けどそろそろストックが切れそう。連日投稿落としたくないんですがねー。あの日の操作ミスがなければッ!
翌日、平日なのでとりあえず学校に行く。ついでにシュウに確認を取りたい所だ。堕天使ダンタリアンなどというハイクラス悪魔を扱えるサマナーについての情報を。
サマナーネットはフリーランスのサマナーの集いという面が大きいため、メシアンやガイアーズについての詳しい情報はなかなか集まらないのだ。
「よぉ、シュウ」
「ああ、千尋か」
「どしたよ、元気ないな」
「いや、学校で誠とつるんでるのがバレてな。ちょっと問題になった」
「へぇ、大丈夫だったのか?」
「そりゃ、負けたら死ぬからな」
ガイアーズ名物、裁判(物理)である。どんなにガイア教に不利益をもたらそうと、裁判(物理)に勝てば無罪放免なのだ。やっぱ未来に生きてるわあいつら。
「あ、誠だ」
「...よし、行くか!」
「いいのか?絞られたんだろ?」
「それでダチの縁は切れねぇよ!」
昼休み、珍しく解放されている屋上にて、この学校の異能に関わった面子を集めてみた。
俺、誠、シュウに占い師見習いのカオル、デビルシフターのハリマ、ヤタガラスに内定の決まっている
「それで、なんで私達を集めたのよ。千尋」
この中で最も戦闘力の低いカオルが口火を切る。彼女は一応サマナーでもあるのだが、占いの術の精度の高さから高校卒業後はそのまま店を開くことになっている。この同窓会の出世頭筆頭だ。
「現状の確認ついでだよ。今、メシアとガイアの上の方が休戦交渉を始めてるのは知ってるか?」
全員がうんと頷く。まぁ、これは前提か。
「そんな中で、交渉が始まる前にムカつくメシアン、ガイアーズをぶっ殺せって動いてる連中がいるんだよ」
「...やっぱ頭イってるわね、どっちとも」
「「メシア/ガイアと一緒にするな!」
「俺たちは別に仲良しこよしをしているわけではない。早く本題に入ってくれ」
ハリマが話を急かす。ハリマは幻魔クルースニクに変身できるように改造されたデビルシフターだ。ハイクラスの吸血鬼系悪魔、幽鬼クドラクを召喚したダークサマナーがそのカウンターとして現れるであろう吸血鬼ハンタークルースニクを自分でコントロールしクドラクを無敵にするために、その辺にたまたまいたハリマを媒介としてクルースニクを呼び出したのだとか。
もっとも、精神への改造を最後にしてしまうという大ポカによりそのダークサマナーは死んだ。ショッカーかおのれは。
「そのガイアメシアの抗争の関連で、ウチの探偵事務所の職員が狙われたんだ。名前は神野縁。だが彼女が狙われる理由についてはイマイチわからん。ガイアに出資してる人の孫らしいんだが、今はもう縁は切れてんだよ。しかも、どっちかというとメシアが彼女を守りたがってる感じだ。情報か、気付いた事があるのなら言って欲しい。報酬は払う」
「...写真はあるか?」
「ああ」
ハリマに神野の写真を見せる。ハリマは、なにやら自分のスマートフォンを操作し始めた。
「何かわかったか?」
「ああ。ファントムソサエティの裏ネットワークにて、彼女の誘拐依頼がいくつかあった。依頼者は皆違うが、報酬はなかなかに良い」
「うわ、ファントムも絡んでんのかよ。...悪いハリマ。彼女は撫で斬りカナタの元で働く、邪龍タラスクを自在に操るサマナーだって情報を流してくれ。リスクリターンのしっかりしてるダークサマナーならそれでだいぶ収まる筈だ」
「任せろ」
「報酬は?」
「この程度は些事だ。カツカレーうどん定食で手を打とう」
「ヤタガラスの連絡網には、彼女の事はないね。まぁウチは全国規模だからこういう細かい所に手が届いてないだけなんだけど。彼女が狙われてるって情報、一応上げておいていい?」
「頼むわ。いざって時のヤタガラスの初動が早いと心強い」
「おーけー。今度1日分の野菜、ペットボトルのやつでお願いね」
純一が野菜ジュースを飲みながらスマホをいじる。ヤタガラスの連絡網もネット化してるのね。
「むー、なんか私だけ役に立ってない感じがする」
「いや、カオルが知らないって事は大きいぜ?なにせ、ニュートラルな連中はこのことに関わってないって証拠なんだから」
「...よし、せっかくだし友達料金で占うわ。何が知りたいの?」
