まぁ、10分以内なのでセーフですよね...?(懇願)
「...ターミナルのログは、大空洞の方からか...てことは縁には同行者がいるな。1人なら手紙を飛ばすくらいの事は出来るからな」
とりあえず現状を口に出して整理する。縁は、ターミナルを使える何者かに拐かされたのだろう。とりあえずそう判断しておく。
「...護国神マサカドの討伐は、現状の戦力でやるしかないという事か」
「だな。だが正直所長には来て欲しかったよ。霊剣スイッチ作戦は没案になっちまうし」
「まぁ、俺としては正直ほっとしてあるがの。仮にも俺にと渡してくれた霊剣を詐術のネタに使うのには思うところはあったからの」
そうしていると、もう時間になってしまった。
縁の事は心配だが、今はもう動き出した戦いに身を投じるしかない。
作戦の成功のチャンスは、たったの一度きりなのだから。
「...?」
護国神マサカドは、違和感を感じた。
この自分の支配する聖都に、侵入者が現れたようだ。
それも、大量に。
別個体の視点に意識の始点を移すと、そこには多くの悪魔人間が四天王の館になにかを投げつけてからすぐさま散り散りになって逃げ出す様だった。
無駄だろうに、なぜそんな事をするのかと問いただす為に1人の悪魔人間の前に立ちふさがる。
「来やがったぞ!」
「あばよ、ナーガ!手前の事は3分くらい覚えておいてやる!」
「覚えてろよ手前ら畜生、地獄で会おうぜ!」
そうして、ひとりの悪魔人間が己の前に立ち塞がり
MAGによる威圧だけで地に倒れ伏した。
だが、それでもなぜか諦めるような目はしていなかった。
「何故、こんな無駄な事をする?」
「なんて事はねぇ」
「こっちの方が儲かるからだ!」
護国神マサカドは知らない。それは、一大ギャンブルに出たファントムソサエティ構成員全ての思い。
こここら生きて帰れれば、ファントムソサエティの残りの資材全ての山分けの権利が得られるのだ。
マサカド公が勝ち取り、溜め込んだ資材の量は計り知れない。それだけあれば、この終わった世界でも悠々自適に暮らせるだろう。新天地に足を伸ばすための助けにもなる。
それは、これまでファントムが忘れていた、未来への欲望。
マサカドの力ではなく、人の欲望を刺激したシェムハザの計略であった。
「というわけでくらえ!トラポートストーン!」
そうして逃げ延びようとするナーガ、その転移を妨害し力場の槍で貫いた。
この場にいた、否
四天王の館にやってきた全ての攻撃者を。
「無駄な事...ッ⁉︎」
そうして、その命は報われなかったが
代わりに、四天王の館はまるで太陽が落ちてきたような現象により消し飛んだ。
そうして、爆発と同時のタイミングでの参入者。
こちらが本命であるとわかる力の強さ。
そして、慣れ親しんだ側近のMAG。
「シェムハザか...」
そのことに、なんの感想も持たなくなった事は、本当に神の領域に入ってしまったという事なのだろうか。
そんな事を、サカキという男だった者は考えていた。
「突破!」
流石に異界の中心部への侵入は想定されていたのか、かなりの防壁が存在した。だが、それは術でしかない。
この世全ての魔術的契約についてのハッキングの糸口になりうるソロモンの秘術、ソロモンの鍵をもってすれば結界と護国神の契約を一時的に無効化するくらいはわけないのだ。実際、ほかの襲撃ポイントの侵入にはこの術式を利用して遅延発動させて結界を破っている。
だがまぁ、この異界の結界はブロック構造であることから、別のブロックからの自動修復がある事は明白だ。
つまり、結界を解除しないとここから逃げ出す事は出来ない。
でなければ、世界そのものを相手にする羽目になる。それに勝てるのはライドウさんくらいだろう。
なので、まともには戦わないことにする。
