東雲友奈は勇者である   作:うみうどん

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あなたのためにぐんちゃん一向に出る気配ないです。うみうどんの来世にご期待ください。


十二話『応答』

 東雲は声が詰まる。

 まさかその質問がされるとは思ってなかったのだ。

 分身は対象者の記憶を除き、その人間の弱いところをついてくる。

 そして、その質問は東雲には効果覿面だったらしく、珍しく困ったような表情を浮かべる。

 

『…時間経過は少し危険だよ、たとえ天津神の力を持ってしてもここに長時間止まるとなると、どうなるか分からないよ』

 

 早く答えなければならないのに、うまく言葉に出来ないもどかしさ。

 確かに篠目のことは好きだ、しかしそれは友人としての好きであって、恋愛的な意味での好きではないと脳をフル回転させる。

 しかし、恋愛的な意味での好きも思い当たる節があった。

 

 ☆

 

 それは神世紀800年8月ーー。

 東雲の一室に東雲と篠目の姿があった。

 

「さあ、篠目ちゃん!火を消して!」

「はい!…ふー!」

 

 この日は篠目の11歳の誕生日だったことを東雲は鮮明に覚えている。

 二人だけの小さな誕生日会だったが、篠目はすごく喜んでいたのだ。

 篠目がケーキを口いっぱいに頬張り、頰にクリームが付いてしまうほど夢中に食べている。

 

「篠目ちゃん、口」

「え?」

 

 東雲は頰の付いたクリームを人差し指ですくい、舐めとる。

 いくら優秀な巫女であろうと、まだまだ子供だなと思ってしまった。

 しかし、東雲の行動は少しデリカシーがなかったと言える。

 顔を真っ赤にしてしまった篠目が、俯いてしまう。

 

 しまった、やってしまったと思ってしまった。

 いくら子供でも、女の子だ。そんな女の子の肌を無断で触ってしまうなど、配慮に欠けていたと東雲は思う。

 

「あ…篠目ちゃん?」

「……ゆうなさんはずるいです…。私の気も知らないで…」

 

 やはり相当傷つけてしまったようだ。

 東雲は猛省する。せっかくの誕生日なのにこんなことになってしまったなんて。

 

「だから…これはお返しです…」

 

 篠目は東雲に近づく。

 そして、東雲の頰に篠目がキスをした。

 

「…え?」

「ゆうなさんはこうやって行動で表さないと…わかってもらえないから…」

 

 そして、篠目は部屋からケーキを持って飛び出してしまった。

 東雲は自分の頰に手を当てる、柔らかい唇の感触がいまだに残っていた。

 これは子供のしたことだ…。しかし、そう割り切ろうとしても割り切れない自分がいる。

 

 結局この件は後で東雲に御役目の出動要請がかかり、あやふやになってしまった。

 そして、この世界に連れて来られた後でも、今だに自分の答えが出せずにいる。

 

 ☆

 

『さ、答えは出せたかな?随分考え込んでたようだけど』

 

 東雲はゆっくりと目を開ける。

 考えがまとまった、顔つきに見える。

 より一層凛々しい顔になったと分身は思った。

 

「…今はまだわからない」

『分からない?そんなはずは』

 

 東雲は分身の言葉を遮るように、喋る。

 自分の思い。

 そして決意を。

 

「だけど、僕は篠目ちゃんのことを本気で守りたいと思っている」

『…!』

「一緒にいると、心がぽわぽわしてくる。そんな篠目ちゃんの隣に居続けたい。だから守る!だって僕は……勇者だから!」

(……ふふ、それが恋という感情じゃなかったらなんだっていうのかな)

 

 分身は何か諦めた表情をする。

 これは自分が教えることではない。東雲自身が答えを出さないといけない問題だと思ったからだ。

 

『うん、いい回答だね。負けたよ…。さあ、一緒に神樹側の勇者たちに勝とうか!』

「うん!」

 

 こうして精神世界は溶けていく。

 

 ☆

 

「…おかえり」

 

 東雲は目を覚ますと、目の前に親指をぐっと立てた赤嶺がいた。

 

「ナイスファイト」

「うん」

 

 精神の部屋に閉じ込められた時より、現実の世界は少し時間は経っていた。

 それほど、東雲は考え込んだというわけだろう。

 

「東雲くんの事だから一瞬で帰って来れると思ったけど」

「ちょっと、大事な事考えてたんだ」

 

 赤嶺が何かニヤついた顔で東雲に近づく。

 

「何考えてたの?」

「…内緒!」

 

 赤嶺は思った、前より少し顔がスッキリしていると。

 何か憑き物が落ちたような感じだ。

 そして赤嶺は思う、計画通りだと。

 

「ふーん、まあいいけど…。さて問題はなかった?」

「うん、問題はなかったよ。でも、これは失敗した時、相手の士気が高まるやつだね」

「それは唯一の欠点だね」

 

 二人して笑い合う。

 こうして夜も更けていき、次の日に備える。

 

 夜空を見ながら東雲は思う。

 

(待っててね、篠目ちゃん。必ず帰るから)

 

 遠い時代にいる、篠目に想いが届くように東雲は祈った。

 そしてこの想いが伝わったかどうかは、また別の話だ。




『はあああ!?キス!?灯さん、東雲さんにキスしたの!?』
「う、うん…」
『は、犯罪が密室で横行されたわ……つ、通報…』
「ふえ!?つ、通報!?」

こんな会話が繰り広げられたとかなかったとか。

誤字とかありましたら教えてくれると嬉しいです。
感想もお待ちしてます。
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