ソードアート・オンライン ─集約した世界の物語─   作:和狼

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お待たせ致しました。第3話の更新です。
……とは言え、かなり時間を掛けた割に、内容自体はあんまり進んでいません。……申し訳ない。

そんな訳で、ほぼ確実に『平成』最後となる更新です。どうぞ。


[8/27]段落付けを行いました。
 


Stage.3:指南(レクチャー)

 

 

 

 

 

 妹が連れて来た初心者(ニュービー)プレイヤーの姉妹──ユウキとランの頼みを聞き入れて、二人に此のゲームのコツをレクチャーする事になった俺達兄妹。

 先ずは、此のゲームをプレイするに当たって必要不可欠な、モンスターと闘う為の装備──特に武器を手に入れるべく、武器屋へと足を運ぶ事に。

(ちな)みに其の道中に、ユウキ達が何を根拠として妹をベータテスターだと判断したのかを()いてみた。妹も加わり、根拠に至るまでの背景やなんかも説明してくれたのだが、其の内容を(まと)めるとこうだ──

 

 時間を掛けて納得のいくアバターを作り上げ、無事に此の世界(ゲーム)へとログインしたシリカ。

広場へと降り立った彼女は、時計を見て存外にもアバター作りに時間を(つい)やしてしまった事に驚き、慌てて俺が待っているであろう黒鉄宮を目指して駆け出したのだという。

 其の一方で。手間取りながらも何とか無事にログインする事が出来たユウキ達。俺達同様にログインする前に(あらかじ)めプレイヤーネームを決めて、お互いに教え合っていたのと、アバター作りの際に顔のパーツはあまり(いじ)らない様にしようと決めていた事から、合流するのにはさして時間は掛からなかったという。

 詰まる所、今の二人の容貌(ようぼう)は現実の其れに近いものである──(すなわ)ち、現実の彼女達もまた美少女である、という事になる。此れには、妹を含め、美少女であると言えるであろう女の子を現実世界に()いて何人か知っている俺でも、二人の様な美少女が現実に存在するものなのだろうか、と驚いてしまった。

 

 ──閑話休題。

 

 そうして無事に合流する事が出来た其の直ぐ後、さて、此の後はどうすれば良いのだろうか、と悩んでいた──其の時だった、ユウキ達の視線の先を、妹が足早に駆けて行ったそうだ。

 まるで行動に迷いが無いかの如く走って行く妹の姿を見て、二人は妹がベータテスターなのではないかと当たりを付けたのだそうだ。

 そうしてベータテスターであると当たりを付けた妹に、二人はレクチャーを()うべく接触をした。……が、俺との先約が有る為に自分の一存では決められないと、残念ながら妹から色()い返事は得られなかった。

 がっかりする二人であったが、話は其処で終わりではなかった。気落ちする二人に妹は、俺に頼んでみて許可が下りればやっても良い、と言葉を続けて、二人に一緒に俺の(もと)へ行く事を提案した。此の機会を逃したとして、直ぐに他のベータテスターを見付けられるとも限らないと考えた二人は、望みを掛けて妹の提案に乗る事にしたのだそうだ。

 後は知っての通り、妹と共に俺の(もと)へとやって来た二人は俺達にレクチャーをして欲しいと依頼。俺達が其れを快諾(かいだく)した事により、今こうして行動を共にしている、という訳である。

 

 さて。武器屋へと辿り着いた俺達四人は、各々思い思いの武器を購入した。

 因みに、各々が購入した装備は、俺とユウキが《片手剣》、妹が《短剣(ダガー)》、ランが《細剣(レイピア)》といった具合に分かれている。

 分かれていても尚、こうも全体の装備が剣──近接武器に(かたよ)ってしまっているのは、(ひとえ)に此のSAOの仕様によるものだ。

 

 

 

 

 

 ズバリ言うと──此の《ソードアート・オンライン》というゲームには《魔法》という要素が無いのだ。

 

 

 

 

 

 ファンタジーMMOに於いてはどが付く程の定番であり、必須であると思われる《魔法》の要素。其れを排除する、などという何とも大胆で斬新過ぎる此のゲームの仕様には、情報が発表された当初は度肝(どぎも)を抜かれたものだ。

 勿論、此の様な仕様になっているのには其れ相応の理由が存在する。即ち、己の身体、己の武器を実際に動かして闘うというフルダイブ環境を最大限に体感させる為、だそうだ。至極納得の行く理由である。

