やはりこの聖杯戦争はどこかおかしい。   作:島田ミカ

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前書きなし










やはりこの聖杯戦争はどこかおかしい。2

 

嫌な朝だ。

雨上がりの晴天、立秋とは名ばかりの蒸し暑い気温が部屋の中に充満している。

まったく嫌な朝だ。

雪ノ下の件もあり、ダウナーさが増している。

雪ノ下雪乃ですら嘘をつく。

そんな当たり前のことすら許容出来ない自分に苛立ちを覚えたのが昨日の話。

珍しく帰ってきた橙子さんが''何かあったのか?''なんて聞いてくるくらいだから、よほど昨日の俺の目はひどく濁っていたに違いない。

まあ、そんな訳で昨日の夜はつい気分転換に夜更かしをしていた。

翌日が土曜日だったということもある。

一週間のうちで最も最強っていっちえばダントツで土曜日に違いない。

その圧倒的優位は揺らぐことはなく、休日でありながら次の日も休みだなんて、超サイヤ人のバーゲンセールみたいなもんだ。

そんな土曜日なのにもかかわらず、朝っぱらからなんだか嫌な夢も見ちまうし、寝起き最悪である。

起き抜けの頭でぼーっと朝刊を流し読む。

今日もコボちゃんは優秀だった。むしろコボちゃんしか読んでいない。

コボちゃんを読み終え、適当にチラシを眺めてリビングのソファーに置いておく。

ふと、机の上を見ると既に飲み干されたであろう青いマグカップ。

…ああ、そういや橙子さん帰ってきてるんだよなぁ。

つっても、帰って来たのは昨日の夜で帰って来たというより立ち寄った、の方が正しい。そして今日の夜にはまた何処かへ旅立つらしいしな。

まあ、一応顔見せくらいはしておくか…

トントントンと階段を踏み鳴らしながら橙子さんの書斎へ向かう。

といってもこの時間だと橙子さんは仕事に出ている可能性がある。

書斎までたどり着き、ノックもせずに扉を開ける。

「あ。お兄様、いたんだ。てっきり留守だと思ったのに」

手にしていた本を机に置き、少女がこちらに振り返る。

「………なんでいんの?鍵掛けといたはずなんだけど………」

ちょっと嫌そうな声が出てしまった。しかし、それも致し方ない。

この少女はそういう人種の生き物なのだ。

その俺の疑問にその少女は小首を少しひねり、口を開く。

「?ああ、それはね、橙子さんからもらったの」

少女は鍵のスペアキーを取り出すと、くるくるっと手の中で回す。

ブラインドの下りた薄暗い書斎。そこには奇跡のような姿がある。

年齢は確か10歳ほど。水に濡れたような長い黒髪。

幼さ特有の愛らしさを持ちながら、大人びた理性を持った青い瞳。

今時まったく流行らない高級志向のブラウスは、しかし、流行に流されない普遍的な気高さを帯びている。

「…ったく、あの人は…」

乱雑に返答して扉を閉める。

どれだけ美しかろうが、俺にとってこの少女は、いやこの親子は…いやいやこの母子は厄災の種をいつも持ってくる。

出来るなら首根っこをつかんでネコのように窓から放り投げたい気持ちでいっぱいなんだが…

「ちぇっ、お兄様もご機嫌斜めなの?せっかく習い事から抜け出して来たのに、たいくつ。ミツルさんにも追い出されちゃった」

ミツルさん…前会ったことがある気がする。

確か絵本作家で探偵業も兼業している両儀家の一員だっけか。

…苦労してんなぁ…主に両儀家お抱えの部分で。

「…はぁ、橙子さんが許したならなんも言わねえけどさ、お前今習い事抜け出して来たっつった?

