頭の中がフラッシュをたかれたかのようにチカチカしている。
私はどうしたのだろうか……。
魔導国という国を作り支配者アインズ・ウール・ゴウンとして活動していたのではなかっただろうか……。
よく思い出せない。頭の中のチカチカが大きくなる。体もなんだかピリピリしている。
ピリピリ?
睡眠無効・状態異常無効のアンデッドだというのに?おかしい、何かが明らかにおかしい。
頭の中のフラッシュがさらにひときわ大きくなる。
そして私はその白い空間から抜け出るようにすべての光景が後方へと消し飛んでいった。
♦
「……モモンガさん」
誰かが俺を呼んでいる。
「……モモンガさん?」
飛ばされていた意識が段々戻ってくる。
ここはナザリック第九層にある円卓の間だ。巨大な黒曜石の円卓に41の椅子が並べられている。もう自分以外の席に座る者などいないというのに……。
いや、使うことがないと諦めていた部屋だ。アインズは赤い眼光を見開き周りへとそれを飛ばした。
「ん?」
「モモンガさん」
「え?」
「モモンガさん、どうしたんですかぼーっとしちゃって……」
「……ヘロヘロさん?」
「はい、ヘロヘロですよ」
そこにいるはずのない人物。どれだけ探そうと、望もうともう会うことの出来ないと思っていたギルド『アインズ・ウール・ゴウン』のギルドメンバー。それがそこにいる。
(……ヘロヘロさん?)
人物とは言ったが人ではない。
(ここはナザリックの円卓の間……?俺はどうしたんだっけ)
頭の中でフラッシュが焚かれ、意識を失ってからよく思い出せない。アンデッドなのにまだ頭と体が痺れているような気がする。
しかし、目の前の光景が幻ではないことにあらためて気づき、つい大声をあげてしまった。
「ヘロヘロさん!?ヘロヘロさんなんですか!?何でここに!」
「なんでってモモンガさんがユグドラシルサービス最終日だから集まろうって言ったんじゃないですか。本当に大丈夫ですか?」
心配そうに体をくねくねと動かす粘体。いつも見ていたヘロヘロさんのエモーションだ。
(ユグドラシル?サービス終了?もしかして……)
もしやと思い、モモンガはかつてユグドラシル時代に操作していたモーションを取る。すると……。
(……コンソールが出る!?え!?じゃあもしかしてログアウトもできるのか???もしかしてサービス終了日に戻ってる!?なら……)
「大丈夫です!えー……と。そうですね……もう少しでサービス終了になっちゃいますね」
「ええ。あーそれでモモンガさん、すみません。そろそろ落ちないと。もう眠くて」
ヘロヘロが汗のエモーションを表示して申し訳なさそうにしている。見覚えがある。いつかこうしてヘロヘロさんのログアウトを見送ったのだ。そしてそのあと後悔したのだ。ならば……。
(あの時はここで引き留められなかった。じゃあここで引き留めればあの世界に一緒にいける?でもそれはヘロヘロさんのためにはどうなんだろうか……)
ヘロヘロも現実では社畜と呼ばれるハードワーカーで体もボロボロだと聞いたことがある。それならば一緒に行ったほうが幸せなのではないだろうか。少なくとも自分は現実に戻りたいとは思っていない。モモンガは少しだけ勇気を出してみる。
「ヘロヘロさん、せっかくですから最後まで残っていかれませんか」
「そうですね……。あー……うーん、そうですか。じゃあもうちょっとだけお話をしましょうか」
少し悩んだだけでヘロヘロは快く承諾してくれる。アインズは嬉しさに叫びだしたくなるのを必死で耐える。
「ありがとうございます!」
「それにしてもモモンガさん。ギルドマスター本当にお疲れさまでした。それで、モモンガさんはサービス終了後どうするんですか」
「終了後?それは……」
返答に困る。何もない。自分にはユグドラシル以外何もなかったのだ。
自宅と職場を往復するだけの毎日。家に帰ればユグドラシル。それ以外何もなかった。ならば何をするというのか。このままあの世界にいければ……。
そんなことを思っているとヘロヘロが意外なことを言い出す。
「そうだ!もしよかったら別のゲームでご一緒できるかもしれませんし、以前いただいたアドレスにメール送っておきますね」
「え」
考えてもみなかった。ユグドラシルをやめた後、また別のゲームを?しかし、それは……。