ストレージから水晶玉を取り出したカオルが言う。それならば、頼らせて貰おう。
「このヤマで相対する敵に対して、俺は何をすれば良い?」
「...見えた。別段、今から何もしなくても大丈夫そうよ。撫で斬りカナタと新しい仲魔が力になってくれるから」
「そりぁありがたい」
「じゃあ、1200MAGね」
「はいよ」
友達料金ありがたし。こいつ内容によっては普通に億単位ふっかけに来るのだ。くわばらくわばら。
「ああ、どうせ皆いるんだ。1つ聞いておきたい」
「どうした?誠」
「テンプルナイト殺しに心当たりがある人は居ないかい?」
「殺された人の名前は?」
「ミフネだよ」
その事に、少しホッとした。殺されたテンプルナイトというので風切さんが真っ先に頭に浮かんだからだ。
「すまん、心当たりはない。サマナーネット当たってみるか?」
「いいよ、場所が場所だし、すぐ特定できるだろうからね」
そんな言葉と共にそれぞれのクラスに戻っていく。僅かな引っかかりを覚えながら。
『デオン、そっちはどうだ?』
『3人ほど
『所属は?』
『わからない、名乗られる前に所長さんが殺してしまったからね。召喚の隙すら与えないとは、凄まじい速さだったよ』
『所長...』
流石撫で斬りカナタ、テンプルナイツを
『じゃあ、神野と合流して駅前に向かってくれ。ささっと風切さんの姉さんの家を調べよう』
向かうのは、マンションヒライ。駅の近くにあるなかなかの立地のマンションである。当然オートロックだが、あいにくこちらにはグレムリンがいる。あいつにかかれば電子セキュリティはだいたい無力なのだ。
「千尋さん!」
「おう、無事みたいだな」
「うーん、なんで午後から全然来なかったんだろ。千尋くん、なんかした?」
「情報操作を少々」
「えー...いらなかったのに」
「散る命は少ない方が良いと思うのだがね...」
「なんか、すいません」
「いや、悪いのは10割で所長だから」
マンションヒライにたどり着く。風切さんの姉、
「サモン、グレムリン」
「知性派のオイラ、今日は大活躍な予感がするんだよね」
実際その通りである。
「チーズケーキが食べたい気分さ」
「買ってやるから早く仕事をしろ」
「了解!」
程なくして、玄関ロビーのドアは開いた。
「流石、オイラだね」
「本当にな」
エレベーターで5階まで登る。すれ違う人は居ない。まぁ、この時間では高級マンションに住んでる人はみな仕事だろう。
そして、五階に到着してすぐに、異界があった。まるで、俺たちの道を塞ぐかのように。
「小規模な異界ですね。人造の可能性が高いです」
「罠だね、迂回しよう」
「でも、なんで罠が?」
「一応聞きますけど、今日の予定を話したりとかはしましたか?」
首を横に振る3人。とすれば占い、予知の類の術か?
「俺は、突っ込んでぶっ壊す方が良いと思います。敵の戦力を確実に削る為に」
「よし、そっちの方が面白そうだね!行こうか!」
異界の中に侵入する。
中で異界を作っていたのは
隣の所長から、風が流れるのを感じる。
「人の子よ、去りなさい。あなた方を傷つける理由は私にはありません」
「すいません、パワーさん。所長がエンジン入っちゃったみたいなんで」
所長は、物凄い笑顔で、問答無用にパワーに斬りかかっていった。
「人の子⁉︎」
「天使を殺せるとか、今日はツいてるよ、私!」
「ええい!話を、聞け!」
パワーが手に持った盾で所長のクレイモアを受け止め、槍で頭蓋を突き破ろうとする。だが、槍という獲物はクロスレンジでは一手遅い。自分にかけた疾風魔法で空で回転し槍を避け、カウンター気味に大上段を繰り出す。今度は、盾ごとぶった切った。
所長の持っているクレイモアは、元はただの数打ちだったが、所長が長年にわたり悪魔を切り続けたことにより悪魔殺しの魔剣と化しているのだ。主に、悪魔からの呪いによって。
「...仕方ありません、お覚悟を!」
「覚悟してないわけないでしょうが!」
右手で槍を突き出しながら、傷ついた左手に魔力を集めるパワー。だが、所長の方が速い。突き出された槍を足場とし、今度は脳天に兜割りを仕掛けた。
「兜で受けた⁉︎素敵だねぇ!」
「狂戦士、これで終わりです!