…勘弁してくれよ、最近ただでさえ無駄にお前の母ちゃんとか絡んでくるし、硯木さんなんか会った瞬間から臨戦状態なんだぜ?それをお前、塾休んで来たところがウチなんて知られたらもう…お前はあれか?俺を殺したいのか?マナお嬢様よぉ…」

「え?やだ、そんな勿体無いこと、とても出来ないわ。

それよりお兄様、わたし、お嬢様っていい方よくないと思うの。保護対象って感じで窮屈だし。

特にお兄様のは、微妙に悪意というか、これ以上は親しくならないぞっていうトゲを感じるわ。…これは命令なんだけど。昔みたいに、呼び捨てで呼んでくれてもよくてよ?」

なんて、これ以上ないという位のお嬢様台詞を吐く少女こと両儀未那は、ふふんと得意げに胸を張っている。

「…はぁ」

ため息を1つ。

分かってんじゃねえかお前…というセリフを喉元で押しとどめて、ハイハイっと適当に返事を返して、諦めたポーズを取る。

すると少女はますます表情を明るくして口を開く。

「うんうん。お兄様のいいところはなんだかんだって言って悪態ついても最後はやってくれるところよね。わたし、そういう素直な人は好きよ?でもちょーっと捻くれてるとは思うけど」

