ソードアート・オンライン ─集約した世界の物語─   作:和狼

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お待たせしました。
今回のサブタイトルは、内容的に一つに(まと)めるのが難しかったので、二本立てみたいな感じになりました。
(ちな)みに、『Stage.11』のサブタイトルはアレで一つの形となっております。イメージはアニメ『はたらく細胞BLACK』のサブタイトルです。

……と、余談はさて置き……そろそろ本編へと参りましょう。


[6/16]一部修正しました。
[11/6]特殊タグを追加しました。

 


Stage.15:団欒(だんらん) / 攻略へ向けて

 

 

 

 

 

「それじゃあ、俺のパーティーとキリトのパーティーによる親睦会(しんぼくかい)を始めたいと思いまーす! かんぱーい!」

 

「「「かんぱーい!」」」

 

 ボス攻略会議の直後に偶然にも友人・キリトと再会し、流れで彼と彼のパーティーメンバーと夕飯を共にする事になった俺達。

 そんな訳で、現在はそこそこに広いNPC経営のレストランに入り、親睦会の名目でちょっとしたパーティーを開いている。各々が気になった料理を一品ずつ注文し──(ちな)みに、《迷宮区》にて俺とアスナの護衛(ごえい)をして(もら)った際に、ご飯を一回(おご)る、という約束をしたので、ユウキが選んだ料理と飲み物は俺が注文して俺が代金を支払った──、其れらを(みな)で分け合う事になっている。……計十五品も有るから、テーブルの上がちょっとばかり豪華(ごうか)になっていたりする。

 

 さて。

 音頭を取るのは俺。普段の俺であれば社交性の低さ故にそんな事はあまりしないのだが……まあ、此の親睦会の発案者は俺であるので、俺が()るのが筋というものだろう。

 

「じゃあ、順番に自己紹介と行きますか。……まあ、先ずは俺からだよな。てな訳で、改めまして──」

 

 そんな感じで始まった親睦会。

 先ずは、各々の自己紹介から。雰囲気的に俺が先駆けとなり、妹、ユウキ達姉妹、リズ、サチ達が其れに続いた。

 そして次は、俺達のパーティーのトリとなるアスナの番だ。

 

「えっと、わたしはアスナって言います。リョウヤ君達とは《迷宮区》で偶然知り合って、其の縁で彼らのパーティーに加えさせて貰ってます」

 

 当たり(さわ)りの無い自己紹介を行うアスナ。

 ……スゴウ絡みの事に関しては、(いたずら)に話をして余計な混乱を与えるのは好ましくないと考えて、今は()だ俺とアスナ、ユウキの三人だけの秘密にしておく事にした。(いず)れ時が来れば他の……信頼出来る奴らに話す事になるかも知れない。

 

「……え? ちょっと待って……アスナさん、一つ確認したい事が有るんだけど……」

 

 さて置き……。

 当たり障りの無い……(はず)だと思ったのだが、キリトパーティーの黒髪猫目の女の子的には何かしら引っ掛かるものが有ったらしく、アスナへと問い掛けようとしている。

 

「アスナで良いよー。あと、敬語も使わなくて良いから」

 

 そんな彼女からの語り掛けに……しかしアスナは、敬称や敬語を使わなくて良い、と話の趣旨(しゅし)とはズレた点に対して指摘を入れる。其の雰囲気は、初対面の時のユウキとの遣り取りの様な、ほんわかとしたしたものであった。

 

「そ、そう……? あ、私は《シノン》よ。黒髪の彼……キリトとは幼馴染みなの。宜しくね」

 

「うん! 宜しくね、シノン!」

 

 そんなアスナの反応やほんわかとした雰囲気に若干戸惑った様子を見せた黒髪少女だったが、直ぐに気持ちを切りた模様。其処で(ようや)く自身が()だ名乗っていなかった事に気付き、自己紹介を行う。

 其れが済んだ所で、黒髪少女──改め《シノン》は、改めてアスナへと問いを投げ掛ける。

 

「それじゃあ、改めて……」

 

「うん、何かな?」

 

「アスナ……貴方、他のパーティーメンバーは?」

 

