東雲友奈は勇者である   作:うみうどん

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六話『日常』

 千景は手を見ながら考える。

 

『じゃあね』

 

 友奈によく似た、男から手を握られて友奈の顔で友奈の笑顔を見せた…あの男。

 最初は怖い感じがした、なのに何故か今ではそんな感じも無い。

 本当に千景に会えて嬉しそうな顔をしていたのだ。

 

 ☆

 

 東雲は今、讃州中学屋上に来ている。

 それは、赤嶺が勇者部の面々と接触すると言うことで、東雲は赤嶺が帰ってくるまで待機しているのだ。

 

 そして、一陣の突風が屋上に吹いたと思ったら、赤嶺が目の前に立っていた。

 

「ただいまぁ」

「おかえり!」

 

 そして二人はそのまま帰ることにする。

 

「そういえば、勇者部で何を話してたの?」

「うーん、宣戦布告とお姉様の顔を見にかなぁ」

「…お姉様って?」

「勇者、古波蔵棗…」

 

 そして赤嶺は語り出した。

 赤嶺の先祖は、もともと沖縄に住んでいた。

 しかし、バーテックスが攻めてきて赤嶺家や他の家も四国に逃げなければならない状況に陥った。

 そして、その時、海を渡る際に赤嶺の先祖を助けてくれたのが、古波蔵棗という勇者だったと言う。

 

「そこで、尊敬の意を込めてお姉様って呼んでるの」

「へぇ、すごい人なんだねぇ」

「まあ、西暦の勇者は全員すごいけどねぇ」

 

 そんな感じで話していたら、二人が住む家に帰ってきた。

 次の戦いは二日後を予定している。

 それまでに神樹側の勇者が攻めてくるかどうかは分からない。

 一応準備だけしておくに越したことはないだろうと、赤嶺は作戦を練り出した。

 

 そして東雲は夕飯の買い出しに出かける。

 作戦云々は、赤嶺に任せきりだ。

 東雲は戦術の勉強などはしておらず、赤嶺ほどの作戦は練れない。

 それは持ち前の優しさからくるものだろう。

 

 東雲は今日の分の買い出しを終え、帰路につく。

 造反神が占領している地域でもライフラインは充実している。

 それは造反神が神樹の代わりをしているからだ。

 なので、人々は変わらず生活を続けることができるのだ。

 ちなみに領域に勇者や巫女が入ってくると戦闘とみなし樹海化もせずに襲いかかることができるのであった。

 

「そういえば、あの子の名前聞いてないや」

 

 東雲は今日あった千景の事を考える。

 

(やっぱり似てるんだよなぁ、目元とか)

 

 それは、東雲の一番守りたい人、篠目と比べてのことだった。

 性格は違うが、容姿だけで言うとかなり似ている。

 その為、東雲は別人であろうが、久し振りに会うあの子に挨拶だけしておいた。

 

(でも敵かぁ…あまりあの子とは戦いたく無いなぁ)

 

 それは篠目と戦っているようで、あまり気乗りしないと言うことだった。

 しかし、こうなってしまった以上、東雲も全力で頑張るしか無いと思う。

 覚悟を決めなければならない。

 

「あ、大判焼き」

 

 生地のいい匂いが屋台から漂ってきて、東雲はそのままふらっと立ち寄り思わず二個買ってしまった。

 片方がクリームに片方があんこだ。

 クリームは東雲用、あんこは赤嶺用に買う。

 

(なんでか、いっつもクリームを買っちゃうんだよねぇ)

 

 こうして、緩やかな時間は過ぎていく。

 

 ☆

 

 大判焼きを赤嶺に渡したら「あ、あんこ饅頭だぁ」と呼び、大判焼きの呼び方論争が始まってしまった次の日。

 

 何もすることが無くなってしまったので、東雲と赤嶺は自主的に鍛錬を行なっていた。

 今、やっているのは組手であり、二人とも使う技が違うので、異種格闘技戦みたいな組手になる。

 

「ふっ」

「くっ」

 

