ソードアート・オンライン ─集約した世界の物語─   作:和狼

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(ようや)く書けました。
うだうだ言い訳など垂れず、遅れてすみません、とだけ言わせて頂きます。

それでは、本編第8話をどうぞ!


[8/27]段落付けを行いました。
[10/18]一部修正しました。
 


Stage.8;希望の灯火

 

 

 

 

 

 一刻も早く此の巫山戯(ふざけ)たゲームから解放される為に、ゲーム攻略に挑む事を決意した俺達四人。

 俺は妹達を先導し、人混みを()う様にして進みながら、聴覚を頼りに目的地を目指す。

 

「そう言えば、リョウヤさん……さっき、やっておかなきゃいけない用事が有るって言っていましたけど、其れって一体……」

 

 そんな中で、不意に投げ掛けられるランからの問い掛け。

 そう言えばと、大した説明もせずに歩き出してしまった事に今になって気付いた俺は、歩く速度を(ゆる)めて、なるべく手短に説明を行う。

 

「ニュービー ──初心者プレイヤー救済の宣言、だよ」

 

「初心者プレイヤーの救済、ですか……?」

 

「ああ。今此のゲームに参加しているプレイヤーの九割は、今日始めたばかりで右も左も分からない初心者だ。だから、初心者講習を開催して、(みんな)に戦い方を覚えて(もら)おうと思ってる。そうすれば、戦闘で何も出来ずに死ぬなんて事態を減らせるだろうし、前線に回って来る戦力を増やす事が出来るかも知れないからね」

 

 俺の説明に、「おぉー」と感心する様な声を上げる妹達。

 しかし、其れも束の間。何かに気付いた様子の妹から、其れを指摘する声が上がる。

 

「けど、(みんな)がこんなにも(さわ)いでる状態で、どうやって其れを伝えるの?」

 

「其れなら問題無い。今から其れを解決する為の当ての所に行くんだよ」

 

「「「……当て?」」」

 

 其れに対する俺の返答に、質問を投げ掛けて来た妹だけではなく、ユウキとランも(そろ)って疑問の声を上げる。……ただ、時間が惜しい事もある為、当ての詳細については省略させて貰う事にする。

 さてと、俺は妹達との会話の為にと()いていた分の意識を、再び聴覚へと集中させる。

 此の喧騒の中に()いてもよく聴き取る事が出来る目的のモノは、妹達への説明を始める前よりも音量が大きくなっている様に感じられる。詰まる所、目的のモノの出所(でどころ)は近いという事だ。

 そうであるのならばと、大半を聴覚にへと割いていた意識を、徐々に視覚の方にへと回す。

 そうして、視線を彷徨(さまよ)わせながら目的のモノが聴こえて来る方向にへと歩を進めていると、視界の先に一際目立つモノを捉えた。

 

 其れは、一人の長身長髪のプレイヤーが、向かいに立つ一組の男女のプレイヤーと話をしている光景。……いや、正確に言えば、長身長髪のプレイヤーが一人(わめ)き、向かいのプレイヤーが其れを(なだ)めている様な光景だ。

 

 長身長髪のプレイヤーは、実に綺麗な銀色の髪を腰の辺りまで伸ばしている。巨人によってアバターを強制変更されてしまっているので、あれはあのプレイヤーの自前の髪なのであろう。恐らくは外人なのであろうか。

 遠目に見れば女性と見間違えてしまいそうではあるが……聴こえて来る其の声の声音は、残念ながら男性のソレだ。……もっと言ってしまえば、其れは俺が探し求めていた目的の(モノ)であった。

 

 一方の、男女のプレイヤー達。

 男性の方は、銀髪プレイヤーよりも(わず)かに低いが充分に長身であり、短髪の黒髪。ただ、顔付きは何方かと言えば『青年』と言うよりも『少年』と言った感じだ。

 俺と大して変わらないくらいの歳だろうか。……もしそうであるのならば、実に(うらや)ましい限りである。現実世界では高校一年生である俺の身長は、百六十センチと平均よりも少し低い。高身長に(あこが)れているが故に、同年代くらいで自分よりも目測十センチ以上も背が伸びている彼の事が実に羨ましい。そう思うのと同時に、自分自身の成長具合に対して悲しさを覚えてしまう。

