ー流星高校ー
昼休み。
「今日の授業はここまで。再来週からテストが始まるからしっかり復習しておけよ~」
「起立!礼!」
クラス委員が号令をかけると、それぞれの昼休みが始まる。
まずは健斗。
健斗は途中の弁当屋で買った焼肉弁当を広げる。
お気に入りの弁当屋なのか、いつもそこで弁当を買って食べている。中身はその時の気分でその日毎に違う。
次に信と旭だ。
授業が終了した瞬間にダッシュで教室を出て行くのは信。それほど急がずにゆっくり出ていくのが旭。
何故その差が出てくるのか。それは信の向かう先が出張購買のパン屋で、旭が向かう先は学食だからだ。
信は購買戦争へと突っ込んでいき、予算である500円でありったけの惣菜パンを漁る。それもカツサンドや焼きそばパン等のどの世代にもウケるパンを狙って行くので出遅れれば売り切れてしまう。
「おらぁ!どけぇ!神崎の野郎!早く授業を終わらせろよぉ!」
あの騒がしいパン争奪戦に加わるくらいならば、健斗のように事前に買ってから登校すれば言いと思うのだが、信はこの購買のパン屋がお気に入りで、学校で食べるならばそこでなければ気が済まないらしい。
ついでに言うなら事前に買ってから食べるなんてのは負けた気がして気に入らないのだとか。
購買パン争奪戦で得たパンはただのパンではなく、激しい戦いの末に勝ち取ったものだからこそ美味しいのだとか。何かのスーパーを舞台にした弁当物語のようである。
一方でゆっくり旭が向かっている学食は人気が無いのかと言えばそうではない。購買戦争に敗れた敗残兵たちが学食のメニューに群がるので、ここもごった返す。しかし、旭はまったく焦らない。何故なら旭がいつも食べているのは学食でもそれほど人気のないそばとさばの味噌煮定食だからだ。
それでも売り切れる時は売り切れる。なのに何故ゆっくりしているのかと言えば。
「おばちゃーん」
「あいよ、取っておいてあるよ、旭ちゃん」
「いつもありがとー」
「いいってことだよ。旭ちゃんはか弱いし、あんなおしくら饅頭の中に突入させる訳にはいかないからねぇ」
なんてことはない。コンプレックスであるそのか弱そうな見た目を利用して同情を誘い、取り置きしてもらったいるのだ。ちゃっかりしているというか、意地汚いと言うべきか…。
旭がいつもの定食を持って座席に座ると、先に座ってパンを食べていた信と健斗の席へ座る。信が食べていたのはコロッケロールと玉子ロール、それにクリームパンにパックのカフェオレだ。
いつものは逃したらしく、少しむくれている。
「けっ!楽して手に入れた飯はうめかよ!勝利の味こそが究極の調味料だって何でわからねぇ!」
「ある意味では究極の勝ちとも言えると思うけどな。この学校で取り置きをしてもらえるなんて俺くらいだろうしな」
「勝ちとか負けとか下らないな。うん、今日もオリジン弁当は旨い!」
三者別々の食事を取りながら、互いを罵る光景はいつもの事だ。学食の席での風物詩となりつつある。
そこに八龍士の三人組も現れる。
明が手に持っているのは近くのコンビニの袋。
真樹はリュックから弁当を取り出す。朝食のついでに作っていたようだ。中身はよく分からない肉料理とチャーハンのような物だ。コイツらは本当にどこの国出身なのだろうか……。
麻美は論外。カロリーメ○トやらウ○ダーやらソイジ○イのような携行食料である。そう言えば前に教室で見かけた時は乾パンと魚肉ソーセージだったような…。
「お前………さすがにそれは………」
「え?何で?美味しいじゃん?」
健斗が突っ込むが、麻美は何が問題なの?と返してきた。
「この国の食事はさ、贅沢だよ。あたしが食べているこれだってしっかり味が付いてるし」
そう言いながらカロ○ーメイトのフルーツ味を美味しそうに頬張る麻美。更にビーフジャーキーを取り出して齧る齧る。
「おま………それ、酒のつまみ………」
「いやぁ、ヤッパリこの味がしっくり来るなぁ~♪みんなが食べているそれよりも、あたしはこっちの方が食べなれてるよぉ~♪」
「…………まぁ、そういうのが必要な場面もあるから多くは言うまい………」
かくいう健斗達もデイバックにはそういう非常食を携行しているし、1リットルの水筒を持ち歩いている。それは非常時に備えてのものであるが、災害とかの一般的な理由ではない。
