白百合の騎士と悪魔召喚士   作:気力♪

6 / 60
ちょっと短い閑話、に見せかけた本編です。



遡月市の休日

「ハレルヤ!」

 

こちらの銃撃による関節破壊をMAGの過剰供給によるオーバーヒーリングにより直し、踏み込み、腹に重い一撃を放ってきた。

 

あの日から神野縁は、見違える程に強くなった。人間でしかない俺を上回ってしまったようだ。

 

だが、まだ詰めが甘い。致命打を食らった程度で制御を乱す者はサマナーではないのだ。

 

「術式、遅延展開!収束解放、シバブーストーン(自作、2000円)!」

「...身体がッ⁉︎」

 

緊縛の術式を刻んだストーンの遅延解放。本来は回避しながら行う技だが、今の神野の速さと技相手にそんな事をしている暇はなかったため、サマナー必殺の小技を使わせてもらった。

 

「あっぶねー、腹にモコイを召喚しなかったらやられてたぜ」

「あの妙な手応えはそういうことですか⁉︎」

「というわけで、ハイ」

 

拳を放った状態で身動きを取れなくなった頭にP-90を突きつける。強力な力場の力があろうとゼロ距離なら屠れる。これは、数多の犠牲が生み出した格上殺しの定石である。

 

「いう事は?」

「...参りました!」

「はいよくできました。それじゃあ俺の秘密は謎のままって事で」

 


 

事の始まりはこうである。神野が、俺がサマナーになった経緯を聞きにきたのだ。正直触れられたくなかった部分であるため適当に誤魔化そうとしたら、所長が模擬戦で俺に勝ったらこの世界の住人として認める証として教えるなんて事をのたまったのだ。なんでこの人自分の事じゃないのにノってんです?

 

そしてデオンは、自分もサマナーの事は気になると言って参加を辞退。やめてくれ、お前がいないとマジで辛い。

 

そんなわけで始まった神野との模擬戦。事務所の3階にある呪符などで強度を上げたトレーニングスペースだが、今までは所長と俺の実力差がありすぎて日の目を見なかった場所だ。

 

そこで、よーいドンでの模擬戦。神野がサマナー殺しの定石である召喚前に潰すという戦術をとってきたのでカラドリウスとノッカーを略式召喚。その二人が命を捨てて作った時間で術式を組み上げて勝利した。というのが今回の模擬戦の結末である。

 

「強いですねー、千尋さんは。私も強くなったつもりなのに」

「そりゃ、かけてる金が違うからな」

「お金の問題です?」

「お金の問題です」

 

「うーん、今の縁ちゃんなら生意気な千尋くんの鼻っ柱を折れると思ったんだけどなぁ」

「サマナーの小技の多さはどこから来ているのやら。あれでこの業界に入って1ヶ月だなんて信じられないね」

「うーん、それはまぁ、色々あったからね」

「その色々とは?」

「教えてあげない。一応賭けだし」

 

「じゃ、デオン。買い出しついでにパトロール行くぞ」

「了解だ」

「今度は負けませんからね!千尋さん!」

 

今度がない事を切に祈るばかりである。

 


 

「それでサマナー、今日はどこに行くんだい?」

「とりあえず回復道場だな。仲魔の復活させたいし」

 

遡月市は、昔に起きた隕石落下(という建前)によって破壊された土地を中心に復興した街だ。大きいクレーターは埋められたが、小さいクレーターは観光名所として所々に残っている。

 

その隕石落下による影響(建前)により龍脈がうまい感じに纏まった霊的ホットスポットのうちの1つである。現代の7つの大龍脈都市として、裏の仕事に就いている者たちからは一目置かれている。

 

なので、回復道場やメシア教会にガイア寺院、武器の店に宝石屋、様々な店が軒を構えているのだ。

 

スマートウォッチとペアリングしている防弾携帯でそれらの店の情報を集める。なんでもない休日のこの日は、やはりなんでもない休日だった。

 

