...はい、大変お待たせしました。それもこれもポケモンに熱中しすぎたのが悪いのです。
リストラとか色々言われてますが、今作マジで面白いのでオススメです。まぁミミッキュは前以上にしんどいですけどね!おのれダイホロウ。
「花咲さん、あなたの内地移住許可が出ました」
「ありがとうございます。でも、どうしてジャンヌさんがそれを?」
「花咲さんの力量から、私がいざという時の監視についているのが一番だとのことです」
「いや、監視するなら所長が先じゃあ...」
「彼女は敬虔な信徒ですよ?教義への理解も深く、悪魔への容赦もない。そして何より縁さんの守り手です」
ボロが出ていない⁉︎...いや、確かに所長って殺しすぎでメシアから弾かれただけだから、信仰してるフリとか得意そうではあるけれども!
驚愕しているのは俺だけではないようで、デオンも珍しく動揺を顔に出していた。やっぱそう思うよな!
「ま、まぁ、なんにせよ移住許可ありがとうございます。それと、これからもよろしくお願いしますね、ジャンヌさん」
「はい。それと、花咲さん達には休暇が与えられました。きちんと休まないといざという時に使えないと具申して下さった方々がいらっしゃったそうです」
「方々?」
「はい、花咲さんの仕事ぶりはしっかりと皆さんに知られているという事ですね」
「ありがたいですね。じゃあ、もう内地に入って良いんです?」
「はい。内地の警備にはもう話が通っているそうなので」
「じゃあ、ジャンヌさんは今日これからどうするんです?」
「...正直、急な休みに悩んでいるのです。外壁に傷がついたという話は聞きませんし、農作業は私の時代とは全く違いますし」
「じゃあ、内地の案内してくれません?前はちょっと入っただけなんで勝手はわかりませんでしたから」
「構いませんが、花咲さんは皆さんと合流するのでは?」
「街で名前の通ってる人の案内があった方が、色々良いですから」
「サマナー、少しゲスいね」
「うっせ」
そんなやりとりにふっと笑顔を見せるジャンヌさん。
笑うと、やはりこの人は良い人なのだなーと感じられる。
「わかりました。一緒に行きましょうか」
「ありがとうございます」
「...ジャンヌ、騙されていないか心の中で三度は思い返したかい?サマナーはそういう奴だよ?」
「ご心配ありがとうございます、デオンさん。しかし、花咲さんになら騙されても良いと思えたのです」
「だってこの人の嘘は、きっと誰かの為の嘘ですから」
「...買い被りすぎと言いたいですけど、正直その評価はありがたいので否定しないでおきます。じゃあ、引越しと行きましょうか!」
『サマナー、割と本気で照れているのかい?』
『...うん。あの殺し文句は最悪だ、人たらしだ。流石は聖女様だよジャンヌさんは』
そんなわけで、ホテルに置いていた小物類を纏めてストレージに入れて、ぱっと引越しをする。
うん、腰掛けだと思っていたのでそんなに設備を出していなかったのは正解だったようだ。
「相変わらず、便利なものですね」
「まぁ、その辺は中島に感謝だな。最初にこの原理を実用化させたのはアイツだし」
「中島さんとは?」
「中島朱美、悪魔召喚プログラムを作り出した、昔の天才ですよ」
「...あまり、良い人には思えませんね」
「さぁ、それは本人に会ってみないとわからないんじゃないですか?実際悪魔召喚プログラムがなかったら今この世界はなかったわけですし」
実際に会った感想が割とクソ野郎であることは置いておこう。
無闇矢鱈と話す事ではないのだから。
奴は旅の者だ。その影響力はこのメシアの街の外縁部にもしっかりと根付いていた。ならば、そこからなんかしてくるかも知れない。
いや、別に目的のない嫌がらせしてくるような奴であるわけじゃないんだけども。
そうして、門をジャンヌさんの顔パスで通り抜けた先、相変わらずのプレッシャーを無視してゆっくりと宿舎へと向かう。