 ……まあ、其れは今はさて置くとして。

 彼はこんな異常事態であるというにも(かか)わらず穏やかな笑みを浮かべており、銀髪プレイヤーを宥めている。余程肝が()わっているのか、(ある)いは未だに此の状況を楽観的に捉えているのか。果たして……。

 

 女性の方は、目測で隣の少年よりも二十センチくらい低く、全体的に細身だ。菫色(すみれいろ)のショートヘアを額の真ん中辺りで左右に分けており、其の下に在る顔は、此方もまたやや幼い印象を受ける。

 此の異常事態に怯えているのか、はたまた銀髪プレイヤーの迫力にびびっているのかは判らないが、彼女は少年の腕にしがみ付いている。……うん、隣の彼と比べれば実に正常な反応だろう。

 

 そんな三人の(もと)へと俺は歩みを進め、そして意を決して声を掛ける。彼らこそ……正確には銀髪プレイヤーこそ、此の喧騒を鎮める為のキーパーソンなのだ。

 

「取り込み中にすみません。少し良いですか?」

 

「あ゛あッ?」

 

 現実の姿に戻されてしまっている事と、銀髪プレイヤーの雰囲気に気圧されてしまった事で、ゲームの中でありながらつい敬語を使ってしまった。……まあ、ゲームの中であっても、多少なりともの礼儀は必要であろう。

 で、其れに対して銀髪プレイヤーは、(すご)みの利いた声と共に此方へと振り向いた。此方へと向けられる目付きも鋭く、正直言ってかなりビビる。……けれども、全体的な顔立ちは結構整っている方なので、長い銀髪と相俟(あいま)って思わず見惚れてしまいそうである。

 

「ンだテメェらは? なんか用かァ?」

 

「あ、はい。えっと……俺はリョウヤって言います。元ベータテスターです。で、こっちは妹のシリカと、連れのユウキとランって言います」

 

 気を取り直して、先ずは此方の自己紹介を行う。妹達は銀髪プレイヤーの気迫に怯えて俺の後ろに隠れてしまったので、彼女達の紹介は俺が代行する。

 

「リョウヤにシリカ、ユウキにランだな。俺は《タケシ》って言うんだ。で、こっちが《スクアーロ》で、こっちは《クローム》って言うのな。つー訳で、宜しくな!」

 

 そんな此方の自己紹介に自己紹介で返してくれたのは銀髪プレイヤー…………ではなく、自らを《タケシ》だと名乗る黒髪短髪のプレイヤーであった。

彼は、現状には非常に似つかわしくない(さわ)やかな笑顔を浮かべて自己紹介をするものだから、俺はそんな彼の態度に呆気にとられてしまった。こんな異常事態の中でどうしてそんな爽やかな笑顔を浮かべられるのだろうか、と。

 そんな彼の紹介によれば、銀髪プレイヤーの名は《スクアーロ》、菫色の髪の女性プレイヤーは《クローム》と言うらしい。

 

「う゛お゛ぉぉおい! いきなり話に割って入って来んじゃねェッ!」

 

「あはは、わりぃわりぃ。けどよ、話をするんだったらさ、こっちの自己紹介だって必要だろう?」

 

「そりゃあ、そうかもしれねぇが…………ったく。んで、改めて訊くが、オレ達になんの用だァ?」

 

 タケシが突然話に割って入って来た事に噛み付くスクアーロであったが、彼もまたタケシの態度に呆れ、毒気を抜かれてしまった様子。其のお陰か口調が若干柔らかくなったスクアーロが、改めて用件を尋ねて来た。

 

「単刀直入に言うと、初心者プレイヤー救済の宣言を行う為に、スクアーロさんの大声で此の喧騒を(しず)めて(もら)いたいんです」

 

「……初心者プレイヤーの…救済?」

 