「んー、今日はセール品はないか。じゃ、ぷらぷらするだけでいいな」

「サマナー、君は案外適当なんだね。知っていたけど」

「あ、デオン。お前どっか行きたいところあったりするか?」

「...いいや、特には。故郷の様子を見てみたいとは思うが、この地からは遠いからね」

「じゃ、そのうちにな」

「...サマナー?」

「お前がどんな所で生まれ育ったのかってのは興味があるんだよ、俺も。だから、そのうち一緒に行こう」

「そうか...うん、それじゃあそのうちにね」

 

そんな会話をしながら回復道場に入る。他に客人がいるようだ。

 

「こんにちわ、サマナーの花咲千尋と申します」

「サマナーのアミリよ。どうしたの?」

「最近変わった事ないですか?どうにも最近大物とやりあう事が多いんで気になってるんですよ」

「大物?」

「ヤタガラスからアナウンスのあった、契約を乗っ取る悪魔ですよ」

「うわ、運がないわねあんた。それで、どんな奴だったの?」

「姿は女武者のモノで、5つの概念武装を巧みに操る化け物でした。隙をついて殺したはいいんですが、契約者のCOMPに戻らない性質なのか死んだのか区別は付いていません。気をつけて下さい。」

「情報ありがとう、花咲。こっちでは、特に変わったことはないわね。異界の発生は普段より若干多いけど誤差範囲。規模も対処できないほどじゃないわ」

「面倒な悪魔とかはいましたか?」

「...そういえば一匹、変なのが居たわね」

「変なの?」

「青いボディスーツに赤い槍の使い手の、多分闘鬼。アナライズする前に即逃げたわ。悪魔を手当たり次第に殺してた」

「...それ、最初に言って下さいよ」

「悪かったわ。忘れたかったのよ」

 

仲魔の治療は終わり、アミリさんは去っていった。

貰った異界の位置情報は、警戒するべき情報だろう。事前に聞く事ができてよかった。

 

「サマナー、いつもこんな事をしているのかい?」

「ああ、メシア教会とガイア寺院とは違って、ここはフリーランスの情報が集まるからな。積極的に話をするようにしているんだ」

「なるほど。それなら私も出来る限り話すとしよう」

「おう、頼むわ。お前の王子様スタイルなら口も軽くなるだろうからな」

「実は、お姫様かもしれないよ?」

「...それなんだよなぁ、お前なんで性別不詳なんだよ」

 

ノッカー、モコイ、カラドリウスを預けて回復の術をかけてもらう。霊脈を使っての魔力増幅と各種治癒魔法。至れり尽くせりだ。

 

「僕、いきなり死んだんだけど。」

「悪かったよモコイ。あれしか手はなかったんだ」

「ま、仕方ないね。僕が柔かったのが悪いのさ」

 

そんな会話の後に、俺たちはふらりと街を歩くことにした。

 


 

「このたこ焼きという物、なかなか美味しいね」

「だろ?それにリーズナブル。悪いとこがないな」

「君はすぐお金の話に行くね、それでは女性にモテないよ?」

「流石モテモテさん。説得力が段違いだ」

「...まぁ、私もお金に困った事があるから気持ちはわかるんだけどね」

「意外だな、長い名前からしてどっかの華族かと思ってたんだが」

「その話は今度にね。君のことは信用しているが、全てを打ち明けていいかは迷っているんだ」

「そりゃ正解だよ。サマナーと悪魔は契約で繋がってるんだ。そこに情は入り込まない」

「...君のそういうところがなければ、私も素直になれたと思うんだがね」

「すまない、性分だ」

「知ってる」

 

ぐだぐだと会話をしながら歩いていると、しきりに案内板と周囲を見ている少女がいた。長い黒髪がとても綺麗だ、よっぽどしっかり手入れされているのだろう。だが、あの挙動からみるに慣れない土地での迷子だろう。

 

「行こうか、サマナー」

「ああ、ちょうど暇だしな」

 

