八龍士   作:本城淳

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初日1

パッパッラッパパッパッラッパ♪

 

朝、けたたましいラッパの音が各宿舎の屋上から鳴らされる。

「んだよ、うるせぇな……」

「知るか、ほっとけよ」

それよりも二時間前に起床し、早朝のトレーニングをしていた信と旭はあまりのうるささに顔をしかめる。

もはや目覚ましとしてしか機能しなくなり、それすらもバッテリーを充電する手段も無く、数日後にはただのゴミでしか無くなるであろう携帯のアラームで起きた二人。

当然、ヴェレヴァムとウェールテイの時間はずれている。しかし、生活のリズムを変えたくない二人は、昨夜の消灯から計算して起床時間をウェールテイ時間の4時に合わせてアラームをセットしていた。

近い内に目覚まし時計を支給して貰う必要があるだろう。

ちなみに健斗は二人のアラームやたった今鳴らされたラッパのうるさい音も何のその。爆睡を継続中だ。

「何をしている!起床だ!」

バァンと扉が開かれ、喬が怒鳴り込んでくる。

「朝っぱらからうるせぇよ。もう起きてるよ」

「そこで寝ているねぼすけに言えよ。朝からやかましいんだよ」

二人は迷惑そうな顔を喬に向けて言う。

「朝のラッパが鳴ったら起床して宿舎の前で整列し、点呼を受けろと教えただろ!」

「あ?言ってたか?」

「知らねぇな」

すっとぼけるバカコンビ。健斗に至ってはこのやかましさの中でも気にせずに爆睡を続けている。

「ええい!木藤健斗!いつまで寝ている!起きろ!」

「知らねぇぞ?」

喬は持っていた木刀で健斗を打ち付けようとして……

「スピー……蕾弾」

喬の殺気を感じて健斗が足から霊力の弾丸を喬に向けて放つ。

「ぶはっ!」

まさか反撃が来るとは思ってもみなかった喬は、カウンター気味にその弾丸を顔面で受けてしまい、その場にダウンする。

「だから知らねぇぞ?って言っただろ」

信がゲラゲラ笑いながら喬に言う。信はこうなることが分かっていたのだ。

「何をする!木藤健斗!」

「いや、本人はまだ寝てるから」

旭が一応付け加える。

そう、健斗の意識はまだ夢の中だ。喬への反撃は、本気で無意識の内に体が反応して実行したのである。

「ね、寝ながら攻撃してきたのか!?」

「いや、それはあんたが悪い。本気で寝ている健斗に…というか、俺達に対して殺気を向ければ俺達は無意識に反応する。寝首をかかれるなんて当たり前すぎて」

「殺気を向けなくても攻撃範囲内に入ったらやられるぞ?」

「既にそこまでの領域にいるとはな……」

戦場帰りの熟練した兵士や暗殺者などでは当たり前の事だった。まさか健斗達がその領域にいるなんて思いもしなかったのだろう。それだけ彼等が身をおいていた環境は過酷だったのだが。

それに反応しない人間はお互い同士や恵里香のような気を許した相手くらいだろう。

「とにかく、木藤健斗を起こせ!起床だ!」

言われて渋々健斗を起こす信。

「おい健斗。起きろ。朝だぞ」

パコン!と、軽く健斗を殴る。

「むにゃ?」

「それで一発で起きるのか……」

「まぁ、俺らだからな」

「お前らはどこまでも疲れさせてくれるな………」

朝から疲れた喬だった。

 

ー数秒後ー舎庭ー

 