どうしても警戒してしまうが、周りにいた戦闘員らしき人からは『あ、こいつお登りさんだ』とか思われていそうで苦笑されていた。やめろや、これに慣れたくないんだよこっちは。
そんな事を考えていると、鞘に収まっている名剣のような気配の男がやってきた。
見てみれば、それはいつぞやの鉄砲玉、そしてこの街の人間の最高責任者であるミハエル・ヤジマがそこにいた。なんというか、オフの時はそんな空気なのな、間違えたわ。
「おはようございます、デビルサマナー 」
「...司教様って呼んだ方がいいのか?」
「そうして下さい。人の目がありますので」
「じゃあ司教様。暇なんですか?」
「いいえ、これから調査任務です。西の者たちがどう動いているのかを見て、あわよくば討伐しろとの命でしてね」
「...ジャンヌさんをこっちに置いてて良いんですか?」
「ええ、私は一人の方が強いですから」
「そっか、だけどなんかヤバかったらジャンヌさんに連絡くれ。文字通り飛んで行くから」
「...あなたが、どうして?」
「売れる恩は売っておく主義なんだよ。お前のことは好きじゃないけど、それはそれだろ」
「...あなたは、意外とメシア教徒に向いているのかも知れませんね」
「え、今の計算だらけの言葉で何を感じたよお前」
「あなたは、動いた後に考える人だ。そしてそれは、人を助けるという信念に基づいている。何も考えずに走り出せる者は、それだけ多くの者の手を握る事ができる。それは、尊い事なのですよ」
「元鉄砲玉が良く言うなオイ」
「ぶち殺しますよ異端者」
なんか、このミハエル・ヤジマという奴の事が少しわかってきたかもしれない。
コイツは、教義を道具として捉えている異端だ。その根にあるのは、人を救いたいという願い。
面の皮の厚さで分かりにくかったが、そういう奴なのだろう。
上にいる人間が信用できると、信用したいと思える人である事に少し安堵を覚える偶然の出会いだった。
「こちらが、皆さんに提供している宿舎です。サマナー、バスターの皆さんはこのホテルに寝泊まりされていますね」
「ありがとうございます。...電気は回ってるみたいだけど、流石に電波は飛んでないか」
「そういえば、この街に来てから伝達はいつもアナログだったね。きちんと管理できてるのだろうか?」
「んー...ジャンヌさん、この辺の連中に指令を伝達するのって天使達の仕事です?」
「はい、花咲さん相手には私が行きましたが、基本は伝令の天使様方がやっています。どうしてわかったのですか?」
「いや、ラインで繋いでの念話で情報を集めてそれを管理してるんだろうなーって思っただけです。ほら、それなら天使から情報が漏れるにしても最小限ですし」
「へぇ、良いとこに目を付けるのね」
「あ、どもです。今日こっちに移る事になったサマナーの花咲千尋です」
「...これでも私かなりの実力者なんだけ。最近私の位置が脅かされる事が多くて辛いわ」
唐突に話しかけてきたのは、バスターと思わしき女性。顔つきは美人と言って遜色はないだろうが、顔についた三本の爪痕がそれ以上に目立つ女性だ。
「私はオリガミよ。バスターとしてこの街に居着いてるけど、信者ってわけじゃないわ」
「とすると、これから任務ですか?」
「ええ、最近肉の管理倉庫に盗みが入ってるって話でね。大した量じゃないんだけど、定期的になくなってるみたいなのよ」
「それ、もしかして昨日会ったんですか?」
「...どうしてわかったの?」
「昨日戦闘した二人とは別に、なんかしてる連中がいるんじゃないかなって憶測です。戦ったウチの一人が、援護が来るかは微妙だったと言ってたんで」
「じゃあ、あんたが昨日の化け物を撃退したサマナーなのかい⁉︎」
「ジャンヌさんとか所長とか、いろんな人の助けがあっての事でしたけどね」
そんな話をすると、なんだか目が肉食系女性のものに変わった。やめろや、ピュアな(心をを守っていたい)ボーイとしては魅力的なんだよコラ。
「あんた、今夜空いてるかい?」
「いえ、あいにくと仲間と合流したいんで」
「なら明日だ。天国を見せてやるからさ」