右手のメギドが所長を狙う。このままなら所長は力場無視の大ダメージを受けてしまうだろう。だがしかし...
「
そんな小さな魔法によってメギドを放つ手を吹き飛ばし暴発させるなんて絶技をかますのが、撫で斬りカナタ。ウチの探偵事務所の所長である。
そして、その魔力のダメージはパワーへと逆流する。
「そんな隙、見逃すわけないよね!」
もう一発の兜割り。寸分違わず同じ場所に打ち込んだその斬撃は、パワーの兜を貫き、その脳天をカチ割った。
「やっぱ、天使は強いね!」
返り血を浴びながら、そんな事を口にする所長はやっぱり
異界が崩壊してすぐに風切さんの家に侵入する。
人のいた痕跡がある。それも覚醒者。残留MAG濃度からしてそう時間は経ってない。
「千尋くん。追跡」
「もうやってます!」
魔法陣展開代行プログラムにより、サンプリングしたMAGの持ち主を探査術式にて調べる。今回は自分たちの存在がバレているのでアクティブソナー、MAG波を放出してその反響から位置を把握する術式だ。こっちの方が制御は楽で精度も高いのだ。
「見つけました。北東方面、1km、移動してます。この方面は、メシア教会遡月支部が目的地と思われます!」
「じゃあ、飛ぼうか!」
「来て、タラスク!」
「手綱は任せたデオン!サモン、ペガサス!」
「任せてくれたまえ、サマナー!」
三者三様の飛び方で追跡する。だが、敵も今のアクティブソナーでこちらに気付いたのか大量の召喚をしてきた。
クラマテングをリーダーとした、カラステングとコッパテングの群れだ。デオンと初めて会った日に逃した懐かしのサマナーとの対面である。
「タラスク、ファイアブレス!」
「耐性の上から沈める!
「聖なる蹄で魔を散らせ!ペガサス、
まさに鎧袖一触だ。生き残ったクラマテングも所長が撫で斬りにした。運良く残ったコッパテングも、「流石にありゃ無理だべ」「んだんだ」と契約に違反しない程度に道を譲ってくれている。所長に対しては特に。なるほど、大量召喚にはこういうデメリットがあるのか。
「所長、この前のサマナーが相手ならデカいのが来るかもしれません。気をつけて」
「あー、うん。流石に縁ちゃんを心中に付き合わせる気はないから安心してよ」
「俺はいいんですか?」
「千尋くんなら、しれっと二人分のパラシュートとか用意してそうだし」
「信頼なんですか?それ」
そんな軽口を叩きながら進んでいく。だが、デオンの様子がおかしい。いつものデオンなら、格好つけて曲乗りして俺を驚かせようとするようなものなのだが。
そう思い、前にいるデオンの顔を見る。傍目で見てわかるくらいに緊張していた。まじか。
「...サマナー、あまり動かないでくれ。ペガサスが合わせてくれているだけで、実はあまり大丈夫じゃないんだ。というか落ちそう」
「...すまんデオン。パラシュートは一人分しかストレージにないんだ」
「落ちる前提かい⁉︎」
そんな一幕の後に、走行している車に追いつく。メシア教会まではまだ遠い。さぁ、存分に尋問をするとしよう。
タラスクが車の前に、所長が車の上に、俺が車の後ろにつけて囲む。タイヤの破壊は考えたが、所長の
車のドアが開く。そこには、神野のアパートの前でヴァーチャーを召喚したあの時の金髪のサマナーがいた。
「優秀な術者だね。私たちをこんな短時間で見つけるだなんて」
「聞きたいことがあって追いかけさせてもらいました。黙秘してもいいですけど、その時はウチの所長がなにをするかわからないのでご注意を」
車の上でブンブンとクレイモアを振るう所長。ちょっと遊んでるなあの人。
「それは怖いね、撫で斬りカナタは私たちにとってはちょっとした悪夢だから」
「なので、車の中でハイクラスの召喚狙ってるもう一人も出てきてくれると助かります。」
P-90を向けてそう一言告げる。