 

 何はともあれ、モンスターと闘う為の装備を整えた俺達。

 今現在は《はじまりの街》を後にして、街の外に広がるフィールドへとやって来ており、二手に分かれてレクチャーを行っている真っ最中である。

俺としては別に二人(まと)めて教えても構わなかったのだが、妹が「マンツーマンで教える方がお兄ちゃんへの負担が少なくて済むから」と言うのと、何よりも「あたしが教えるって言っておきながら、お兄ちゃんに丸投げしちゃうのは良くないと思うから」と真剣な表情で言うものだから、妹の気持ちを()み取って二手に分かれる事にしたのである。

 因みに組分けは、武器が同じ《片手剣》である俺とユウキ、そして残った妹とランという風に分かれている。

 

「──とまあ、大体そんな感じかな」

 

 さて。レクチャーの最中とは言っても、俺の方は先ずは口頭による説明からだ。

 人にものを教えるのはあまり得意とは言えない俺は、それでも下手くそなりにも、大まかにではあるが基本的な技術をユウキに教える。

 

「まあ、『百聞は一見に()かず』……って事で、実際にやって見せた方が分かり易いかな」

 

 ただ、言葉であれこれ説明するだけでは限界が有る。という訳で、此処で(ようや)く実演に移る事に。

 足下の草むらを見回し、見付けた手頃な小石を右手で拾い上げてから、今度は視線を上げて標的となるモンスターを探す。

 そうして視界に映った一頭の青いイノシシ型のモンスター ──正式名称を《フレンジーボア》という──に狙いを定めて、小石を持った右手を上げて肩の上で構える。すると、視界の(はし)にて(ほの)かなグリーンの(かがや)きが起こる。

 後は、己の右腕が前方へと引っ張られるかの様な感覚に逆らわずに、身を(ゆだ)ねる。そうすれば、ほぼ自動的に右腕が勢い良く振るわれ、手中に有った小石が空中に鮮やかな光のラインを引いて飛んで行く。

 真っ直ぐに飛んで行く小石は、やがて青イノシシの胴体へと命中。「ブギーッ!」と怒りの叫び声と(おぼ)しきものを上げた青イノシシは、其の巨体の向きを俺達の方にへと向けた。

 鋭い目付きで此方を──正確に言えば、ターゲットを取った俺を(にら)み付け、突進攻撃の構えを取っている青イノシシを正面に見()えながら、俺は投石した事によって空いた右手を左の腰へと持って行き、其処に下げている初期装備の片手剣(スモールソード)(つか)に手を掛け、(さや)から引き抜く。

 右肩に(かつ)ぐ様にして構えれば、鋭い効果音と共に再び訪れる身体が勝手に動こうとするかの様な感覚。其れを知覚した瞬間に力強く地面を()り、此方へと突進して来る青イノシシとの距離を詰める。そして、勢い良く剣を振るう。

 直後、右上から左下へと袈裟懸(けさが)けに振るったスモールソード──仄かな水色に光り輝く其の刀身が、青イノシシの突き出た大きな鼻面へと命中。「ブギィィィイイイイイッ!?」という悲鳴と共に青イノシシは後方へと大きく弾かれ、地面を二度、三度とバウンドし、地面を転がって停止する。

 

「おおーー!」

 

「今のが《剣技(ソードスキル)》の撃ち方だ。よーく覚えておけよ?」

 

 今の一連の動作を見て興奮したかの様に声を上げるユウキの方にへと振り向き、指南役っぽい言葉を掛ける。

 

 《剣技(ソードスキル)》──。

 《魔法》の要素が大胆にも排除されたSAOに於いて、その代わりにと設定されている、言うなれば必殺技の様なシステムだ。

所定の予備動作(ファーストモーション)を起こす事によってシステムが其れを検出し、技を発動させる。技を発動させた後は、攻撃軌道を補正してくれる《システムアシスト》がプレイヤーの身体を動かし、技を命中させてくれるのである。

 ソードスキルの数は豊富(ほうふ)であり、数多(あまた)存在する武器のカテゴリー毎に複数設定されている。今の袈裟斬り──《片手剣》スキル単発斜め斬り技《スラント》は勿論のこと其の内の一つであり、更に言えば、其の直前に挑発の為にと放った投石攻撃もまた(れっき)としたソードスキルなのである。スキル名は、《投剣》スキル基本技《シングルシュート》と言う。