「外の世界って、複雑ですのね。全く、真っ直ぐ行けば目的地に着くくらいの整然とした地形にどうして作らなかったのかしら」

「何かお困りかい?mademoiselle」

「私はまどもあぜるなんて人ではありません。人違いでは?」

「...ああ、すまない。今のは私の故郷の言葉で、美しい女性を示す言葉なんだ」

「信用できませんね。あなたは違う感じがします」

「だってよデオン。独特にフラれたな」

「口説いてるつもりはないのだけどね」

 

ちょっと珍しいものを見た。イケメンでもダメな時はあるのだな。

 

「それで、あなた達は何者ですの?害意はないようですけれど」

「俺は花咲千尋。こっちはデオン。探偵をやっている」

「...探偵?」

「君が迷っているように見えたから、ちょっと声をかけただけだ。困った時はお互い様って言うからな」

「嘘はなさそうですね。とりあえずは信じましょう。私は...マリアと呼んで下さいな」

 

『サマナー、これは偽名だとツッコムべきかい?』

『スルー安定だな。咄嗟に良い偽名が思いつかなかったんだろうよ』

 

とりあえず、マリアと呼ぶのはアレだ。なので適当なあだ名を付ける事にしよう。

 

「それじゃあマッサン。何処に行きたいんだ?」

「マリアです!なんですかマッサンって!」

「良いだろマッサン。愛嬌があって」

「...それならばいいです。では、お願いします探偵さん。私、映画館に行きたいんですの」

「心得た。案内するよ、マッサン」

「映画か...私もちょっと気になるな。行ってみてもいいかい?チヒロ」

「じゃあ3人で映画と洒落込むか」

「口説いてるんですの?チヒロさんとやら」

「いや、デオンもこっちに来て日が浅いんだ。案内ついでって奴さ」

 

そんなわけで、3人で他愛もない話をしながら映画館へと向かうことになった。

 


 

「話には聞いていましたが、この街にはクレーターが多いですね」

「実はそれぞれのクレーターに名前が付いてたりするんだぜ」

「本当ですの?」

「あっちのクレーターはロの18番クレーター。だったかな?」

「センスがないですね当時の責任者は。天使の名前でもつけてあげればいいのに」

 


 

「こっからが繁華街だ。映画館はもうすぐだよ」

「人が多いですわね。なにかのお祭りがありますの?」

「...マッサン、これがこの街の日常だよ」

「そっくり同じ事お前も言ったな」

「チヒロ!」

「あら、デオンさんも世間知らずなのですね」

「いや、まぁそうなんだが!僕は鋭意勉強中だ!」

「声でかいぞ、デオン」

「...しまった」

「意外と可愛らしい方でしたのね、デオンさんって」

「こいつ、意外と脇が甘いんだよなぁ」

「...自覚はしてる、好きに言うがいいさ」

 

歩いて五分、大型ショッピングモールジュネスの3階に映画館はある。その事を伝えると、「映画館って、館ではないんですね」「...私もそう思っていた」と微妙に落胆していた。

 

「じゃあ、何見る?アニメ映画とライダー映画は続きモノだから除外するとして、ラブロマンスかサスペンスの2択かね」

「...私、このライダー映画を見に来たんですの。面白いという話ばかりが入ってきて抑えが利きませんの!」

「うーん、それじゃあデオンがちと退屈かね」

「コマーシャルで見たのだが、ライダー映画とは装飾過多のスーツを着た者によるアクション映画だろう?なら、知識がなくても楽しめるさ。とはいえどんなモノなのかの解説は欲しいところだけどね」

「じゃあ、決まりですね!平成最後のライダー映画を観ましょう!」

 

その後、マッサンによるマシンガンじみたライダートークによりデオンはとりあえずの荒筋を理解するに至った。そしてそのトークの内容聞いて思う。コイツ、かなりのライダーオタだ。見た目お嬢様の癖に内容がディープすぎる。平成ライダー全部見るとかあの年齢ではなかなかできることじゃないぞ。

