ニコ動で555見てたらスパイダーマングレイとかいう電波がやってきたのです。見た目カッパじゃねぇか!ってツッコまれる系の面白怪人枠主人公の短編です。
ニコ動で555が終わったら投稿しようかなーとか思う程度のことでした。まだ頭の中でしかないけれどネ!
書けば書くほど邪魔をしてくる他の作品の発想よ。きついですねー。
「ジャンヌさん、ちーっす」
「サマナー、軽すぎるよそれは」
「かまいません、おはようございます、花咲さん、デオンさん」
ゆるりと会話をしつつ、今日の任務の話をする。
どうにも、査問会に呼ばれたようだ。うわめんどくせぇ。
「というわけで、今日は内地へとご案内します。詳しくは、その時に」
「...あんま大勢に話すつもりはないんですけどね」
「それでもです。嘘偽りを許してくれるほど、あの方々は甘くはありませんから」
「お偉いさんなんですか?」
「大天使ウリエル様、この街を統治する大天使のお一人です」
ウリエルとは、随分なビッグネームが来たものだ。メシア教の教典に出ている高位天使の名前だったか?それにしても...
「大天使とか、凄えのが来たな」
「サマナー、天使と大天使とはどう違うんだい?」
「まぁ、俺も見たことはないから詳しくは言えないんだけど、MAGを溜め込んだ天使の
「...高位の天使という話では?」
「いや、この世界クソ雑魚ナメクジなのに肩書きだけは立派にカテゴライズされてる奴多いから。...まぁ、この街を守ってる方が弱いとは思えないけどさ」
そんな事を考えながら内地へのセキュリティゲートを通る。内地は大天使たちの結界が張られており、そうたやすく侵入することはできないのだ。外に出る分には簡単なようだが。
「...驚いた、私を通すのだね」
「確かに、造魔といえど悪魔なり!ってノリで止められるかなーとは思ってた」
「...この南門は、サマナーの方が多用する門ですから」
「あ、隔離されてんすね」
「サマナー、彼女が言いあぐんでいる事をさらっと口にするのはどうかと思うよ」
「...構いません、事実ですから」
「大丈夫なのかソレ?そういう反乱分子って一まとめにすると徒党を組みそうなもんだが」
「それは、感じれば分かりますよ」
瞬間、ソロモンの知覚に圧倒的な力がやってくる。
ただ感じるだけで吐きそうになる。格でいえばサマエルやマサカド公と同等、しかし溜め込んでいるMAGの量でその力は二柱を超えている。そんな化け物が4体。
そして、それより格が上なのが一体。とんでもない化け物が混ざってやがる。
「...コイツは、反抗する気がなくなりますね」
「...ええ、天使様達の力は強大ですから」
「...サマナー、カナタは大丈夫だろうか?こんな力を前にして、止まっていられるとは思えないのだが」
「...ジャンヌさん、所長処刑とかされてないですよね?」
「はい、そのような蛮行はなされていませんが」
デオンと目を合わせて同じ事を思う。
コレは、嵐の前の静けさだと。なんで身内に時限爆弾を抱えているのだ俺たちは。
そう考えていると、プレッシャーには少し慣れてきた。
この分なら、まぁ大丈夫か?
