この世の終わりみたいなインスタの投稿   作:shgk

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1. この世の終わりみたいな始まり

 

 

――――ゆかり、飲んでなくない?

 

 

 最近、目を瞑ると頭の中で何度も私の名前を呼ぶ言葉が反芻されるようになった。全く聞き覚えがない言葉なのにどうして私の頭から離れてくれないんだろう。

 

 

 

「ちょっと、ゆかり! 私の話聞いてる!?」

 

 

 

 友人の声に、ぼんやりとしていた私の意識は現実に戻された。

 

「あ、ごめん。ぼーっとしてたわ」

「もう! ちゃんと聞いてよ!!」

 

 私の目の前にいる友人が、大きくため息をついた。そして、茶髪のロングの髪を不機嫌な様子でいじっている。彼女はいわゆるウェイ系の女子大生で、よくダブルピースをするため周りからはダブルピースと呼ばれている。

 

「ごめんごめん。で、何の話かしら?」

「今噂になってる居酒屋の話よ! 居酒屋の主催するゲームに勝てば飲み代が無料になるだけじゃなくて賞金までもらえるっていう」

 

 ダブルピースの話に私は眉を顰めた。

 

「そんな噂聞いたことないけど……」

 

 私はSNSをよく開くが、そんな居酒屋があるなんて聞いたことがない。それに、そんな上手い話があるわけないだろう。考えられるのは、絶対誰もクリアできないようなゲームが行われているか、赤字覚悟で経営している店のどちらかだ。

 ダブルピースはその居酒屋について、どう考えてるのか。

 

「それにしても、胡散臭くないわね。どんなゲームに勝てばいいの?」

「うーん。ウチも詳しいことは知らないけど面白そうじゃん? ねえ、行ってみようよ!」

 

 ダブルピースはそう言って、私の両手を掴む。ダブルピースはただの興味本意で行ってみたいだけのようだ。流石ウェイ、行動力が違う。

 

「眼鏡ちゃんとミスターもちょうど今日暇らしいし4人で行こ! ね?」

「うーん……」

 

 グイグイくるダブルピースに思わず苦笑いを浮かべる。

 どうしようか。どんな店かも分からないし、あまり乗り気にはなれない。

 かといって、私抜きで行かれるのもノリが悪いと思われそうだ。

 

 

(……まあ実際に行ってみてどんな店か確かめてから入れば問題はない、か)

 

「分かったわ。最近、一緒に飲めてなかったし行きましょう」

「ふふ! そうこなくっちゃ!」

 

 そんな会話をして私たちは、その賞金がもらえるという噂の居酒屋へ行くことになったのだった。

 

 

 

 

「よっ、ゆかり、ダブルピース!!」

 

 待ち合わせ場所へ行くと、私達の友人がこちらへ『おーい』と手を上げて合図を送っていた。

 彼は私たちとこれから一緒に居酒屋へ行く男で、通称ミスターと言われている。これと言って特徴がないためミスターとあだ名がついた。

 

 そして、ミスターの隣にもう一人ポツンと立っている子もおずおずと手を振っていた。

 

「こんにちは……。ゆかり……ダブルピース……」

 

 彼女は、通称眼鏡ちゃんだ。引っ込み思案な女の子で私たちの友人の一人。どうしてダブルピース達と仲良くしているのか不思議なほどの謙虚さを持っている。

 

 

「さて。全員集まったことだし、さっそく例の居酒屋へ行きましょ!」

「そういえばダブルピース。その場所は分かるの?」

「もちろん! ネットの情報が確かならこの近くよ!」

 

 ダブルピースを先頭に、私達は繁華街を歩いていく。繁華街は喧騒に包まれていたが、ダブルピースの案内通りに進んでいくにつれ、だんだんと人気がなく寂れたような建物が建ち並ぶ場所へと変わっていった。

 

「繁華街の近くに……こんな……場所があったんだね……初めて来たよ。……ちょっと怖いな」

 

 眼鏡ちゃんは、その不穏な街並みに少し恐怖を抱いたようでキョロキョロ辺りを見回している。

 

「確かに不気味ね……」

 

 いかにも幽霊が出そうな雰囲気だ。それに加えて、周りに人が一人もいないことも異様だった。

 そんなことを考えている内にダブルピースが立ち止まる。

 