 シノンの問い掛けを聴いて俺は、彼女がアスナの自己紹介の何に反応を示したのかを察した。

 

「え? わたし、リョウヤ君達以外とは誰ともパーティーは組んでないよ?」

 

「そ、それじゃあ……アスナは一人で《迷宮区》に(もぐ)ってたって事……!?」

 

 詰まる所、そう言う事だ──。

 アスナは、《迷宮区》にて俺達と出会い、流れでパーティーに加えて貰った、と言った。

 ……だがしかし、今此の場に居るアスナ以外の俺のパーティーのメンバーは、俺と妹、ユウキ達姉妹、リズ、サチ達だけ。しかも、彼女達は其々に、ログイン直後に、俺の演説の直後にパーティーに加えて貰った、と自己紹介の際に申告している。

 要するに、事情を知らないシノン達の視点からすれば、アスナには連れと(おぼ)しきメンバーが居ないのだ。そうなれば、其処から導き出されるのは──アスナが一人で《迷宮区》に(もぐ)っていた……そして、たった一人で《迷宮区》のモンスターを相手にしていた、という推測だ。……改めて思うが、なんて無茶な事をしていた事か……。

 

「うん、そうだよ」

 

「そ、そうだよ、って…………そんなあっさりと……」

 

 だと言うのに、アスナ本人はあっさりとした態度でシノンの立てた推測を肯定してしまうものだから、シノンだけではなく、彼女以外のキリトパーティーのメンバーも、そして事情を知っている筈の俺達でさえも、アスナに対して呆れの念を(いだ)いてしまう。

 

「いやぁ……ずっと《はじまりの街》の宿屋に()もってて、出遅れちゃったから、仲間を作る機会を逃しちゃったんだよー」

 

「だからって、一人で《迷宮区》に(もぐ)るだなんて無茶し過ぎよ……。リョウヤさん」

 

「ん? 何だ?」

 

「此の()が無茶しない様に、しっかりと手綱を(にぎ)っておいてあげて下さいね」

 

「OK、Alright。任された」

 

「ええぇ!? ちょっと待って! わたしの扱いが何か酷いよぉ!?」

 

 そんなアスナがまた無茶な事をしない様に、彼女の手綱を握っておく様に、とシノンから忠告を受けた俺は、逡巡(しゅんじゅん)する事無く了承の意を伝える。

 当然、そんな俺達の遣り取りにアスナは不服なご様子であり、異議を申し立て、顔をむくれさせる。そんな光景を微笑(ほほえ)ましい気持ちで(なが)めていると、シノンが「えーっと……」と切り出して、自ら話の軌道を修正しに掛かる。

 

「話を()らしちゃってごめんなさい……。という訳だから、キリト……次、宜しくね」

 

「……え? あ、ああ……うん……」

 

 話を逸らした事に謝りを入れてから、キリトに自己紹介をする様にと話を振る。

 其れに対し、突然話を振られた側のキリトは、当然ながら戸惑いの色を見せる。……其れもあるかも知れないが、彼にはコミュ症のケが有るみたいなので、こうして大勢を相手に自己紹介をする事に緊張(きんちょう)の念を(いだ)いてしまっているのだろう。……其の気持ち、よぉーく解るぞ。

 

「えーっと……俺は、キリトって言います。元ベータテスターです。よ、宜しく……」

 

 やはりと言うべきか、彼の自己紹介はやや(かた)いものになってしまった。……だが、そんな彼の様子に気分を害した様子などは無く、我がパーティーのムードメーカー的な存在であるダッカーを筆頭に「おう、宜しくなー」だの、「君もベータテスターなんだね。頼りにしてるよ」だのと、キリトの事を快く受け容れた。

 其の一方で、俺は初日からキリトに対して(いだ)いていた疑問の様なものが晴れた事に、すっきりとした気持ちとなる。キリトの名前に聞き覚えが有る様な気がしていたのだが、成る程……彼もまたベータテストに参加していたと言うのであれば、覚えが有ってもおかしくはあるまい。……ただ、何となくではあるのだが、本当に其れだけなのだろうか、とまだ少しの引っ掛かりを覚えてしまう。はて、他に何か有っただろうか……?