…余計なお世話だっつーの。

「…分かったから今日はもう帰れ、俺もこれから橙子さんの事務所行かなきゃ行けねえし、お前に構ってる時間もねえ」

俺にとって休日とは世界の平和と同じ位大切なのだ。

小娘1人というかこの両儀未那に関わっていると本当に丸一日潰されかねない。

しっしっと手を払って邪険にすると、少女は少しふてくされて下を向く。

…はぁ。

「…途中まで送ってってやるから…」

見るに見かねて、妥協案。

どうせこいつのことだから放置すると、また件のミツルさんとか言う人のところに行って営業妨害しかねない。

家まで送って行ってやる義理はないが途中までなら道が同じなこともある。

…最近は何だかんだと物騒な事件が多いしなぁ…

11年前の謎の闇事件を皮切りにちょくちょく色々な事件が起こっている。

というかその半分くらいはこいつの母ちゃんが原因だった気もするが、それを除いても2年前の動物死体遺棄や無差別テロなど、割と大きな事件が続いている。

そんな中を年端もいかない少女1人で帰らせるというのはどうにも寝覚めが悪いので妥協案である。

少女が残念そうに本をしまい、帰る支度をする…おい、今にやりとしたの見たぞ。奴めまさかコレを狙って…

そんな少女を横目に俺は備え付けのコーヒーメーカーに豆を入れ、砂糖と牛乳を冷蔵庫から持って来た。

「…牛乳、飲むか?」

「はい!はいはい!飲みます!」

遠慮がちにたずねると、これまた元気のいい返事ご帰って来た。

コップに牛乳を一杯入れてやり、絶賛帰宅準備中の少女に手渡す。

そんな少女を傍目に、『少女の飲んだ牛乳』と意味ありげに『』で括ってみるとなんか背徳感じみたエロさがあるな…超どうでもいい。

別に俺が砂糖と牛乳を持って来た理由は『少女の飲んだ牛乳』だからではなく、単純にコーヒーに入れるためだ。

産湯代わりにMAXコーヒーに浸かり、母乳代わりにMAXコーヒーで育ったとも言われる生粋の千葉っ子の俺はコーヒーは甘くなければいけないのだ。

練乳ならなおグット。

いやほら、ブラックでも飲めるんだけどね。

「人生は苦いから、コーヒーくらいは甘くていい」

とMAXコーヒーのキャッチコピーに採用されてもおかしくない独り言を呟いた後、甘々にしたそいつを飲み干す。

うまいな…今のキャッチコピー。マジで採用してくんねえかな。

「お兄様!準備できました!」

「兄がまだコーヒー飲んでるでしょうが…」

兄じゃねえけど。

そう呟きながら、俺は再放送で見た『北の国から』の似てないモノマネで答えるが、少女が気づくはずもなく楽しそうに鼻歌を歌っている。

思わず肩ががっくりと垂れ下がってしまった。

女の涙ほど信用ならないものはない。

特にこの両儀未那は少女特有の要領の良さを備えていて人を利用するスキルについては折り紙つきだ。たちが悪い。

おかげで俺のなかでの女性=両儀未那のように男を利用するもの、という刷り込みがされてしまっている。

「俺が女性不信になったらお前のせいだぞ。結婚出来なかったら老後とかどうすんだよ」

「そのときはわたしに頼ってくれてもよくてよ?」

にっこりと微笑む少女。ずっと子供だとばかり思っていた少女が見せたその表情はどこか大人びていて、俺の鼓動が一瞬跳ね上がったのを身体の内側から感じた。

「ウチの介護施設とかに入れてあげます」

大人びているというか、ただの大人の意見だった。

「…お前ん家が経営している所には絶対はいらねぇよ…」

俺はコーヒーをぐいっと飲み干すと立ち上がり、その背中を少女はぐいぐい押してくる。

「行きましょうお兄様!時間は有限よ?お兄様がゆっくりしてるからもうこんな時間!」

「…このガキ」

少女は時計を指で指し、急げ急げと急かしてくる。

こいつが暴力団関係者のボスの娘じゃなければ絶対蹴り飛ばしてると思いつつ、再びため息をついて、俺は自転車に跨った。

 

結局、俺が両儀未那の暇つぶし兼両儀宅までの郵送をして、別れてから数十分。俺は橙子さんの事務所に足を向けていた。

橙子さんの事務所兼工房は、工業地帯の真ん中にある。

一見して作りかけで放置された廃ビルなのだが、中にはきちんとした事務所なんかも構えているおかしな建物だ。

一階は車庫になっていて、二階と三階は不明、四階が俺や黒桐さんの通う事務所になっている。

「…うっす」

「…ああ、八幡か 今日は少し遅かったじゃないか、何かあったのか?」

事務所の扉を開くと、1人の女性がペーパーらしきものから顔を上げる。

そこの主人は所長席に座ったまま、分かり切った質問を向けてきた。

本当に白々しくそうのたまわれたので、ついどろりと腐った眼を向ける。

「…白々しいですよ未那(アイツ)に鍵渡したの橙子さんでしょ」

「まあ、そう腐るな…っとそうだ、お前に話しておきたいことがあったんだ」

所長兼魔術師の蒼崎橙子さんだ。

橙子さんは二十代後半の女性で、凛々しいタイプの美人だった。

所長としての訓示や職場にいる時は遊びのないスーツ姿で、今日は眼鏡を外しているから余計にキリッとしている?

「…それで、話って何ですか?」

「ああ、まあ、ともかく座ってコーヒーでも…と言いたいところだが、そこまで時間に余裕があるワケでもない。移動がてら説明するから付いてきてくれ」

そう言うと橙子さんは立ち上がり、エレベーターの方向へ歩き出した。

その背中はぐずぐずしないでさっさとついてこいと語っている。

俺は仕方なしに重い腰を動かしながら、それに従うことにした。

 

 

 

