本的に対応しない事にしてんだよ。どうせ狂将の餌になるからな」
「じゃあ、そちらの女性が俺の餌って事で」
「...は?」
「おいおい、そりゃ話が...あー、確かに通るか。お前がいなきゃ死んでたってことは、この女はお前の所有物って事になる」
「ちょっと待ってよ!私は旦那を連れて来たの!私が悪魔になるために!」
「...醜いね」
「そんなもんだよ」
「大体あなたもあなたよ!同じ顔無しでしょ⁉︎心が痛まないの!」
「まぁ、痛まないといえば嘘になる。けど」
「良心を失くした奴は、もう人じゃないんだよ」
その言葉を聞くと、女性はぺたりとへたり込んだ。
「カプソ、お前は狙撃地点にいるマッさんについてろ。万が一があるかも分からん」
「りょーかい、じゃあねサマナー」
「しれっと恐ろしい事言ってなかったかお前」
「そりゃ、不測の事態を考えておくのは大事でしょうに」
そうして、女性を引き渡した後に彼女に渡すつもりだった入館証を渡された。どうやらコレでファントム関係の施設を使えるらしい。
「ま、顔無しだと不便だから、とっとと悪魔人間になった方がいいぜ。悪魔人間がアレになったって話は聞かねぇしな」
「...それなんですけど、難しいんですよねー。ちょっと前に高密度の汚染MAGを取り込んだもんで」
「あー、なんかそういうのがあると事故ってスライムになるとか聞いたわ。体に馴染んでんのか?」
「いえ、まだですね。顔無しなんでそうあれと体を作り変えられれば大丈夫なはずなんですけど、そっち方面の才能はないみたいで」
「ま、それなら強制はしねぇさ。だが、施設の方には顔出しておいてくれよ。ファントムの仲間だって顔売っておくのは決して悪いことじゃないからな」
「あー、暗殺される危険性が減るとかですか?」
「いや、人間ってもう貴重だからな。食ってみたい奴は多いんだとさ。特に上の方はグルメでなー」
「うわ、シェムハザの奴趣味悪いなー。人肉って不味いって聞いたんだけど」
「いやいや、昔にもいたろ虫食う奴とか。それの親戚みたいなもんだって」
「ゲテモノ食いの親戚に見られてんのかシェムハザの奴」
なんとも愉快な風評被害である。実力で勝てるかは微妙なので、こういった点からメンタルダメージを負ってくれるととっても嬉しい。メンタルダメージは力場を超えるのだ...
「じゃあ、俺はこの餌を連れてくわ。あっちの方にある妙に上手い一休さんのグラフティがある建物がこの辺りの拠点だ。...まぁ、悪魔になってもやる事は変わってねぇから気をつけろよ」
「まぁ、ドラッグまみれな感じは想定しておく。...そうだ、この入館証って人間の仲間も連れて行けるか?」
「いや、ダメだ。一人につき一人餌を連れて来る事。それが今の組織に入る条件だからな」
「あいよ。ま、情報収集したらよそ行くから問題ないか」
「へー、どこ目指してんだ?」
「こう、世界を救える何かがある所、とか?」
「適当か」
「だって世界を救ったことなんてないですからね。何すりゃいいのかは大体しかわからないんですよ」
「大体わかってんのかお前、マジか」
「可能性1%超えないですけどねー」
「ダメじゃねぇかよ」
「だから色々旅してるんですって」
ちょっと驚かれる。まぁ今はまだ妄言の類だし、仕方ないか。
「あー、お前が悪魔になれるならこの街はおススメなんだがなぁ...」
「具体的には?」
「娯楽が多い。アニメにゲームに漫画、過去の資料がよりどりみどりなんだよ」
「流石の帝都だな田舎とは違うわ」
「だろ?ま、新作が出ないのが残念ではあるがな」
「それじゃあな」と去っていく悪魔人間さん。気さくないい人だった。が、あの人も誰かを餌にして成り上がったのだろう。油断はできない。
「真里亞、聞こえてたか?」
「ええ。では私はカプソと共に狙える位置に待機しておきましょう」
「ああ、ペガサスをそっちに送る。上から帝都を見ていてくれや」
「わかりました」
「...千尋さん...あなたには、あの女性を助ける気は微塵もなかったのですか?」
「放っておくとあの女は別の男を餌にしましたよ、間違いなく。なんで、罪人ひとりの命と、これから失われるかも知れない命を天秤にかけて、俺は未来の犠牲が出ない方を選びました。まぁ、サマナーとして、殺しておくべき奴はきっちり殺しとけって仕込まれてんですよ」
「それでも、私は民の命を守りたかったですね」
「すいません、皇女殿下」
「真里亞で構いませんよ。
そして、頼れる援護を手に入れてから拠点に赴く。