「んー、ウチのフォロワーが教えてくれた場所はこの近くのはずなんだけど」

「フォロワーってダブルピースのツイッ○ーのことか?」

「そ。ウチのSNSをいつの間にかフォローしてた人。ま、会ったことはないけどね」 

 

 ダブルピースが、スマホをいじりながら答える。

 

「……それって……信用できるのかなあ……?」

 

 普段は相手をあまり否定しない眼鏡ちゃんも、ダブルピースのネットリテラシーのなさには流石に苦言を呈していた。

 当然だろう、まさか見ず知らずの相手の言うことを間に受けるなんてアホすぎる。ダブルピースも相変わらず頭が弱い。

 

 どう見てもこの近くに居酒屋なんてないだろうし、いたずらされた可能性が高いだろう。

 

 そう思い、私が帰った方がいいと提案しようとしたところ、

 

「あ……あそこ。……OMMCって書いてあるよ。あれじゃない……?」

 

 そう眼鏡ちゃんが、目の前の大きなビルを指差した。確かにビルの入り口には大きく『OMMC』と書いてある。

 

「あ、そうそう! これよ! このOMMCって居酒屋!!」

 

 ダブルピースが大きく目を見開き、はしゃぎ始めた。どうやら、ここが目的地らしい。

 

 しかし……。

 

「本当にこのビルでいいの? とても居酒屋が経営されているようには見えないけど……」

 

 ビルの近くには、他の建物どころか道路もない。そして、人の気配もないおかげかまるで廃墟したビルのようだ。

 

「そりゃ都市伝説みたいな居酒屋なんだから、繁華街にあったらあったでつまらないじゃん?」

「確かにな! なんか肝試しみたいでわくわくしねえ?」

 

 頭の弱いダブルピースとミスターは、揃って頭の弱いことを言い、なんの思慮もなくワイワイ騒いでいる。

 

「こんなに広いビルに……居酒屋なんて……あるかなあ……?」

「そうね、やっぱりおかしいわ」

 

 常識のある眼鏡ちゃんの意見に、私は大きく頷く。見るからに怪しい建物だし、死体の一つや二つ出てきそうな雰囲気を醸し出している。

 

「ま、一回入って何もなかったら帰ればいいんじゃねえの?」

「そうだよ! ゆかりと眼鏡ちゃんは心配しすぎ! せっかくここまで来たんだから入ろ!!」

 

 私達の意見を適当に流し、ダブルピースとミスターはOMMCの扉に手をかけ始めた。

 

(やっぱり、言葉にはし難いけど異様だわ……。それに何か引っかかる……)

 

「じゃ、入ろっか!」

 

 どうしようか考える私を置いてダブルピース達は、OMMCビルの扉を開け中へと入っていった。

 

「待って、ダブルピース!!」

 

 慌ててダブルピースとミスターを追いかけるように私と眼鏡ちゃんもビルの扉を抜けた。

 

 するとそこにあったものは。

 

「何……ここ……?」

「誰もいない?」

 

 辺りに目立ったものはなかった。テーブルと椅子は一応簡素に置いてあるがそれだけ。人は勿論おらず、とても居酒屋があるような場所ではない。

  

「ほら、やっぱり居酒屋じゃなさそうよ? 帰りましょう」

 

「……そうだな」

「えー、うっそ。残念」

 

 二人が大きなため息をついた。……本当にため息をつきたいのは私と眼鏡ちゃんだろう。勝手に、知らない建物に入るなんて他の大学のウェイでもそんなことしない。ダブルピースもミスターには常識がないのだろうか。

 

 私はそう考えながらビルの扉の取っ手へと手をかけ回そうとして………。

 

 

 

 

 ガガッ ガガッ

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 

 ガガッ ガガッ

 

 

 

「開かない!?」

 

 

――――さっき入ったはずの扉の鍵は閉められていた。

 

 

「貸してみろ!」

 

 ミスターは私をどかし、扉の取っ手を強引に押そうとした。

 しかし、その扉はびくともしない。

 

「閉じ込められたってこと!?」

「え……? うそ……」

 

 そんな中、混乱する私達と正反対に恐ろしく冷静な声がフロアに響いた。

 