ついた場所はとある魔術師の魔術工房。

そこには幾つもの人形が並んでいてある種妖怪屋敷さながらな空間を醸し出している。

「まあ、率直に言うとだな、お前の魔術の研鑽の成果を見てやろうと思っているんだよ」

そう言って渡されたるは1つの台に横たわっている人間そっくりな人形。

その人形のところどころが破損していて、無残にも台の上に転がっている。

「…まあ、いいですけど…これ橙子さんに頼まれた依頼品じゃないんですか?」

そう、この魔術師である橙子さんは人形術師でもあるのだ。よって、その人形作製や修復を目的にやってくる人もそれなりにいる。きっとこれもその類のものだろう。

「…構うもんか、私が監督しているのは事実だ。初めてくれ」

「…はいはい」

そう言って不承不承ながら壊れかけの人形に手を掛ける。

自分の魔術の性質上、この手の修理は慣れてはいるが、何も手で触れただけで直せればワケない。

視覚を閉じて、触角で人形の修復する部分を割り出す。

「……腹部に破損3つ、肘の関節に2つ、脚の脛に再びか、」

これなら手持ちの魔力で何とかなる。

この能力、モノを治す力。これが蒼崎橙子に教わった、比企谷八幡の魔術である。

「…しゃあねぇ、始めるか」

傷を塞いで壊れた部分を取り替える。

破損箇所はもう判っているのだから、後はそこに魔力を流し込めばいいだけだ。

「…相変わらず速いな、君の魔術回路の速度は」

「ええ、まあ、これと破壊くらいしか出来ないんで…」

受け言葉に買いことば。

そんなやり取りをしながら人形の修復作業を進めていく。

そう、俺にはあまり魔術の多様性は無かった。

その代わりといってはなんだが、物を治すとか物を壊す事はそれなりに巧く出来ると思う。

実際、こうやって物を治している他に、物を破壊する破壊系統の属性も持っているらしい。

らしい、というのは橙子さん曰く、''破壊の魔術''?あんなものはな、ただ単にモノを破壊するだけで、何の生産性もない野蛮極まりないモノだ、どうしても使いたいならそこら辺でガンドでも打ってろ”らしいのでめっきり回復系統の魔術しか習っていない。

そんなこんなで、俺の得意魔術はこういったモノを治す系だったりする訳だ。

「よし、終わり…」

「ん、終わったか、どれ…ふむ、とりあえずはまあ、及第点だな」

橙子さんは治した人形を見ながらそう言うと、その人形にルーンと呼ばれる文字を刻んでいく。

「関節の繋ぎ目が甘い、脚の脛に対する強度もまだまだだ…まあ、腹部に関しては言うところがないが…」

1人で納得して、橙子さんは俺の採点を始めた。

「ま、こんなものだろう…む?」

採点を終えたのか、橙子さんは不意にこちらを振り返る。

普段は割としっかりしているこの人だが、時たま、物凄く抜けているところがある。

こんな風に突然思い出してハッとする、というのは珍しいことではあるが、ない訳ではない。

が…どうも、今回のはそんな類のものではないみたいだ。

「…あの、どうしたんですか?」

「……」

橙子さんは答えない。

呆然と俺の手を見つめて、考え込むようにして口を開く。

「八幡。お前その手の痣…いや、まだ開ききっていない、が、これは…」

「え?…あれ?本当だ、おかしいな、何処かでぶつけでもしたんですかね…」

言われて手を引っ込める。

どうしたことが、左手の甲に大きな青馴染みができている。

それは切り傷のようで、派手なミミズ腫れを残していた。

自分の手ながら、正直かなり気味が悪い。

橙子さんは変わらず何か考え込むように俺のてをしげしげと見ていた。

「…少し考えたいことができた。私は当分の間あの家には戻らないが、お前も今日は帰ったら大人しくしていろ」

「…?はあ、分かりました…」

まあ、橙子さんがウチを開けること事態はあまり珍しいことではない。

というか、俺が1人で留守番出来るようになると、橙子さんは頻繁に家を開けるようになった。

1ヶ月いないことなんてザラで、酷い時は半年に一度しか帰ってこなかったコトもある。

その間の家の中は空っぽでまさに『がらんどう』といったところだった。

まあ、当時子供だった自分にはそう感じただけだった気もするが…。

 

何だがかんだで俺がビルから出た時刻は夜の11時を回りかけていた。

ビルから出るとまた一気に蒸し暑さが身体を襲う。

本当に秋なの?

