東雲友奈は勇者である   作:うみうどん

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四話『接敵』

例外が現れた。

東雲友奈という例外。

彼は遥か未来の神世紀800年からやってきた勇者だという。

私を呼んだ造反神がそう言っていた。

 

造反神はなぜ彼を呼んだのか。

それは教えてくれなかったけど、大体分かってしまった。

 

◼️◼️◼️◼️は試練を彼女達に与えるために彼を呼んだのだ。

◼️◼️◼️◼️…それを阻止するために……。

 

 

誰もいないアパートの一室、そこに赤嶺と東雲の姿があった。

二人とも時が止まったかのようにビクともせず、ただひたすらじっとテーブルを見つめる。

そして、二人の時は動き出し…。

 

「「はあああああああ!!!」」

 

一つ残った唐揚げの取り合いをしていた。

箸で箸を防御する攻防戦。

唐揚げが宙に浮き、それを二人は空中で箸の攻防戦を繰り広げる。

 

「僕が作ったものだから、僕が食べる権利がある!」

「私が材料を買ってきたのだから、私が食べる権利があるよぉ!」

 

本来二人はこういうのが一つ残ったら他人に譲る性格をしている。

しかし、妙に気の合ってしまった二人は訓練と称してこのような行儀の悪い事をしているのだ。

 

唐揚げが箸での攻防戦に嫌気が指したのか、ぴゅーんと畳の上に落ちてしまった。

 

「「あ」」

 

畳の上に落ちた唐揚げはどこからともなく現れた小さなピンク色の猫に取られてしまう。

東雲に使える精霊だ。

 

美味しそうにはぐはぐと唐揚げを食べ、ご満悦な表情を浮かべる。

 

「…うん、仕方ないかー」

「そうだね、引き分けという事で」

 

こんな感じで東雲と赤嶺は同居している。

住む場所、お金も全て造反神が用意したもので、生活には困りはしない。

弊害があるとしたら男女だという事だろうか。

しかし、東雲は思春期特有の男子みたいに赤嶺の豊満な胸には興味ないようだ。

 

こうして次の戦いに備えて英気を養っている。

 

次は造反神側の勇者が神樹側の勇者に接触する番。

東雲は少し緊張していた。

それは、英霊に会えるという事。

 

神世紀800年では神世紀300年の勇者が神格化されている部分もある。

名前は知らなくても、存在自体は知っており毎朝、神棚ならぬ勇者棚に手を合わせる家庭も少なくない。

 

「そういえば、東雲くんって彼女とかいるの?」

 

赤嶺がご飯を食べ終わり、食器を東雲と一緒に洗っている。

何も話もせずに黙々と食器を洗うのは無理な話なので無難な質問を東雲に投げかけた。

 

「ううん、いないよー」

「そうなんだ、結構モテそうなんだけどね」

「そんな事ないよー、周りからはしっかりしろっていつも怒られてるし」

「誰に?」

「巫女さんかなー」

 

神世紀800年は勇者は枯渇している。

そのかわり、神の声を聞ける素養を持った女性が増えた。

その理由は未だ解明されてはいない。

 

(もしかして本人が気づいてないだけで結構モテたりして)

 

「あ、でも」

「うん?」

「守りたい…大切な人はいるかなぁ」

 

東雲はニコリと皿を見つめながら、懐かしむかのように洗う。

 

「…ここ最近会ってなくてね、御役目途中でここに呼び出されちゃったから、いつ会いに行けるか分からないんだ」

「…へえ、そうなんだー」

「一度でいいから、また会いたいなぁ」

 

東雲は何かしら覚悟を決めた目をしている。

相当な事情があるのだろうと、赤嶺は思った。

そして、赤嶺もまた思う、自分にも弥勒蓮華がいたな…と。

 

 

場所は変わり、樹海。

突然樹海化が始まり、辺り一面が木に覆われた。

 

しかし、赤嶺と東雲は突然のことにも対して驚きはせず戦いの準備に入る。

 

「じゃ、アタッカ君はこっちで」

 

赤嶺はテキパキとバーテックスに指示を送り、勇者達へ向かわせる。

それも、終わったところで前線で指示を送るため二人は神樹側の勇者がいる場所へ向かった。

 