 其れに対して俺が答えを返すと、此処までずっと静かにしていたクロームが『初心者プレイヤーの救済』の部分に反応を示した。

 勿論彼女だけではなく、タケシとスクアーロの二人も興味を示した様子であり、スクアーロなんかは「詳しく聞かせろ」とでも言わんばかりの鋭い視線を此方に向けている。

 そういう訳で、俺は先程妹達にしたのと同じ説明を彼らにも行う。

 

「成る程なァ。理に適った悪くねぇ考えだ」

 

 彼らの反応は、妹達と同様に感心する様なものだった。中でも、スクアーロは俺の考えに対して肯定的とも思える反応を示している。

 

「それで……協力して貰えますか?」

 

 割と好感触な反応を示したスクアーロに改めて協力を要請すると、彼はニィ、と口角を吊り上げ──

 

「良いぜェ! テメェの案に協力してやろうじゃねぇか!」

 

 賛同的な返事をくれた。よし! 此れで行動を起こす為の準備は完璧に整ったぞ。

 

「ありがとうございます!」

 

「其の代わり、オレ達も其の初心者講習に参加させろ! 良いなァ?」

 

「え? ええ……勿論良いですよ」

 

 そして協力をする見返りにと、彼は自分達も初心者講習に参加させろと要求して来た。

 此方の()(まま)に付き合って貰うのだから、当然見返りは必要だ。……ただ、其れが初心者講習への参加なんかで本当に良いのだろうか、と思ってしまう。お金なり、アイテムなり、情報なり……見返りとして相応しいものは他にも有るのではないだろうか、と思ってしまう。

 ……などと思いつつも、『時は金なり』──其れを問答しているだけの時間が正直()しい為、(いず)れ何かしらの形でお礼をする事にしよう、と心に決めて、今は取り敢えず保留にしておく事にする。

 

「さて……それじゃあ、早速行動に移るとしましょうか」

 

 さて置き。

 さぁて……より良い未来へと導く為の大事な大事な大仕事だ。

 気ィ引き締めて行くとしましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─Kirito side─

 

 

 どうする……? どうすれば良い……?

 

 茅場 晶彦を名乗るあの赤ローブの巨人の言葉が全部本当なら、此れから此の世界で生き残っていく為には、只管(ひたすら)自分を強化しなきゃならない。

 MMORPGは、プレイヤー間のリソースの奪い合いだ。システムが供給する限られた金とアイテムと経験値を、より多く獲得した奴だけが強くなれるのだ。

 ……恐らく、此の《はじまりの街》周辺のフィールドは、同じ事を考える連中に狩り尽くされて、直ぐに枯渇(こかつ)するだろう。そうなれば、モンスターの再湧出(リポップ)を只管探し回る羽目になる。

 其れを回避する為には、今の内に次の村を拠点にした方が良い。幸い俺は、道も危険なポイントも全部知っているから、レベル1の今でも安全に辿(たど)り着けるだろう。其処に連れが一人増えたとしても、好戦的(アクティブ)モンスターから護りつつ次の村まで連れて行けるという自信が有る。

 

 ……けれども、其れを行う事は出来そうにない。

 俺の(かたわ)らには、共に此のゲームにログインした三人の幼馴染みが居る。

 偶然出会い、数時間共にプレイして、友人と思える様になった趣味の悪いバンダナの曲刀使いが居る。

 彼ら全員を護りながら次の村まで連れて行くのは、流石の俺でも難しいだろう。そして、其れで仮に途中で死者が出てしまい、其の結果、茅場の宣言通りに其のプレイヤーが脳を焼かれ現実でも死んだ時……其の責は、安全な《はじまりの街》からの脱出を提案し、しかも仲間を護れなかった俺に()せられなければならない。……そんな途轍(とてつ)もない重みを背負う事など、俺には出来ない。

 だからと言って、彼らの中から一人だけを選び……或いは彼ら全員を見捨てて先へと進む事なども、俺には出来ない。そもそも、そんな事を考えること事態(もっ)ての外だ。

 だが、他に良い案は浮かんで来ない。(ほとん)ど八方(ふさ)がりの状態だ……。

 

 どうすれば良い……? どうしたら良いんだ……?

