……
今更ながら、自分に足りていないのは文才ではなく語学力ではないのか、と思えて来た今日この頃。……文才も無いと思われるが。
さて置き。
どうぞ、本編をお楽しみ下さいませませ。
[5/18]誤字を修正しました。
此の世界での戦い方を教えて欲しい──アスナは俺にそう依頼して来た。
「え、どういう事? だってアスナ、さっきだってトルーパーを相手に充分に戦えてたじゃん? しかも無傷で。なのに何で今更……?」
そんな彼女の頼みを聞いて、ユウキは……やはりと言うか
ユウキの言う様に、第一層《迷宮区》に
それなのにアスナは、戦い方を教えて欲しい、と頼んで来たのだ。普通に考えれば、今更どうして、と不思議に思ったりするのだろう。
ただ、見る奴が先のアスナの戦闘を見れば、彼女が戦い方を教えて欲しいと頼んで来た事に納得がいくであろう。
かく言う俺も彼女の戦い方には違和感を
「多分アレだろ? アスナ……君は初心者講習には参加していないんじゃないのか?」
──初心者講習への不参加。
どうにも彼女には戦闘の才能は有れど、戦闘に関する知識は欠如している様に思われたのだ。
例えば防御──。
彼女がやってみせた様な《最小限の動作によるステップ防御》は、武器や防具による
だが其の代わりに、防御に失敗した時のリスクは相当にデカい。下手をすればカウンターダメージを適用されて
次に攻撃──。
はっきり言って、彼女の攻撃はオーバーキル──モンスターのHP残量に対して、与えるダメージ量が過剰であったのだ。先程の戦闘に於いて、コボルドは二撃目の《リニアー》で
オーバーキルをしても、システム的なデメリットやペナルティが有る訳ではない。ただ、ソードスキルは集中力を要求される為、連発し過ぎると精神力の
ただし、コンピュータゲームではMPを消費し切っても其れらを用いての戦闘が出来なくなるだけで其れ以外の行動は出来るのに対して、SAOはVR──自らの力で身体を動かしてプレイしている為、精神力を消耗し過ぎて疲労してしまっては行動全般が出来なくなってしまうのだ。詰まる所、疲労を抑える為にもソードスキルの連発はなるべく
そういった知識が欠如しているのは、講習に参加していないが故だろう。
「……うん、そうなの……。やっぱり戦うのは怖くてね、外からの救出に期待してずっと宿屋に
俺の立てた予想に、彼女は申し訳なさそうな表情をしながら
此れは、アレか? 他のプレイヤー達が勇気を出して命懸けの戦いに挑もうとしているのに、自分は命
「んな顔しなさんなって。アスナが取った行動は何も間違っちゃいねえんだからよ」
「……え?」
「死ぬのが怖いと思うのは当たり前の事だ。生き残りたいと思うのは当たり前の事だ。……死と隣り合わせになる
飽くまで其れは俺の推察に過ぎないが、だとしても彼女が罪悪感を
それに、彼女の
そんな俺の勝手な判断と
んで、励ましを受けた当の彼女の反応はと言うと…………面食らった表情を浮かべているよ。…….あー……そりゃあまあ、後ろ向きな思いなんてのは普通は良い風には捉えられないものであり、肯定されるなんて事は滅多に無いだろうからなぁ。そうなるのも当然だろうな。
……まあ、お陰で彼女の表情から陰りが消えたから、結果オーライって事で別に良いけど。
「──アスナは何も悪くねえよ。だから、あんまり自分を責めなさんな」
「……ッ……!」
で、話の
「ええッ!? ちょ、アスナッ!? ……リョ、リョウヤ! なにアスナを泣かせてるのさッ!?」
「い、いや……別にそんなつもりじゃ……。てか、励ましたつもりなのに何で泣かれてんの!? 何で俺責められてんの!?」
思いもよらぬ面食らい返しを受けた俺とユウキが言い合いをしていると、「お、
其れによって俺達の意識はアスナへと向かい、其れを察した様子のアスナがぽつり、ぽつりと己の心境を語ってくれた。
「その、ね……嬉しかったの。私、戦う事から逃げる事は悪い事だと思っていたから……他の人達が頑張ろうとしていたから、尚更にね。……でも、リョウヤ君は其れは悪い事じゃないって言ってくれた。私は何も悪くないって言ってくれた。……やっぱりね、心の何処かではね、誰かに罪を
やはり、彼女は自身の行動に対して罪悪感を
其の望みは、今、俺によって叶えられた……のだろう。
其れが嬉しかったが故に涙が