マジに一休さんのグラフティが書かれていた。しかもかなりの名作だ。思わず写真を撮ってしまった。こんなパンクでロックでなおかつキュートな絵があるだろうか、いやない。
「おじゃましまーす」
「新人か?」
ロビーにたむろしていたのは2人、どちらも悪魔人間だった。
「ええ、流れのサマナーやってます」
「へぇ、てことは強いの?強いの?殺し合おうよー僕と!」
「ライジュウ、お前ちょっとは落ち着け」
「えー、でも人間の強さを見るチャンスなんてないんだよ?」
「あー、自分サマナーなんで強さとしてはクソザコですよ」
「えー」
「どうしてもというのなら、こちらのデオンが相手をしましょう。相棒なんで」
「...サマナー、ちょっと扱いが雑ではないかい?」
「...いいね!じゃあ行くよ!」
そうして、ライジュウさんは身体を雷化させて神速で入り込む。
しかし、デオンはそれを見切っている。いくら敵が速くても、意よりも遅いのならどうにでもなる、そんな事を言っていた。
その結果が、神速に合わせたカウンターである。力場で足にMAGコーティングをして、ライジュウさんの着弾に合わせて蹴り飛ばしたのだ。
そうして、壁に叩きつけられたライジュウさんの首に剣を突きつけて、一言言った。
「まだやるかい?」
「...いや、今の僕じゃ勝てない。それくらいはわかるよ!強いね!キミ!」
「じゃあ、とりあえず面通しは終わったって事で」
「あー、念のため写真撮っとくか?まぁ顔無しなら意味ねぇんだが」
「すいません、まだこの街に定住するか決めたわけじゃないんで、今はパスって事で」
「本当に流れ者なんだなお前さん。どっから来たんだ?」
「異変が起きた頃は九州にいました。ただ、やりたい事があったんで今は旅をしています」
「そいつはけったいな事だな。旅の話を聞かせてくれよ」
「嫌ですよ、命懸けで手に入れた情報を簡単に回すつもりはありません」
「そりゃそうか」
「じゃあ、ケーブルネットワークに情報上げるぞ。あ、そうだ。名前は?」
「花咲千尋です」
「女みてぇな名前だな」
「ほっといてください」
そんなわけで、ファントムの構成員(仮)になったのであった。
「じゃあ、この辺のルールは説明した通りだ。連れと相談して残るか決めるといいぜ」
「ありがとうございました。あ、それとなんですけど」
「狂将マサカドの行動範囲やパターン、その辺の情報はないですか?」
「...いや、ないな。ウチの頭がマサカド公だとしても、あの狂将とは別物だ」
「なら、推測できるだけの情報は?」
「それもねぇ、無線機器は構成員全員に配布できるほどねぇからな、外でのたれ死んだ奴が狂将の手によるものかってのはわからねぇのさ。それに、遺体の位置から逆算するってのも無理だぜ。なんせ、あいつは殺した奴を徹底的に破壊する。灰すら残さねぇのさ」
「食ったとかではなくですか?」
「さぁ、分からん。ウチが狂将の情報を得られるのは大抵サマナーの仲魔だった奴からのものだからな。死んだ後どうされたかはわからねぇんだわ」
「つまり、常在戦場あるのみと。辛いですねー」
「ほんとになー」
その後は、周辺の地図データを貰ってファントムの詰所から離れる。
ファントムと強調して、狂将をどうにかしつつキョウジさんを探す事、とりあえずはそれを方針にしていいだろう。
「真里亞、戻ったぞー」
「ええ、どうでしたか?」
「とりあえず末端は白だ。狂将が操られてるなら狂将の情報が流れる訳がない。というか、このマップに色々注釈つけてくれる訳ねぇし」
「それが罠だとは?」
「いや、こっちの強さは示した。そう無駄に敵対するネタは渡さないだろ。ファントムは邪悪な癖にびっくりするくらい理性的な組織だからな」
「...そうなのですか?」
「ああ」
「ま、とりあえずは東京巡りだ。キョウジさんと合流する為には、狂将の動きを知るのが早い。俺たちの命を守る事になるから一石二鳥だしな」
「ええ。では、どちらに向かいます?」
「ヤタガラスの跡地に行ってみたいが、ファントム系列ならめぼしいものは盗ってるだろうし無駄足なんだよなぁ。いっそのこと顔を売り出すのも考えたが、花咲千尋って名前はキョウジさんに伝わってないからなぁ。...あの時独断で返信しとけば良かったか?」
「サマナー、過ぎたことを言っても仕方がないさ」
「だな」
そんな会話していると、荒ぶるという表現がしっくりくるMAGがビシビシと伝わってきた。
「真里亞、俺とペガサスに!デオン、走って指示するポイントに!