 

そんな彼女は、ライダーの中の人ことタカイワさんやオカモトさんが異能者だと知ったらどう思うのだろうか。ちょっと気になる次第である。

 


 

ジュネスのフードコートにて、現金を持たずに飛び出してきたマッサンにハンバーガー(ジャンクフード)を奢る。コイツの身なりからして、リターンは大きいはずだ。

 

「いやー、良かったです!身体で聞く音と映像のシンクロってここまで良いものだったんですね!もう一回行きたいです!」

「ああ、面白かった。細かいストーリーに荒はあったが、それを上回る勢いだったよ。だが、最後の集合シーンのライダー達の事をよく知らなかったのはもったいないね。今度調べてみるとしよう」

「そしてライダー沼にハマる騎士様が生まれると」

「じゃあ、まずはクウガを見ましょう!平成ライダー一作目にして頂点ですよ!」

「クウガか、覚えておくよ」

 

「所で、ナイフとフォークはどこですの?」

「手掴みで食うのがマナーだよ、マッサン」

 

マッサンの世間知らずっぷりは、ちょっと行き過ぎている気がしないでもないが、まぁ問題はない。あとは、コイツを無事に家に帰してやればおしまいだ。

 

とか考えていると、違和感を見つけた。

 

巧妙に隠されているが、何かの呪印が隣のテーブルの下に刻まれている。

 

「何を見ているんですか?」

「厄ネタだよ。デオン、切り替えろ」

「任せてくれ、サマナー」

「...貴方、悪魔召喚士(デビルサマナー )だったんですか?」

「ああ。そういう事だ」

 

テーブルの下の呪印の写真を撮る。これは、神代の術式だ。断片的にしか読み取れない以上、迂闊には触れない。

 

「破壊しますか?力尽くになりますが、私なら不可能ではありません」

「いや、これは術式の核じゃない。破壊しても無駄だ。」

「じゃあ、この術を仕込んだ悪鬼を見逃すんですの?」

「んな訳あるか。ここのMAGパターンを採取して、今探知術式を組み上げている。それで術者をあぶり出してヤタガラスの術者に仕留めさせる。それが、今の俺たちの出来る事だ」

 

そんな会話をしつつ、MAGソナーの術式を組み上げる、これほどの高位の結界を張れる術者が相手なら、アクティブでなくパッシブソナーで充分情報は取れるだろう。

 

実際、32の呪印の位置がすぐに明らかになった。込められたMAGの量故だろう。だが、だとすると解せない。どうして本体が見つからない?この呪印は撒き餌か?

 

「...凄いですね、千尋さん」

「現代魔導にはちょっと詳しいので」

 

探査術式の観測データを元に、ヤタガラスに報告書はもう送った。こういう時ホットラインがあると便利な事この上ないな。とはいっても向こうは下っ端。上に伝わるまでには少し時間がかかるだろう。それまでに自分たちの命を守らねば。

 

「サマナー、僕らはどう動くべきだい?」

「とりあえず現状維持だ。人払いの結界は張ったから、最悪ここを戦場にできる」

「了解した、私はサマナーを守ろう」

「マッサンはこのショッピングモールから逃げてくれ。あんたには、万が一があっちゃいけない」

「...私も、戦えますわ」

「知ってます。でも、あなたにかかっている未来はそんな程度のものではないでしょう?内親王殿下」

 

気付いたきっかけは、大した事じゃない。サマナーネットで流れていた噂と目の前の少女の雰囲気が一致した事と、マリアという名乗り。あれはメシア教の聖母マリアから取ったのではなく、内親王殿下の本名である真里亞という名前から取ったのだろうとわかってしまったからだ。

 