忘れられているかも知れないが、俺は社交性に欠けており、故に対人スキルは高いとは言えない。──当然、目の前で泣きそうになっている同年代の女の子を
降って湧いたハードミッションに、どうしたものかと戸惑ってしまう俺。
だからと言って、ユウキに任せるにしても、彼女には少し荷が重いかも知れないし、目の前で泣きそうな女の子を放置、なんてのは幾ら何でも論外だろう。
少し悩んだ末に、ええいままよと、メニューウインドウを呼び出し、《装備フィギュア》の胸部装甲の部分をタップ。現れた小ウインドウの中から《解除》のボタンを押すと、銅のブレストプレートが音も無く消滅した。
戦場で防具を解除する、という命を危険に
そもそも俺の接近にすら気付いていないかも知れない彼女の前で、俺は右膝を突いて片膝立ちとなり、右手を彼女の後頭部へと回す。そして俺の
彼女が何かを言おうとする前に、俺は彼女の頭を俺の胸元へと
俺の胸元に
ぶっちゃけた話、妹や小さい子供に接している様な感覚だ。対人スキルの低い俺では、此れ以上に気の利いた方法なんてのは浮かばない。
──何より、此の行動の
慰めるどころか、逆に彼女を泣かせてしまう結果になってしまった。
……だが、此れで良い。
下手に泣きたい気持ちを抑え込んでしまうよりも、こうして泣いて溜め込んでいたものを全部
何はともあれ…………言い方はアレだが、彼女を泣かせてしまった訳なので、泣かせてしまった俺が最後まで責任を負うのが筋というもの。
勿論、其れに関しては
其れ以外で問題が有るとすれば、モンスターの
だが、其れも心配は要らない。何故なら、今此の場には
という訳で、アスナの頭を優しく叩くのを続けながら、俺は首だけを動かして
其れに対して彼女は、仕方が無いなあ、と言わんばかりの表情を浮かべると、指を一本立てて「ご飯、一回
けどまあ、俺とアスナの二人分の命を
そう思った俺は、ユウキからの要求に「了解」と快く
「え、ええぇぇぇえええええッ!? あのGMが茅場じゃないって、どういう事なのぉぉぉおおおおおッ!?」
暫く経った所で、アスナが泣き止んだ。
上げた顔には、
……が、其れは束の間の事で、其の
そりゃまあ、泣いている姿を
そんな恥ずかしがる様子の彼女にどう声を掛ければ良いのか迷ってしまったが、取り
其れに対してアスナもユウキも異を
ただ其の前に、俺は二人に場所を移動する事……話は移動しながらする事を提案した。
其の理由は二つ。
一つは、自分達が居る場所が
もう一つは、後に《第一層フロアボス攻略会議》が控えているという事。万が一の事も考えて早めに攻略を切り上げた為に時間には間に合うと思うが、それでもあんまりのんびりとしてもいられないだろう。
其れらを
尚、説明の際に、後者の理由を聴いたアスナが、自分の
さて置き。
そんな訳で、《迷宮区》の出口を目指して移動を開始した俺達。
先頭を歩くのは俺。……という事で、此の
──閑話休題。
それで、肝心の
結論から言えば、俺はアスナの依頼を引き受ける事にした。
此のゲームをクリアする為にも戦力は一人でも多い方が良いので、彼女が強くなってくれる事は大変好ましいのだ。
──それに何より、俺に
故に、俺は彼女からの依頼を引き受けたのだ。
そうして話が
正直に言えば、其れは俺も気になっていた事だった。何故戦う事を……死ぬ事を恐れて宿屋に籠っていたアスナが、安全な《はじまりの街》を飛び出して攻略に挑もうと思ったのか。
正確に言えば、『何が』彼女を攻略に挑む様に
ユウキからの問い掛けに、アスナは
──曰く、あの男に弱っている自分を見せて
アスナの言葉から察するに、『あの男』というのはGM──茅場 晶彦の事を指しているものだと思われる。……若しかしたらGMは茅場ではない可能性が高いのだが、其れは飽くまでも俺の推測だ。彼女が額面通りに『GM = 茅場』だと受け取っているのであれば、『あの男』というのは茅場の事である筈だ。
それにしても、此処まで
なんて事を思っていたのは、どうやら俺だけではなかったらしい。ユウキもまた『あの男 = 茅場』という推測に至った様で、茅場との関係についてをアスナに問うた。
しかし、アスナの口から返って来た応えは、俺達が思っていた様なものではなかった……。
──え? えっと……どういう事? わたしと茅場 晶彦との間には何の関係も無いんだけど?
