「何故私がああいう風に言ったかだったな。端的に言えばノイズに殺された奴らは単に運が無かっただけだ」
少女は殺意にも似た怒りを奏に向けながら話す。
「普通の人間はノイズを倒せない。一方的に殺される、いわば台風や津波のような災害みたいなものだ。そう考えると殺された奴らはついてなかったとしか言えない。だが、今死にそうになってるそいつはどうだ?」
少女は奏が抱えている観客の少女を指差す。
「元々の原因はノイズの出現だが、現にそいつを傷付けたのは何だ!お前の力が足りないせいで武器を砕かれ、そいつに破片が刺さって死にかけている!直接の原因はお前にあるんだ!」
「アタシは…!」
違うと反論したいが言葉が出てこない。少女の理屈は奏からすれば受け入れられるものではない。しかし少女の述べた現状は一つも間違っていないのも事実だ。確かに自分はLINKERを使って無理に適合係数を上げている。翼のように本来の適合係数が高ければ、今回のようなことも無かっただろう。
「人が人を殺す。経緯はどうあれ結果的にそうなることが、私は許せない」
そう言うと彼女はノイズの方へ歩いて行く。
「もう気分じゃなくなったからさっさと片付けてやる。そこにいると巻き添え食うからさっさと失せろ、邪魔だ」
「クソッ!」
少女の言葉に反論できなかった悔しさと自分の無力さに対する怒りが心を埋め尽くしたが、今すべきことを考え奏は観客の少女を抱え翼と撤退していく。
奏達が安全圏まで下がったのを確認した少女は力を解放していく。
「フォニックゲイン急激に上昇!並びに周囲の温度が低下していってます!」
「何をするつもりだ!?」
「砕けろ!!」
少女はそう言うとハンマーを振り上げ、全力で地面に叩きつけた。
《Niflheimr》
すると少女を基点に周囲が凍っていき、まるで津波のようにノイズ達を呑み込んでいく。全てのノイズが凍り付いたのを見た少女は近くの氷を小突く。氷はノイズもろとも砕けていき、破片となって散っていった。
「さっさとそいつを治療してやれ。もしそいつが死んだと知ったら、再起不能になるまで叩き潰す」
そう言うと少女は跳躍し、その場を離れていく。
「ミョルニルの反応消失。見失いました…」
「…負傷者の救護と奏達の回収だ。奏にはフォローが必要か」
「だいぶ精神的に堪えたでしょうね。奏さんの性格上、結構引き摺りそうなこと言われましたからね」
そうだな、と頷きながら弦十朗は緒川に指示を出す。
「あのミョルニルのシンフォギア奏者を調査してくれ。接触が可能と判断出来たなら二課への勧誘も頼む」
「わかりました」
了子も気になるわねと呟きながら言う。
「私が手掛けたのは奏ちゃんのガングニールに翼ちゃんの天羽々斬の2つだけ。現状ではそれ以外にシンフォギアは無い筈なの。可能性として一番あり得るのは、米国のFISがこちらから提示した櫻井理論から試作品ないし1つめのギアを完成させたってとこかしら」
「だがそのような報告は一切来ていない。第一あの秘密主義の集まりが、こんな我々にすぐ気付かれるようなことをするわけがない。この矛盾がどうにも引っ掛かる」
突如現れたミョルニルのシンフォギア奏者。彼女は何者なのか、調査が始まるのだった。