「ギルドのみんなもきっとまた一緒に遊びたいと思ってますよ」
「そう……でしょうか」
本当にそう思っていたらみんなユグドラシルをやめたりしなかったんじゃないだろうか。正直皆が自分を裏切ったという思いがある。みんながサービス終了まで残っていたのなら分かる。
しかし、残っていたのは自分一人だ。自分にはユグドラシル以外考えられないというのに。
そんなことを考えていると頭が痛くなってきた。例の白いフラッシュだ。手足も少ししびれているような気がする。
「で が しょう」
「え?」
ヘロヘロの言葉が聞き取れない。声の調子から何か真剣な話をしているような気がする。もっと話をしていたい。必死に聞こうと意識を集中する。
「目を覚ましたら次は ですよ」
だめだ。よく聞こえない。頭がぼんやりとしてきた。
「モモンガさん、大丈夫ですか。モモンガさん、モモン 」
(もう少し、サービス終了までもう少しだけ話をしたい。もう少しだけ仲間と)
最後まで考えることは出来ず、意識がホワイトアウトした。
♦
「モモンガ様!モモンガ様!」
気が付くと玉座の間にいた。目の前にはNPCのアルベドがいる。眠っていたのだろうか。念のため自分の肉体を確認する。そこには白磁を思わせる骨の手足があった。自分の操作していたキャラクター。アンデッドである
「……夢だったのか?いや、こっちが夢なのか?」
「どうかされましたか、モモンガ様」
心配そうに見つめてくるアルベド。相変わらず美しい造形だ。ギルドメンバー、凝り性であるタブラ・スマラグディナの忘れ形見のサキュバスだ。漆黒の艶やかな髪からは捻じれた2本の角が突き出し、腰からは漆黒の翼、豊満な肉体は純白のドレスが包んでいる。
「アルベド。今はいつだ。あれからどうなった」
「あれからとはなんでしょう。至高の御方々がいらっしゃってからそれほど時間は経っておりませんが」
「え?仲間が来てたのを知っているのか!?じゃあヘロヘロさんは?」
「ヘロヘロ様でしたらお帰りになりました」
「帰った?ログアウトできるのか?」
モモンガは急いで操作をしようと手を動かす。しかし、コンソールは開かない。
(どういうことだ。いや、記憶があいまいでよくわからない。夢?いや、アンデッドである私は夢を見たりしない。では白昼夢?妄想か何かなのか?今の状態はサービス終了直後なのか?であれば……以前の記憶ではここがゲームかどうか確かめるためにアルベドの胸を揉んだんだったな……)
かつてはここがゲームの中なのか確かめるためにアルベドの胸を揉んだ。しかし、今はそんなことをしている余裕も必要もない。
(であれば現在の状況確認を優先すべきだ。ならば……)
「アルベド。ナザリックすべての者たちに伝えろ。ナザリックから決して出るな。そして、ナザリックの中を隈なく捜索しろ。ギルドメンバーがいるかどうか調べるんだ。いいな」
「はっ!かしこまりました。それでモモンガ様はどうなされるのでしょう」
「私は少し外の様子を見てくる」
「では、私がお供をいたします!準備をする時間をいただきたく」
「だめだ。絶対に外に出るな」
「そんな!おひとりでは何かあったときに盾となってモモンガ様の玉体を守れません!」
「だめだ!許可しない」
こんな問答もかつてしたものだ。その時は折れたが今回ばかりは折れるわけにはいかない、そんな気がする。
今、何が起きており、世界はどうなっているのか、それは一人で確かめなければならない。何故かは分からないがそんな気が……。
♦
ナザリックより外にでたモモンガは周りを見渡す。記憶の中での移転後のナザリックの場所等相違ないように見える。周りに見えるのは草原のみ。ユグドラシルでの毒沼地帯にあったナザリックではない。
モモンガは少し考え込むと、1番最初に調査する箇所を頭に思い浮かべる。
(この世界での初の人との遭遇……カルネ村だったな。そうだ、あそこが襲われるはず。エンリとネムを救ったんだったな。この世界が記憶の通りになるかは分からないが確かめる必要がある……)
モモンガは腕を一振り《
目の前に現れたのは広大な森林の上空だ。かつてモモンガもモモンとして何度も訪れた場所であるため既視感を覚える。
(やはり知っている!この場所を。すると……そろそろか?)