「...あなた、サマナーだと言いましたよね。」

「はい、内親王殿下」

「ならば、報酬を払います。私を護衛しなさい」

「...つまり、逃げるつもりはないと」

「はい。民を守る皇族が一人、西之宮真里亞(にしのみやまりあ)がこの程度の苦難を前にどうして逃げられましょうか」

「サマナー、彼女の意思は固い。僕らに説得は無理そうだ」

「...わかったよ、だが前に出るのは俺の仲魔だ。それだけは守ってくれ」

「はい!」

 

「サマナー、来るよ!」

「ああ、百太郎が感知した。エネミーソナーはレッドアラート!やってくれるね畜生!」

 

そうして、長髪に長身、目隠しをしている人型の悪魔はストンと俺たちの前に降り立った。

 

「貴方方は、この時代の勇士ですか?」

「いや、ただの人間だよ。サモン、ノッカー、モコイ、カラドリウス」

 

『サマナー、勘だが彼女は私より速い。気をつけてくれ』

『だろうな。強化魔法で誤魔化せるとも思えん。こっちはこっちでなんとかするから、後ろを気にしないでやってくれ』

 

「悪魔を召喚し使役する者、時代は変わったのですね」

「...こっちには、そちらと会話をする気がある。まずは話を聞かせてくれないか?この人食い結界を発動させない理由とか」

「大した事ではありません。ある程度目立つ所に置けば、この時代の勇士が釣れると思ったまでのこと。今、解除します」

 

そう言って彼女は手を一振りした。それだけで結界の呪印は消え去った。自在に呪印を操る力。パッシブソナーを確認してみるも、32あった呪印は形もなく消え去っていった。解除した、あるいは待機状態にしたのは本当だろう。

 

「俺は花咲千尋、デビルサマナーだ」

「私はメドゥーサ。幽霊をしています」

 

長い髪が蛇になっていない。綺麗な薄紫色の髪だ。俺の知るメドゥーサとは違う原典から顕現した悪魔なのだろうか。

 

「質問だ、勇士を見つけて何をしようとした?」

「この世界についていくつか質問しようかと。私のいた神代とあまりにも違いすぎるので」

「そりゃそうさ。この世界は今平成結界に守られている。お前たちみたいなのは現れにくくなってるんだよ」

「なるほど、広域に結界が張られているのですね。ではどうして私のような化生が顕現できたのですか?」

「まぁ、長年使ってきた結界だから綻びが出来てるんだよ、多分」

「そうですか...大体理解しました。それではチヒロ、怪物である私を殺しますか?」

「殺さないよ。そっちに害意がないのならこちらから殺しにかかる理由はない」

「甘いのですね」

「だが、契約していない悪魔...この時代におけるマグネタイトで体を構築している奴らは基本的に害獣として狙われてしまう。どうだ?行くとこがないなら、俺と契約する気はないか?」

「...私は、メドゥーサですよ?」

「その程度でビビっていられるか。第一、メドゥーサさんは邪悪な悪魔じゃない。なら、ちょっとくらい人の世を生きてもいいと思うんだよ」

 

その言葉に、ふっと笑顔を見せた。思わず見惚れてしまうような綺麗な顔だった。顔の大半を隠している目隠しがうらめしい。

 

「わかりました。私はメドゥーサ、ゴルゴン三姉妹が末妹です。今の人の世を見るために、貴方と契約を結びましょう」

「花咲千尋、悪魔召喚士(デビルサマナー )だ。これからよろしく頼む、メドゥーサ」

 

ここに、契約は結ばれた。

 


 

「サマナーって、凄いんですね。私伝聞でしか聞いていなかったので、言葉だけであんな強力な悪魔を従えるなんて思ってもみませんでした」

「そりゃ、メドゥーサさんが善良な悪魔だったからだよ。そうじゃなきゃ会話の始まりは銃撃からだ」

「その場合、チヒロの首はねじ切れていたでしょうね」

「いいや、君の首が飛んでいたかもしれないよ、メドゥーサ」

 

若干相性の悪い二人だ。まぁ守護霊と悪魔なんてそんなものだろう。

 