「点呼!番号!」

「アイン」

「ツヴァイ」

「……スピーZZZ」

バカコンビはドイツ語で答え、健斗は立ちながら眠っていた。

「木藤!寝息で答えるな!もう一度!」

「あれ?」

普通にドイツ語で喋った二人はスルーされた。

「?どうした?安倍」

「いや、俺達、ドイツ語で1、2って言ったよな?何でスルーされる?」

そこで喬は点呼の帳面を閉じて、その紙束で信の頭を叩く。

「そんなしょうもないイタズラをしていたのか。どこでバカにされてるかわかった物ではないな。ペナルティ追加だ。お前らがヴェレヴァムのどこの言葉で話そうが、こちらでは流星王国の言葉に翻訳される。『1』という意味を持つ言葉であるならば、お前らが接種された翻訳魔法はそういう風に翻訳されて私に届くようになっている。宛が外れたな」

「「チッ!」」

わざわざない知識でドイツ語で答えたというのに無駄骨と知って舌打ちをする信達。

「さて。朝寝坊一人と点呼をサボったこと、そしてたった今の反抗的な行動。合わせて3ペナルティ。合計30問の軍規の小テストを三人が満点取るまでは朝飯は食わさん」

喬はプリントを三枚ずつ三人に渡す。

「ちょっと待て!食堂が開いている時間て今から三十分間だけだろ!?過ぎたらどうなるんだよ!」

「そうしたら飯を食いはぐれる事になるな?あと、それに付け加えて国民の血税を無駄にしたペナルティがもうひとつ加わる」

「おいっ!それはさすがに横暴ではないのか?」

旭が突っかかるが、喬は涼しい顔をして受け流す。

「そうなる原因を作ったのはお前らだ。木藤健斗が寝坊せず、点呼に出てくれば良かったわけだし、点呼で反抗的な事をしようとしたお前らが悪い。ペナルティを受ける結果になったのは誰が原因か、よく考えるんだな」

そう言って喬は腕時計を見る。

「ほら。食い下がっている間にどんどん飯の時間が無くなるぞ?早く取りかかった方が良いんじゃないか?」

「くそっ!覚えてろ!おら、健斗!寝てんじゃねぇ!起きて課題を終わらすぞ!」

ゴンッ!と健斗の頭に拳骨を落とす信。

「いてっ!何すんだ信!」

「うるせぇ!早速ペナルティ3だ!早く終わらせねぇと飯を食いっぱぐれるし、更にペナルティが加算されるんだよ!」

「なにぃ!早速やらかしたのか!」

「ペナルティの内の2つがお前のせいだからな!?」

信は健斗を引きずりながら走って宿舎の自室に戻る。

実のところ、喬はこれでも甘くペナルティを課している。

本来ならばペナルティは7だったのだから。

健斗の寝坊で1。

点呼に出なかった事で一人一つずつで3。

舐めた点呼で一人一つずつで3。

合計7ペナ。

(まぁ、最初だけは甘く見てやるか。どうせどんどん追加される事だしな)

 

ー自室ー

 

結局、三人は朝食に間に合わなかった。

さらに………

「ペナルティ、3追加!」

「な、なにぃ!」

「朝食を食べなかったことについては前述通り!付け加えて何だ?この寝床の散乱具合は!きちんと整頓して出てこい!更に、昨日、訓練着を含めて被服を交付したはずだ!何だ貴様らは!思い思いの服で訓練に出てくるな!以上の内容からペナルティ3!試験の実施は昼休みの間だ!もちろん、終わらせるまでは昼食は抜きだ!」

三人は霊衣だったり、シャツにジーンズだったり、胴着だったりとまとまりのない服装をしていた。

昨日の段階で戦闘服も兼ねた訓練着を交付されていたのにも関わらずだ。

訓練着とはヴェレヴァムと同様に野戦迷彩を施された動きやすい作業着に野戦ブーツの戦闘靴だ。

もちろん、喬は現在はこの服装をしている。

「さっさと着替えて清掃だ!モタモタして遅刻したら更にペナルティだから清々と動け!」

「覚えてろ!くそ教官!」

「………暴言によるペナルティ1追加だ」

自分で加点しておいてなんだが、喬は本当にコイツらは大丈夫なのかと思ってしまう。

普通ならば初日からこんなにペナルティを重ねる奴はいないのだから。

 

続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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