と思ったが、これからこのプレッシャーの前に出ていかなくてはならないのだから、気が滅入るばかりだ。
「やぁ、花咲千尋。君のことは縁から聞いているよ」
「...メシアのやり方には詳しくないのですが、片膝をついた方がよろしいのでしょうか、ウリエル様」
「構わないよ。君は友人の友人だからね」
「では、縁とウリエル様の縁に感謝を」
「ああ、そうしてくれ」
とりあえず、自分の立ち位置を確認するためのジャブは成功だ。即座に首を取られるような立ち位置ではないと確認できた。
「では、多忙なウリエル様に代わり話を切り出させて頂きます。今日私が呼ばれたのは、先日内地から現れた白い鬼型の悪魔のことについてですね?」
「話が早いね。では、単刀直入に君に聞こう。悪魔とチューニングしてしまった彼女、水無瀬キョウカの安否についてだ」
「はい、戦闘中に白い鬼がMAG枯渇による暴走状態だと判断した為、背後関係について聞き出す為にMAGを与えました。現在はしっかりと食事をした事で容態は落ち着いています。ですが、私はメシアの街に来てから日が浅く、殺すにしろ生かすにしろまずは上官であるジャンヌ様の判断を仰ぐべきだと考え、仲魔を使って現在も監視状態のままにしています」
「では、その場所は?」
「街の南西区域です。警戒エリア近くのビルの一室に結界を張って隠しています」
「なるほど、強かだね。けど、それだけかい?」
「...キョウカさんを救出したのは自分たちです。なので損得以外に、生きていて欲しいと願ったのは否定しません」
「うん、その言葉に全く嘘はない。良い子だよ君は。力に萎縮したわけでもなく、自然体で正直に話している。やはり、聖女の近くにはこういう人が集まるのかな?...あるいは、彼女に影響されたか...」
「自分の事は自分ではなかなかにわからないものです。ご容赦を」
「ああ、すまない。考えが口に出ていた。悪い癖だね。それでは、君に尋ねるのだけれど...先日外縁部を警備している騎士を殺した白い鬼について何か心当たりはあるかい?」
「...いえ、全く。犯行が行われたと言われている午前3時頃、キョウカさんは就寝しており、その姿はしっかり仲魔を通じて監視しています。なので私に言える事といえば、騎士様を殺したのはキョウカさんではないという事だけです」
「わかった、ありがとう。...では、今日はこれで。君への監視はまだ解けないけれど、君は信用に足る人物であるという事は理解できた。是非実績を積んでこの街の力になって欲しい」
「はい、失礼しました」
そう言ってウリエルの降臨の間から逃れる。
やべー、緊張したー。
なんで巧妙に嘘暴きの術式が隠されているかなー!お陰で話すつもりもなかったキョウカの居場所まで話してしまった。やめろよ暗殺とか怖いんだよ。
「サマナー、お疲れ様」
「ウリエル様はなんと?」
「頑張れってさ。とりあえず嫌に目をつけられる事はなかったよ、多分」
「では、さっさと任務を済ませてしまおう。キョウカが心配だ」
「ですね。花咲さん、今日もよろしくお願いします」
そんなわけで、今日も今日とて警戒任務。悪魔のサーチアンドデストロイだ。
「所で花咲さん、天馬を従えていたとは初耳でしたが?」
「手札は極力隠すんですよサマナーは。まぁ、見られた以上これからは使いますけど」
「そうしてください。...実の所、天馬に乗って空を駆けるというのは少し憧れているのです」
「ジャンヌさんって意外とノリで生きてますよねー」
「...否定はできませんね」
「サマナー、その方は誠の聖女様だ。あまり舐めていると不興を買うことになるよ?主に私の」
「いや、聖女ってもジャンヌさんはジャンヌさんだろ。そこに色眼鏡付ける気は今のところないぞ」
「それは嬉しいですね。デオンさんももっと気安く接してくれてもいいのですよ?」
「...努力します」
なんて会話をしながらも、索敵と奇襲を繰り返してこの警戒区域の悪魔を掃討していく。
今回のエリアは、どうにも荒っぽい連中が少ない。悪い事ではないが、少し気がかりだ。
「ジャンヌさん、次の悪魔グループが北西に2キロ。ですが、そこでも奇襲されなかったら少し悪魔と会話がしたいです」
「花咲さん、それは何のためにですか?」
「ここいらの悪魔が穏便すぎます。なので、情報を抜き取ってその原因を明らかにしておいた方が良いかと。穏健派の悪魔が頭を張っているのなら、掃討より交渉を主にした方が結果的に得ですから」
「花咲さん、悪魔に穏健派などいません」
「それならそれですよ。指令通り殺して終わりです」
そうして、ゆっくりと進む。
警戒していた奇襲はなく、あっさりと悪魔達の前に出られてしまった。...どんな理由だ?