「にしても、流石メドゥーサ。MAG消費量が半端ねぇ。ハイクラスの悪魔ってこんなんなのか?」

「チヒロ、マグネタイトの量は大丈夫なのかい?」

「ああ。あんまり手は付けたくないが、MAGの貯金はあるんだよ」

「...それは申し訳ないですね」

「いいさ、ヤタガラスに事情を説明したら報酬貰えるだろうし」

 

それから5分程度が経った後、黒服にアサルトライフルAK-47を装備した女性がやってきた。

 

「ヤタガラス所属のミズキです。状況を」

「浅田探偵事務所の花咲です。ショッピングモールに張られていた結界の呪印は本体であるメドゥーサを仲魔にする事で解除に成功しました」

「...ッ⁉︎体に異常はありませんか⁉︎」

「いえ、今のところは」

「アウタースピリッツを仲魔にする事ができるサマナー?なんて規格外」

「アウタースピリッツとは、私の事ですか?ミズキ」

「はい、この世界の外側からやってきた魂の事をヤタガラスではそう総称しています」

 

「では、花咲さん。メドゥーサをこちらに渡して下さい。アウタースピリッツにはそれ相応の処置をしなくてはなりません」

「チヒロ、私は貴方に従います。私は行くべきですか?」

「...質問です、処置ってのは何ですか?」

「アウタースピリッツがこの世界に異世界の法則を持ち込めないようにする為の処置です。放置すれば、平成結界に致命的なダメージが現れるという結論は出ています」

 

その言葉に、なんとなく察しがついた。だが、相手は国家の柱ヤタガラス。反抗したところで意味はない。

 

『早速で悪いが、契約切って逃げる事を考えておいてくれ』

『断らせてもらいます。私は、貴方だから契約したのですから』

『メドゥーサの命がかかってる』

『化け物の命を大事にする人など、狂ってるとしか言えませんよ?』

『仕方ないだろ、あんたは良い悪魔なんだから』

 

思考を切り替える。もしかしたら譲歩案を見つけ出せるかもしれない。

 

「タイムリミットは?」

「わかりません。」

「なら、今日くらいはなんとかなりませんか?監視は受け入れます。いざという時は俺ごと殺しても構いません。でも、俺はメドゥーサにこの世界の事をまだ何も見せていない。それは、契約に反する」

「...いいえチヒロ。貴方はもう私に今の世界を見せています」

「...え?」

「悪魔と人、化け物と人が共存できる世界。そのために命をかけてもいいという奇怪なサマナー。私が生前願っていた未来の形が、少し見えた気がします」

 

「ですので、どうせ死ぬなら貴方に残したいと思います。私の可愛い子を」

 

メドゥーサは、どこからか取り出した釘のような短剣で自分の首を貫いた。

その血が召喚陣となり、神聖な空気を持つ神獣が産まれ落ちた。

 

「ペガサス。この子を貴方に託します、チヒロ」

 

ヒヒーン!と嘶くペガサス。メドゥーサの囁きにより、俺と契約する事を了承してくれたようだ。

 

「メドゥーサ...」

「謝らないで下さい。貴方は、私を意思のある人として扱ってくれた。結構嬉しかったんですよ?それは」

「...ありがとう、お前の事は忘れない」

「いいえ、忘れて構いません。所詮私は、死人なのですから」

 

その言葉を最後に、メドゥーサはだらりと両手を下げ、ミズキさんのアサルトライフルにより撃ち抜かれ、死んだ。

 

その死に顔が笑顔に見えた事は、見間違いじゃなかったと信じている。

 

「神獣ペガサス。改めてよろしく頼む。俺は花咲千尋だ」

「ヒヒーン!」

 

ペガサスは嗎きとともに体を分解してCOMPへと収納された。

 