そう思った矢先に大きな悲鳴が聞こえてきた。女の子のものだ。そして続いて聞こえてくるのは草をかき分けるような音、そして鎧を打ち鳴らした金属音だ。
「ネム!走って!」
「おねえちゃん!」
「待て!逃げると余計に苦しむぞ。あきらめろ!」
怯える少女たちの声と追いかける兵士の声。記憶の中とまるで変わらない様子にモモンガは安堵とともに残念な気持ちを抱く。
安堵は予想が当たったこと。残念な気持ちはここが仲間たちのいない世界であることが証明されたこと。
―――しかし
「待てい!罪もない少女たちを手にかけようとは!この悪党め!許さん!」
全然違っていた!展開が全然違っていた!
ここは少女を自分が助けたはずだ。そう思いつつ、ふと声のした先を見ると木の枝の上に純白の鎧を着た聖騎士が立っている、赤いマフラーをたなびかせて……。
(たっちさん!?)
それはギルドメンバーの一人、最強の一角であるワールドチャンピオン、たっち・みーであった。
「行くぞ!変身!」
(変身!?)
モモンガの混乱を他所に、たっち・みーの腰のベルトの太陽が回転する。そして両手をそろえて一回転させると、木からダイブした。
空中で一回転するとたっち・みーの鎧が消え失せ、その真の姿を現す。
それは屈強な肉体を持った昆虫の戦士である。頭から二本の雄々しい触覚、顔の半分はあるかというくらい大きな赤い複眼、バッタを思わせる口、そしてその首には真っ赤なマフラー、腰に太陽を思わせるバックルのベルト。一昔前の変身ヒーローそっくり、マスクをしたライダーのようなその姿。いつもフルプレートメイルを装備しているため見る機会は少なかったが、それはまさにたっち・みーの姿であった。
(変身って!鎧脱いでるだけなんですけど!何やってんの!?たっち・みーさん!?)
「悪は絶対許さない!たっち・みー!ここに見参!」
華麗に地面に降り立ったたっち・みーの決め台詞とともにその背後が大爆発を起こした。周りに影響がないことからユグドラシル時代に使っていた課金エフェクトだろう。
「たっち・みー様!」
「たっち・みー様だ!」
エンリとネムがたっち・みーの登場に歓声を上げ笑顔を輝かせる。
(ええ!?なんで知ってるの!?え!?え!?)
モモンガが混乱と鎮静化を繰り返しているのを他所に鎧を着た兵士の一人が視線を少女たちから昆虫戦士へと変える。
「な、なんだお前は!亜人!?邪魔をするというなら……お前から処分する!おい、みんなこっちだ!」
「とぅ!」
「ぐはぁ!」
たっち・みーは増援を呼んだ兵士からの攻撃を避け、拳をたたきつけると兵士はバタリと倒れる。
たっち・みーの本気の拳を食らったらあの程度では済まないので手加減をしているのだろう。
するとその時である。
たっち・みーの背後から音楽が流れだし、モモンガはさらなる混乱の渦へと堕ちていく。
ヒーローモノの主題歌のようだ。その曲に合わせるようにたっち・みーは兵士をバッタバッタと倒していく。
するとその曲に合わせてエンリが歌いだし、ネムが復唱を始めた。
「たっち・みージャンプ! 」
「ジャンプ!」
「たっち・みーキック! 」
「キック!」
エンリが拳を振り上げてたっち・みーを応援し、ネムがピョンピョン飛び上がってジャンプ、キックと盛り上がっている。
(何なのこれ!?ヒーローショー?なんで君たち歌詞知ってるの!?っていうか何その曲!権利とか大丈夫!?)