茅場とは無関係──困惑の色を含んだ様な声音で語った彼女の其の言葉に、俺は思わず足を止めて振り返った。……ただし其れは、君こそ何を言っているんだ、という『困惑』の念からではなく、まさか……、という『驚き』の念からだ。
ユウキもまた足を止めてアスナを見ており、此方は『困惑』の色を其の顔に浮かべていた。
そして、アスナこそ何を言ってるの、と言わんばかりに問い掛けた。「此の世界を支配してるって事は、『あの男』ってGMの事だよね。GMって茅場 晶彦だねよ。だから『あの男』って茅場の事だよね」と順を追って確認する様に。
そんなユウキの問い掛けを聴いたアスナはというと、「あ、そっか。わたしと
そして……彼女は
──信じて貰えないかも知れないけど……あの
で、此の発言に対するユウキの反応が、先の絶叫という訳である。
……其の気持ちは解るが、まだ此処《迷宮区》の中なんですよね。モンスター呼び寄せちゃいますよ。
という訳なので、俺は二人に移動の再開を促し、先行して歩き出す。
それにしても驚いた。まさか、俺以外にもGMの正体を疑っている奴が居たとは。……いや、俺の場合は確信には至らなかったのに対して、アスナの場合は違うと断言しているので、少し違う……のか。
「ちょ、ちょっとリョウヤ! アスナの話聴いてた!? GMの正体が茅場じゃないって言ってるんだよ! なのに何でそんなに落ち着いてるのさッ!?」
そんな俺の心中など分からないユウキには、俺がアスナの話を聴いても冷静でいる様に見えたらしい。其れがユウキ的には見過ごせないものだった様で、若干取り乱し気味に何故なのかと問うて来た。
まあ、衝撃的な話を聴いて落ち着いていられるというのは不思議な……理解し
「ん? ああ。実の所、俺もGMの正体の事は疑ってたからな。だから、アスナの話聴いても、やっぱりそうだったのか、ってくらいにしか思わなんだ」
「え、ええッ!? そうだったの!? ……でも、だったら何でボク達にも教えてくれなかったのさ!?」
「俺の場合は確信には至ってなかったからな。ただの憶測にしか過ぎない情報を話す訳にもいかんだろ。……そもそもにして、GMの正体が茅場じゃないと知った所で事態が好転する訳でもないんだから、ぶっちゃけ話す必要も無いだろ」
「うっ……た、確かに……」
なんて問答をユウキとしていると、今度はアスナが慌てた様子で話し掛けて来た。
「ちょ、ちょっと待ってよ二人とも!」
「ん? 何だ?」
「その……信じてくれるの? わたしの話を……」
アスナからの問い掛けを聞いて、はたと気付く。俺達は彼女の話を信じる
「ああ、信じるよ」
それでも俺は、彼女の話を
「な、何で……」
「いや、だって……そんな事で俺らを
「そ、其れは…そうだけど。……と言うか、
「後はまあ、アレだ……アスナが
「ッ! ……あ、ありがとう……」
理由を挙げるのであればそんな所だが、一番の理由はアスナの人となりだろう。
会って間もないから、当然の事ながら彼女の人となりの全てを知っている訳ではない。が、此の短時間で俺は彼女に対して、悪い奴ではない、という印象を
「……リョウヤって、若しかして天然のタラシなのかな?」
「ん? 何か言ったか、ユウキ?」
「え? ううん、ナニモイッテナイヨー」
はて? 今、ユウキが何か言った様な気がしたのだが……気の
……まあ、良いか。其れはさて置いてだ……。
「ところでアスナ」
「な、何かな、リョウヤ君……?」
何故にちょっと取り乱してるんだよ、とアスナの反応を不思議に思いながらも、だがしかし追究はせずに此方の疑問を
「茅場の名を
「…………」
……
何か後ろから「ヒェッ……」って
……なんて
丁度其の瞬間、アスナの口が開かれ、『あの男』なる人物の
──其の声音は、重たく、
──其の声音は、冷たく、
──其の声音は、険しく、
──そして、強い『不快』の念が多分に含まれていた。
「────
[今回の
・GMが須郷 伸之であったら。
──という訳で、此処で『Stage.5』で提示した可能性の答え合わせです。
GMの正体は、SAO屈指のクズ野郎であるあの男──須郷 伸之でした。
……まあ、皆さん気付いていた事でしょうけどね。それでもまあ、一応の答え合わせを。
さてさてさーて、野郎がGMのSAOは、一体どういった展開を迎えるのでしょうか……………………どういった展開を描けるんでしょうかね……。
さて置き。
……思ったよりも縮まってしまったリョウヤとアスナの距離。実の所、此の時点ではまだ此処まで縮める予定ではなかったんですよね。
なんですけど、書いていたらあれよあれよといううちに勝手に縮まってしまいました。……ナニソレコワイ。
……まあ、いっか。どの道アスナも候補の一人でしたし。
──という訳で、今回は此処までです。
ご観覧、ありがとうございました。