「あー、俺は花咲千尋、サマナーだ。お前たち、何やってんだ?」
「サマナーかー...ってサマナー⁉︎マジで!皆、サマナーだよ!」
「フォッフォッフォ、さまなー殿よ、仲魔は要らぬかね?」
「超好意的⁉︎どういう目論見だお前ら⁉︎」
「目論見なんてないよー!」
「そうじゃそうじゃ!我らは再びサマナーに仕える事でまた食事をしたいだけなのじゃ!」
「メシ目的か!いやわからんでもないけどさ!」
そんなぐだぐだーな空気をしているのは巨大な象とハイピクシー、そして妖獣チャグリンだ。
そして、彼らの想いは後ろからメシアン特有の悪魔殺すべしなオーラを放つジャンヌさんには通じないのだろう。悲しいが、初対面の悪魔よりも上官の好感度を稼ぐことは当然なのだ。
「んで、なんで人を襲わない?この辺りは警戒区域なってたから、悪魔は好戦的だったはずなんだが」
「そいつは単純な事よ。ここいらの主が変わったのだ。かつて護国に力を注いでいた四鬼よ」
「キンキとフウキとスイキとオンギョウキだっけ?」
「...サマナーに使役されているのか?」
「はぐれのはずだよー」
「...なら、倒せるか?でもやりあいたくないなー畜生、絶対強い奴だ」
「では、話は十分に聞けましたか?」
「...ふむ、この方はメシアの聖女か。戦う気はないのだが、引いてはくれぬか?」
「悪魔は、敵です」
「仕方ないねー。じゃあ、せーとーぼーえいだよね!」
「違法防衛でも咎められねえだろお前らは!サモン、クー・フーリン!」
「させぬわ!」
象の突撃をジャンヌさんが受け止め、チャグリンの衝撃魔法をデオンが斬り捨てる。そして、ハイピクシーの電撃魔法は現れたクー・フーリンがルーンの加護を用いて受け止める。
そして、返す刀で打ちのめされる悪魔達。デオンとクー・フーリンはわかっているから良いのだが、あの巨大な象をサマーソルトキックで宙に浮かしそこから連撃を決めるとかちょっとこの聖女様パワフルすぎない?
「終わりましたね。では、四鬼の討伐といきましょうか」
「...まぁ、上官の指示には従いますけどね。監視対象ですし。けど、殺せるかどうかは微妙ですよ?ハイエストクラスとやり合うには火力が足りません。ウチの連中なりメシアの使い手なりと合流してから事に当たりたいです」
「この戦いに不安は感じません。私の啓示の力、ご存知でしょう?」
「伏せているカードを見せろと」
「はい」
「...仕方ないか」
こうも真っ直ぐに見られては仕方がない。嘘はこちらの首を締めるだけだ。戦力を遊ばせておくことは許さないという事なのだろう。
「...こっちが有利になるように最大限の下準備はする。それくらいは許してくれよ?」
「はい」
「じゃあ、まずは情報収集からだ」
そうして、ソロモンの知覚範囲を拡大する術式により四鬼の居座る住処を割り出し、それ以外の所に住んでいる強力な悪魔を先に殺しておく。これで、派手にやっても予想外の増援が現れることはないだろう。
「じゃ、観測ドローンからの情報な。連中が住んでいるのは三階建てのショッピングモール。防御系の結界を張ってることと単純にデカイことから、建物ごと破壊するってのは難しいな。結界は決められた門以外から入った奴の力を下げるタイプだ。内部情報はわからないが、多分連中は四隅に散ってるだろうな」
「手慣れていますね」
「無駄に鉄火場慣れしてるからな」
「...ふむ、私の考えを言わせてもらうならば、四鬼に連携を取らせないために4組それぞれを押しとどめる手が必要だと思うよ」
「戦力の分散は尺だが、まぁそれしかないわな。ジャンヌさん、単独で一柱行けますか?」
「ええ、やってみせます」
「なら、アテルイで一つ、ベル・デルで一つ、残り全員で一つで全部ですね」
「サマナー、良いのかい?」
「ここでケチったらジャンヌさん死ぬだろ。それが巡って俺の評価は敵対勢力になって、メシアの街総力で追い立てられる事になる。切り時だろ」
そんな後悔を噛み潰したような言葉を口にしながら、多分コレがジャンヌさんを監視にした理由なのだなーと感じた。
ジャンヌさんは、ヤジマの仲魔だ。だが、奴のスタンスと反してその信仰は固い。悪魔を命と認めないというのはその為だろう。この場合の悪魔とは、一般的イメージにおける悪魔とメシア教以外の神の事を指すようなのだが。
つまり、どんなに有益だしても悪魔なら殺す。そのために動く狂犬なのだ。
全くもって謀殺したい相手である。監視対象という縛りさえなければ二度目以降の任務でやっていた自信はある。まぁ、人間としてはとても好みな性格をしているのだが。こればかりは感性の問題だからなー。同じアウタースピリッツでもデオンとは違い、悪魔を敵としてしか見ていなかったのだろう。