「とうっ!」
たっち・みーにより兵士の最後の一人が倒される。モモンガは混乱して身動きができなかった。
戦闘が終わると同時に曲も終わり、歌に夢中だったエンリも背中の傷を思い出したのか痛みに顔を顰める。
兵士に斬りつけられていたのだ。斜めに赤い染みができた背中が痛々しい。
「っ」
「お姉ちゃん!」
(……たっちさんが兵士を倒したんだし、彼女の傷くらいは俺が治してやろうか)
モモンガはポーションを取り出し、木陰からエンリとネムのもとへ向かう。しかし、突然漆黒のローブを着たアンデッドが現れたことでエンリとネムは再び恐怖に襲われる。
「きゃあーーーーーーーーー!」
「お、お姉ちゃん怖いよお!うわーん!」
(あ……そうだった。前も怖がられた気がする!)
モモンガが後悔するが早いか、その目の前には刹那の間に昆虫の戦士が仁王立ちをして拳を握りしめていた。
「むっ!か弱き女子供を泣かせるとは!許さん!とぅっ!」
「あいたっ!」
たっち・みーの攻撃。モモンガは倒れた。
♦
たっち・みーの攻撃を受けたモモンガは地面に倒れていた。周りにはもう少女たちも兵士たちもいない。そんな中、モモンガはうつろな意識の中で考えていた。
(俺、アンデッドなのになんで気絶してるんだろう……)
「モモンガさん、モモンガさん」
頭の上のほうから声が聞こえる。
「んん?」
「目を覚ましてください。モモンガさん」
たっち・みーだ。先ほどの怒ったような表情も握りしめたこぶしも今は目の前にはない。いつかのような優し気な表情を思わせる声だ。
「たっちさん……。ってたっちさん何やってんですかここで!」
「ああ、やっぱりモモンガさんだ。とてつもなく恐ろしいアンデッドが現れたと思ったら……。何やってるはこっちの台詞ですよ。モモンガさん!だめですよ!」
「ええー!?何で俺が怒られるの!?」
「……分からないんですか?もう一発行きますか?」
たっち・みーは再び拳を握りしめる。
「え?え?あ!さっき子供を泣かせたこと!?」
「そうです!駄目でしょう。子供を泣かせたら。いくら悪のギルドって言っても最低限のモラルは守ってくださいよ。悪の美学とか言ってえげつない事してる人もいましたけど、モモンガさんは違うでしょう」
「あの……はい、すみません……っていやいやいや!たっちさんこそ何やってんですか!」
「私ですか?私は正義の味方をやってますけど?」
(いや、そうだけど!たっちさんリアルでも警官で正義の味方やってるけど)
「そんなことより……モモンガさん元気そうですね」
そんなことで片づけて欲しくないが、久しぶりに会う懐かしい友人に言われては些事は後回しにするしかない。ギルドメンバーに会うことほど重要なことがあるわけがないではないか。
「たっちさんこそ元気そうで!よかった!会えて本当にうれしいです!もうみんな会えないと……俺のことを見捨ててやめちゃったと思ってましたから……」
「見捨てるなんてそんなこと思ってませんよ。お久しぶりです。モモンガさんは今何をしてるんですか?」
「俺は……今でもギルド管理ですかね……。でもNPCたちが色々と助けてくれていい感じだと思いますよ。そうだ!ナザリックに戻りませんか!?たっちさんの作ったセバスもきっと会いたがってますよ」
「……セバスが?会いたがってる?」
たっち・みーが怪訝な顔して首を傾げている。何か気になることを言っただろうか。
「何かおかしなこと言いました?」
「いえ……。何でもありません。そうですね、ナザリックに戻り……ましょうか」
♦
「おかえりなさいませ!モモンガ様!たっち・みー様!」
「おかえりなさいませ!」「おかえりなさいませ!」
「おおお、たっち・みー様に再びお会いできるとは。私……感激の極みでございます」
ナザリックへと戻ったモモンガとたっち・みー。戻った二人を待っていたのは守護者一同による熱烈な歓迎であった。たっち・みーとの出会いを伝言で伝えたアルベドは喜びのあまりか一瞬言葉を詰まらせてはいたが、歓迎の準備をしておいてくれたらしい。
その中でも特にセバスは普段のクールさはどこにいったのか、感涙に咽び泣いている。