『ようこそおいでくださいました』

 

 振り向くと、いつの間にか天井から吊り下げられていたテレビの液晶が点灯していた。その画面の中には黒い人間のシルエットのようなものが映されている。

 

 突然の出来事に驚き、声を失っていた私達とは対象的に目の前の黒のシルエットは淡々と喋りを続けた。

 

『今から貴方方にはあるゲームをやっていただきます』

 

「……ゲーム? というかあなたは誰なの? それにここは一体……」

「そうだぞ! 一体何なんだよこれは!!」

 

『私はゲームマスターです。ただ今から賞金を賭けたゲームが始まります』

 

 画面のゲームマスターと名乗る人物は、私達の質問には答えず、まるで台本を読むかのごとく言葉を発していく。

 

「え? 賞金が貰えるゲームって……。じゃあやっぱりここはあの居酒屋!? 噂は本当だったんだ! え、やば!!」

 

「落ち着いて、ダブルピース。今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ?」

 

 この状況で能天気なのはダブルピースだけだ。私もミスターも眼鏡ちゃんも息を呑み、切迫した様子で画面を見つめている。

 

『貴方方四人には、ゲームを行っていただき見事優勝した方一人に賞金一億を差し上げます』

 

「……は?」

「一億って……」

 

 状況が飲み込めず、私達はオウムのようにゲームマスターの言葉を繰り返すことしかできなかった。

 私達は居酒屋に来たのに、なぜゲームをするということになるのか。そんなこと、聞いていない。

 

 唖然とする私達をよそに、ゲームマスターはルールの説明を続けるが、次に発せられた言葉は思いもよらないものだった。

 

 

 

 

『ゲームに、負けた方にはペナルティを執行させていただきます。――――あなた達自身の命で』

 

 

……………

 

……………………命?

 

 

 すぐに意味を理解したミスターとダブルピースは、ゲームマスターが映る画面へと怒鳴りつけた。

 

 

「なんだよそれ!!」

「ふざけないで!!」

 

 そんな中、眼鏡ちゃんの顔色は真っ青になり全身を震わせた。  

 

「嫌だ……怖い……帰る………!!」

 

「眼鏡ちゃん!?」

 

 

 

 眼鏡ちゃんはフロアを走りだした。出口は閉まっているため、フロアの奥にある別の扉を目指して……。いつになく早く。恐怖から逃れるように全力で。

 

 そして、全力で走った先。扉へと手をかけようとした所。

 

 

 

――――眼鏡ちゃんの立っていた床が自動ドアのように大きく開かれた。

 

 

 

「いやああああああああああああ!!」

 

 

「「「眼鏡ちゃんッ!?」」」

 

 彼女は開かれた床に真っ逆さまに落ちていく。

 

 私達はその様子をただ見ていることしができなかった。

 

 眼鏡ちゃんが落ち、役目を終えた床は静寂さを残して何事もなかったかのように閉じられた。

 

 

 

 

『逃げた場合、彼女のように消えていただきます』

 

 

 

「そんな……」

「何よ……何なの!?」

「嘘だろ……」

 

 私達はショックで上手く言葉を、発せなかった。

 

 目の前で友達が死んだ。

 

 その事実を受け入れられなかったのだ。

 

 そんな私達の心境に構うことなくゲームマスターは喋り続けた。

 

『三人となってしまいましたが、いいでしょう。よかったですね、これで賞金が貰える確率が上がりました』

 

「本当に……眼鏡ちゃんは死んだの?」

 

『ルールですから。ルールは絶対です。ゲームから逃げれば全員等しく死んでいただきます』

 

 ありえない。

 それでも、実際に起こったことだ。

 

 私は、画面のゲームマスターに向かって努めて冷静に尋ねた。

 

「それで、私達に……一体何のゲームをさせようって言うの?」

 

 その時、画面の黒色のシルエットがニヤリ、と笑った気がした。

 

 

 

 

 

 

 

『貴方方にやっていただくゲーム、それは―――――――――――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おっぱいまんこまんこちんこゲーム!!!!』

 

 

 

 

 

 ビルのフロアに大きくゲームマスターの声が響き渡った――――。

 

 

 

 

 

 

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