そのカマかけに、彼女は引っかかって動いてくれた。それに伴っての中の奴の召喚も、不完全で解放してくれたようだ。
「...来たれ力天使よ!ヴァーチャー!」
「サモン、霊鳥スザク!」
そして、金髪の女性はショートソードとラウンドシールドを取り出し戦闘準備をした。そして、中から出てきた男性はアームターミナル型COMPのアナライザーをタラスクに向けていた。
戦闘開始である。
「ヴァーチャー!あの天馬の小僧を!」
「承知!」
「スザク!上の奴を!」
「私の炎で焼きつくしてあげましょう!」
そして、男性と女性はタラスクを従えた神野へと向かった。神野が守られるだけの女の子だったならそれは正しいだろう。だが、神野縁という少女は、戦闘形態を発現できるほどのファイターなのだ。
「ハレルヤ!」
ガントレットの発現した拳が、ラウンドシールドを一撃で粉砕する。それに仰天しているところから、神野縁の戦闘能力については詳しい情報を得てはいないとみた。
故に、今は目の前の天使を殺す事を考えよう。
「
「サモン、バルドル、雪女郎!」
バルドルの召喚位置をヴァーチャーとの射線上に入れる。本来なら悪手だが、ことバルドルに至っては別だ。なにせこいつ、不死身である。
「テメェ、いきなり盾にしやがって!」
「いいではありませんか。あなた、硬いだけが取り柄なのですから」
「...ふざけているのですか?人の子よ」
「ああ、ふざけてる。なにせ相手がたかが天使だからな」
「言わせておけば...ッ⁉︎」
背後からペガサスに乗ったデオンによる奇襲。ヴァーチャーは頭こそ回避したが、本命である翼にダメージが入った。
「たたみかけるぞ!雪女郎、合わせろ!」
「はい、サマナー!」
魔法陣展開代行プログラム起動。収束術式展開、MAGのラインの焦点を回避しているヴァーチャーに合わせ、雪女郎に指示を出す。
「魔導術式、展開!ターゲット、ロックオン!」
「凍てつきなさい!
範囲に飛び散るはずの氷属性を術式で収束させ、氷の槍としてヴァーチャーに向ける。だがヴァーチャーもさるもの。翼への
戦闘経験多し、だが、それ故に奇襲にかけられる。
「起動!」
躱したはずの氷の槍が、ヴァーチャーに再び襲いかかる。マグネタイトのラインによるロックオンだ。今時こんな魔術師然とした戦い方をするサマナーなんぞ希少価値なので思考の外に置いていたのか、あるいは本当に知らなかったのか。
まぁどっちでもいいことだ。
「
自分を中心にした暴風で氷の槍を防御したヴァーチャー。アナライズはジャミングにより通らないが、今の行動で大体の耐性の検討はついた。
まず、タラスクのいる神野の方に向かわなかったことから、火炎耐性はない。次に、氷結魔法を術で防御しなかったことから氷結に耐性はない。疾風魔法を多用することから言って、疾風魔法の耐性は持っている。悪魔合体で呪殺の弱点は消されているのは当然であり、天使としての属性から言って破魔が通るとは思えない。
弱点の可能性が高いのは、電撃だ。
というわけで、2000円の自作ストーンの出番である。暴風の中心に向けて、ジオストーンを投げつける。オーバーロードの必要はない。疾風魔法のマグネタイトに反応して、勝手にぶっ壊れるだろう。
そうすれば、中の電撃がヴァーチャーを襲う。
「ガハッ⁉︎」
『デオン』
『わかっているよ』
暴風が止まった瞬間に、ペガサスの突撃がぶち当たる。そして、その背中に立っていたデオンがヴァーチャーの両の翼を断ち切る。あの即席コンビ、もう息が合ってきたようだ。
「じゃ、フィニッシュ頼むぜ?落下してるだけの奴だ、外すなよ?」
「たりめぇだろうが!万魔の乱舞!」
力場を無視した万能属性の五連発がヴァーチャーを襲う。1撃目で腕を、2撃目で胴を、3撃目で頭を、4撃目で足をぶち抜いた。尚、5撃目は外しやがった。MAGの無駄だからやめてほしいんだがなぁ...