だからこそ、上の大天使からは良く使われる。
「...なんだかなー」
なんとなく、ジャンヌさんには似合わない気がするのだ。そういうのは。印象でしかないが。
「どうかしましたか?花咲さん」
「なんでもないですよ、ジャンヌさん。じゃあ、正面から行きましょう」
そうしてショッピングモールの正面口から侵入する。
そこは、ちょっとした悪魔の楽園だった。
この異変から後には見ないような弱い悪魔が集まっている。種族に関係なく手を取り合い、笑い合っている。
...流石に、こんなものを見せられたのなら考えを変えざるを得ない。
これは、たかが主の意思とやらのために犯していいものじゃない。
そんな俺を見て、デオンは苦笑していた。どうにもコイツはこうなる事を半ば予想していたようだ。全くサマナーの事をよくわかっている奴だよ。
「ジャンヌさん、やめにしませんか?」
「どうしてですか?」
「この光景を見ても変わらないっすか...」
「...弱い悪魔が群れているだけですよ」
「弱い悪魔が誰かを傷つける事なく暮らしているんですよ」
「これって、結構な奇跡なんですよ」
「だから、悪魔を見逃せと?」
「はい」
「...やはりあなたは異教徒でしたか」
「まぁ、信じる神を踏みにじるのがサマナーですから」
「ならば、どうしますか?私を」
「説得します。それしか取れる道はないみたいですし」
「問答は無用...と切り捨てたい所ですが、時間をかけすぎたようです」
やってくるのは、四鬼全て。いずれも若干MAG不足気味だが、ハイエストクラスの馬鹿みたいな力は感じられる。
「貴公ら、何者ぞ」
「偵察に来たメシアンの雇われサマナーと、殲滅する気満々の聖女様です。自分的には交渉で終わらせたいなーとか思ってたりするんですがね」
「メシアンか、ならば去れ。貴公らに見せるものは無い」
「私たちと敵対すると?」
「敵対はするつもりはない。だが、攻めてくるのなら容赦はせぬ」
「だってさ。とりあえず今日は引き下がりません?」
「悪魔達を見逃すことは、生き延びたソレが誰かを傷つけることに繋がります。殺すしかありません」
「なら、鬼さん。...のうち、一番偉いのって黒いあなたで良いんですか?」
「...オンギョウキだ」
「オンギョウキさん、一筆契約をお願いしますよ。襲われた場合以外において、人を殺さないと」
「構わぬ。それでそちらが矛を収めるのならな」
「悪魔との契約が、信用に足るものなのですか?」
「悪魔は情報生命体です。肉のある人間よりもよっぽど信用できますよ契約に関しては」
その言葉に、少し悩んだジャンヌさんは一先ず引き下がる事を決めたようだ。
四鬼に囲まれているのに襲撃されていない事から今すぐに殺さなくても問題はないと判断できる程度には戦いに慣れているのだろう。
「...わかりました。ここは一先ず下がりましょう。ですが、この区域で悪魔が人を襲ったのなら、私たちは躊躇いません」
「...エリア区分ははここからここまでです。カバーできます?」
「...少々厳しいな。北側は好戦的な西洋者の領域と接している。人を襲うとは思わぬが、奴は天使とそれに操られている事を分からぬ弱き者を毛嫌いしておる。故に、メシアンの者が襲われることはあるかもしれぬ」
「じゃあ、そいつの範囲からちょっと離れて、ここからここまででエリアは大丈夫です?」
「ああ、問題はないな。ではサマナーよ、契約を」
「はい、契約者が俺だと何かと文句言われそうなんで、ジャンヌさん、MAGを込めたインクでこの契約書にサインお願いします」
「...サイン、ですか」
「サマナー、彼女は文字に不得手なのだろうよ。現界直後の私もそうだった。代筆はできないのかい?」
「できるっちゃできるが...ジャンヌさん、勉強はしなかったんですか?」
「生憎と、そんな時間はありませんでしたから」
「きっついなーこの世界」
そんなこんなありながら、ジャンヌさんと四鬼の睨み合いの中で契約書にサインをさせる。きちんと両者に内容を説明してのものだった為少々手間がかかったが、その程度は必要経費だ。
「じゃあ、ついでに情報収集いいですか?報酬は食料で」
「何についてだ?」
「白い鬼のような悪魔についてです。最近メシアの西側警備騎士隊長が殺された事件がありまして、その下手人がそいつなんですよ」
「ふむ、白い鬼か...鬼とは限らぬのなら一人心当たりがある」
「誰です?」
「先程言った北側の西洋者と行動を共にしている者だ。人としての名前は知らぬが、悪魔としての名はヴァルナ」
「...なるほど、デビルシフターですか。そいつは情報感謝です」
「構わぬ、話がわかる人は稀だ」
「じゃあ、報酬です。お米だぁ!