 

「それじゃあ、次はわたしね。改めて、わたしは《アリス》よ。シノンと同じく、キリトとは幼馴染みなの。宜しくね」

 

 などと考え事をしていた俺は、アリスの声にて我に帰る。考えても分からないのであれば、其れ程重要な事でもないのかも知れない。其れならば今無理に追究せずとも、思い出すまで放置しておく形で構わないだろう。……と、結論を出したのであった。

 さて置き。

 アリスが「改めて」と言ったのは、再会した際の俺とキリトとの遣り取りの中で、彼女の名前を出したからだろう。

 そんなアリスは、キリトとは幼馴染みの関係らしい。ああ、そう言えばキリトも幼馴染みの事を言っていたんだったな。……デスゲームの事で頭が一杯で、すっかり忘れてしまっていた。

 其れにしても……アリスと言い、シノンと言い、何方もかなりの美少女だと言えるだろう。そんな美少女二人と幼馴染みとか……一人居るだけでも世の男連中に(うらや)まれ、(ねた)まれそうだというのに、其れが二人も居るとか……キリトの奴相当羨まれ、妬まれていそう……………………な気がしないのは……はて、気の所為だろうか?

 

「えっと……僕が最後、って事になるのかな。僕の名前は《ユージオ》。僕もキリトやアリス、シノンとは幼馴染みなんだ。三人共々宜しくね」

 

 其の分彼が被害を(こうむ)っていそうだな、というのが、大トリとなったアッシュブロンドの彼──《ユージオ》の自己紹介を聴いて思った俺の感想だ。顔も割と(ととの)っているから、尚の事かも知れない。

 

「えっと……僕の顔に何か付いてるのかな?」

 

「え? あー、いや……そういう訳じゃなくてな…………ユージオの(ひとみ)って綺麗(きれい)な色をしてるなぁ、って思って……つい、な」

 

 そんな彼に対する同情の念を(いだ)きながら彼の事を見ていた俺は…………どうやら、思いのほか彼の事を見詰めてしまっていた様だ。

 戸惑った様な表情を浮かべる彼からの問い掛けに、俺は否定の言葉を返した後、彼の事を見詰めていた適当な理由をでっち上げておく。……同情の眼差しを向けていました、なんて言える訳ないからな。

 さて、適当にでっち上げた理由ではあるが……彼の濃いめのグリーンの瞳が綺麗である、と思ったのは事実だ。

 現時点に()いて変色アイテムは中々手に入れられるものではない為、あれが彼の地の瞳である可能性が高い。仮想体(つくりもの)ではない色──厳密に言えば、今現在の俺達の身体も現実の身体を忠実に再現した仮想体(つくりもの)なのだが──であると言うのであれば、綺麗だという印象が一層強くなる。西洋人とは言い切れない容貌(ようぼう)であり、では東洋人であると言うのであれば、其の東洋人離れした瞳の色には尚の事目を()かれてしまう。

 俺がでっち上げた理由には、他のメンバーからも「確かに」「綺麗ですよねぇ」などと賛同的な言葉が上がる。

 ただし、彼の瞳の色──()いては彼の容貌に対して上がるのは純粋な賛辞だけではなく、「()しかして外国人?」「え、でも日本語上手過ぎね?」などといった、彼の素性を詮索する様な発言もだった。MMOに於いて素性の詮索は基本的にはタブーである為、其れ以上は()める様に言おうとするが、其れよりも前にユージオ自らが自身の素性についてを語ってくれた。

 

「よく言われるけど、僕は生まれも育ちも日本だよ。ただ、僕のお(じい)ちゃんが外国人でね、此の髪と瞳の色は其の影響(えいきょう)だと思うよ」

 

「成程、クォーターって訳か。んで、髪と瞳に関しては外人の血が色濃く現れた、と」

 

「まあ、そうなんだけど……単純な遺伝、っていう訳でもないんだよね」

 

「……と言うと?」

 

所謂(いわゆる)隔世(かくせい)遺伝っていう奴だよ。僕の母さんは外国人のお爺ちゃんよりも、日本人のお(ばあ)ちゃんの方の遺伝子が強いみたいで、髪も瞳も日本人の其れだからね」