「……」

はあ、とため息がこぼれる。

「…今日はやけに人がいないな」

辺りはシンと静まり返っており、人っ子1人どころか動物の一匹すら見当たらない。

まあ、そう言ったこともあるか、そもそもここら一帯はあまり人の出入りするような所でもない。

物音1つしないのにこの空間は、確かに橙子さんの研究に向いているようだ。

「…?」

何かいま、物音が聞こえたような

この夜。

もう夏も終わりだというのに、蒸し暑い夜が続くそんな秋間近くの夜。静寂を破る音が気になったのか。

真偽を確かめる為に、俺は音のする方角へ足を向けてしまった。

「…人?」

初め、遠くから見た時はそうとしか見えなかった。

近づくにつれ、音は大きく、より勢いを増して聞こえてくる。

これは何の音だ?何かが弾けるような、それでいて微かに爆発音も聞こえる。

その音は奇怪すぎてこの世のモノとは思えない。怪獣大戦でもやってんのか?

「…ハッ、何言ってんだ、俺」

頭の中に浮かんだイメージを否定して、さらに足を進めていく。

この時、本能が危険を察知していたのか、隠れながら進んでいた事がツイていたのか。

とにかく身を隠せる程度に壁に寄り添って、より近くから音の発信源を見つけ…

そこで、完全に意識が凍りついた。

「…は?」

何かはよくわからないモノがいた。

白髪の少年にこれまた中学生くらいの若い少年。

現代常識を通り越し、もはや冗談とすら思えないほど現実離れした光景は、先程のイメージに似て非な現実だった。

理解出来ない。

視覚で追えない。

あまりにも現実感のない動きに、脳が正常に働かない。

ただ、棒立ちしている白い方に空中から少年が何やら高濃度の魔力波のようなモノをぶつけようとしている。という本当に訳のわからない状態が目の前で起こっている。

ただ、1つだけわかるのは、ここまで離れても伝わってくる殺気があの2人は殺し合っているのだと、否応なしに知らせてくる。

ただ、見た瞬間に判った。

アレは人間ではない。おそらくは人間に似た別の何かだ。

それは魔術がどうとか、じゃない。次元が違い過ぎる。

だからアレは関わってはいけないモノだ。

離れていても伝わってくる殺気。…死ぬ

ここにいては間違いなく生きてはいられないと、心より先に体の方が理解していた。

鼓動が激しいのもそういうことだ。

これ以上直視していてはダメだ。

だというのに体はピクリたも動かず、呼吸をすることも出来ない。

逃げなければと思う心と、逃げればそれだけで見つかるという判断。…そして、それ以上に手足が麻痺して動かない。

音が止まった。

2つのソレは、距離をとって向かいあったまま立ち止まる。

「ひ、ヒッキー?」

よく見れば他にも人がいる。

夜の静けさにあって、よく通る声だった。

ほんの呟き程度でしかないないのに、耳に届いたのは、それ程彼女の声が怯えていたからだろうか。

俺とは対の壁側でこっそり隠れていたのか、

そこにはよく見知った彼女、由比ヶ浜結衣がそこにいた。

いつものお団子ヘアに、ラフなTシャツジーパン。

…なんでこんなところに!?と目線を下げると手にはコンビニのレジ袋。

おそらくはこの近くのコンビニに寄った帰りに俺と同じような経緯を辿ったのだろう。

由比ヶ浜が偶然そこにいたおかげか、意識がソレから外れてくれた。

金縛りが解け、はぁ、と大きく呼吸をした瞬間。

「…おいおい、頼むぜ、関係ねェ一般人なんかが紛れ混ンでンじゃねェよ」

白い髪をした少年が、じろりと、隠れている俺と由比ヶ浜を凝視した。

白い髪をした少年は、何か興醒めした、という顔を浮かべて、

「…ホントさァ、マジで頼むぜ。で、どうすンだよこれ。魔術の秘密を知っちまった一般人の口は封じる、とかってェお決まりの展開かァ?くそ、後味悪りィな。狂化が入ッてるからッてよォ…」

白い髪の少年の体が沈む。

それだけで、ソレの標的は俺達に切り変わったと理解出来た。

「由比ヶ浜!!逃げるぞ!!」

「えっ!?えっ!?う、うん!!」

即座に声を掛け全力で足を動かす。

それが死を回避する為とようやく気がついて、体の全てを逃走することにつぎ込んだ。

何処をどう走ったか、気がつけばさらに人気がない路地へと入っていった。

 

