東雲友奈は勇者である   作:うみうどん

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五話『挨拶』

 東雲達は遠くから勇者達の行動を見る。

 赤嶺が用意した大量のバーテックス達も瞬く間に殲滅されていく。

 やはり、バーテックスでは戦力不足かと東雲は思う。

 

 勇者達はこちらに気づき、急いだ様子で向かってきた。

 そして、赤嶺と東雲に対峙する。

 

「すごいね、やっぱり簡単には無理か」

「…さっきのバーテックス群れ、アンタの指示に従ったように見えた…アンタ達一体何なのよ」

 

 赤い勇者服の三好夏凛が赤嶺に問う。

 

「あ、そうだった、自己紹介だね。私の名前は…赤嶺友奈だよ」

「アカミネ…?んん?アカミネ…赤い山の嶺で赤嶺家?」

「そうだよ、大赦ではそこそこ有名な家だよね。そこの赤嶺さん家の友奈だよ」

 

 夏凛は驚いた表情をする。

 赤嶺ともなると、そこそこ有名どころの話ではない。

 かなりの上位の家柄だ、それも上里、乃木という有名どころに連なっている。

 

「友奈だけど、友奈ちゃんじゃない」

「似ているけど、高嶋さんとは別人だわ…。そして」

 

 東郷と千景が東雲の方に向く。

 腕を組み、こちらを見下ろしている男。

 

 燃え盛るような赤い髪に、淡い桃色のマフラー、鉄製でできた桃色の籠手。

 腰には白装束を巻いている。そして全体的に赤ピンク色の勇者服。

 

「んー、そうだね。東雲くん自己紹介お願い」

 

 赤嶺が東雲を見る。

 その目は(厳格な感じでお願い)という意思を感じられた。

 それに答えるかのように東雲は口を開く。

 

「東雲友奈」

 

 限界まで低くした声は、聞く者を緊張させる。

 数々の修羅場をくぐってきたような目、その目を見た結城友奈が喉を鳴らす。

 神樹側の勇者達は全員同じ感想を抱いただろう。

 

 ーーーー魔王、だと。

 

 ☆

 

(すごいね、東雲くん…。あの変わり様…。もしかして役者の才能あるんじゃない?)

 

 実際、赤嶺も想像以上だった。

 味方であるこちら側まで萎縮してしまう程に。

 

「…!こ、こんにちは、結城友奈です」

 

 この空気を切り抜けるために、結城は話しかける。

 東雲は喋ったらボロが出そうなので、赤嶺が急いで結城に言葉を返した。

 

「うん、ある意味私の後輩だねー、よろしく結城ちゃん」

「コーハイ?」

「私はさ、神世紀序盤の時代から召喚されたから」

 

 結城に赤嶺はにっこりと笑いかける。

 それはとても不気味な感じだった。

 

「こんにちは、高嶋…友奈です」

 

 高嶋も結城に続き、東雲をちらりと見ながら赤嶺に話しかける。

 

「高嶋さん、貴方は先輩。貴方が居なければ、私は…いや私達は居なかった。会えて嬉しいな」

「え、そ、それってどういう事…?子孫…とか?」

 

 高嶋は赤嶺と東雲の両方を交互に見る。

 容姿だけで言えば、東雲は高嶋とかなり近い風貌をしていた。

 

「子孫じゃあないよ、でも同じ友奈。逆手を打って生まれたからね。そういう名前になるんだ」

「ちょっとちょっと、分かるように説明しなさいよ!」

 

 夏凛がこの状況にかなり混乱してきた様で、すかさずツッコミを入れる。

 周りの勇者達も、夏凛と同意見だ。

 後ろに控えている、紫色の勇者服を着た乃木園子はコクリと頭を揺らしていた。

 

「うーん、説明はあまり得意じゃないんだよね。擬音が入りそうで、どーんときてばーんとか」

「…もしかして、あそこにいる友奈も?」

「うん、わりかしそうかも」

「くっ、別人だと言われているのに、この共通点…」

 

 夏凛は思わず苦笑いをする。

 後ろで乃木園子と赤色の勇者服を着た、三ノ輪銀が喋っていると、秋原雪花が赤嶺に言葉を発した。

 