「初っ端からぶっぱは基本!遅延術式展開、
無言で斬られるMAGの流れ。流石に通用はしなかった。マジかー。
「夷狄よ、滅べ」
「俺顔無しなんで見逃してくれたりは?」
「それすらも分からなくなったのが、今の護国神ですよ。
ソロモンにより拡張された知覚が、世界全体に存在するマサカドの力場が襲いかかってくる事を教えてくれる。
想定していた体の内側からパーンとするのはなかったので、一安心だ。正直対策できなかったので、それをされたら詰みなのだ。
「サマナー、安心するタイミングではないと思うのだけど」
「いや、俺にこの攻撃を防ぐ手段があると思うのか?」
「ほら、そこは得意の詐術で」
「無茶言うな。それに」
「このパターンなら、想定済みだっての」
そうして、7人のマサカド公が力場をコントロールして足止めをして、キョウジさんのワイルドハントの自爆で道を作る。
そして駆け出すのは予め召喚しておいたベル・デル。現在の面子の中では、直線に限っては最速なのはベル・デルなのだ。
だが、やはりその機動は直線でしかない。あっさりと迎撃のニ太刀を受けるが、契約により守られているという逸話を持つベル・デルは、特定のあるものによる攻撃以外通さない。
「ばら撒くだけばら撒かせて貰おうかぁ!万魔の、乱舞ゥ!」
そうして、5発の万能属性の爆発が護国神を襲う。
だがしかし、衝撃は殺しきれない。
2人のマサカドの力だけで、バットに当たった野球のボールのように弾き返された。
あのベル・デルの推力をものともしないとは、本当にどうかしている身体能力だ。
だが、ベル・デルは仕事を果たしてくれた。
撒き散らかされた万能属性のMAG。
それは、力場を喰らいかき消す性質を持っている。
「行くぞ、進めぇ!」
繋がりが断たれた事で、力場操作による攻撃にはタイムラグが生じるようになる。それならば、こちらの精鋭なら回避可能だ。
そうして、雪崩れ込む皆。
戦闘エリアに最初に到達したのはマサカド公。護国神の方は2人で、こちらのマサカド公は7人。数的優位はこちらにあった。
だが、7つの太刀はしごくあっさりと払われて、本体を含むマサカド公7人にかなりの痛手を与えた。
もっとも、マサカド公はそうなると読んでいたのか本体はしっかりとダメージ前に回復魔法を置いていたが。
続いて、入れ替わるように入ったのがキョウジさんのワイルドハント(掎角一陣ブースター付き)。単純出力ではマサカド公と互角にできる自爆ブースターを、惜しげも無く使ってみせるキョウジさんの胆力はなかなかのものだ。
そして、それを理解して自ら進んで名乗り出るワイルドハントの男らしさもちょっと尊敬している。
「嵐に、飲まれろ!」
「...無為」
そうして吹き飛ばされる嵐。まだ、護国神の数は2人。舐められている。侮られている。そして、その戦術眼は正しい。
このベル・デルが作り出した万能属性MAGが影響を残すのは約20秒。それも多く見積もってだ。
だから、どんなに無茶苦茶をしても、この突撃を成功させなくてはならない。
「オーダーに変更は無しだ!好きに暴れろ!
そうして、一つの魔法陣から連鎖して俺の手持ち残り全ての仲魔の分の召喚陣が発現する。
先んじて現れるのはクー・フーリンと藤太さん。次いでアテルイとメドゥーサ。その後はバックアップに特化した刑部姫と紫式部さん。
アテルイを中距離に対応できる青で召喚しているため、自然と2列縦隊の隊列が組み上がる。
そして、案の定とも言うべきか護国神は藤太さんに
それは、こちらにとってはマイナス点にしかならない。
この突撃に至っては藤太さんに気を取られてくれるのはむしろメリットなのだから。
だが、止まれるわけはない。最速で、最短で、一直線に。
「3点アナライズ完了!全属性耐性だ、無効じゃねぇ!力で押し通せ!」
「おうよ!