「「「何、米と⁉︎」」」
「キンキ、フウキ、スイキ、落ち着かぬか!...皆に分けるのだ、食い明かせるほどの量にはならぬぞ...」
「...魔石とかストーンとかと交換で、多少は融通できますよ?」
「ならばこの生玉を渡そう。これでもう1俵どうだ」
「...よし、OKです。ただ、味は美味しいってレベルじゃないので依存症には注意してくださいね」
「ほう、それは楽しみだ」
そんなわけでちょっと得したこの取引。無尽俵はやはり凄まじいものだ。
「じゃあ、俺たちはこれで」
「ああ、また来るが良い、花咲千尋」
そんなわけで、なんだか納得のいっていない表情のジャンヌさんを連れてメシアの街への帰路に着く。
これまで稼いだ好感度は白紙、監視は延長だろうなーと思う次第である。
「んで、どうしますか?異端コロスベシ!な空気なら逃げるしかないですけれど」
「...評価を改める必要がありますが、それでも殺しはしません。結果的にヴァルナという悪魔の情報か得られたのは事実ですから」
「そいつは良かった」
そうしていると、殺気を感じた。
「デオン!」
「わかってる!」
獣のように飛びかかってくるその白い鬼。
違うタイプの強さを感じる。コイツが件の魔人か!
「ペルソナ、ソロモン!
「これが、無敵の悪魔ッ!」
「さぁ、やってやろうじゃねぇか!」
デオンが悪魔の2本のブレードを切り結んでいる所にベル・デルを援護に行かせる。あの悪魔、パワーはデオンより強い。
そんな奴とパワー勝負などやったられるか。ネタが割れなければ倒れないマンであるベル・デルを壁にして、ジャンヌさんとデオンを囲める位置に配置させる。
「ウアァァアアアア!」
だが、そう容易くはいかないのが魔人だ。放たれるのは氷結魔法。おそらく高位クラス。それをノーチャージで放つとか近接格闘タイプの癖に随分とやる!