 

「はぁ……成程ねぇ……」

 

 彼の素性を知って納得がいった俺達。其の直後にMMOに於いて素性を(しゃべ)らせてしまった事を謝るも、ユージオ本人は「此の位の事なら喋っても問題無いと思うよ」と気にした様な素振りは見せなかった。

 其の事に一言お礼を述べてから……では、全員の自己紹介が終わったので、そろそろ食事を始める(むね)を伝える。

 

「それじゃあ、一通り自己紹介も終わった事だし……此処からは無礼講って事で、(みんな)楽しんで行こうか」

 

「「「おーー!」」」

 

 という訳で、其処から先は(にぎ)やかな食事会と相成った。

 食べたり飲んだりとしながら、(みな)それぞれに交流を深め、思い思いに楽しんでいた。

 若干気掛かりだったのはコミュ症のケが有るキリトだったが、其処はうちの男子達がユージオ共々輪の中へと引き込み、上手く遣ってくれた。お(かげ)で、最初はぎこちなかったキリトも、次第に自然な形で笑う様になっていた。

 そんなキリトは、俺に初日の演説や初心者講習の事でお礼を言って来たり、《カタナ》スキルのクエストについて()いて来たりした。特に前者に関しては、俺が何もしなかったら大切なものを失っていたかも知れない、と物凄く感謝された。大分大袈裟だと思ったが、ユージオからキリトが大分苦悩している様子だった事を聞かされて、キリトにとっては余程の事だったのだと思い知ったのだった。

 

 そんな一幕も有りつつ、食事会は(しばら)く続き、其の日の夜は()けて行ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 俺達のパーティーは、アスナへのレクチャーも兼ねて、(くだん)の《カタナ》スキルのクエストに挑む事にした。並行して行うのは危険かも知れないが、ボス攻略までの期間はそう長くはない様な気がする為、効率を重視する事にした。それに、アスナ以外のメンバーは一度クエストを受けて《カタナ》スキルに幾らか慣れている為、いざと言う時には俺達全員でアスナをフォローする、という決議の(もと)決行する事となった。

 

 当のアスナはと言えば、クエストに対して(すこぶ)る意欲的な姿勢を見せていた。と言うのも、クエストの内容が『コボルドから形見の品を取り返す』というものだからだ。

 クエストNPCの子供達が住んでいた村がコボルトに(おそ)われた際、逃げ出す途中に、亡くなった母親の形見である首飾りを落としてしまったらしい。直ぐに拾おうとしたが、其れより先にコボルドが拾い上げてしまったのだという。非力な自分達では取り返す事が困難であると判断し、泣く泣く(あきら)めて村を(はな)れたそうだ。……だがしかし、当然母親の形見の品を諦められる筈などない。故に、俺達プレイヤーに取り返して来て欲しい。──というのが《カタナ》クエストの詳細だ。

 そんな話を聞かされたアスナは、「絶対に取り返して来てあげるからね!」と物凄(ものすご)くやる気に満ち(あふ)れていた。……まあ、気持ちは解らなくもない。初めて此のクエストを受けた時、俺達のパーティーの何名かも彼女の様に(たかぶ)っていたし、俺も思う所が有った。……全く、《森の秘薬》クエストと言い……作り物の話だと言うのに、どうしてこうも心に来る様な内容のクエストが多いのだろうか……。

 

 そんな訳で、問題の村へと訪れたのだが──

 其処には、他のプレイヤー達の姿も在った。よくよく見てみると、彼らは前日のボス攻略会議に参加していたプレイヤー達であり、どうやら早速《カタナ》スキルに慣れる為にクエストを受注したらしい。そして、其の中にはキリト達の姿も在った。

 

 俺達の目的は、第一にアスナへのレクチャーである為、彼らとは別行動を取った。

 そんな訳で俺達は、最初は戦い方や、戦闘にて重要となる技術をアスナへとレクチャーした。幾らか俺達の戦闘を見せてコボルドの動きも確認して貰ってから、彼女にも戦闘に参加して貰った。彼女は割と飲み込みが早かったので、暫くすると《迷宮区》での様な危うさや無駄は鳴りを(ひそ)めて、余裕を持ってコボルドを倒す事が出来る様になった。