「あいにくと、仲間ってのは女性ですんで」
「なんだ、唾つけられてんのかい。ま、気が向いたら私を呼んで頂戴な」
「そんな日が来ない事を祈りますねー」
「坊やだねぇ」
そう言って颯爽と去っていくオリガミさん。肉食系は怖いなー。
いや、多分ついて行ったら役得なのだろうけれど、まぐわう事でつく匂いやMAGに女性は結構敏感らしいのだ。
なので残念ながら、誠に残念ながら!ついていく事を拒んだのである。
『サマナー、情欲が漏れているよ』
『...見なかったことにしてくれ。男子ってのはそういうもんなんだよ』
そんな緩いやりとりをしながら中に入る。
ガイアのガバガバシステムとは違い、この街ではしっかりと部屋割りが決められており、どこの部屋にどの人がいるのか分かるように名札がオートロックの所にデカデカと張り出されている。
...アナログの局地である、紙媒体で。
「なぁジャンヌさんよ、ここの管理してる天使様って結構機械に疎かったり?」
「というか、このあたりでは機械に強い方の方が珍しいですね。そういう方々は内地の技術局に引き抜かれてしまいますから」
「うん、苦肉の策なのなコレ。まぁわかりやすくていいけども」
「あ、千尋さんは608号室ですね。書かれています」
「仕事は早いのな」
そうして、そこに書かれた花咲千尋という名前の下に、ペンで“&シュバリエ ・デオン”と書き足しておく。
もちろん意味がないわけではない。何故なら、顔なしの花咲千尋より、映えるデオンを目印に訪ねてくる人がいるかもしれないからだ。
「じゃあ、部屋行くか」
「ああ、そうしよう。どんな部屋か楽しみだ」
「6階はそんなに大した部屋ではなかったですがね」
そうして入った部屋は、普通の部屋だった。
びっくりするほど普通だった。ベッド脇にメシア教の簡易聖書が置かれてるくらいが変わった事だろうか?
「まぁ、とりあえずデオンはどうする?ベッド一つしかねぇけど」
「それなら、使ってみたいものがある。良いかい?」
「珍しいな」
「こう、冒険心がくすぐられるものがあってね。譲って貰ったのさ」
「冒険心とな?」
「これさ」
そう言って慣れた手つきでタブレットを操作してストレージから取り出したのは、ハンモック。
あ、それはずるいぞ。結構高くて気持ちいい奴じゃねぇか!
「デオン、貸してくれたりはしたりする?」
「それはサマナーの態度次第かな?」
「...デオンさん、それは?」
「ハンモック、まぁ簡易式の寝床ですよ。私の時代では船乗りが使っていたと聞いてますが、まさかこんなに軽量で頑丈でデザインの良い物が出ているとは思わなくてね」
「これ、落ちてしまいませんか?」
「では、ジャンヌ様も横になってはいかがですか?」
「良いのですか?」
「はい。まずは、両足で布を跨いで、そのまま包まれるように横になるのです」
「これは...なんだか不思議な感じですね。宙に浮いているような」
「あ、枕があると首痛くなくなるらしいですよ」
「そうなんですか?十分快適なのですが」
なんてちょっとだらけつつ、必要なものを配置していく。
とはいっても、部屋が大した大きさではないのでストーン作製用の魔法陣を掘っているプレートと、部屋に害意を入れないようにする結界のタリスマン、あとは中の状況を常に監視しておく監視カメラ付きのジャックフロスト人形くらいだろう。
フロスト人形が役に立ったことはないが、まぁ気休めだ。
「終わり、デオンはどうだ?」
「私はとっくに終わっていたよ。幸い大した荷物もなかったからね」
「ハンモックは?」
「あれは例外さ」
そんなこんなで昼時には部屋作りは終わったので、ジャンヌさんを連れて昼食に出かけることにした。
この地域では昼食はだいたいアレらしいので、ちょっと外に出て料理といこう。聞く所によるとジャンヌさんはあまり和食を食べていないとの事なのだから。
「つっても、火使っていい所とかあるのか?」
「それなら、皆さんが鍛錬に使っている場所がありますね」
「じゃ、顔売るのもついでにいけるな」