「まさか、この私がこんなにもあっさりとッ⁉︎」
「運が悪かったね。私たちは最近強くなったばかりなんだ」
その言葉と共に放たれた斬撃が、ヴァーチャーの首を落とした。さぁ、神野の援護に行こう。
「
「
200メートル上空で、ハイクラス悪魔霊鳥スザクと浅田彼方は、思う存分に殺しあっていた。
「あなたのような悪鬼、生かして置けませんね!南を守る聖獣として!」
「どうでもいいわ、そんなこと!使命だのなんだのに囚われて、殺し合いができるかぁ!」
ただの術のぶっ放し合い。本来ならばどう考えても生き物として格上のスザクが圧倒するはずなのだが、炎と風は互角の状況にあった。
その原因はただ1つ。浅田彼方に刻まれた呪いの如き多くのMAGである。魔剣と化したクレイモアを使い続ける事により、悪魔の力を僅かながらその身に取り込み続けていたのだ。
それが、“超人”浅田彼方の力。戦えば戦うだけ強くなる悪鬼。
そして、そのMAGを制御する強靭な理性を持って初めて、この浅田彼方というデビルバスターは完成する。
「消えた⁉︎」
打ち合っている最中、目の前で術を放ち続けている筈の浅田彼方は、消え去った。自分の炎は彼女を捉えた訳ではない。ならばなぜ消える?
その思考を割いた瞬間の分だけ、スザクは反応が遅れた。
炎を気にせず弾丸のように飛んでくる悪鬼の斬撃に。
「あんたが炎なんて使うから悪いのよ。蜃気楼を作らせて貰ったわ」
一太刀で首を落とされたスザクは、恨み言を言うでもなくただ化け物を見るような目で、見た。
火傷で爛れた皮膚を持った、ひとりの
「...うん、流石にちょっと貰いすぎた。魔石使おう」
そうして魔石の中にある治癒の効力のMAGで火傷の跡を完全に消してから、神野縁の援護に向かう。
女性のメシアンはもう底が知れているが、男性のサマナーの方はまだ隠し球が残っているかも知れない。それとやりあうのは楽しそうだ。そんなことを思いながら。
「タラスク!」
タラスクの吐いたファイアブレスが二人に距離を取らせる。彼女は戦闘経験がまだ浅いのだろう。故に堅実に、自分の身を守る事を優先する戦い方をしている。おそらく本来のファイトスタイルからは少し離れた戦い方で。
メシア教会所属
本来、彼らに与えられた任務は神野縁関係の情報を隠匿することであった。
今流れているのは、所詮噂だ。数日もすれば消えてなくなるだろう。本当の価値を知らない者たちからしたら、ただ珍しいだけの少女なのだから。
だが、今目の前にある現実はなんだ。何故守ろうとしていた筈の彼女が自分たちに拳を向けている?
何故、守ろうとしていた彼女がこうまで戦意を高めている?
安寧の中で生きるのが彼女にとって一番の筈だ。
その為なら、全てのテンプルナイトの命を投げ捨ててでも釣り合いが取れる。
彼女の存在は、それほどに人類にとって重大なのだ。
故に、傷つけることなどもってのほかだ。だから、使用できる術も限られている。
「聞いてください!私たちはあなた様に敵意を持っている訳ではないのです!」
「だったら、どうして千尋さんたちに悪魔を向けたんですか?」
「それはあの者達が信用できないからです!あの者達は異端ですよ⁉︎」
「でも、その異端の人たちが私を助けてくれた恩人です。私にとってあの人たちは、あなた達より信じられる」
それは、刷り込みではないのか?そう口に出そうとして、迷った。
彼女の心は今、異端の元にある。それを刺激する意味はあるのかと。
「ミーア。こりゃダメだ。スザクがやられた。撫で斬りが来るぜ?」
「私のヴァーチャーもです。これは、条件を呑ませた上で降伏するしかありませんね」
ミーアは、ショートソードをストレージにしまった。
ファルコは、「やれやれ」と口にして戦意を消した。
「降参です、聖女様。全ては話せませんが、話せるだけは話しましょう」
「これが、私たちが回収したデータです」
「お母さんの写真?」
「日付と共に腹が膨れていってるな。何かの病気か?」
「違うよ、サマナー。これは至って正常な人間の機能だ」
「妊娠したんだよ、彼女は」
その言葉への反応は、困惑だった。意味がわからないのが半分、なぜわかったのかという困惑が半分だ。
「すいません、妊娠って何ですか?」
「昔の時代の子供の作り方だよ。本来、赤ちゃんは女性の胎内でゆっくりと大きくなっていくものだったんだ。出産器という器械で現代は代用されてしまっているけどね」