 其れを(もっ)て大丈夫であると判断した俺達は、クエスト達成、及び経験値・コル(かせ)ぎを兼ねての反復練習に移る事にした。

 其の後は、途中で休憩を挟みながら只管(ひたすら)反復練習を繰り返し行い、最終的には一日の大半を《カタナ》スキル対策に当てたのだった。

 

 そんな訳なので、《迷宮区》の攻略は完全に他のプレイヤー任せとなった。

 因みに、ディアベルのパーティーは《迷宮区》の攻略の方に当たってくれた様だ。何故其の事を俺が把握しているのかと言えば……朝にディアベルから、此方の予定を(たず)ねる内容のフレンドメッセージが送られて来た。其れに対して、《カタナ》スキルのクエストに挑む(むね)を伝えると、では自分達は《迷宮区》の攻略に当たる、という内容のメッセージが返って来た。──という経緯(いきさつ)が有っての事だ。

 更に余談だが、ディアベルとのフレンド登録は攻略会議の後に行なった。今後の攻略に於いて連携を取り易くする為にと、連絡手段を確立したのだ。

 

 さて置き。

 そんなディアベルから、午後にまたメッセージが届いた。《迷宮区》の二十階の最奥にて巨大な二枚扉を発見したとの事で、昨日と同じ場所・時間にまた集まって欲しい、という内容だった。

 詰まる所、早くも二回目のボス攻略会議を開く、という事らしい。勿論、其れに対する俺達の選択は『参加』の一択である。

 

 そんな訳で、俺達は現在、《トールバーナ》の野外ステージへと再び訪れている。顔触れは、昨日のボス攻略会議の参加者と殆ど変わっていない様だ。……人の顔を覚えるのは得意ではないから、適当ではあるが。

 

 何はともあれ、始まった二回目の《第一層フロアボス攻略会議》。

 今回もまた司会進行を務めるディアベルは……会議の冒頭から、いきなり衝撃的な発言をかましてくれた。──なんと彼らは、大胆にもボス部屋を見付けた其の場で扉を開けて、中の住人を拝んで来たというのだ。此の報告には、ステージの其処彼処(そこかしこ)から驚愕(きょうがく)やら感嘆やらの様々な感情を(はら)んだ声が上がり、ステージを(ざわ)めかせた。

 

 さて。

 そんなディアベルからの報告によれば……ボスは、身の丈二メートルに達する巨大なコボルド──名を《イルファング・ザ・コボルドロード》という。武器は《曲刀》カテゴリ。取り巻きとして、金属(よろい)を身に(まと)い《斧槍(ハルバード)》を(たずさ)えた《ルインコボルド・センチネル》が三匹出現するとの事。

 其処までの情報は、一先ずはベータテスト時の第一層ボスと全く同じものだ。記憶が確かであれば、《センチネル》は四段有るボスのHPバーが一本減る度に新たに三匹再湧出(リポップ)し、合計で十二匹倒さなくてはいけない筈だ。

 どうやらディアベルも旧第一層ボスの攻略に参加した事が有る様で、「其のセンチネルだが……」とベータ時の情報を喋ろうとしたのだが──

 

 

 

 

 

「せんぱーい!」

 

「リョウヤくーん!」

 

 

 

 

 

 ──と、ディアベルの言葉を(さえぎ)る様に大きな声を上げながら、何者かが会議に乱入して来たのだった。……はい、すみません……うちのリズとサチです……。サチなんて思いっ切り俺の名前を呼んじゃってくれるもんだから、参加者ほぼ全員の視線が俺に突き刺さって来やがります。テメエの連れならきちんと言い聞かせておけや、って事ですかね…………ホント、マジですみません……。

 何やってるんだよ二人ともォ! ……と、羞恥心から二人に対して軽く(いきどお)りを覚えていたのだが……

 

「会議中にごめんなさい」

 

「アルゴさんから、此れを(みんな)に届けて欲しい、って頼まれたので」

 