どれだけ人が来ても、割増のMAGと交換で食事を振る舞えるのだから実質黒字、さすが藤太さんの無尽俵である。
藤太さんなら無償で振る舞うだろうかとは考えないようにする。だって仕方ないのだ。連日の任務で地味にMAGが赤字続きなのだから。ミドルクラスの悪魔が適正の所にクー・フーリン連れてっているのだから。
それなりの悪魔を仲魔にできないか迷う所だが、COMPの召喚陣記憶容量も無限ではない。これから戦うのはだいたい化け物揃いなのだろうから、無駄にリソースを使うのは得策ではないだろう。カブソのような一芸を持っているならともかくだ。
そんなこんなをしていると、結構な広さの空き地で多対一の訓練をしているのが見えた。
多人数の方は、様々なアートマを刻まれた顔なし達。装備はテンプルナイト御用達のメシアンローブシリーズだ。武器は剣や槍、トンファーなど様々だが、どれも神聖なる力が感じられる。天使の加護とかだろう。
対して、一人の方の武器は見覚えのあるガントレット。多人数に対して決して隙を見せず、その全てを捌き切っているのは紛う事なき俺の仲間。
神野縁、その人であった。
「...これが、ヤコブの手足ッ!」
「基本以外は我流ですけどね!」
そうして長期戦の精神的な疲れにより連携の崩れた一人が縁のカウンターに倒れ、それがきっかけとなりあっという間に一人また一人と拳に倒れていった。
だが、倒されていてもやはりやり手のデビルバスター。
一人がすぐに起き上がると、その裏でもう一人が小石を拾って指弾を正確に額に命中させる。
そして起き上がった一人と残っていたトンファーさんが同時に縁を攻撃する。これは流石に入ったと思ったが、縁が展開したのはタラスクの鱗。ノーモーション、ノータイムでピンポイントに作り出していた。
そしてその壁に攻撃を止められた二人は2発の正確無比なジャブで脳を揺らされ崩れ、そして最後の指弾の男のマウントを取って拳の振り下ろし。
それを寸止めにして、縁は一言言った。
「ありがとうございました!」
「あー、流石聖女様。やりやがるねぇ」
「いえ、あの指弾は完全に意識の外にありました。アレが魔法石だったら私も危なかったと思います」
「そぉ?そりゃ自信になるか?...まぁ、問題なのは生まれた隙を活かしきれなかったコイツらだよなぁ...本当に嗅覚がなくて嫌になるね。同僚辞めたくなるわ」
「嗅覚ですか?」
「そ、戦場のココってトコを嗅ぐ嗅覚。そういうのが鋭い奴ってのは味方に居ると本当に強いのさ。勝てない戦いがひっくり返るかもしれないんだからね」
「それで、聖女ジャンヌはなんか用ですか?見ない顔と一緒にいらっしゃりますけれど」
「バレていましたか」
「そりゃ、そんな綺麗な空気作るのなんか聖女エニシとあなただけですからね」
「俺たちは、飯を作りに来ました」
「飯を?食材なんてどっから調達したんだ?こんな世界で」
「そりゃ、外からの持ち込みですよ。俺は縁と一緒にこの街に来た最後の一人、サマナーの花咲千尋です」
「へぇ!あんたが姐さんの!ようやく中に入れたって感じかい!」
「はい。まぁ、結構優遇して貰った感じですけどね。所で縁、皆はどうした?」
「お久しぶり...というほどじゃありませんでしたけれど、また会えてホッとしました、千尋さん。所長と真里亞さんとパスカルは内地警邏ですね。ローテーションを組んで私たちは休んでます」
「じゃ、人数分作ります?アートマ刻まれた人達の舌に合うかはわかりませんけど」
「じゃあ頼むわ。ひっさびさに謎肉以外の飯が食えるとか、結構なこったぞ」
「謎肉って、カップ麺じゃないんですから」
なんて言いながら、取り出した豚肉を鍋の底で炒めつつ味付けをして、そこに野菜を一口大にカットして適当にぶち込みまた炒め、そして水を加えて味噌と醤油で味を整える。
こんにゃく?奴は取り出せぬ。芋から作れなくはないのだが、流石にこの超時短レシピでは作っていくのは面倒だ。それに、自作すると鮮やかな黒い奴にはならないので彩り的にはそんなにって感じだし。