「ハァ…ハァ…ちょ、ちょっと待ってよ!」

「ハァ…ハァ…ああ、悪い」

乱れた呼吸を整えながら、由比ヶ浜は息を切らせている。

後ろを振り返る。

どうやら追いかけはきてないようだ。

とにかく見てはいけないモノだったのは確かな事だ。

夜の路地裏で人間に似たモノ同士が争っていた。

思い返せるのはそれだけだ。

「ねえ!なんなの!!なんなの!アレ!!」

「…知らねぇ…ただ」

 

『…遅っせェなァ』

その声は後ろからした。

息が出来ない。

思考が止まり、何も考えられないというのに。

漠然と、これで死ぬのだな、と実感した。

横で由比ヶ浜が何か叫んでいる。

一瞬、ほんの一瞬だけその声の主である白髪の少年は目線をそらすが、そんな一瞬で何が出来るというのだ、出来るワケがない。

「まァ…とりアエず、オマエ死ンどけや」

ボソリ、と呟くと、その手が俺の頭目掛けて飛んでくる。

白髪の少年を中心とする魔力の渦が増大するのが分かる。

その手に何が仕掛けてあるのかはわからない。

ただ、ひとつだけ分かるのは、アレに触れられたら確実に死ぬということだけだ。

死ぬ。

これは確定事項だろう。

こんなところで、俺の人生が終わる?

…本当に?

馬鹿げている。理解出来ない。

なんでそんな目に合わないといけないのか。

…ふざけている。

こんな結末はいくらなんでもあんまりすぎる。

ここで死んだら、俺は!!俺は!!

「ーーーーー!!!!!」

心の奥底から何かが湧き上がってくるのを感じる。

もう、自分が何を言っているのかもわからない。

きっと、後で聞けばこっぱずかしさで顔を覆いたくなるような恥ずかしいことだと思う。

それでもヤツの手はもうすでに喉元まで迫っている。

死ぬ。あと数秒で、俺は。

…頭にきた。

何で俺がこんな知りもしないこんな奴に殺されなくちゃならない!

ふざけるな…ふざけるなよ!!

「ふざけんなよ!!おまえ!!俺は!!」

こんなところで、本物を知らないまま、意味もなく死ぬのは嫌だ!!

立て…怖くてもいい、痛くても構わない。

けど、死ぬことだけは認められない!!

だって、俺はまだ本物を見つけていない!!

そんな願いが届いたのか、目の前が真っ白な光に包まれた。

 

それは本当に。

「…ほォ…成る程なァ、オマエが6人目というワケか」

突然のこと。

「…きれい…」

由比ヶ浜が呟く。

ソレは魔法のように現れた。

思考が停止している。

光の中から現れたソレが、少女の姿をしていることしかわからない。

ソレは現れるなり、俺を掴もうとしていた白い髪の少年の足元目掛けて何かを撃ち放ち、無理矢理間合いを取ると、俺と由比ヶ浜の襟首を掴んで距離を取る。

体制を立て直す白髪の少年と何やら武器を取り出す少女。

 

