東雲達は遠くから勇者達の行動を見る。
赤嶺が用意した大量のバーテックス達も瞬く間に殲滅されていく。
やはり、バーテックスでは戦力不足かと東雲は思う。
勇者達はこちらに気づき、急いだ様子で向かってきた。
そして、赤嶺と東雲に対峙する。
「すごいね、やっぱり簡単には無理か」
「…さっきのバーテックス群れ、アンタの指示に従ったように見えた…アンタ達一体何なのよ」
赤い勇者服の三好夏凛が赤嶺に問う。
「あ、そうだった、自己紹介だね。私の名前は…赤嶺友奈だよ」
「アカミネ…?んん?アカミネ…赤い山の嶺で赤嶺家?」
「そうだよ、大赦ではそこそこ有名な家だよね。そこの赤嶺さん家の友奈だよ」
夏凛は驚いた表情をする。
赤嶺ともなると、そこそこ有名どころの話ではない。
かなりの上位の家柄だ、それも上里、乃木という有名どころに連なっている。
「友奈だけど、友奈ちゃんじゃない」
「似ているけど、高嶋さんとは別人だわ…。そして」
東郷と千景が東雲の方に向く。
腕を組み、こちらを見下ろしている男。
燃え盛るような赤い髪に、淡い桃色のマフラー、鉄製でできた桃色の籠手。
腰には白装束を巻いている。そして全体的に赤ピンク色の勇者服。
「んー、そうだね。東雲くん自己紹介お願い」
赤嶺が東雲を見る。
その目は(厳格な感じでお願い)という意思を感じられた。
それに答えるかのように東雲は口を開く。
「東雲友奈」
限界まで低くした声は、聞く者を緊張させる。
数々の修羅場をくぐってきたような目、その目を見た結城友奈が喉を鳴らす。
神樹側の勇者達は全員同じ感想を抱いただろう。
ーーーー魔王、だと。
☆
(すごいね、東雲くん…。あの変わり様…。もしかして役者の才能あるんじゃない?)
実際、赤嶺も想像以上だった。
味方であるこちら側まで萎縮してしまう程に。
「…!こ、こんにちは、結城友奈です」
この空気を切り抜けるために、結城は話しかける。
東雲は喋ったらボロが出そうなので、赤嶺が急いで結城に言葉を返した。
「うん、ある意味私の後輩だねー、よろしく結城ちゃん」
「コーハイ?」
「私はさ、神世紀序盤の時代から召喚されたから」
結城に赤嶺はにっこりと笑いかける。
それはとても不気味な感じだった。
「こんにちは、高嶋…友奈です」
高嶋も結城に続き、東雲をちらりと見ながら赤嶺に話しかける。
「高嶋さん、貴方は先輩。貴方が居なければ、私は…いや私達は居なかった。会えて嬉しいな」
「え、そ、それってどういう事…?子孫…とか?」
高嶋は赤嶺と東雲の両方を交互に見る。
容姿だけで言えば、東雲は高嶋とかなり近い風貌をしていた。
「子孫じゃあないよ、でも同じ友奈。逆手を打って生まれたからね。そういう名前になるんだ」
「ちょっとちょっと、分かるように説明しなさいよ!」
夏凛がこの状況にかなり混乱してきた様で、すかさずツッコミを入れる。
周りの勇者達も、夏凛と同意見だ。
後ろに控えている、紫色の勇者服を着た乃木園子はコクリと頭を揺らしていた。
「うーん、説明はあまり得意じゃないんだよね。擬音が入りそうで、どーんときてばーんとか」
「…もしかして、あそこにいる友奈も?」
「うん、わりかしそうかも」
「くっ、別人だと言われているのに、この共通点…」
夏凛は思わず苦笑いをする。
後ろで乃木園子と赤色の勇者服を着た、三ノ輪銀が喋っていると、秋原雪花が赤嶺に言葉を発した。
「ズバリで聞くけどさ、赤嶺さん家の友奈さんと東雲さん家の友奈さん。貴方達、味方か敵かどっちよ」