などと思考の一部を脇に晒しながら、並行してお米を
あとは、火が通るのを待つだけだ。
つまり作っていたのは豚汁とご飯。シンプルに皆に振る舞うにはうってつけのものだろう。量的にも、味的にも。
「...なんか、凄え技術の無駄遣いを見た気がしたんだが」
「千尋さんってそういう人ですからねー」
「てか縁、倒れてんの治してやれや」
「ですね。皆さんに癒しを...メシアライザー!」
そうして倒れている皆が次々と起き上がる。なんか光悦の表情を浮かべながら。
洗脳の効果とかあるのか?縁のアレって。
なんてことを考えながら、早速商売に移る。
とはいえ、珍しいだけで金を取るのは忍びない。故に、美味しいと思った分のMAGを寄越せ!と言ってみた。そう言われると気になって仕方ないらしいメシアンの方々。
これで、皆に食わせる事は可能だろう。そして、俺は結構味には自信がある。なにせ無尽俵から取り出した食材ってびっくりするくらい美味しいからな!
そして、案の定高評価。
支払われるMAGは、このメシアンのリーダーをしているらしいトンファーさんが率先して高額を払ってくれたので、ちょっと思った以上の黒字を叩き出した。
ジャンヌさんも慣れない箸使いでありながら、豚汁を食べた時に見せたホクホクの表情から相当に美味しかったのだとわかる。やったぜ。
...なので、アートマを刻まれたマン達が特殊な食事を取れるのか実験を兼ねていた事は内緒にしよう。MAGを原材料とした加工食品なら、食えなくはないようだ。栄養になってるかは微妙な所だが。
だが、これならキョウカに美味いものを食わせてやる事ができそうだ。あの肉ばかりでは飽きるだろうし。
「そういや。内地警邏ってなんかしでかす輩でも居るのか?」
「...はい。ですが姿は見えず、結界にも反応せず、食料をいつのまにか盗んでいく怪盗のような者がいるんです。なんでも、2ヶ月くらい前かららしいです」
「怪盗とか面白い事になってんな。けど、それじゃあ外に回す食料とか足りなくなってないか?」
「それが、その人は天使様達に捧げる余剰分の食料だけを盗んでいくんです。だから街の管理には影響はあまりないんですけど、それもまた問題なんですよね」
「あー、情報も抜かれてんのか」
「はい。盗人が悪意をもってこの街に攻撃をしてきたのなら、皆さんは飢えて死んでしまうとの事です」
「まぁ、飢えに関してはしょうがねぇトコあるんだけどな。自分らで選んだコトだし。しかし、この飯を食えたとなるとアートマの副作用ってのは嘘だったのか?」
「あ、この食品MAGで作った代用品なんですよ。本来はそれを世界に定着させてから食うんですけど、今回はあえて不完全な状態のままにしてたんです。だから、皆さんの体はただのMAGを捕食していると認識して、拒絶反応を見せなかったんだと思います」
「...聞いてはいたが、凄えなあんた」
「まぁ、魔術師も兼ねてますから」
「だが、うん。これなら皆も喜びそうだ。あんた、その代用品の作り方っての幾らで売る?」
「残念ながら、まだ遺物頼りのなんだかよくわかってない現象なんで、まだ売れないですね。けど解析して、問題が無いってわかって、それを再現可能な術式が出来上がったら即公開する気ではいます。これでも顔は広いんで」
「...天使様方に研究を任せるんじゃ駄目なのか?」
「友人から託された遺品なんです。そうやすやすと渡してはやりませんよ。たとえ相手が神様であっても」
「すまん、無粋だったな。だが、それなら俺も協力する事にする。アートマ持ちの人体データは欲しいだろ?食った後の体への影響とかな」
「ありがとうございます。...えっと」
「俺はサムだ。キメラアリゲーターのサム」
「改めて、花咲千尋です。アートマはない、ただの花咲千尋」
「うし、早速見てくれや」
「ういっす...体調に問題はなさげですけど、やっぱMAGとして体に入っただけなんで体を作る栄養にはなってないですね。ちゃんと肉を食べるのを忘れないでくださいな」
「おーよ」