 

 

 

 

 

「う゛お゛ぉぉぉぉぉおおおおおおおい!!!」

 

 

 

 

 

 ……そう考えていた所に、またしてもあの馬鹿デカい声が広場中に行き渡らんばかりに(ひび)いた。……こっちは今真剣に考えているんだ。集中力を()き乱す様な真似をしないでくれ。

 

「テメェらァ! 全員静かにしやがれぇぇぇえええええ!!」

 

 お前が静かにしろよッ! 正直言って耳障りなんだよッ!

 ……と、憤怒(ふんど)の思いで、傍迷惑(はためいわく)な大声野郎に対して心中にて毒突いていた俺は…………次の奴の言葉を聴いて、腹の(うち)の思いを吹き飛ばされる事になった。

 

 

 

 

 

「今からオレの連れが、此のクソッタレな状況を打開する為の話をするぞォ! テメェら全員、耳の穴ァかっぽじってよォく聴きやがれぇぇぇえええええ!!」

 

 

 

 

 

 ──此の状況を打開する。

 確かに、アイツはそう言った。(すなわ)ち、アイツの言う連れには有るという事だ──俺には思い付かなかった、此の状況を打開する為の考えが。

 ならばと、俺は(わら)にも(すが)る様な思いで祈る。俺は、此の理不尽な死のゲームを生き残りたい。()れども、幼馴染み達や折角の友人を見捨てたくはない──其の何方の願いも捨てずに済む都合の良い考えであって欲しいと、強欲にも祈る。

 

 其の様に考える俺の周りでは、徐々に喧騒が鎮まりつつある。此の場に居るほぼ全てのプレイヤーが、不意に訪れた希望を決して聴き逃すまい、という思いから口を閉じているのだろう。

 そうして、先程のチュートリアルの時とは違う意味で鎮まり行く広場に、「よっ、と」という誰かの掛け声が響いた。決して大きな声ではないのだが、周りが静かであるが故に声がよく通るのだ。

 其の掛け声とほぼ同時に、ひょっこり、と一人のプレイヤーが俺達の頭の高さよりも少し高い位置に顔を出した。遠目だから細かい所までは分からないが、ダークブラウンの髪色をした癖の有る短髪の男性プレイヤーだ。恐らくはアイツが、大声プレイヤーの言う連れなのだろう。

 

「あー、あー……」

 

 声の調子を確かめている様子の彼を見ていれば、彼はやがて息を吸い込む様なモーションを起こし、そして──

 

 

 

 

 

「聴いてくれェ!」

 

 

 

 

 

 広場に居るプレイヤー全員の耳に届く様にと声を張り上げた。大声プレイヤーの其れには遠く及ばないが、静かな広場に響き渡るには充分な音量であった。

 

「俺の名前はリョウヤ! 元ベータテスターだ!」

 

 次いで告げられた彼の名前に、俺はギョッとした。

 今、彼は自分の事を《リョウヤ》と名乗った。

 リョウヤ──其れは、数時間前に此の広場で偶然知り合い、フレンド登録をしたポニーテールの男性プレイヤーと同じ名前だ。もしかして、と考えてしまう。

 だが、確証が無い。アバターを現実世界の姿に変えられてしまった為に、見た目なんて当然当てにはならないし、名前だって、一万人近くものプレイヤーが居るのだから、似た様な名前のプレイヤーだって一人や二人くらい居るだろう。

 一応確かめる為の(すべ)は在る。それこそフレンド登録をしてあるから、メッセージを飛ばして同一人物であるかどうかを本人に直接確認すれば良い。……が、どう考えたって今は其れを行なって良いタイミングではない。

 それに、早急に確認をしなくてはならない訳ではないし、其の必要性も感じられない。ぶっちゃけた事を言ってしまえば、次に見掛けた時にでも確かめれば良いだろう。結論としては、此の話は一旦横に置いておく、というものだ。