「了解だ!」
「千尋さん、どうするのですか⁉︎」
「こんな急襲されたんなら、アナライズデータくらいは取らないと割に合わない。だから、デオンをスポッターにして観測する。俺たちはペガサスで離れながら、狂将マサカドの目くらまし役だな」
「...デオンさんが危険では?」
「大丈夫、あいつアレで逃げや隠れ身が得意なんだよ」
そうして、マサカドの進軍が始まる。この進路だと、狙いは先程までいたファントムの拠点だ。これは、サマナーがいる可能性が浮かんできた。
「アナライズ、スタート」
ビルの上に陣取っているデオンを経由して、MAG波を放射する。それによりデオンの存在に気付いたようだ。
さて、どう動く?
『サマナー、気をつけて!私を介して君を見ている!』
『感知タイプか!』
道理で、逃げられた奴が居ないわけだ。
狂将マサカドは、なんらかの方法で感知を行なっている。それは、とても広範囲でかつ正確なものなのだろう。
故に、マサカドは俺を見つけたのだ。
自分に刃向かう、敵として。
「真里亞!荒っぽく行くぞ!」
「はい!数多の守護者を殺した狂将、侮るつもりはありませんとも!」
起動をペガサスに任せ、俺と真里亞で逃げながら魔法を放っていく。
だが、マサカドは意に介したりはしなかった。その強力な力場で受け止めて、弾き飛ばしている。
火炎、無効以上。衝撃、耐性
「真里亞、勾玉使えるか⁉︎」
「...いいえ、まだMAGが溜まりきっていません。八咫の鏡を優先していたので」
「なら、力場は抜けないか...メギドで穴空くか?アレ」
「試してみては?どのみち、そろそろ追いつかれますし」
「だな」
力場を盾にペガサスのスピードに追いついてくる狂将マサカド。そろそろペガサスに疲れが来る頃だ。一つ足止めをしなくてはなるまい。
「我は、護国の徒。邪悪の手の者よ、その命貰い受ける!」
「...真里亞!説得頼む!こいつ理性があるぞ!」
「マサカド公!我が名は右代宮真里亞!右代宮が最後の生き残り!」
「ほう!
だが、止まる気配はない。間違いなく俺を殺す為に真っ直ぐに突き進んで来る。
そこに、待ったをかけるのが白百合の騎士。こちらの逃走ルートを調整して近道をしてもらったその剣が、マサカド公の力場に突き刺さる。そして、向上した能力を斬撃に変えたデオンの剣にて、力場を無理矢理に切り裂いた。
そして、公の持つ刀によって受け止められていた。
「見事な剣よ。名は?」
「白百合の騎士、シュヴァリエ・デオン。花咲千尋の仲魔だよ」
そうして、デオンとマサカド公の剣戟が始まった。
物理的干渉すら可能な力場を持った超次元の悪魔と、それを向上した身体能力と剣技の冴えのみで相手をする騎士。
その戦いは、剣を少しでも知るもの全てを魅了してやまない、芸術のようだった。
護国神とかいう新しい枠を作ってしまった作者です。色々考えたのですが、あっちのマサカド公にはその名前が相応しいと思ったのですよ。
狂将と護国神。スーパーマサカド対戦はまだちょっとお預けです。
調整平均8.9とかいう作者的にはヤバイ数字出しているこの作品の評価について、評価機能がどれほど使われているのかの個人的興味からのアンケート。暇な時にでもどうぞ。
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