天星剣王憑依録   作:ジャガルナ

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明日の四時に予約しようと思ったけど、おまえら古戦場やん?見る暇、ないやろ?(無言の圧力)


なんでこれ、置いときますね


ディエス・ミル・エスパーダ

シエテの魔力が形を持って現実世界へ現出する。形こそ、そこいらにある平凡な剣の域を出ないが、その見た目は異常だ。宇宙(ソラ)にて輝く天体が如き煌めきを放つ刀身が、闘志と共に魔物の軍勢へ向けられる。

 

 

けれどそれを受けて魔物が止まるかといえば否だろう。彼らからしてみればちっぽけな人間が一人いるのみ。獰猛なる上位者の本能かあるいは矜持か、彼らは真実こちらの事を路傍の石程度にしか思わない。いつでも弾き飛ばせる矮小な存在。それが彼らの総評だろう。

 

 

 

「---穿て」

 

 

故に先手はこちらが貰う。油断、慢心大いに結構。やりやすくて大変よろしい。お前達が取るに足らぬものと断じた羽虫に割かれて死ぬがいい---!

 

 

静謐な声が齎すのは一点、破壊それのみだ。乱回転しながら魔物の軍勢へと斬り込んでいく剣拓を視界の端へと収めながら、俺自身も吶喊する。時間などない、俺自身が相手取れる数などたかが知れる。チャンスなどそう何度もありはしない。よくて2回が限度だろうが、ああ今はそんな思考すら煩わしい。

 

 

「フッ---!」

 

 

気合一閃。師もおらず、未だ稚拙な剣術だが、そこには確かな才能の欠片と研鑽の成果が表れていた。過たず肉を裂き、骨を断ち、命を奪った一撃に、嫌悪でも湧くものかと思っていたがそれもない。やはり自分はどこかおかしいと他人事のように感じたが、この状況ではむしろ好都合だ。嫌悪に足を止めてしまえば一瞬のうちに軍勢に押し潰されるだろう。

 

 

足を止めれば死ぬ。理性でなく本能で理解できたがそれを実行できるかといえば別だろう。いかに精神が揺らがずとも、実戦での立ち回りなどこれが初めてで分かることの方が少ない。故に---

 

 

 

「チィッ!」

 

 

迫る。迫る。迫る。湧いては尽きぬ獣の泉。どう振り回しても肉を裂く感触がするほどに、もはや視界は魔物しか映らない。さらに死んだ魔物が足元に倒れていくのだから邪魔で邪魔で仕方がない。一つ気を逸らせばまた一つ。それが戦場で致命の理とおぼろげながら理解してもなお止められない。死骸を乗り越えて新たな魔物が迫り、それを死骸を盾にやり過ごす。けれどそれも付け焼刃だ。傷はどうしたって増えていく。

 

 

魔物の爪が防御を掻い潜って肌を裂く。けれど不思議と痛みは感じない。脳内麻薬が出ているのか、痛みに呻かないで済むのはいいことだろうが、それもいつまでも続かないだろう。感じないだけで傷は増えていく一方で、それと同時に血も流れて消えていく。自分が思っている以上に、どうやら時間も少ないようだ。

 

 

つまりはここが勝負どころ。ここで決めねば軍勢に因る轢殺は確定された未来と化すだろう。ならばこそ、今できる全霊の一撃を見舞う以外に有り得ない。

 

 

 

「俺は俺に斬れぬものの存在を許さない---」

 

 

怨嗟のように吐き出されたのは絶対の切断を誓う鋼の宣誓。なけなしの魔力を廻し、今自分が出せる全ての剣拓を現実へと投影する。同時、魔物が全方位から迫ってくるが剣拓を盾としやり過ごす。

 

 

罅割れていく魔刃を視界の端に収めつつ、両手で元から腰に下げていた直剣を腰だめに構えて魔力を纏わす。許容量を遥かに超えた魔力量に剣が悲鳴を上げているが知った事ではない。さらに上から魔力を纏わせて砕けないように押し固めるように補強していく。

 

 

それは自分ではない本来の剣王が扱う奥義。未だ不肖の身なれども、この身に宿る才覚は確かに十天の長に相応しいもの。だからこそ、完全再現まではいかずとも、この場面を斬り拓くことは出来ると根拠もなく確信している。

 

 

さあ叫べ。声高らかに謳い上げろ。之なるは王の洗礼。天に瞬く星を断つ、絶対無比なる滅びの剣---

 

 

 

「---”ディエス・ミル・エスパーダ”」

 

 

 

---斬、と。

 

 

極限まで込められた魔力は銀河の軌跡を引きながら、目につく獣を全て断つ暴虐と化した。それだけにとどまらず振り抜かれた剣に砕かれた剣拓の欠片が残った魔物に襲いかかり、その肉を銃弾のように穿っていく。

 

 

そうして、刃の嵐が過ぎ去ったあと、そこに残ったのは傷だらけの軍勢がこぼす、怨嗟と苦痛の呻きだけだった。




なお、貧血でぶっ倒れたシエテくんは御者のおっちゃんが全力で回収して逃げました。アンタがMVPやでぇ・・・!
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