東雲友奈は勇者である   作:うみうどん

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少し気持ち悪い描写があります。


『狭間』(2)

勇者御記

ーーーーーー

 

 壁の向こうからバーテックスの叫びが聞こえました。

 本来バーテックスという化け物は鳴かないはずです。

 声帯も持っていない事も確認済みだと分かっています。

 でも、これは一体何?

 僕は壁の向こうに行きました、勇者だし、みんなを怖がらせた奴を退治しに行こうと思ったのです。

 

 でも、壁の向こうは地獄でした。

 訳の分からない◼️◼️◼️がうようよと蠢いていました。

 何?アレは。

 全身が震えて、僕はその場でしゃがみこんでしまい、吐いてしまいました。

 

 あの時の事を思い出すと、今でも体が震えるくらいにもなりました。

 でも僕はたった一人の勇者です。

 怖いのはみんなも一緒だし、頑張らなきゃ。

 

ーーーーーー

大赦書史部・巫女様

検閲済

 

 ☆

 

『オオオオオオオオオオオ!!!!!」』

 

 

 壁の向こうから謎の生物の叫び声が聞こえる、早急に勇者を送るべし。と、富山県の隣の石川県大赦金沢支部、長野県大赦大町支部から香川讃州市大赦本部に連絡が来た。

 

 神世紀400年頃、バーテックスが襲来した時、霊場に止まってくれるのなら好都合とばかりに神たちは富山県立山、岐阜、石川県白山、青森県恐山に壁を神世紀300年頃と同じように作った。

 

 特にバーテックスの進行が酷かった富山と青森は県ごと封鎖されることになり。

 今では県境に壁が置かれている。

 これにより、新たなバーテックス達も手出しが出来ずにいた。

 

 岐阜、石川県の境にある白山では東雲友奈が既に攻略しており、跡形もなくバーテックス達は消え去っていたのだ。

 

 富山と青森の壁の向こうで地獄が広がっているとも知らずに。

 

 大赦の上の人間は『富山で?そんなバカな』と一蹴する。

 それもそのはず、富山は既に神世紀400年の勇者達が攻略したはずなのだから。

 

 しかし、攻略したにも関わらず、壁が一向に消えない事も気がかりだった大赦は東雲友奈を派遣する。

 因みに攻略したら壁が消える事は東雲友奈が証明している。

 

「あーあー、聞こえる?こちら東雲友奈、石川の壁に着きました。今は上です」

『そこから先ーーー気をつけてくださーーー…ゆうなさーー何故ーーザザッーーーか通信ーーー繋がりザザッーーー』

「うん、こっちでも確認してるよ、かなりノイズが酷いや。多分壁の向こうに入ったら聞こえなくなるかも」

『分かーーザザッーーーーーーゆうなさんーーーーーザザッーーーぜったい帰ってきて』

「うん、待っててね篠目ちゃん」

 

 東雲はインカムを一旦外す。

 これでは使い物にならなく、耳を塞いでいる状態なので逆に危険なのだ。

 

 そして、東雲は壁の向こうに入る。

 ヌルッとした謎の感触に身を包まれながら進むと、壁の向こうについた。

 

 ーーなにかがおかしい。

 ツンと鼻に付く腐敗臭。

 なにか、生肉ーーいや卵が腐った臭いが鼻に付く。

 臭い。

 これでは富山での復興は難しいだろうと東雲は思った。

 

 壁の向こうを目を凝らしてみる。

 すると、壁の下の方で謎の生物がもぞもぞと蠢いていた。

 

「…バーテックス?」

 

 確かにバーテックスはバーテックスだろう。

 しかし、ソレはーーー。

 

「うわああああああ!!」

 

 東雲友奈は思わず叫ぶ。

 

 東雲が見たのは、『肉塊』だった。

 醜悪な赤々しい肉に臓物を地面に擦りながら歩く、まるで生物という物を冒涜しているような肉塊だった。

 

「うっ」

 

 東雲は思わず吐く、そしてこの場に長く居てはいけないと東雲の中で警鐘を鳴らしていた。

 ソレはすぐ近くにやってくる。

 

「あっ」

 

 よだれを垂らし顔の大部分を大きな歯で剥き出しにして、腐敗臭を待ちきらしながらニチャニチャと動いていた。

 東雲がこれまで見た、バーテックスとは全く違うもの。

 異形の者。

 ソレを見た人間の精神を削り取る者。

 

 そして、神を冒涜する者。

 

 これまで勇者達がやってきた事は無意味だったのか、なんて訳の分からない考えが頭に浮かぶ。

 

 東雲は半泣きになりながら、足を引きずりながらもその場から脱出しようとする。

 追ってくる。

 巨大な肉の塊が追ってくる。

 臓物を撒き散らしながら追ってくる。

 

「ギシャアアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオ!!!」

 

 肉の塊が吠えた。

 怖いーー怖いーー。

 東雲は必死に逃げた。

 壁の向こうへ行こう、行こうとする。

 

 ーーそして、何とか壁の向こう、石川に逃げれたのである。

 

「はーーーっ!はーーーっ」

 

 半ば過呼吸のごとく、東雲は肺に酸素を送り込む。

 しかしうまく酸素を送り込めない。

 呼吸が出来なくて苦しい。

 

 そこで東雲の意識は途絶えた。




東雲友奈の章は花結いの章がひと段落ついたら第1話から書き始めます。
東雲友奈の章はゆゆゆベースのオリジナル色が強いですね。

誤字とかありましたら教えてくれると嬉しいです。
感想もお待ちしてます。
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