「へー、私レアな生まれ方してたんですね」
「...ああ、だから悪魔召喚の生贄にはうってつけなんだ。お前が狙われてるのはその辺が理由だろうな」
「そうなんですか...まぁ、それが理由なら千尋さん達が居るので大丈夫ですね!」
当然、嘘だ。
この事は、絶対に広めてはならない。何故メシアンが神野を守ろうとしていたのかが得心がいった。ミーアさんとアイコンタクトで指示をする。俺のカバーストーリーに乗れと。
出産器とは、別名マグネタイト混合生成機。両親の魂と細胞をサンプリングして掛け合わせ、人造の命を生成するという装置だ。これにより出産の効率化が可能になった、と政府は喧伝しているが実の所は違う。人が子供を自然の手段で産めなくなったのだ。
ヤタガラスが総力を持って調べているが原因は未だもって不明。だからこそ作られたのが邪法による子供の生産装置である。社会の存続を求めたが故の苦肉の策。当時の政府はよくもそんな決断をしたものだ。
だが、その生産装置で産み出された子供達の中には、人間としての魂を持たずに生まれてくるものが現れた。デビルシフターやペルソナ使い、異能者などがそれの代表例だが、人間以上の事が出来るようになった者たち全てがそれに当たる。それを進化と取るか退化ととるか、その答えは今も先送りにされているが。
だが、そんな邪法により産まれた純粋な人間でない者たちも今となっては多数派どころか人類だ。今更正しい人間がどうだの言った所でどうなるという話でもない。
それが、裏の世界に関わらなければ。
神野縁の魂は、純粋な人間のものである。それはつまり、現代ではただ一人だけの平成結界を発動した当時の天皇陛下と同じ体の持ち主なのだ。
現代の魔導技術と合わせれば、平成結界のバックドアになり得る。そんなものが邪な考えの者達に渡ってしまえば、この世界がどうなるかなど火を見るよりも明らかだ。
ギリギリで繋がっていた世界の、崩壊の引き金となり得てしまう。
神野縁という少女を、邪な者の手に渡してはならない。
そしてそれは、メシア教に渡してはならないということでもある。
そして何よりも、
下ろしていたP-90の銃口をミーアさんの方に向ける。セーフティは外した。狙いは、外さない。
「どうやって、風切未来さんに辿り着いたんですか?」
「メシア教の職員であった彼女の遺書が遺品整理をしたら見つかったからです。神野紬さんが自然妊娠し、出産した事と、テンプルナイトでその子を守って欲しいと書かれていました。」
「父親の事は?」
「昏睡状態でしたが、
「でしょうね」
ミーアさんの肩越しに、
迷いは、なかった。
「酷いな、チヒロくん。せっかく父親が娘を助けようとしていたのに」
「...聞くまで気付かなかった自分に嫌気がさすよ。
肉体に染み付いた癖は、二人が親子だと示している。
魂は、二人が親子だと示していない。
それはつまり、魂だけが別人だということを示している。
風切三郎という人物は14年の昏睡の後に死に、その
所長の所に訪ねに来たのは、テンプルナイトの外の人物の知り合いを所長しか知らなかったから。
事務所に来た時にテンプルナイトの服装をしていたのは、テンプルナイトを殺してその装備を奪ったから。
まったく、大した行動力だ。
「デオン、殺すぞ」
「了解だ、サマナー」
「待って、下さい」
神野の声が響く。涙声の癖に、どこか芯がある。
「私、風切さんみたいな人がお父さんだったらいいなって思ってたんです。理由なんてなくて、なんとなくなんですけど」
「そうだ、俺がエニシのお父さんだ!」
「だったら何故、神野の親父さんを探そうなんて言い出した?守護霊であるお前には、確信が持てなかったんだよ。家族の繋がりがわからなかったから。所詮、悪魔だもんな」
「違う!俺はヒトになったんだ!俺が風切三郎だ!」
「じゃあ!」
「抱きしめて、貰えますか?」
「...ああ!当然だ!」
ミーアさんとファルコさんの制止を躱し、神野は風切さんの元へと行く。何をするのかわかった俺と所長は、ただ見つめる事にした。
そうして、互いに歩み寄って抱きしめられる距離まで来た時風切さんは
気付いたのだろう。彼女の持つ加護は、悪霊である自分を消しかねないものなのだと。
故に神野は風切さんの胸にトンと優しく拳を当てた。涙を流しながら。