「ヤタガラスの」

「なんですか...まさか、内親王殿下⁉︎」

「あなたは、それを正義と信じて行なっているのですか?」

「...いいえ、そんな事はありません。ですが、やらなければならない。私を友人だと言った彼女は、私にそれを教えてくれました」

「では、やりたくはないのですね?」

「...はい。」

「なら、私から宮内庁の術者にかけあってみましょう。結界の更新はまだ少し先、外からの来訪者をなんとかする術を結界に組み込めないか尋ねてみます」

「...ありがとうございます、内親王殿下」

「構いません。ただの私情です」

 

「私も、メドゥーサさんと友人になってみたかったと思っただけの事ですよ」

 


 

その後、ミズキさんの持ってきた検査機により俺たちとペガサスは検査されたが、()()()()()()()()()()()()。とりあえず安心だ。

 

「アウタースピリッツか、君はどう思う?サマナー」

「...敵なら殺すし、そうじゃないなら説得する。それしかねぇよ」

「すいません千尋さん。あなたの仲魔を死なせてしまって」

「内親王殿下の責任はありませんよ。悪いのは、この表面だけまともを取り繕ってる世界ですから」

「...知っていらっしゃるんですね、あなたは」

「まぁ、色々あったんですよ」

 

そうしてジュネスの外に出ると、腕利きのバスターと思われる黒服が歩み寄ってきた。銃を抜かれなかったのは幸運かもしれない。

 

「それじゃあ、内親王殿下。自分たちはこれにて」

「ええ、案内ありがとう千尋さん、デオンさん。案内してくれたのが貴方達で良かったわ」

「こちらこそありがとう、マリア。君と見た映画は楽しかった」

 

握手をして、それに隠して名刺をそっと手渡して俺たちは別れた。

護衛さんは気付いているだろうが、放置してくれた。まぁ、向こうからしたら俺たちなぞ大した脅威でもないのだろう。当然といえば当然だ。

 

「んじゃ、帰るか」

「そうだね、サマナー」

 

遡月市の休日は、大事件もなくこうして過ぎていった。

俺の心に、1つの疑問を残して。

 


 

ヤタガラス本部、その支部長室にて女性と老翁が書類仕事をしていた。遡月支部の支部長、アイサとその相談役のゲンアンである。

 

「浅田探偵事務所所属、神野縁、花咲千尋、浅田彼方。何かの特異点だったりするの?コレ」

「悪人じゃないんだろ?だったら良いじゃねぇか。若いのが育ってるのは国が栄える証拠だ」

「この3人が、全員()()()でも?」

「...おい待て、なんだその奇跡」

「私だってミズキの報告書読んで驚いたわよ。あの事務所の職員は造魔一人以外全員そうなの。それがどれだけ異常かわかるでしょ?」

「...なら、保護するか?」

「彼らは皆、独立した力を持ってしまってる。今のこの世界の実情を知って暴走しないとは限らない。悔しいけど静観しかないわ」

「...待て、花咲千尋って名前に心当たりがあるぞ。確か...アウタースピリッツ関連だ」

「それ本当なの?ゲンアン」

「ああ。九州上空に発生したアウタースピリッツの異界事件の生き残りだ。もしかして、見てるかもしれねぇ」

「どれだけ厄ネタなのよ...見なかった事にしようかしら」

「今はそれが良いさ。花咲って奴は事実を触れ回ったりはしていない。理知的な奴なんだろうよ。だが、結界の更新が終わったら改めて謝罪をするべきだと俺は思う」

「それは、情?」

「たりめぇだ。未来ある若者に筋を通してこその大人だろうよ」

「...そうね」

 

「...いつか、私たちは裁かれるのかしら」

「そん時は、世界が滅びる時さ」

「そうね」

 

ヤタガラス、それはこの世界の霊的国防を担う者達。

彼らの用いたある邪法がこの国を保たせている事を、人々はまだ知らない。




カタカナと漢字

調整平均8.9とかいう作者的にはヤバイ数字出しているこの作品の評価について、評価機能がどれほど使われているのかの個人的興味からのアンケート。暇な時にでもどうぞ。

  • 評価機能を使用した
  • 評価機能を使用していない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。