「…、へェ。オマエ、面白ェな…」

少年の視線は俺から少女へと移された。

俺達を始末するより、この目の前の少女を潰す方が100倍先決だと言わんばかりに。

少年の瞳に、紅い狂熱が宿る。

少年は仕切り直しだと言わんばかりに飛び跳ねる。

恐るべき超脚力で軒先き2.3軒を超えて着地した。

退避する少年を目で威嚇しながら、ソレは静かにこちらへ振り返った。

「ーーーー」

声が出ない。

突然の出来事に混乱していたわけでもない。

ただ、目の前の少女があまりにも綺麗すぎて言葉を失った。

白髪の少年がもう目の前まで来ている。いつでも襲ってこれる間合いだ。そんな状況下でも

少女は凍てつくような瞳で、何の感情もなく俺を見据えた後。

「…サーヴァント、キャスター召喚の求めに応じ参上した…」

流れるような黒髪に、赤いリボンが翻る。

灰色のスカートが風に揺られ、ギリギリのラインで視界を遮っている。

「…有り体だけど一応聞いておくわ、貴方が私のマスター?」

「ます、たぁ…?」

問われた言葉を口にするだけ。

彼女が何を言っているか、何者なのかもわからない。

今自分に分かることといえば、この小さな、華奢な少女も、目の前の少年と同じということだけ。

少女は何も言わず、静かに俺を見つめてくる。

ーーその姿を、何といえばいいのか。

この状況、もう目の前に少年が迫って来ている状況を忘れてしまうほど、目の前の相手は特別だった。

「これより貴方の運命は私と共にある。…契約は成立よ。さあ、教えない。貴方はどんな願いで聖杯を輝かせるのかしら?」

月光差し込む夜の下。

透き通るような綺麗な声で、彼女はそう口にした。

 





こんにちは、島田ミカです。
はい、2話目でございます。
切り方!!もっとマシな切り方あっただろー!!って切り方ですね、申し訳ございません。
ちなみに、少しだけ今回の話の補足をさせて頂くと。
バーサーカーが仕切り直しをした理由として、召喚時にキャスターが放った攻撃を''跳ね返して''確実に一撃でキャスターを仕留めようとしたが、理由も分からず躱されてしまったためというクッソわかりづらい理由があります。

さて、ここで、ここまで読んだ下さった、読者様にご質問があります!!
その質問なのですが、今後この作品のマスターに型月キャラを採用するかどうかという内容です。

いやー、当初はマスターは俺ガイルオンリーでやろうかなと思っていたのですが、これ、そうすると殆ど八幡陣営になっちゃうな…それは如何なものか…原作のfateも魔術協会やら外部の魔術師やら入れてたな…と思いまして、型月キャラで2名ほど召集を掛けようか悩んでおります。(誰にするかはまだ未定)
入れてもよろしいでしょうか。
是非、読書様のご意見をお伺い出来れば幸いです。

さて、それはさておき、今回登場した新サーヴァントについて現在開示できる内訳は大体こんな
感じ。(大いに作者の偏見が入ります)

…というか、もうバーサーカーの真名分かる人には分かっちゃいそうですよね、コレ。


『レアリティ基準
星5 単騎で優勝を狙うことも可能。
星4 単騎で聖杯戦争を生き残ることも可能
星3 他陣営と共闘することで優勝を狙うことも可能。
星2 星3以上と共闘することで聖杯戦争を生き残ることも可能。
星1 他陣営と共闘しても生き残るのは難しい。』


・白髪の少年
class バーサーカー
真名 ???
マスター:???
性別 : 性別不明
身長: 168cm
属性: 悪・狂

筋力 D−
耐久 D
俊敏 A++
魔力 A+++
幸運 C−
宝具 ??

クラス別能力 狂化 EX
固有スキル ??
宝具 ??
適正クラス 狂・讐
総合ランク A
総合レアリティ 星5



ーー
・キャスターのサーヴァント
class キャスター
真名 ???
マスター:比企谷 八幡
性別 : 女
身長: 不明
属性: 悪・混沌

筋力 C
耐久 B
俊敏 B
魔力 A+
幸運 D−
宝具 ??

クラス別能力 陣地作成 C
道具作成 A+
固有スキル ??
宝具 ??
適正クラス 術・??
総合ランク B
総合レアリティ 星4
勿論、聖杯戦争は原作同様ケースによって規模もまちまちなので、この基準が該当しないことも多々あります。
(ちなみに、総合ランク・レアリティは単騎における聖杯戦争の生存を基準にしているため、例えどれだけステータスが高かったとしても固有スキル、宝具等総合的な判断でレアリティが1つ下だったり上だったりします)


ここまで読んでくださった皆様に感謝を込めて、次回またお会いしましょう。
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