ヤクザな仕事をしている者の性で、いつ敵の襲撃により孤立してしまうかわからない。それに備えて常に携行食料を持ち歩いているのだが、麻美は普段からそういう非常食を食べている生活を普段はしているのかもしれない。保存性を優先した塩辛さとオイル臭さたっぷりのビーフジャーキーをお袋の味のような言い方をしている麻美に同情的になってしまう。
「お、ならば塚山。こう言うのはどうだ?」
旭が掲示した携行食料は戦国時代に織田軍辺りが合戦の携行食料として食べていたという干し飯だ。
ご飯に味噌を混ぜて藁にくるんで干し、お湯で戻して味噌猫まんまのような物だ。
「悪くは無いけど、お湯が常に身近にあるとは限らないじゃん?それよりかは画期的なのがドッグフード!缶を開けるだけで食べられるお手軽さに加えて一食に必要な栄養価は含まれてるなんて考えた人は天才だよ!」
「………悪い、それだけはさすがに……いや、意外にアリなのか?プライドさえ捨てれば実利はあるかも知れないが………ううむ………」
「旭。毒されるな。お前は和食好きスキーだろ。大人しく懐中汁粉でも食ってろ」
麻美に毒されつつある旭に健斗が突っ込みを入れる。確かにドッグフードは完全食であると言われているが、それに手を出すのは最後の最後にしたいと健斗は思う。
「好みは人それぞれだろ?取り敢えず、くっちまおうぜ?時間はあまりないしな」
「そうだな。食える時に食う。それがエージェントの鉄則だよな」
ズルズルとそばを啜りながら喋る旭の言葉を明が続ける。明もコンビニで買ってきたブリトーにパクつき始める。
「せっかく取ってきた戦利品なのによ。ゆっくり味わう時間もねぇのかよ」
(ガツガツガツ!)
信も惣菜パンを食べる速度を早め、健斗は無言のまま弁当をかっ込み始める。
「こういう下品な食べ方は好きでは無いんだけど…仕方がないわね」
「だからこういう食べ物が一番良いんだって」
真樹は完食するのを諦めたのか、弁当箱をしまい始め、麻美は食べ途中だったカロリーメイトのブロックを口に納め、未開封の物はしまった。ゴミはポイ捨てである。
一通り食べ終わると、6人は後片付けもそこそこに近くに座っていた一人の男子生徒に近付く。そして信と旭がその男の両脇から肩を抱く。
「昼飯の途中で悪いな」
「ちょっと聞きたいことがあるんだよ」
「な、何かな……」
男子生徒はおどおどしながら答える。
端から見れば裏番コンビに絡まれている一般生徒に見えるだろう。
男子生徒は普通の体型、どこにでもいるような普通の顔付きで、特徴らしい特徴がない。
「お前、この学校の生徒じゃないな?」
「よくあるんだよ。特徴らしい特徴を残らず、テロをやるエージェントなんてのはな。それがそういう風に整形をして紛れ込ませる。俺らをなめるんじゃねぇ」
信と旭は別段学校の生徒全員の顔と名前を覚えているわけではない。だが、信が言うように、特徴らしい特徴を持たないよう整形した人間をさりげなく潜り込ませ、テロや犯罪などを行う手段は闇の世界では当たり前の話である。
特徴がないのがむしろ特徴……。
一般的な常識が皆無な二人ではあるが、その手の常識はむしろイヤというほど身に付けている。
それに………。
「テメェが制服の内ポケットに入れているのは呪石だな?それも明達の敵対組織が込めた術式の……」
「その手の嗅覚はガキの頃から鍛えられたからな。隠そうと隠蔽の術式を入れたところで分かるんだよ」
旭は手にそれを持って男の目の前に見せる。
「い、いつの間に!」
「相変わらず見事なスリの技術だな」
旭はスリグループさながらの動きで男の懐から呪石をスリ抜いていた。
この程度の事は朝飯前である。
「………俺、アイツと行動するときは財布を持ち歩かないようにするぜ……手癖が悪いな、ホントに……」
「まぁ、日常で……それも一般人相手にはやらないと言うのが本人の言だけどな………。気を付けておくに越したことはないぞ?仕事でも普通にスリをして重要書類とか抜き取るから」
散々な言われようであるが、事実なのだから仕方がない。異世界スキル物であるならば、盗賊のスキルがマックスレベルに達しているであろう能力を旭は持っている。
「……おっと、逃がしはしねぇし、抵抗もさせねぇぜ?邪教徒さんよ」
信が周囲から見えないようにボディ・ブローを入れる。
「ぐほぉ!」
男は悶絶して机に突っ伏す。そして旭がその背中を押さえ付け、首の後ろに手をかざして気を送り込む。