「...流石にジャマーはあるか。力場を調べる!観察を欠かさず、けど抜かせるな!」
そう言って、魔法陣展開代行プログラムに4種の基本属性ストーンを乗せる。
「アギラオストーン!ブフーラストーン!ジオンガストーン!ガルーラストーン!四連射!」
とか言いながら速度と軌道を調節して同時に着弾する様にする。
悪魔は回避に動こうとしたが、そこをすかさずデオンが押し留める。
そうして着弾する4発、電撃、疾風は力場に阻まれた。耐性か、強力なノーマル力場。氷結は反射されあらぬ方向に向かって行き、そして火炎は力場を抜けて着弾した。ダメージは小さいだろうが、攻略法は見えた。
「ベル・デル、下がって援護主体に!サモン、アテルイ!」
「...任せろ」
そうしてベル・デルが抜けた穴に赤のアテルイが入り、その拳に火炎を纏わせて連打を叩き込む。
対してヴァルナは、ブレードに氷結を纏わせてその連打を捌いてその大口を開ける
そして、その口から放たれるのはアイスブレス。氷結属性を弱点に持つアテルイはまともに受けると死ぬかもしれない。
ので、そのアイスブレスに向けて左手の指先から泥を放つ。MAGを喰らう混沌の泥は、そのアイスブレスを弱らせて、どうせ受けたら死ぬのだからと開き直って次の一撃の準備をしているアテルイを守る。あいつもなかなかに俺を信じてくれてるよなー。なんと仲魔に恵まれたものだろうか。
そして、弱まったアイスブレスでは燃え上がるアテルイを殺すことは出来ず、赤のアテルイの必殺がヴァルナを襲う。
「火炎纏・鬼神楽」
その蹴りはヴァルナを吹き飛ばし、その腹に火炎エネルギーを直に叩き込んだ。これならばまぁ死ぬだろう。
だが、そう一筋縄ではいかなかったようだ。
「サマナー、浅い!後ろに飛ばれた!」
「ジャンヌさん、デオン、追撃を!ベル・デル!術式コントロールよこせ!」
そうして駆け出す二人と、ホーミング万魔の乱舞を用意する俺とベル・デル。
だが、その攻撃は横から入ってきた神速の男に全て弾き飛ばされた。
「おいおいサーフ、お前馬鹿をするならちゃんと俺に言ってからにしろって」
「...すまない、聖女を前にして欲が出たようだ。助かった」
「構わねぇさ。仲間だろ」
「感謝する」
そう言って宝玉を砕くヴァルナ。人としての名前はサーフらしいが、まぁ大した情報ではないだろう。
さて、目の前の相手を見る。緑の髪を逆立たせた槍使い。間違いなくアウタースピリッツだ。感じる感覚が違う。
「さて、こっから俺が奴らに傀儡にされてる聖女様をぶっ殺すってのでも良いんだが、そっちのサマナーがちと面倒そうだ。お前、俺が動いたらサーフを狙うつもりだろ?」
「...なんのことやら」
「隠すなって、そういう奴とやり合ってたんで分かるんだよ。ここで無茶して仲間を殺すのは長期的に見て不利になる。引かせてもらうぜ」
「逃すとでもお思いですか?」
「俺に追いつけるならな!」
そうしてヴァルナを抱えて逃げる男。その速さは尋常ではなく、ペガサスの最速でも追いつけないだろう。
だが、それだけだ。
「アテルイ、緑!」
「わかっている!...穿て!」
緑のアテルイの放つ弓が、緑髪の男を襲う。
しかし、その一撃はしっかりと体を捉えたにも関わらずダメージを与えることはなかった。
「防がれたか...」
「いや、受けられた。おそらく当たっても傷を負わない頑丈な部分があるのだろう。一瞬矢を視認してそのまま無視していた」
「つまり奴を殺すには謎解き必須だと。しんどいなオイ」
なんとも面倒なのが相手にいたものだ。いや、ベル・デルを使いまくってる俺が言える事ではないのだけれども。
「では、戻りましょうか」
「あ、それなら俺は寄り道して良いですか?」
「どちらに?」
「キョウカの所です。様子見たいのと、置いてきた仲魔にMAGを与えたいので」
「わかりました。同行しましょう」
監視重いなー。まぁ積み上げた信頼をぶっ飛ばしたので仕方ないのだけれど。
そうして、寄り道をするという伝言を門番さんに任せてキョウカの元へいく。
だが、どうにも気配がピリピリしている。
『メドゥーサ、様子はどうだ?』
『...どうですかね?カプソとキョウカは元気にゲームをしていますが』
『周囲に変化は?』
『ありません。警戒は必要ですか?』
『念のため頼む。外れてれば笑ってくれ』
そうして、早足でキョウカのいるビルへと赴く。