「ズバリで聞くけどさ、赤嶺さん家の友奈さんと東雲さん家の友奈さん。貴方達、味方か敵かどっちよ」

「ちょ」

 

 風が雪花の発言に少しどきりとする。

 しかし、雪花は口角を上げてこう答えた。

 

「私、なんとなく分かっちゃうんだよね、攻撃してくる意思みたいな物が」

「アタシは分からないけど」

「貴方達は分からなくていい。で、敵なの味方なの」

 

 赤嶺は一拍おいて答える。

 

「敵だね、私達は造反神側の勇者だから」

「!?造反神も勇者を呼べるの…?」

「そうみたいだねー、さて、自己紹介は終わり、戦闘再開で」

 

 そういうと赤嶺がまた風に乗り瞬間移動をした。

 それに呼応するかの様にまた大量のバーテックスが勇者達に襲いかかる。

 

 それを上から東雲は見ていた。

 

(……あの、黒髪の子)

 

 郡千景を見ながら頷く。

 

(やっぱり、あの子に似てるや)

 

 ☆

 

 神世紀800年ーー。

 勇者である東雲は大赦内を自主的にパトロールしている時のことであった。

 

「…」

「…?」

 

 小さな女の子が東雲の後ろをずっとついてきているのだ。

 とてとてと小さな歩幅で一生懸命東雲に着いて行く。

 

 その子は綺麗な黒髪をしており、髪を横で結んでいる。

 巫女服を着ているので、巫女なのだろうと東雲は思い話しかけた。

 

「どうしたの?」

「……」

 

 東雲に話しかけられても、うんともすんとも言わない。

 東雲は頭を掻きながら、同じ目線になるためにしゃがんだ。

 

「どうしたの?」

 

 にっこりと東雲は微笑んで、優しく手を取る。

 女の子は自分の手を見ながら、少し俯いた。

 

「迷子?」

 

 女の子は首を振り、違うと否定する。

 ともなれば、東雲に何かしら目的があって近づいたというわけだ。

 

「………わたしは、みこ……だから」

「もしかして挨拶に来てくれたの?」

 

 女の子はコクリと頷く。

 

「あはは、そうなんだ!ありがとう」

「…!」

 

 東雲の弾ける様な笑顔に女の子は顔を赤くして俯いた。

 そして、東雲の手をぎゅっと握りしめて女の子は言う。

 

「灯…篠目…10さい…」

「うん、篠目ちゃんって言うんだね」

「ゆうなさんの……みこになりにきました…」

 

 ☆

 

(うん、篠目ちゃんにやっぱり似てるや)

 

 あれ以来、篠目という少女と出会い、色々接していく中で、東雲の中で何か変わった様な気もする。

 東雲にとって、篠目という少女は心に拠り所であり、絶対に帰るべき場所だ。

 あの子を置いて戦死するという選択肢は東雲にはなかった。

 

 そして、その少女に似ている郡千景の存在。

 それは東雲の心を大いにざわめつかせた。

 

 赤嶺は話が終わった様で、最後に一言言っている。

 

「それじゃあ、またね。後輩に先輩…そして、あは。お姉様」

 

 お姉様とは一体誰なのか、東雲は一瞬思ったが、赤嶺が去った今、ここには用はない。

 最後に、東雲も勇者達の元に降り立つ。

 

 さっきまで、木の上でこちらを見下ろしてきた男がこちらに接近してくる。

 後ろに大量のバーテックスを率いて。

 勇者達は冷や汗をかきながら、各自戦闘態勢に入る。

 しかし、東雲はそれを無視して郡千景に近づいた。

 

「なっ」

 

 一瞬のうちに懐に入った東雲に驚く千景は、思わず武器を落としてしまう。

 そして、東雲はそのまま千景の手を両手で握り、ニッコリと顔の近くでこう言い放つのだった。

 

「じゃあね」

「ーーっ!」

 

 友奈の顔で、そして友奈の笑顔で千景に微笑んだ東雲。

 その東雲も、気がつけば千景の目の前から消えていた。




フラグ?恋愛?そんなもん無いよ。ややこしくなっちゃう。

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