「ちょ」
風が雪花の発言に少しどきりとする。
しかし、雪花は口角を上げてこう答えた。
「私、なんとなく分かっちゃうんだよね、攻撃してくる意思みたいな物が」
「アタシは分からないけど」
「貴方達は分からなくていい。で、敵なの味方なの」
赤嶺は一拍おいて答える。
「敵だね、私達は造反神側の勇者だから」
「!?造反神も勇者を呼べるの…?」
「そうみたいだねー、さて、自己紹介は終わり、戦闘再開で」
そういうと赤嶺がまた風に乗り瞬間移動をした。
それに呼応するかの様にまた大量のバーテックスが勇者達に襲いかかる。
それを上から東雲は見ていた。
(……あの、黒髪の子)
郡千景を見ながら頷く。
(やっぱり、あの子に似てるや)
☆
神世紀800年ーー。
勇者である東雲は大赦内を自主的にパトロールしている時のことであった。
「…」
「…?」
小さな女の子が東雲の後ろをずっとついてきているのだ。
とてとてと小さな歩幅で一生懸命東雲に着いて行く。
その子は綺麗な黒髪をしており、髪を横で結んでいる。
巫女服を着ているので、巫女なのだろうと東雲は思い話しかけた。
「どうしたの?」
「……」
東雲に話しかけられても、うんともすんとも言わない。
東雲は頭を掻きながら、同じ目線になるためにしゃがんだ。
「どうしたの?」
にっこりと東雲は微笑んで、優しく手を取る。
女の子は自分の手を見ながら、少し俯いた。
「迷子?」
女の子は首を振り、違うと否定する。
ともなれば、東雲に何かしら目的があって近づいたというわけだ。
「………わたしは、みこ……だから」
「もしかして挨拶に来てくれたの?」
女の子はコクリと頷く。
「あはは、そうなんだ!ありがとう」
「…!」
東雲の弾ける様な笑顔に女の子は顔を赤くして俯いた。
そして、東雲の手をぎゅっと握りしめて女の子は言う。
「灯…篠目…10さい…」
「うん、篠目ちゃんって言うんだね」
「ゆうなさんの……みこになりにきました…」
☆
(うん、篠目ちゃんにやっぱり似てるや)
あれ以来、篠目という少女と出会い、色々接していく中で、東雲の中で何か変わった様な気もする。
東雲にとって、篠目という少女は心に拠り所であり、絶対に帰るべき場所だ。
あの子を置いて戦死するという選択肢は東雲にはなかった。
そして、その少女に似ている郡千景の存在。
それは東雲の心を大いにざわめつかせた。
赤嶺は話が終わった様で、最後に一言言っている。
「それじゃあ、またね。後輩に先輩…そして、あは。お姉様」
お姉様とは一体誰なのか、東雲は一瞬思ったが、赤嶺が去った今、ここには用はない。
最後に、東雲も勇者達の元に降り立つ。
さっきまで、木の上でこちらを見下ろしてきた男がこちらに接近してくる。
後ろに大量のバーテックスを率いて。
勇者達は冷や汗をかきながら、各自戦闘態勢に入る。
しかし、東雲はそれを無視して郡千景に近づいた。
「なっ」
一瞬のうちに懐に入った東雲に驚く千景は、思わず武器を落としてしまう。
そして、東雲はそのまま千景の手を両手で握り、ニッコリと顔の近くでこう言い放つのだった。
「じゃあね」
「ーーっ!」
友奈の顔で、そして友奈の笑顔で千景に微笑んだ東雲。
その東雲も、気がつけば千景の目の前から消えていた。
フラグ?恋愛?そんなもん無いよ。ややこしくなっちゃう。
誤字とかありましたら是非教えてください。
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