 

 さて。

 ソードスキルの一撃を受けて吹っ飛んだ青イノシシだが、其のHPは半分近く残っており、まだ倒れてはいない。

 レベル1のステータスと初期装備のスペックは当然の事ながら貧弱極まりない。それでも、ソードスキルの動きに逆らわない様にと留意しながら、システムアシストによって勝手に動く身体を意図的に動かして技の速度と威力をブーストし、更には其れを相手の弱点にクリティカルで命中させる事が出来れば、HPが満タン状態の青イノシシを一撃で倒す事は出来ない事もない。

 しかし、今現在俺はユウキに対してレクチャーを行っている訳だからして、俺一人で倒してしまっては彼女の為にはならないだろう。……まあ、倒してしまったら倒してしまったで、また新たに獲物を探せば良いだけの話なのだが。

 そんな訳だからして、今回は()えて技のブーストは行わず、弱点も狙わなかった。其の帰結として青イノシシは未だに生きているという訳である。

 

「さて、それじゃあ今度はユウキの番だ。今俺がやって見せた様にやってみそ」

 

「よっしゃー! やったるぞー!」

 

 ではと、残り半分程のHPを削り切って青イノシシを倒す役目をユウキにへと(ゆず)る。

 彼女にとっては此れが初の戦闘になる訳だが、当の本人には(おく)した様子などは見られず、(むし)ろ、漸く闘えるとあってかやる気に満ち(あふ)れている様に見える。

 

「攻撃するなら首の後ろ──(たてがみ)の辺りを狙うと良い。其処が奴の弱点だ」

 

「オッケー!」

 

 俺と立ち替わりで前に出たユウキに、最後のアドバイスとして青イノシシの弱点である場所を伝える。其れに頷いた彼女は、先程の俺を真似るかの様に《スラント》の構えを取る。

 

「──でりゃあぁぁぁあああああ!」

 

 構えたスモールソードの刀身が仄かな水色に光り輝き、スキルが立ち上がった直後、威勢の良い掛け声と共に彼女は地面を蹴り、蹌踉(よろ)めいて未だに次の行動に移れずにいる青イノシシ目掛けて駆ける。

 そして距離を詰めた所で、気合一閃、スモールソードを袈裟懸けに振るう。

振るわれたスモールソードの刀身は、見事に弱点であると教えた鬣の辺りへと命中し、青イノシシの残っていたHPを全て削り切ってみせた。

 「ブギィィイイイ……」という哀れな断末魔を上げて再び吹っ飛んだ青イノシシは、だがしかし、今度は空中にて不自然に停止し、バシャアッ! という激しいサウンド・エフェクトと共に其の巨体を無数のポリゴンの欠片にへと変え、爆散した。

 直後に、俺の視界中央に紫色のフォントで加算経験値の数字が浮かび上がり、戦闘が勝利によって無事に終了した事を示す。

 

「わはー! やったーー! 勝ったーー!」

 

 当然ながら、其れは青イノシシと闘って倒したユウキの前にも表示される訳で、其れを見て自分がモンスターとの戦闘に勝てたのだと理解した彼女は、喜びの声を上げ、其の手に剣を握ったまま両腕を上げて万歳のポーズ。身体全体を使って初勝利の喜びを表現する。

 一頻(ひとしき)り喜んだ彼女は、やがて満面の笑みを浮かべて此方へと振り向くと、此方へと駆け寄って来て空いている左手を高く(かか)げた。其れの意味を理解した俺も同様に左手を()げて、パァン! と彼女と手を打ち合わせる。即ちハイタッチである。

 

「初勝利おめでとさん。ナイスアタックだったぞ」

 

「えっへへ♪ リョウヤの教え方が良かったから、上手く出来たよ」

 

 賞賛の言葉を送れば、ユウキから返って来たのは俺の(つたな)い指南に対する感謝の言葉。俺自身はそうとは思わないのだが、其れを口にすると面倒な事になるかもしれないので、黙って素直に受け取っておく事にする。

 さておき。

 此方の指南が一段落付いたので、では妹とランの方は大丈夫だろうかと、彼女達が居る方にへと視線を向けて見る。

 そうして向けた視線の先には、俺とユウキ同様にハイタッチを交わしている二人の姿。そして俺の視線に気付くと、笑顔を浮かべで手を振ってくれる。其の様子から察するに、どうやら向こうも上手くやれている様だ。