神野のヤコブの手足は、悪霊を祓う。
そうして、悪霊の影響が消え生きる力をなくし、しなだれかかった風切さんは神野を抱きしめているかのように見えた。
「ありがとうございました、止めないでくれて」
涙を拭った神野は、空元気の笑顔でそう告げた。その顔がちょっとムカついたので、頭をぐしゃぐしゃっと撫で回す。
俺が言われて救われた言葉を、今の神野に送ろう。きっとそれが、俺にできる神野への慰めだから。
「泣きたい時は泣け。それが人間ってもんだ」
そんな、ちっぽけな言葉を。
「千尋さん...ありがとうございます」
神野をそっと抱きしめる。神野は、声を殺して泣き続けた。
この日神野縁は、自分のルーツと向き合い、そして終わらせた。簡単に納得できるような事じゃないのはわかっているが、それでもきっと大丈夫だろう。彼女は、一人じゃないのだから。
それからのこと。
神野はミーアさんのツテで、火葬場を安く使わせて貰っていた。風切さんの遺骨は、母親のものと一緒の墓に入れてやりたいそうだ。風切さんの両親は既に亡く、母親も実家とは縁を切っているのだから多分問題はないとのことだ。実際、十文字さんに確認を取ったところ問題ないと言ってくれた。ただ、墓の場所は教えてほしいとの条件付きだった。おそらく、俺に三億を突きつけてきたあの爺さんだろう。なんだかんだで、親子の情はあったのだろう。
神野には、裏の世界に関わるものとして人を助け、金を稼ぎ、立派な墓を作る。という人間らしい目標がまた1つできた。それは多分喜ばしいことなのだろう。聖女としての責務や人間としての責任とかを考えるよりも、ずっと神野らしい。
だが、ガイア、ファントムに聖女神野縁を誘拐しろと命じた者の調査は一向に進んでいない。その情報源を明らかにするまでは、完全にこの件が終わったとは言えないだろう。
そんな事を考えながら魔術書を読んでいると、横から神野がやってきた。なにやら俺に用があるようだ。
「千尋さん!」
「どした?」
「いい加減、神野ってやめてくれませんか?縁って呼んでくださいよ!」
「それは名案だね。サマナー、親睦を深めるのは重要だよ?」
『それに、今のエニシには親しくしてくれる人が必要だ。そしてそれは君がやるべきだと思う』
デオンの説得にはぁ、とため息を吐く。あまり親しくなると死んだ時が面倒だと思うのだがなぁ...
「まぁいいさ。お互い天涯孤独の身だ。墓参りくらいは行ってやるよ、縁」
「いや、そこは一緒に生きるって言いましょうよ」
「無理な約束はしないタチなんだ」
「えー」
そんな時、つけていたテレビからニュースが聞こえてきた。
1ヶ月前の飛行機事故、JIL4987便消失事件、その追悼式が行われていたのだと。
「千尋さん、行かなくて良かったんですか?」
「...行った所で、何にもならないからな」
ただ、黙祷だけは捧げていた。あの日俺が踏みにじった命の為に。
その日の夜、俺はサマナーネットで連絡を取ってきた人と会う約束をしていた。彼は初心者サマナーらしく、最初に何を買い揃えればいいかを相談したいとのことだ。折角頼ってきてくれたのだから魔石くらいは融通してやろう。それで恩が買えるのならば安いものだ。
「とか思ってたんだがなぁ」
「サマナー、この気配、只者じゃないよ」
「わかってる。あの新人サマナー、飲まれたか?」
そうして、その気配の元に辿り着く。そこには、MAGを取られて倒れている男と、見覚えのある女がいた。
あの日に俺が殺した筈の黒衣の女帝だった。
「ほう、まさかそなたとまた相見えるとはな」
「サマナー、知り合いかい?」
「...ああ、コイツの名はセミラミス。俺が殺した」
「ねくろま、という魔術らしい。我を屍鬼とし小間使いにするとは恐ろしい小娘よな。花咲千尋。命ずる。我を殺し直せ」
「...ああ、当然だ!サモン、バルドル、雪女郎、ペガサス、カラドリウス!」
「コイツを殺すぞ!」
感想で、錬金術でも使ったのでは?との声がありましたが、それはありません。比較対象がダメダメだった為縁が完璧な人間に見えていたのです。
調整平均8.9とかいう作者的にはヤバイ数字出しているこの作品の評価について、評価機能がどれほど使われているのかの個人的興味からのアンケート。暇な時にでもどうぞ。
-
評価機能を使用した
-
評価機能を使用していない