 と、自分の中で自己完結をしていると、彼の言葉が続けられた。

 

「俺は今此処に、初心者講習の開催を宣言する! 死にたくない奴、此の巫山戯たゲームに挑もうという奴、腕に自信の無い奴は是非とも参加してくれ! 勿論、強制はしない!」

 

 彼がそう宣言した瞬間、広場のあちこちで小さな歓声が幾つも上がる。

 当然だろう。今此の場に居るプレイヤーの約九割は、今日ゲームを始めたばかりで右も左も分からない者達ばかりだ。そんな彼らにとって初心者講習の開催は、まさに天の恵みなのだろうから。

 

 其の一方で、彼の宣言を聴いた俺は、俺の中の重荷が一つ軽くなった気分になった。もしも此処で幼馴染み達や友人を置いて行ったとしても、彼が生き残る為の(すべ)を彼らに与えてくれる。そうなれば、彼らが死ぬ確率は幾らか低くなるだろう。

 勿論、彼だってベータテスターだ。何れは攻略の為に前線に出て来るであろうから、ずっと初心者の面倒を見続けてくれるとは限らない。でも、其の頃には彼らも充分に戦える様になっている事だろう。だから、きっと大丈夫だ……。

 そんな俺の希望的観念を他所に、彼の演説は続く。

 

「また、其れに当たって、元ベータテスターの人達には有志を(つの)りたい! 俺一人で何百、何千人ものプレイヤーの相手をするのは正直厳しいので、手伝ってくれると助かる!」

 

 確かに、其れはかなりキツいだろう。

 加えて言えば、圧倒的に効率が悪い。何人かのグループに分けて指南(レクチャー)を行ったのだとしても、其のグループが何十、何百組も在っては、一人で行うには時間が掛かり過ぎる。

 ()しも此れが、何十人、何百人の元ベータテスターにより分担して行われたのであれば、掛かる負担や時間は大分減らす事が出来るだろう。

 

「初心者の救済は、ゲーム攻略の為の戦力増加にも(つな)がる! 此のSAOは、多人数での共闘がゲームクリアの前提となるMMORPGだ! であれば、一人でも多くの戦力が必要だ!」

 

 彼の演説は、中々に巧みだ。ベータテスター達の意識を初心者講習への参加へと誘導している。

 MMORPGは、基本的には他のプレイヤーと競い合って自身を強化して行くものだが、ボスモンスターみたいな強力な敵を相手にする場合には、彼の言う通り他のプレイヤーとの共闘が必要になる。《ゲームオーバー = 現実の死》というイカれたルールが実装されてしまった現状、ボス戦などで死なない為には殊更(ことさら)に必要だ。

 其の為には仲間が必要になる。少数精鋭だと不測の事態で攻略が(とどこお)る事も考えられるから、より多くの腕が立つプレイヤーが必要になるだろう。

 初心者講習が其の戦力増加に繋がるともなれば、ベータテスター達は有志への参加を前向きに考える事だろう。

 

 此れが彼の考え──。

 ボス戦の時だけではなく、普段の攻略に()いてもプレイヤー同士で協力し合い、(みな)で生き残ってゲームをクリアしようとしている。

 其れは、俺には思い付かなかった考えだ……。

 

 …………いや、思い付かなかった、のではない──俺は、其れを()()()()()()()()()()のだ。

 俺は、とある理由から他人と関わり合いになる事が怖くて、人付き合いに対して苦手意識を(いだ)き、()ける様になった。幼馴染み達のお陰で少しはマシになったとは思うが、それでもやはり、幼馴染み達や家族以外を相手にする事には躊躇(ためら)いを(いだ)いてしまう。

 今回だってそうだ。俺は、幼馴染み達は兎も角、友人……延いては彼の仲間と関わり合いになる事を躊躇った。だから、効率が悪くても《はじまりの街》周辺でパーティーメンバー全員を強くしてから先へと進む、という考えを最初から捨ててしまったのだ。

 ……けれども、今はそんな事を言って甘えていられる状況ではないだろう。

 