バーテックスはよく言うことを聞くようで、赤嶺が指定した勇者を集中的に狙う。

それは神樹側の移動手段を削ぐため。

負け戦ではあるが、もし倒せればラッキー、程度に攻撃をしていた。

 

そして、二人は神樹側の勇者に近づく。

 

「東雲くんは上でこちらを見下ろしてて、自己紹介も厳格っぽく」

「え?なんで?」

「その方が悪役っぽいでしょ」

 

赤嶺はふふっと笑い、それぞれ配置に着く。

そして、神樹側の勇者に赤嶺が接触した。

 

 

「私たちの移動手段カガミブネの要である、巫女が居なくなれば、戦術上圧倒的に有利ですから」

「でも、なぜ急にそんな、人間が考えるような戦い方をするように?」

 

淡い金髪の勇者、伊予島杏が考えを述べ、黒髪を後ろの束ねた青い勇者、鷲尾須美が疑問を覚える。

それに答えるかのように赤嶺は背後から言葉を投げかけた。

 

「それはね、私が命令しているからだよ」

「今の声…友奈さん…?って、ええ!?」

 

緑色の勇者服を纏った、犬吠埼樹が赤嶺の姿を見て驚愕する。

その横にいた、朱殷色の勇者服を着た郡千景も驚く。

 

「ばぁーん、皆、初めましてだね」

 

にっこりと赤嶺は勇者達に手を振る。

 

「「3人目!?」」

 

結城友奈、そして高嶋友奈が声を揃え驚く。

 

「どうだろうねぇ?」

「…!う、上…」

「う、嘘…」

 

郡千景、そして青い勇者服を纏った東郷美森が、気配を察知したようで上の木に勇者達を見下ろしている人影が見えた。

それは赤嶺が現れた衝撃よりも遥かに大きいものとなった。

 

「…」

「「……男の子になった私…?」」

 

結城と高嶋が目を見開き、東雲を凝視する。

勇者達も、衝撃が隠せないようで各々驚いている。

 

「…ま、また友奈が増えたって感じ?でも、なんか…」

「ふふっ」

「…」

 

衝撃から抜け出せた、黒い勇者服を着た秋原雪花が冷静に東雲と赤嶺を交互に見る。

 

「ああいう笑みと目はねぇ、やばいんだよねぇ。敵だからこそ笑っているパターン、あるよ」

 

雪花が頬に冷や汗を浮かべたのを確認して、赤嶺は言う。

 

「…じゃ、後よろしく」

 

その合図と共に、赤嶺は瞬間的に移動してバーテックス達を引き寄せる。

東雲もそれを見てマフラーを翻し勇者達に背を向けた時だった。

 

「あ、あの!」

 

東雲は顔だけを向ける。

すると結城がこちらを真っ直ぐに見ていた。

 

「あ、あなたは?」

 

東雲は自己紹介だけはしてもいいかと思い、口を開く。

そして赤嶺の言っていたことを守ろうと思い、厳格な口調になるように努めた。

 

「東雲…友奈」

 

そして、東雲は去っていく。

その姿を結城友奈は見つめ、その場で動けないでいた。

 

「どうしたの!?友奈ちゃん!?」

「……あ、東郷さん」

「あの男に何かされたの!?」

「…ううん、なんだかあの人…他人じゃないような気がして…」

 

結城友奈は首を傾げる。

何かしら既視感を覚えているように感じた。

 

「まあ、それはこれが終わった後に考えるのよ!!」

 

黄色い勇者服を着た犬吠埼風が友奈に向かって言う。

 

「まずはこのバーテックスを倒すのが先よ!そして、さっきの友奈モドキ達を探す!」

 

友奈はコクリと風に頷いて、東郷と一緒にバーテックスを倒しに向かった。




2月になりました。
まだまだ寒いですね、読者の皆様も是非ともお体に気をつけてください。

ちなみに私は香川県にいるのですが、こういう寒い日は釜玉うどんがすごく美味しいです。
皆様も是非一度香川においでください。

誤字とか見つかりましたら教えてくれると幸いです。感想もお待ちしております。

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