 ……彼女達がやって来た理由を知った事で、俺の溜飲(りゅういん)は下がり、会場の雰囲気も一転した。──彼女達は、箱詰めされた《アルゴの攻略本・第一層ボス編》を抱えて持って来てくれたのだった。

 届けてくれた二人にお礼を言い、二人から箱を受け取ってステージ中央へと運ぶ。そして其れを、参加者全員へと配布する。

 

 羊皮紙四枚を()じた、本と言うよりはパンフレットに近い攻略本は、だがしかしぎっしりと情報が詰まっていた。

 判明したばかりのボスの名前から、推定HP量。武装に関しては、旧ボスが主武装としていた《湾刀(タルワール)》の間合いと剣速、ダメージ量、使用ソードスキルまで……そして、今回のボスが使うと予想されている主武装──《カタナ》のソードスキルについても。其れらが五ページに(わた)ってびっちりと書き込まれている。……タルワールと《カタナ》の二種類共を()せたのは、武装が変更されていない可能性も考慮(こうりょ)しての事なのだろう。

 ディアベルが話そうとしていた《センチネル》の事についても、六ページ目にしっかりと記載されていた。湧出(ポップ)は最初を含めて四回、合計十二匹である、と。

 そして、本を閉じた裏表紙には、此れまでの《アルゴの攻略本》には存在しなかった一文が、真っ赤なフォントで(つづ)られていた。──【情報はSAOベータテスト時のものを含んでいます。過信は禁物です】と。

 真偽が不明瞭(ふめいりょう)な情報を載せるのはどうなのだろうか、と思う者も居る事だろう。だがそれでも、此の攻略本のお蔭で、何日も掛けて行う筈だった危険な偵察戦を省略する事が出来るのだ。リスクは有るものの、其れ相応のリターンは有ると思っている。

 

「こいつが正しければ、ボスの数値的なステータスは、其処までヤバい感じじゃない。……勿論、油断も過信も禁物だ。だから、きっちり戦術(タク)()って、回復薬(ポット)いっぱい持って、不測の事態にも慌てず、冷静に、臨機応変に挑めば、死人無しで倒すのも不可能じゃない。……いや、悪い、違うな。絶対に死人ゼロにする。其れは、オレが騎士の誇りに賭けて約束する!」

 

 ディアベルもまた、攻略本の情報を信用する事には(やぶさ)かではない様子。勿論鵜呑(うの)みにする訳ではなく、万が一にも情報が間違っていた時の事も考えて事前の準備をしっかりと行い、不測の事態が起きても冷静に対処する心積もりの様だ。

 そして、其の上で死者ゼロでボスを攻略する事を宣言するディアベル。そんな彼の宣言に、観客席からは盛大な拍手喝采(はくしゅかっさい)()き起こる。

 

 こうして、俺達の士気は格段に上がったのであった。

 

 

 

 

 




 

[今回の可能性(もしも)

・アリス、ユージオがリアルワールド人だったら。
・シノン / 朝田(あさだ) 詩乃(しの)がキリトと幼馴染みだったら。
・アリスがキリトと幼馴染みだったら。
・ユージオがキリトと幼馴染みだったら。


……という訳で、漸くキリトの幼馴染み三人共の名前を出す事が出来ました!長らくお待たせ致しました!
所謂《SAO幼馴染》と呼ばれているキリト、アリス、ユージオの三人に、シノンを加えた四人ですね。
其れに(ともな)って、彼らの設定を色々と(いじ)っています。ユージオの隔世遺伝の件に関しては、間違いがございましたらすみません……。

……恐らく一番の疑問であろうシノンの設定に関しては、後に語る予定でございます。

さて。
今回の話で一番苦悩したのが、《カタナ》クエストの詳細でした。
他の作品では『村の《カタナ》使いモンスターを全て討伐する』というものもございましたが、其れではない内容にするべきだと考えたところ、辻褄(つじつま)を合わせるのに苦労してしまいました。
自分では納得の行くものに仕上がりましたが、皆様は如何なのでしょうかねぇ……。

……という訳で、今回は此処まで。
因みに、作者は《キリシノ》派でございます。

 
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