---蒼い空、白い雲、そして視界に広がる魔物の海。
「今日も良い天気だね」
「あんちゃん!現実逃避とかしてる場合じゃねえぞ!前見ろ!剣抜け!死ぬぞ!おーい!」
うるせえハゲがァ!
☆
「いやーこれであんちゃんと仕事すんのもこれが最後か!なんか寂しいな!ガッハハ!」
「そうだねえ。俺もやっと故郷に帰れるよ。」
「あんちゃんは故郷に帰ったら何するんだい?彼女でもいんのかね?」
なにもすることがないのが問題だし彼女がいないのも問題だ。問題しかねえ・へ・
でも鍛練ばっかりするのも村のみんなに変な目で見られるからなー。やっぱそれ以外の事もするべきなんだろうけど。
「うーん・・・うちの島、なにもないからねえ。いっそ、村おこしするのも良いかもしれない。」
「あんちゃん、若いくせに偉いなあ・・・。普通、あんちゃんくらいの歳だとさっさと島出るのが自然だろうに。」
「やむにやまれぬ事情があったんだよ・・・」
「ふぅん・・・?まっいいや!東の町まであと半分くらいだ。残りも頼むぜ!」
やむにやまれぬ事情(ウ―ノからの逃亡)、だもんなあ。突っ込んでくれなかったのはありがたいから俺も何も言わないけど。
でもなにもやることがないと退屈だもんなー。スローライフも良いと思うけど、正直こんな若い時分からするもんじゃねえって気持ちもあるし、でも島から出たらなんか取り返し付かなくなりそうだし。うーん、迷うね。
まあそれもこれもまずは島に戻らないと始まらないんだけど---
「・・・おい、あんちゃん。」
「どしたの。」
「よろこべ、仕事だ。とびきりのな。」
「へっ?」
言いながらどこかを指差すおっさん。その方向を見ると砂煙が巻き起こっていた。なんだろ、あれ。
「分かるか?あの砂煙んとこだ。もうちいと目凝らしてみろ、ぶったまげるぞ。」
「目を凝らす?---は?」
言われるまま目を凝らして砂煙のところを注視する。そうして分かったのは、地平線が動いているという異常事態。否、アレは地平線ではなく---!
「アレ、魔物ォ!?」
「そうだ!そんでもってやけに殺気だっていやがる!このまま街に逃げ込むのはわけねえが、そしたらあいつらも俺たちを追って街を襲っちまう。そうなったらいよいよやべえ。あの数を防衛できるほどあの街には人数も手練もいねえ!だからよ、あんちゃん!全部やれとは言わねえ。数を削ってから逃げるぞ。最低でも4割くれえは削らねえと街にも逃げこめねえ。なーに、俺も自衛の心得くらいはある。魔物に集中してくれ!最悪荷物も捨てりゃあいい。命あっての物種だからな!なんにしろ数を削れ!いいな!?」
「マジかよクソッタレめぇ・・・!」
数日前のフラグ回収と同時に死亡フラグまで立ちやがる・・・これもすべてウ―ノってやつのせいなんだ!
☆
「やるしか、ないよなあ・・・」
腰に下げた剣を抜き放ち、ぼやく。初の実戦がとんでもない事になったが、泣きごとを言っても魔物は引かないだろう。そして全力を出さないまま、この状況を切り抜けられるとも思わない。
不思議だ。欠伸が出るほど平和な前世では絶対に置かれないような状況に置かれてなお、心は平静を保っている。いいやむしろ、平時よりも思考が冴え渡っていく気さえする。どう考えても異常だが、この危機を乗り越えられるなら構いやしない。生き残れば考える時間などいくらでも湧く。
差しあたって、まずはこの状況を切り抜けることだ。即ち---
「剣拓見せたくなかったんだけど、そうも言ってられないか。」
言いながら、魔力を廻す。島にたまに来ていた交易艇の商品の剣をこっそり取っておいたために、数はそれなり。尤も、質など語るべくもないほどに粗末な剣ばかりだったが、この状況では手数こそ命だ。期待できる戦力が自分ひとりである以上劣勢であることは火を見るよりも明らかだろう。
数の利はすでにあちら。であれば、物量作戦は下策だろう。ならば残る質の利を取るほかは無い。加えて速攻でカタを付けねば体力を削られてジリ貧だ。魔物の群れを全滅させる必要はなく、削るだけでいいのだから、チマチマ削っている時間は無い。
故に疾風迅雷。剣を以て
「-----剣よ、我が元に集え」
発せられるのは
戦闘シーンでまでふざけたら萎える・・・萎えない?そもそもシエテはギャップで攻めるお兄さんなので戦闘だと地の文も真面目になります。シルヴァリオチックなのは仕様。シエテなら閣下みたいに七刀流出来そう(小並感)