「隊長と仲良くなるの早いですね、あの男」
「アートマ無しでもあれだけの術を使えるんだ、それだけで実力は見える。そして、そういうのを隊長は気にいるだろ」
「ま、元から気さくな人だしな」
「そうなのですか。それならもっと声をかけてみても良かったかも知れませんね」
「「「聖女様⁉︎」」」
なんか騒がしかったが、ジャンヌさんならそんなものだろう。アレで意外と茶目っ気ある人だし。
そんなわけで、ちょっと黒字な昼飯時だった。
「それで、千尋さんにはどこまで許可出てるんですか?」
「許可?内地に住めるだけじゃないんです?外と中の違いって」
「ああ、説明してませんでしたね。花咲さんは特級戦闘員として扱われるので、施設利用に関しては制限はありません。しかしまだ新参ですから議会での発言権や提案書の提出、データベースへのアクセスなどは制限されてますね」
「あ、意外と扱い良いですね。結局は鉄砲玉って事だと思ってたんですけど」
「この街には敵が多いですから。遊ばせておく戦力はないのでしょう」
「んで、縁はどんくらい許可ってのは出てんだ?」
「...それが」
「私を聖女として新たな柱にするという事を天使様方がやっているらしくて、その一環なのかいろんな制度への許可が貰えてしまってるんです。...重くないですかこの街?」
「いや、聖女ってだけでそれくらいは普通だからな?今まで会ってきた連中が変なだけだから」
「重いんですねー、自覚はないですけど」
「あ、それなら縁、外部探索の許可貰ってきてくれね?同行者俺で」
「構いませんけど、何かあるんですか?」
「ああ、外で拾った子に肉を届けたくてな。ついでに、どこに預けるのがキョウカにとって一番かの参考になりそうな情報を届けたかったりとか」
「...この街の4大派閥は、警備統括のウリエル様、技術統括のラファエル様、戦略統括のミカエル様、そして教皇代理のガブリエル様に分けられていますね。ですが、それぞれが反目しあっているという事はありませんよ?」
「それなら俺の気にしすぎってだけですから」
そんなわけで縁が門に行ったら顔パスで諸々の手続きが終わるという驚きを感じつつ内地から離れ、そのままショッピングモールへとペガサスとタラスクを飛ばす。
ジャンヌさんは、ペガサスに乗れてちょっとご満悦だったようだ。風を切るのは気持ちいいものな。
なお、タラスクの高速回転飛翔に慣れていなかった俺は、ショッピングモールについてからすぐに酔ったのはご愛敬。回ってる最中は案外大丈夫なのは割と不思議だなー。
「よぉ、キョウカ。昨日ぶり」
「花咲さん!デオンさん!ジャンヌさん!...と、誰っすか?」
「はじめまして、神野縁と言います。千尋さんの後輩です。よろしくお願いします、キョウカさん」
「なんか良い人な雰囲気っすね!」
「ああ。それについては保証する。じゃ、カブソ。こっち来い」
「はーい。MAG補給だねー。あと、充電器にもMAGお願い。あと10%しか残ってないのさ」
「...まぁ、MAGは儲けたから良いんだがな」
そう言ってカブソと充電器とついでにゲーム機にMAGを充填する。
なんかこういう所節約したらもうちょいMAGに余裕が出来そうな気がしてならなかったりするぞオイ。
まぁ、仲魔への労りとキョウカのメンタルケアに関係するので無駄な出費というわけではないのだろうけども。
「んで、変わりはあったか?」
「んー、拠点は動かした方が良いかもね。空気が良すぎて駄目だよ」
「...嵐の前の静けさってことか?」
「そ。ただまぁ、この大所帯で他に行く所はないんだって話しなんだよね、ここの皆は。自衛できるほど強くないから」
「...そうか。それはオンギョウキには話したか?」
「一応ね。ただ、逃げるなら急がれよって言われたよ。オンギョウキも嫌な予感を感じ取ってるんだろうね」
「...わかった。次の拠点に関しての探索も進めておくわ。つーか、キョウカに関してはメシアの街に行けるのが一番なんだけどな」
「陰謀絡みとかアニメみたいだよねー」