「任せい!」
「効くとは思えませんが、足止めくらいにはなるでしょう。
「どうせだ、持って行け。
俺、キョウジさん、真里亞の三人のCOMPをリンクさせる事で実現させた超速アナライズで弱点ではなく無効、吸収、反射だけに絞って解析を行った。結果はどれも通ると返ってきたが、この護国神に耐性がないなどとは考え辛い。耐性はあると見るべきだろう。
それに答えて前衛、中衛が同時に大技を放つ。刑部姫と紫式部さんは、まだチャージ中のようだ。このあたりは、戦闘向きの英雄かどうかの差だろう。だが、それは時間差攻撃になるので
放たれた槍と矢と雷と水。それらはそれぞれが相乗し合い爆発的な威力を作り上げたが、1人の護国神が刀を一振りしただけでそれはかき消され、もうひとりのマサカド公の目にも止まらぬ速さでの斬撃によって前衛は総崩れとなった。
クー・フーリンが身体を張って斬撃を一瞬遅らせていなかったら、壊滅していただろう。それほどの力が今の斬撃にはあった。
だが、その一瞬で前の皆は命を繋いだ。そうして、刑部姫と紫式部の術が完了する。
「行って私の式神達!ちっひーの集めた銃器モリモリでぇ!」
「魔性なれば、払うは我ら陰陽師。源氏物語・葵・物の怪」
ファントムの物資からかっぱらった銃器を式神の数の暴力により展開した刑部姫の技。ミリミリナイトフィーバーと現代にかぶれた本人が名付けた技である。ナイトはどこから来たのだし。
そして、紫式部さんの術は、彼女の書いた物語の呪術的顕現。葵さんとやらが呪いで殺されたことに対象を共感させて呪詛的ダメージを与える術だ。
どちらも、一級品の術だ。刑部姫が生み出した折紙兵の数はなんと千。それらの同時射撃ならば、ダメージは塵も積もれば山となるだろう。
そんな2人のトリッキーな同時攻撃には流石の護国神も面食らったのか、対応に迷いが生まれた。
どちらも異世界からの技術なのだから当然といえば当然だ。護国神が参照できるであろう顔無し達のデータベースには何もないのだろうから。
だが、それも一瞬。
護国神は千の折紙を5つの太刀で、払いのけ、もう一方の護国神が呪いを力だけで切り裂いた。
だが、これで最後衛にいた俺たちが戦闘エリアに辿り着けた。
残り時間は、約10秒。
「持ってけデオン、魔術破りだ!」
「任された、サマナー!」
トップスピードに乗ったデオンに向けて
そして、その隙をカバーするかのように放たれる真里亞の
「...些事」
そして護国神は全くそれに目もくれず、炎をその身に受けて魔術破りを手にしたデオンに向けて2人の護国神が同時に襲いかかる。
そこに張られたのは、シェムハザが仕込んだ
しかし、そこには
そうして、デオンの手から
それを見て、
瞬く間に護国神が7人で陣を組んで現れる。基点のディフェンスに3人、こちらに攻め込んでくるのが4人。
最悪だ。1人2人ならどうにか盗めると豪語していたが、3人もいるのならどうしようもない。
残り5秒、防衛をしている護国神の一体を排除できなければ勝機はない。
『サマナー、MAGを回せぇ!』
藤太さんからのその言葉を聞いて、瞬時にMAGの配分を一極集中させる。それは、博打にも等しい作戦。だが、勝機は存在する。
『シェムハザァ!』
何故なら、あの護国神は俵藤太の異次元の弓さばきを知らない。それならば、有効打になり得るのだ。
藤太さんが唾を一つ吐き、弓を構えて矢を放つ。
その矢は藤太さんの唾を受けて水龍の加護を受け、大百足を射殺した魔性殺しの絶殺技となる。
その名を、
その矢は4人の護国神をすり抜けて、クー・フーリンの投げた槍に当たり背後から護国神を強襲する。
その矢に込められた未知の力に警戒して回避したその矢を、シェムハザが
そうして跳ね返った先は、基点を防衛する3人の護国神の元。
水龍の加護を全開にしたその矢はより力強さを増して、三人の護国神を押し流そうとする。
だが、護国神はここでも冷静に対処してくる。分身の1人が身体を張って矢を受け止めその効果を減衰させ、もう1人がその矢を切り裂く。
それは、無限に分身を作れる護国神ならではの最善手。
そして、こちらにとっても最高の展開。護国神が1人消えた事で、監視網に一瞬抜けが生まれる。
そこに滑り込むのは、この街で最初に仲魔になった器用な奴、カプソである。
監視網が抜けていても、力場が万全でなくても、戦いの鍵になる要素を見落とすような事は誰もしなかった。
瞬時に放たれる一閃と、その一閃を身体で受け止めるベル・デル。
これで、完全にフリーな状態のカプソが、俺と契約のラインで繋がっている仲魔が結界の基点に到達した。
「これで、繋がった!ソロモンの鍵、遠隔起動!術式構築要素、認識、分解、再定義! アカウント情報マサカドをマサカドに置換!地の利を得たぞ!」
瞬間、暗転する意識。
情報のフィードバックだ。
通信網の断絶と、顔がなくなる現象。どちらも最悪だ。