しかし、久しぶりに見るNPC達の様子を見てたっち・みーが喜ぶと思っていたモモンガに反して、たっち・みーの反応は微妙であった。顎に手をやり首を振っている。
「あの……これモモンガさんが設定したんですか?」
「え?何のことです?」
「NPCの設定ですよ。私を見てこう反応するようにしたんですか?」
「?」
何を言っているのだろうか。モモンガにはたっち・みーの言っていることが分からない。
「何もしてませんよ?セバスも他のみんなも自分自身の言葉で本当に喜んでくれてるじゃないですか」
モモンガは笑いかけるがたっち・みーはさらに頭を振るのみだ。
「モモンガさん……何を言ってるんですか?NPCが勝手に話しだすわけないじゃないですか……」
たっち・みーの言葉にモモンガは自分の勘違いに気づく。モモンガ自身もこの世界が改変されたことを確信するまでは時間がかかったのだ。それを思えばたっち・みーの反応は普通と言えるだろう。
(ああ……そうか。たっちさんはNPCが自我を持ったことを知らなかったからな……)
すっかりNPC達を普通に仲間や部下と同じように受け入れ感覚が麻痺してしまっていたらしい。ならば説明が必要だろう。
「たっちさん!驚かないでくださいよ?実はですね!NPCたちは本当に自分の意志でしゃべってるんですよ!」
「え……」
「信じられないのも分かります。でも、血も通って脈もあります。生きてるんですよ。あ、俺とかアンデッドは違いますけど……。でもNPCに命が宿ってるんですよ!すごいでしょう!?」
「あ、ああ……そうですか」
信じられない現実を突きつけられて驚いているのだろう。たっち・みーの声には戸惑いがあるように思える。
「たっちさんどうしたんです?気分でも悪いんですか?」
「確かにちょっと気分がすぐれないかも……」
たっち・みーの言葉にアルベドが一歩前へと踏み出して膝をつく。遅れて周りのNPCも続いた。
「たっち・みー様、お部屋でお休みになられるのがよろしいかと存じます」
言われずとも自分たちを気遣ってくれている。これで生きていないなどと言うことはありえないだろう。アルベドのまるで家族のような心遣いにモモンガは嬉しくなる。
「そうですね……たっちさん。アルベドが部屋に案内します。少し休んではどうですか?」
「そう……させてもらおうかな。あ、モモンガさん。最後に一言だけ。俺はモモンガさんのこと見捨ててなんていませんよ。昔も……そして今もね」
たっち・みーの言葉が身に染みる。ギルドに一人きりになりメンバーを少なからず恨んでしまっていた自分が情けない。今の一言、それを聞けただけでモモンガは救われた気分になる。
(……俺は見捨てられてなんていない……一人じゃなかったんだ……)
部屋を退室する二人を見送りながらモモンガはこれから始まるかつてのギルドメンバーとの冒険を夢見ていた。
♦
ナザリック地下大墳墓。そこで守護者たちやナザリックのシモベたちはたっち・みーの帰還に揺れていた。すべて生命、非生命問わずその場にいるすべてが彼らの主の一人が帰還したことを祝福している。
モモンガはそれを喜ばしくおもいつつ、最後に気分がすぐれないと部屋へと行ったのが少し心配であった。
あれから随分と時間がたった。たっち・みーの様子が気になりモモンガはアルベドに尋ねる。
「アルベド。たっちさんはまだ部屋にいるのか?」
「たっち・みー様はお帰りになりました」
「はぁ?帰るってどこへ?
「たっち・みー様はお帰りになりました」
「俺に何も言わずに?たっちさんが?」
帰るとしてもモモンガに何の挨拶もなく帰るだろうか。たっち・みーは非常に礼儀正しく、自分にも人にも厳しい人だ。そんな人が一言もなしに帰るなどということはないと思いもう一度尋ねる。
「たっち・みー様はお帰りになりました」
その時モモンガは気づく。アルベドの今の言葉。その声の調子も長さも仕草も寸分違わず同じだということに。そう、それは……。
「もう一度聞くぞ……。たっちさんはどこだ」
「たっち・みー様は……」
―――お帰りになりました。
同じ言葉しか返ってこない。その様子はまるで
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