「殴って解決するような簡単なのなら、真里亞がなんとかするんだけどな。伝説の水戸光圀公みたく」
「だねー」
そう言ってカブソはピンと張っていた仕事用の空気を緩める。こういう所がコイツの頼りになる所なのだ。
「じゃあサマナー。今日は鯛が食べたい気分なんだけど」
「グルメだなぁ畜生。じゃあ料理ついでに晩飯はここで食うとするか」
そんなわけで、またしても半固定化した食材によるクッキングだ、そんな風に思って下拵え用に調理道具を取り出そうとしたその時。
神聖さを感じる、強大な力が一つ、そしてそれに追随するように多くの悪魔がやってきたのを感じた。
「戦闘準備!」
即座に反応して動き出す皆。キョウカにわらわら集っていた小さな悪魔達が先導してキョウカを隠れさせ他の腕のある悪魔がそれを守る配置につく。
そうして、外に迎撃に出る。俺と、デオンと、縁と、ジャンヌさん。
そうして見えてきたのは、人の姿に翼を生やした天使。
それは、ついこの間会ったウリエルに似ているものだった。
「我が名はラファエル。聖女よ、道を開けよ」
「ラファエル様、一体なんの用があってここに?」
「知れたこと」
「ダークロードのアートマを回収する。それが我らが主の為になる事なのだから!」
そうしてラファエルの後ろから次々と現れてくるハイエストに届くだろう天使のようなナニカが50ほど。どれも理性はなく、しかしそれはしっかりとラファエルにより管理されているのを感じる。
「多勢に無勢、か」
そんな中、どうしてかジャンヌさんは旗を強く握りしめていた。
ココを守る為に戦うべきか、ココを通してキョウカを売るか、逃げ出してキョウカを他に隠すか。
さて、どうしたものだろうか?
『サマナー、笑っていないかい?』
『かもな。笑うしかねぇんだろ。多分な』
「...ラファエル様、ダークロードのアートマとは、キョウカさんの事ですね」
「...個体名は、水無瀬キョウカであったな」
「キョウカさんを、どうするつもりなのですか?」
「我らを疑うのか?聖女ジャンヌ」
「はい。信じる為に」
「何故と問うなかれ。かのメシアの言葉を忘れたか?」
「いいえ、心にしっかりと刻まれています。しかし、私に告げる啓示が、そしてなによりも私の心が、ここを通すべきではないと告げているのです。私の目で、この世界を見る為に!」
「やはり異界の者は邪悪であったか!魔女よ、消え失せろ!」
そうして放たれる
「神威の、盾ェ!」
その滅びの光は、縁の守る思いで止められた。
そして、その瞬間に生まれる言い訳。よくもまぁ、こんなドギツイ策を思いついたものだ。あるいはそれも啓示なのかもしれないが。
「聖女ジャンヌになにをするか!所詮貴様は悪魔であったか!ラファエル!聖女ジャンヌを守るために、貴様の悪逆を止める為に!ここで貴様を止めさせて貰う!」
『サマナー、ごめん似合わなくて笑いそうだ』
『自覚してるよ悪かったな!』
そんな言い訳の元、ショッピングモール防衛戦は始まった。
というわけで、対ラファエル&デミエンジェル部隊です。数の暴力って怖いねーっね事を描けたら良いなーと思います、はい。
週間連載やってるこの作品の文字数は、どれくらいが望まれているのかのアンケート。尚、作者の力量を超える文字数の場合は頑張るだけ頑張りほしますが、まぁ無理でしょうねー。
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4000字〜6000字のお手軽コース
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平均8000字の中盛りコース
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平均1万2千文字の現在目指してたコース
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平均1万5千文字以上の特盛コース