 其の様子を見て一安心した俺は、彼女達に手を振り返してから視線をユウキの方にへと戻し、レクチャーの続きを

 

 

 

 

「う゛お゛ぉぉぉぉぉおおおおおおおい!!!」

 

 

 

 

 

「……ッ!!?」

 

「ッ!? ……な、なななな何!? 今の一体何ーッ!?」

 

 ──行おうかと、ユウキに声を掛けようとした寸前に、突如としていやに馬鹿デカい声が辺りに(ひび)き渡った。

 突然の大声に俺もユウキも吃驚(びっくり)してしまい、ユウキなんかは俺の身体にしがみ付いて怯えてしまっている。顔も若干涙目だ。

 其の状態のまま、俺は今の大声の主を探すべく、辺りを見渡してみる事に。

 先ず最初に視界に映ったのは、お互いの身体を抱き合いながら怯えている様子の妹とランの姿。怯えるあまりに其の場にへたり込んでしまい、此方に助けを求めるかの様な視線を向けている。……今直ぐにでも助けに行って安心させてやりたいのは山々なのだが、此方も此方でユウキがしがみ付いていてどうにも動けそうにない。申し訳ないが彼女達は後回しだ。

 心の中で彼女達に謝りつつ、更に視線を動かして見る。周囲では少なからぬ数のプレイヤーが俺達同様にモンスターとの戦闘を繰り広げている──今は大声の所為で中断しているかもしれないが──筈なのだが、空間の恐るべき広さ故か、見渡せる限りの視界内に妹達以外の他の人影は映らない。

 詰まる所、今の大声は視認出来る範囲の外から届いたという事になる。だとすれば、大声の主と俺達との距離はそれなりに離れている筈だ。普通であれば、距離が離れていれば其の分だけ聴こえる声量は小さくなり聴こえ(づら)くなる筈なのだが、今の大声は声量の衰えなど此れっぽっちも感じさせない程に大きく、そしてハッキリと聴こえた。

 詰まる所、大声の主は相当に地声がデカいという事になるのだろう。…………いや、どんだけデカいんだよ……。

 

 

 

 

 

「何だ此のゲームはぁぁぁあああああ!!?」

 

 

 

 

 

 導き出された衝撃の真実に内心で呆れながらツッコミを入れていると、再び上がる馬鹿デカい声。

どうやら大声の主は此のゲームに対して何かしら物申したい事が有る様だが、果たして何を叫ぼうとしているのだろうか。此れ程の大声で酷評を叫ぼうと言うのであれば、マナーのなっていない悪質なプレイヤーと断じて制裁を加えなくてはなるまいが──

 

 

 

 

 

「クッソおもしれぇじゃねえかぁぁぁあああああ!!!」

 

 

 

 

 

 ……どうやら其れは杞憂であったらしい。大声の主は此のゲームが大層気に入った様である。大分傍迷惑(はためいわく)ではあるが、此のゲームを気に入ってくれたというのは何よりである。

 そんな訳だからか、俺の中の此の大声の主に対する印象が多少良くなり、恐怖心や警戒心などといった感情が幾分か氷解した。どうやら其れはユウキもらしく、俺にしがみ付く力が大分緩くなった。

 

 

 

 

 

「飛ばすぜぇぇぇえええええ!!!」

 

 

 

 

 

 此の後、幾分か落ち着いたユウキを伴って妹達の(もと)へと(おもむ)き、ユウキも含めて(しばら)くの間彼女達を落ち着かせる事になり、レクチャーを再開するのに時間を要したのであった。

 

 

 

 

 





という訳で、『パラレル・レコード』に於いてどの様にしてリョウヤ達に異変に気付かせるべきか、と考えた結果登場して頂いた、大声の主こと《鮫様》に今作にも登場して頂きました。
設定としては、本人ではあっても原作の本人ではない──所謂(いわゆる)《並行世界の鮫様》みたいなものだとお考え下さい。
そんな訳で、此れから先の更新に於いても、彼の様に本人ではあっても原作の本人ではないキャラ──所謂《パロキャラ》が登場する事になる予定となっています。
何卒(なにとぞ)ご理解のほどを宜しくお願い致します。

それでは、次回は『令和』にてお会い致しましょう。
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