「信、解呪は出来るか?」
「誰に物を言ってんだよ。伊達にお前の家系の呪いを日常的に解呪してなかったっての」
信が手をかざして魔力を展開し、呪石の呪いを少しずつ解いていく。
「見事な物ね……安倍信の解呪の技術も……それに、彼等の術式をあっさり解呪しているわ…」
真樹が信の力量を素直に称賛する。
「和田と安倍は不倶戴天の敵同士だったからな。呪いの和田に対する天敵なんだよ。安倍家は。中でも信はその腕が飛び抜けて高い。落ちこぼれと本人達は言うけれど、奴等は族長である本家の人間よりも能力は高いんだよ。それが奴等の不幸でもあるわけだけどな」
信は解呪と魔術のスペシャリストである。一度見た術式ならば瞬時に理解し、そしてそれを無力化する手段を瞬時に構築することが出来る。
明達の敵である呪石(邪霊石)は昨夜見ている。どういう術式が組まれているかは不明であるが、大元が同じであるならば解呪するのはそれほど難しくはない…と言うのが本人の言である。
「おいおい……マジで自爆テロが目的かよ。自分もろとも吹き飛ばす呪いが込められていたぜ?」
「く………Ինքնասպանություն」
「まずい!離れろ!信!」
「分かっている!」
信と旭が咄嗟に距離を取る。
その次の瞬間、黒い靄が男を覆う。そしてそれが晴れると………男は既に事切れていた。
「あぶねぇ……嫌な予感がしたから離れたが、俺達もろとも死の呪いで自爆しやがった……」
「あんなのに巻き込まれていたら俺達もお陀仏だったな……ホントに過激主義かよ……」
そう言って信は男の死体肩にを担ぎ上げる。
「しっかりしろ!すぐに保健室に連れてってやるからな!」
「いや、病院だ!病院に連れて行くぞ!」
二人は男が病気か何かで意識を失ったという設定で運び出すつもりらしい。そのままスタコラと走り去る。
「やけに手慣れているな……あいつら……」
「演技も自然過ぎてて違和感ないし……」
「いや、こういうのがしょっちゅうだからな。あれは良くある手段だよ……」
人一人が死んだのだ。放置しておけば騒ぎになるのは明白だろう。それ故に一芝居打ったのだが、余りにも手慣れた鮮やかな運びだった。
「任務失敗は死………か。ホントに裏の世界の集団だな……お前らの敵は……」
「まぁ裏社会ではわりかし当たり前の理屈だがな。奴等は当たり前にそれをやってくる」
「ペラペラ喋っていないで追いかけるよ!まだ何か襲って来るかも知れないじゃん!」
置いてきぼりを食らった四人は慌てて二人を追いかける。
麻美が言っていることは至極まっとうである。
こう言うのは任務が無事に達成されたかを確かめる観測者が必ずいるはずだし、失敗したときの予備手段を用意していないはずがない。
別行動になった信と旭を狙って何か仕掛けて来ることは十二分に考えられる事だった。
「ごめん!おばちゃん!急病患者が出たから対処してくる!後片付けお願い!」
健斗が学食勤務員のおばちゃんに声をかけて信と旭を追う。
(案外、明達が言っていることは本当なのかもな…あんなサイコな集団が相手なら……このままではまずい!)
明や敵の正体を見極めるのは後だ。今はこの事態を何とかする方が優先である。
しかし、健斗は嫌な予感がしていた。
状況は悪い方へ、悪い方へと向かっている気がしてならないと……
得てして、こういう物はよく当たるのである。
健斗達の長い1日はまだ、始まったばかりだ。
続く
今回はここまでです。
現段階で分かっているキャラのステータスをどうぞ。
1…キャラ名
2…生年月日、年齢
3…戦闘スタイル
4…生い立ち
5…能力
6…属性
7…スキル
8…一言メモ
1,木藤健斗
2,1月15日産まれ。15歳。
3,流派…蹴りを主体とする木藤流古武術&霊気の行使を主体とする木藤流霊術
4,京都に拠点を置く木藤流霊術の総本山である神社の次男。現在は信と旭の生活の補助と監視の任務を家命により行っている
5.不明
6.不明
7.家事…0 霊術…10 格闘術(蹴り)…7 指揮…8 魔術…4 気功…5 超能力…3
8…主人公の一人。信や旭に比べると一般人寄りであるが、あくまでも二人に比べればの話である。一応は呉越同舟三人組のリーダー的ポジション?今後彼がどういう物語を展開していくのだろうか…?
それでは次回もよろしくお願い致します。