だが、それ以上に最悪なのは人的被害の損失。人々は、顔無しというだけで信じる事をできなくなっている。それでは、成り立たない。
誰かを騙してた先に得られる利益もあれば、誰かを信じた先に得られる利益もあるのだから。
そんな気持ちから、ファントムソサエティを利用した侵略は開始した。
それだけは、間違いだったとは思わない。
繋がった事で理解してしまった悲しみを、今は思考の外に置いて護国神を見据える。
護国神も、こちらと繋がった事で何かを知ったようで、不思議な表情をしていた。
だが、それも一瞬だけ。
膨れ上がる二つのMAG。一つは、護国神のMAG。これまでセーブしていた力の全力を発揮してくるつもりのようだ。
もう一つは、マサカド公。四天王は無くとも、この裏帝都結界を掌握した事で万全の状態に近い力を取り戻している。
これで、ようやくのスタートライン。
勝率は高めに見積もって4割の、大怪獣決戦だ。
「...さぁ、お膳立てはしたぞ!やってみせろや帝都の守護者!」
「上々!我が身に宿る護国の祈りよ、今こそ力に!」
「...全力を出すしかないな...」
「「戦神形態!」」
膨れ上がっていたMAGが、収束して鎧具足へと変化する。
これで力場を使った攻撃はなくなるだろうが、それだけだ。
ただの攻撃だけでこちらのマサカド公以外の全ての札を殺し得る絶大な力を、護国神は手に入れた。その力は戦神形態と化したマサカド公を上回っている。
その足りない力の差を埋める手段は、ひとつだけ。
みんなで頑張る、それだけである。
七人に共に分かれたマサカド公と護国神が切り結ぶ。数の差は互角、技量は若干マサカド公が有利、出力では完全敗北。
だが、上回っている僅かな技量でマサカド公は護国神の攻撃を耐えていた。
その剣戟は嵐のようで、援護に入ろうとした藤太さんの矢すら着弾することなく刀のぶつかる衝撃で逸れた。
こちらからできる援護は、現状
そんな戦いが、1分ほど続いた。
「...ええ、千尋さん。行けます。
「了解、じゃあぶちかますか!この戦いが大怪獣だけのものじゃないって事を教えてやろう!」
ラインを通じてマサカド公にある術式を与える。それは、火炎ガードキルと同じ要領で作り上げた術式。未完成のため、完全にアナライズが完了している相手の術にしか効果はないが、今回のケースについては問題はない。
「灰塵と帰せ、
そうして、戦闘エリア全てを白く輝く瀑布が覆う。
その炎に対して護国神は防御行動を取ったが、マサカド公は躊躇いもせずに突っ込んでいった。
そうして炎は護国神を襲い、
先程マサカド公にかけた術式は、火炎ドレイン。力場に干渉して火炎吸収力場を作り上げるというものだ。
そうして、吸収されたMAGはマサカド公の力になり、一瞬だけ力のバランスを崩す。これが、たった一度のトリックプレイだ。
そうして、7人のマサカド公が俺のMAGを吸い上げてあの絶技を放つ。死亡遊戯、そう公が呼んでいた技だ。
その7撃は護国神を捉え、しかしすんでのところで差し込まれた刀によって致命傷だけは回避された。
「「畳み掛けろぉ!」」
キョウジさんと俺の声が重なる。
そうして走り出す全ての仲魔達。陳宮さんからのブースターを付けたワイルドハント達が、最速で突っ込んで護国神と共に自爆する。
マサカド公の一撃で大ダメージを負っていたその分身は、ワイルドハントの自爆に耐えられずに消滅した。これで、残り4人。
だが、そのインターバルはマサカド公のものよりも早いと考えるべきであり、つまり残り4人の中から本体を確実に仕留めるしかない。
残りの、攻撃の中で。
クー・フーリンがクルージーンを抜いて、自らの崩壊を顧みることなく輝きの斬撃を放つ。しかし、ダメージはあれど立て直した護国神は光の斬撃に1人の分身による迎撃で迎え撃ち、光の斬撃をかき消した。
マサカド公の見せた、死亡遊戯を用いて。
それがダメージのある身体では耐えられなかったのか、分身は崩れて落ちた。この総攻撃で仕留められなかった場合はもう完全に奇跡に賭けるしかないくらいのクソゲーだが、今の動きで本体に当たりをつけた。
クルージーンの光の斬撃から最も離れたあの1人が、本体だ。
残り3人。そして、本体までのガードは固い。だが、しかし。
こちらには、心があるもの全てを一時無力化できる切り札がある。
「デオン!」
「わかっているよ。...この剣は友のため、咲き誇れ、
デオンの剣舞が、マサカド公の目に入る。それは、見るもの全てを魅了する技巧の極致。その美しさは、ここが戦場であることすら忘れさせてしまう。これが、白百合の騎士の絶技だ。
そうして止まったところに、緑の遠距離モードになったアテルイの矢と、藤太さんの矢が同時に放たれる。その矢は最前列にいる護国神を狙ったように見せかけたが、その二つの矢がぶつかる事で風を纏ったアテルイの矢が藤太さんの矢を吹き飛ばす。
そして、そこに二の矢を放つ藤太さん。二の矢が弾かれた矢をさらに弾いて、本体の護国神のこめかみに向かう必殺の魔弾へと変えて見せた。