「けれども焦りは禁物だ! 現状、一度でもゲームオーバーになれば其の時点でゲームも現実(リアル)死亡(しゅうりょう)なんだ! だから時間を掛けて地道に強くなって行くんだ! 強くなる事に手間を惜しむな! ぶっちゃけ現実の時間の事なんて考えるな! 生き残る事を最優先に考えろ!」

 

 相当にぶっちゃけた事を言ってはいるが、其れが生き残る為の優良な手段である為に、抗議の声は上がらない。

 

「……以上で俺の演説は終了だ! それじゃあ、講習に参加したい奴は俺の(もと)に集まってくれ! 」

 

 そうして、彼の演説が締め(くく)られた、其の直後──

 

「俺も、元ベータテスターだ!」

「ハーイ! ベータテスターならこっちにも居るよー!」

「俺の所でも初心者講習を受け付けるぞー!」

「最低限の知識は教えますよー!」

 

 彼の演説に感化された元ベータテスターだと(おぼ)しきプレイヤー達が、自分達も、と次々に初心者講習の指南役を買って出る。そして──

 

「……クライン」

 

「? 何だ、キリト?」

 

「……お前の仲間を……探してこい」

 

「「「!?」」」

 

「キリト……おめぇ……!」

 

「……俺が……お前達を強くしてやるよ」

 

「ッ! 応よ! 直ぐに見付けて来っからよ、待っててくれよな!」

 

 俺もまた、友人─《クライン》に彼の仲間を探して来る様にと言い、彼らにも指南(レクチャー)を行う事を伝える。

 其れに対して一瞬驚いた様な表情をしたクラインだったが、ニカッ、と笑顔を浮かべると、俺達に背を向けて、仲間を探しに移動をし始めた人混みの中へと消えて行った。

 

「キリト……あなた……」

 

 幼馴染みの内の一人が、俺の事を心配して声を掛けてくれる。

 

「……正直に言えば自信なんて無い。……けど、だからって自分の弱さを理由に逃げていられる状況じゃない……」

 

 やはり、人と関わり合いになるのは怖い。

 けれども、俺には護りたいモノが在る。護りたいと思えるモノが増えた。其れらの為ならば、自分の弱さを理由に立ち止まっていては駄目なのだ。自分の気持ちを曲げてでも進まなければいけないのだ。

 

「……だから……フォローを頼む」

 

 其れが一人では駄目だと言うのならば、頼れる幼馴染み達に頼れば良いのだ。

 

「うん!」

 

「分かったわ!」

 

「任せてちょうだい、キリト!」

 

 ──こうして俺の、仲間と共に歩むSAO攻略(ちょうせん)が始まったのだった。

不安は尽きないが、やると決めた以上はもう逃げはしない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せんぱ〜〜〜〜い!」

 

「ぐはッ……!?」

 

 ……何やら悲鳴じみた声が聴こえた様な気がしたのだけれど…………気の所為、だろうか……?

 

 

 

 

 




【今回の可能性(もしも)

・ベータテスターが初心者(ニュービー)を見捨てなかったら。


──という訳で、前回からの予定の通りの《初心者救済》ルートです。
まあ、初心者講習を開いた所で、死者は出てしまうんでしょうけれどね……。減る事は減るでしょうけれども。

そして、キリトの幼馴染み達が出ましたが…………まだ発表は引っ張ります!
はてさて、一体誰なんでしょうねぇ?

さてさてさーて。
此れで(ようや)くシリアスな展開が一段落しました。
そして次回は、ギャグっぽい展開を(はさ)もうと考えています。
お楽しみにー!

最後に、今回登場したパロキャラ達の元ネタを紹介して終わりたいと思います。
それでは皆さま、また次回!


【パロキャラ】

・スクアーロ / スペルビ・スクアーロ(家庭教師ヒットマンREBORN!!)
・タケシ / 山本(やまもと) (たけし)(家庭教師ヒットマンREBORN!!)
・クローム / クローム髑髏(どくろ)(家庭教師ヒットマンREBORN‼︎)

 
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