すると、上空に召喚魔法陣が見えた。
それは、天使の大量召喚だった。
「ジャンヌさん、このエリアの殲滅報告はしましたよね」
「はい、であればこの天使様方はいったい何のために...」
「なんにせよ、俺はキョウカの元に行きます。ジャンヌさんはサマナーの元に行って説明を聞いてください。場所は街よりのあのビルの屋上です」
「花咲さんへの連絡はどのように?」
「サモン、カラドリウス。伝令役はコイツに」
「...まさか、神鳥カラドリウス⁉︎」
「知ってるのか?」
「はい、まさか貴方ほどの存在がいらっしゃるとは」
「...お前、そんな偉い奴だったの?」
「んー、あんま言いたくない過去って奴さ」
「まぁなんでも良いや。じゃあよろしく頼むな」
そうしてペガサスを呼び、天使の群れより先んじてキョウカの元へと向かう。
案の定というべきか、後方から破魔魔法がバンバン飛んでくる。やめろ、ペルソナを宿した事で俺には破魔耐性がなくなったのだ。つまり当たるとワンチャン死ぬのである。こえーよオイ。
だが、幸いなことにペガサスの高速機動を捉えられるようなスナイパーもラッキーヒットのワンチャンマンもいなかったので生きていられている。
「メドゥーサ、状況は!」
「私たちはまだ無事です。ですが、いつでも逃走できるように準備はしていました。サマナー、指示を」
「じゃ、逃げるぞ。何にしてもここいらは危険だ。ちょうど良い感じの悪魔が居る所見つけたから、そっちに移るぞ」
そうしてメドゥーサとカプソを
まぁ、デオンはペガサスに乗り切れなかったのでバイクなのだが。
下で華麗にバイクをぶん回しているデオンはちょっと爽快だ。
「今、心底ペガサスさんに乗ってて良かったって思ってるっす。デオンさんの後ろとかぜったい振り落とされるっすよ」
「でもあいつ多分遊んでるぞ。こっちがペガサスの速度を全力出せないからな」
「え、何でっすか?」
「ペガサスに耐えられる手綱がないから俺たちが放り出される。デオンはなんか乗馬技術でなんとかしてるけど」
「デオンさん凄いっすねー」
とはいえ、それで大丈夫なのは先ほどもう天使の群れを振り切ったからである。
どうにも、敵サマナーの召喚悪魔に速いのは居なかったようだ。
『サマナー、報告さー』
『どうした?』
『キョウカちゃんを捕らえろって命令みたいなのさ。殺せとかじゃないけれど、手段は問わない感じ』
『けど、どうにもメシアの指示が複雑に絡み合ってるみたいで、ジャンヌさんを見て慌ててたのさ。そんで結局逃走しようとして、とっ捕まったさ』
『キョウカを拐えと指示したのは?』
『技術部統括の、ラファエルだってさ』
俺たちが報告をしたのはウリエル。奴は警備統括だ。つまり、どっかから情報が漏れたのか、あるいは繋がっているのかだろう。
だが、それならば俺たちが街に戻ってから襲撃部隊を用意するのが鉄則だろう。現に俺たちは間に合ってしまっている。ウリエルがジャンヌさんの上司であるのだから、そこを違えることはないだろう。
つまり、四大天使の内輪揉めか?
「考えても仕方ないな。次の潜伏先候補に交渉行ってくる。キョウカはペガサスと一緒に待機しててくれ」
「わかったっすけど、どうして私そんな天使のゴタゴタに巻き込まれてるんすか?」
「さぁな?案外お前の堕天使の羽のアートマが関係してるんじゃないか?」
「...このお腹すくだけの印がっすか...」
「そういや、飯は大丈夫か?」
「まぁ、お腹は空いてます」
「じゃあホイ。ついでに食っとけ。今日の配給分だ」
「けど、それだと千尋さんなんも食べてないんじゃないっすか?」
「安心しろ、今日は圧力かけてしっかり骨まで火を通した煮魚をおかずにご飯大盛り行ったから」
「卑怯っすよ!こっちがこの変なのしか食べられなくなったってのに!」
「なんとでも言え!今日はカレイの気分だったんだよ!」
そんなぐだぐだーな会話を後に、再びショッピングモールへと入る。
再度の侵入に警戒したのか、フウキがどこかに居るのを感じる。だが、隠形をしているのかしっかりと感知はできない。こういうタイプの鬼かー。
「フウキ、オンギョウキを呼んでくれ。あるいは俺が行くのでも良いけど」
「...目的はなんだ?」
「この区域で匿いたい奴がいる。だからオンギョウキに話を通したい」
「それは、外にいる女か?」