その魔弾は、正確に護国神のこめかみを貫いてその命を絶命させた。
これで、勝ちだと思ったその時に、一瞬繋がったラインから叫びが聞こえて来た。それを無視するのが正しいはずなのに、どうしてか耳を傾けてしまった。
顔無しの悪魔化現象は知っていたが、自分がそうなるとは思っていなかった。だが、自意識は保てている。これならば、ただの力として割り切れるだろう。
最も、平将門公の力など畏れ多くて面倒ごとの匂いしかしないが。ファントムソサエティはあくまで営利組織なのだ。
だが、そうして悪魔になってから声が聞こえるようになって来た。それは、怨嗟の声。生まれる寸前で止められている肉塊の、叫び。
心はさして強くなかった自分には、それに引っ張られるのに大した時間はかからなかった。
自分たちを産んでくれと、そんな声が聞こえるのだ。
そうして、自分は
そうして、その声の主は自分に取り付き、勝手に中に入り込み、いつしか自分が声を出す者になっていた。
声にならない、叫びの声を。
だが、人間としてのプライドはあったのだろう。この身ではまともな運営ができないと、古参のシェムハザに全権を任せ、自分はひたすらに衝動に抗う戦いを始めた。
だが、これまでの戦いで食った者たち、出産器から取り込んだ者たち、彼らの声が鳴り止む事はなかった。
だから、国を作った。ただ、自分たちが穏やかに暮らせるだけの国を。
その国に、1人しか住人がいなかったとしても。
「サマナー!」
意識が戻る。すると、目の前にはかつて護国神の分身だったものが、護国神の死体と混ざり合い、邪悪なものになるように見えた。
その正体を、俺は知っている。人の魂のソースコードの中に存在する最悪の悪魔。その名をニャルラトホテプ。
「サマナー、真里亞の勾玉からの炎は通じなかった。異常事態だよ」
「...撤退はしない。ここで、この1人だけの国を終わらせる」
何が心が弱いだ。こんなものを心の中に抱えておきながら、その衝動に負けないで立ち続けていたあなたは、立派な護国神だ。
誰があなたを侮辱しようと、俺だけは絶対に忘れない。顔無しでありながら、強い心を持っていたあなたのことを。
「マサカド!藤太!やるぞ!」
「...不遜な輩よな!」
「それだけ覚悟が座ったという事よ!こうなった男は強いぞ!」
「わかっておる!貴様も俺もそうだった!」
そうして、ラインを通じて二つの魂を俺の魂の深いところに接続する。
ペルソナに目覚めた事で増えた俺のキャパシティなら、この力を扱い切れる。
「秘術、花咲式憑依術!スピリットサイド!俵藤太!」
「おうさ!」
「デモニックサイド!平将門!」
「行くぞ、サマナー!」
二つの力が分解されて、俺を包む鎧となる。二つの心が繋がって、俺の心を侵食する。そしてその侵食された心から、勇気が湧いてくる。
これが、繋がる力。心を完全に食われても仕方ないような術なのに、どうしてか2人はそうしようとしない。全く、人が良い。
だから、その信頼に応えるために、強い自分を顕現させる。
力は2人が与えてくれる。故に、強い心で、立ち上がる。
「クロス、オーバー!」
そうして、この身は魔人となる。ただ一太刀、サカキという男を救う為に刀を振るう男に。
『霊剣を!』
「わかってる!マサカド公、技を借ります!」
『やってみせろ!手解きはしてやる!」
そうして、絶殺の斬撃で膨れ上がった邪悪を切り捨てる。
『『「死亡遊戯」』』
そうして、繋がったラインから『ありがとう』という声が聞こえると同時に、異界が崩壊していく。
これで、護国神は終わった。
帝都は、とりあえず平和になったのだ。そこに住む人はもうほとんど居ないだろうが。
その事に安堵して、憑依術式を解除する。
「あー、死ぬかと思った」
「サマナーよ、第一声がそれなのか」
どこか締まらないままに、激戦は終わったのだ。
確認作業せずに投げたので、誤字脱字か愉快なことになってると思います。見つけて、『許せん!』と言う方は誤字修正フォームからよろしくお願いします。
週間連載やってるこの作品の文字数は、どれくらいが望まれているのかのアンケート。尚、作者の力量を超える文字数の場合は頑張るだけ頑張りほしますが、まぁ無理でしょうねー。
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4000字〜6000字のお手軽コース
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平均8000字の中盛りコース
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平均1万2千文字の現在目指してたコース
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平均1万5千文字以上の特盛コース