 東雲は腰を落とし、手を上下に構える。

 これは東雲家に代々伝わる構えで、バーテックス戦の時も防御と攻撃が両立できるので助かった覚えがある。

 

 そこから貫手で赤嶺を攻撃する。

 なぜ貫手なのかと言うと、バーテックスを破壊するときは拳、牽制するときは貫手と技を使い分けているからだ。

 

「はあ!」

「…!」

 

 赤嶺は鋭い蹴りを東雲にお見舞いした。

 東雲は上の方の手を、蹴りに合わせ受け流す。

 そこから、赤嶺の裏拳が流れる様に飛んできたので、下の手で上に払う様に受け流した。

 同じような動作を流れるように何回も二人は行う。

 

 そして一時間後。

 

「つはぁ!今日はここまでにしよっか」

「そうだね、明日に響くし」

 

 明日はいよいよ襲撃の日。

 この日のために赤嶺は作戦を練った。東雲に見せたら、『うわぁ、本当に悪いこと考えるねぇ』と若干引かれてしまったような気もするが、この作戦に赤嶺は自信を持っている。

 

「はい、飲み物」

 

 東雲がスポーツ飲料を赤嶺に渡す。

 

「昨日といい本当に気がきくよね、東雲くんは」

「えへへ、それほどでも」

 

 すっかり仲良しになってしまった二人、二人して笑い合う姿は、まるで兄妹のようだった。

 

 明日は襲撃日、東雲は気合が入るよう、自分の頰を二回叩く。

 乾いたパァンと言う音がアパートの庭に響いたのだった。

 

 ☆

 

 千景が何やら元気がなさそうな雰囲気を醸し出している。

 高嶋友奈はゲームをしている千景の横顔を見ている。

 

 これは、何かから逃避している顔だと、高嶋は悟った。

 となれば、早速行動に移す高嶋。

 千景がゲームをクリアした頃を見計らって、後ろから抱きつく。

 

「どうしたの?ぐんちゃん」

「あ、高嶋さん」

 

 さっきまで険しい顔をしていた千景は高嶋が抱きついた事によって、すぐに優しい表情に戻る。

 そして、己の心境を今ポツリと高嶋に明かした。

 

「あの、東雲友奈って人」

「うん、東雲くんがどうしたの?」

「何処かで会ったような気がして…」

「え?」

「でも、会った記憶がないのよ。…それになんだか手を握られて安心してしまったというか」

 

 それは、高嶋に抱きつかれているのと同じ感情だと千景は思った。

 初めて会った男に手を繋がれて、安心してしまうだなんて、自分が軽い女になってしまったみたいだと思った千景。

 

(私には、高嶋さんがいるのに)

 

 そんな不安を、包み込むかのように高嶋の抱擁が強くなる。

 

「大丈夫だよ、ぐんちゃん」

「え?」

「私も同じこと思ってたんだ」

 

 高嶋もあの時、東雲に会い、何故だか他人ではないような気がした。

 結城友奈も同じ感想を抱いたと高嶋は聞いた。

 

「でもね、ぐんちゃんがそう思ったなら、東雲くんは優しい人なんじゃないかな?」

「…そうかしら」

「きっとそうだよ!だって同じ友奈なんだもん」

 

 高嶋は千景にニッコリと微笑みかける。

 それと同時に東雲の顔もフラッシュバックする。

 

(ううん、違う。高嶋さんは高嶋さんーー)

 

 千景は安心しきったかのように高嶋に体重をかける。

 それと同時に、高嶋もギュッと千景の手を握り、一緒に横になった。




突如として舞い込んだ、イラスト。
それを見てしまった私は驚愕する。
「うめぇ……」

というわけでステキなイラストを匿名希望様から頂きました。
本当にありがとうございます。
掲載許可はとっております。

びっくりしたよね。

さて昨日はぐんちゃんとしずくちゃんとシズクちゃんの誕生日でした。
その日のうちにポイント全部溜めちゃった。
ちなみに私の好きな勇者はぐんちゃんと友奈,sとくめゆ組のみんなです。

誤字とかございましたら教えてくれると嬉しいです。
感想もお待ちしてます。
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