「ああ。厄介事は御免か?」
「いや、俺は受け入れることには賛成だ。あの天馬との接し方から、悪い者ではないのだろうとはわかる。天馬はそういう者を嫌うからな」
「あー、うん。俺一人で乗ると大体振り落とされるからなー」
「それは貴様の左手のせいだろうに」
「そうだと良いんだが...まぁそれじゃ中入れて良いか?」
「構わん。それに、一雨来そうだ。外で待たせるというのもなんだろうよ」
「まぁドアはぶっ壊れてるけどな」
「...言うな。電気がない故に自動ドアは動かぬのだ」
「世知辛いなー」
そんなわけでペガサスとキョウカがモールの中へと入ってくる。
「話はついたんですか?」
「まだだけど、とりあえず中入って良いってさ」
それからフウキさんにキョウカを任せて、オンギョウキさんのいる三階の奥へと向かう。
どうやらそこは、映画館のようだった。
「電気は...まぁ死んでるか」
「うむ、私にはこう言った技術には疎くてな」
「オンギョウキさん、ちーっす」
「軽いな花咲千尋。まぁ、私はそっちの方が楽なのだが」
「意外だな、もっと堅そうな雰囲気なのに」
「...元サマナーがズボラでな」
カプソと同じパターンなのな
「まぁなんでも良いさ。フウキから話は聞いてるか?」
「ああ、あのキョウカという少女を匿えば良いのだろう?」
「ずっととは言わねぇよ。ちょっとメシアの街のどこに預ければいいのかって問題があってな、それ調べるまでの間頼むわ」
「構わん。幸い、妖精共がもう気に入っているようだ。ゲームを始めている。大富豪だな」
「トランプかー、たしかに娯楽品として有用だな。遊び方無限大だしアレ」
「...すまぬ、イレブンバックとは何だ?」
「出た大富豪特有のローカルルール合戦。イレブンバックってのは11出したら数字を上に進めるか下に進めるか選べるってルールな。一時的な革命状態よ」
「なるほど、勉強になった」
「...交渉事故に黙っているつもりだったのだが、オンギョウキ、いいかい?」
「何だ?」
「いくら何でも気を抜きすぎではないかい?そんな事ではこの先痛い目を見てしまう。それは、心配だ」
「...信じないで後悔する事と、信じて後悔する事、どちらを選ぶという話だ、これは」
「お人好しな悪魔だ事だ」
「おかしいか?」
「いや、私は好みだよそういうのは。どこかのサマナーに影響されたからかな?」
「お前...」
「悪い影響としか思えないけどね」
「オチ付けるなや!ちょっとじーんって来たのにさ!」
「本当に愉快だな、お前たちは」
そんなわけで、とりあえずのキョウカの寝床を確保できたのだった。
「んで、その罰として夜勤だと」
「はい、私に力が足りない事と、あなたに信仰心が足りない事、両方を考えての罰...という名目だそうです」
「まぁ、わかってますよ。ヴァルナとあの緑野郎が来るってんでしょう?」
「ええ、その可能性が高いと」
「へぇ、今度は準備万端ってかい」
「すまんな、面倒をかける」
「構わねぇよ」
真っ直ぐにこちらにやってくるヴァルナと男。
対してこちらはデオンとジャンヌさんと俺。
「今日こそ、ダークロードのアートマの居所を吐いてもらう!」
「専門用語増やしてんじゃねぇよ白男!」
狭い夜空の下で、戦闘が始まった。
ダークロードは、アートマの名前っぽいのを探してたら遊戯王wikiで見つけたものです。リンクスで猛威を振るっていた堕天使は英語だとそう訳されるみたいですねー。宗教上の理由とか色々あるんだなーと。
週間連載やってるこの作品の文字数は、どれくらいが望まれているのかのアンケート。尚、作者の力量を超える文字数の場合は頑張るだけ頑張りほしますが、まぁ無理でしょうねー。
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4000字〜6000字のお手軽コース
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平均8000字の中盛りコース
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平均1万2千文字の現在目指してたコース
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平均1万5千文字以上の特盛コース