女性恐怖症の一夏君   作:のんびり日和

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後半はシリアス展開となっています。


7話

騒々しかった昼休みは終了し、昼食後の眠気と戦いながら生徒達は午後の授業に臨んでいた。

無論1組の生徒達も同様に眠気が襲ってくるが、誰一人として居眠りなどするわけにいかないと心に決めている。

何故なら居眠りをしようものなら千冬の容赦ない出席簿の眠気覚ましの攻撃が降ってくるからだ。だが

 

「…ウトウト」

 

と頭が前後にゆらゆらと動く一夏の姿があった。

無論一夏も眠ってしまえば千冬に怒られると分かっている為眠気に襲われながらも必死に抗っていた。

そんな一夏の姿にこっそりと覗き見ていた生徒達は

 

((((か、可愛いぃ))))

 

と心を和ませていた。因みに千冬も一夏がウトウトしている事には気付いているが、完全に眠ってはいない為注意はしていない。だが

 

(眠るんじゃないぞ一夏。お、お姉ちゃんは、お姉ちゃんはお、お前の事を叩きたくないんだ! だ、だから眠るんじゃないぞ一夏!)

 

と心の中で一夏を叩きたくない。眠るんじゃない。と応援していた。すると隣に座っていた本音が一夏の二の腕にペンでツンツンとつつく。

 

「ふえ?」

 

「イッチー、眠ったら怒られるよぉ」

 

とウトウトしていた一夏を起こす本音。

 

「あ、ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

そう言い本音は顔を前に向ける。その姿に千冬は心の中でGJ!とサムズアップしていた。

 

そんなことがありながら時刻は放課後となった。

一夏は教科書をカバンに仕舞い立ち上がると同時に隣の本音も立ち上がる。

 

「イッチー、一緒に帰ろぉ」

 

「う、うん」

 

そう頷き返し教室を出ようとすると

 

「あ、一夏さん良かったらご一緒に「おい、お前は引っ込んでいろ! 私が一夏と一緒に帰るんだ!」篠ノ之さん邪魔しないでいただけますか!」

 

とセシリアと箒が一夏と一緒に帰ろうと誘おうとするも口論が勃発。本音はどうにかして一夏を教室から連れ出すべく手を考えていると、ふと教卓の方に目を向けるとセシリアと箒に冷たい視線を向ける千冬が居り、その手には教科書が握られていた。

その姿に本音は直ぐに妙案が浮かびニンマリと笑顔を浮かべる。

 

「ねぇねぇ、2人共。口論するのはいいけど、織斑先生の事はどうするのぉ?」

 

本音の言葉に2人は口論を止め、ゆっくりと教卓の方に顔を向ける。其処には教科書を丸め手を叩く千冬の姿があった。

 

「「……」」

 

その姿に2人は冷や汗を流し、そっと席に着いた。

 

「なんだ? 帰らないのか?」

 

「その、補習がありますので」

 

「お、同じく」

 

「そうか。ならさっさと教科書を出せ。補習を行う」

 

そう言い千冬は黒板に補習内容を書き始めた。

本音は上手くいったと思い一夏の手を引く。

 

「ほら、イッチー帰ろぉ」

 

「えっと、う、うん」

 

一夏は本音に引っ張られながら教室を後にした。

暫く廊下を歩いているとおもむろに一夏は本音に声を掛けた。

 

「ほ、本音さん」

 

「なぁに?」

 

「その、さ、さっきは、ありがとう」

 

「ん~? あぁ、どうってことないよぉ」

 

「そ、それでも、ありがとう」

 

はにかんだ笑顔でお礼を述べる一夏に本音はえへへへ。と笑いながら歩き続ける。

そして寮へと到着し本音は一夏の隣の部屋の1538の扉を開ける。

 

「それじゃあイッチー、また明日ねぇ」

 

「う、うん。また、明日」

 

それぞれ部屋へと入って行く。一夏は部屋へと入ると何時もと変わらず鍵とチェーンを掛けるとカバンを机の上に置き教科書とノートを取り出す。

 

「きょ、今日やったのって、この部分だっけ?」

 

〈えぇ其処よ。さて、何時もの通り私が幾つか作成した問題を出すから解きなさい〉

 

「う、うん」

 

一夏は自主勉用と書かれたノートを開きアイラが作成した問題を空間ディスプレイに出しながら勉強を始めた。

暫くして一夏はアイラが出した問題を全て解き終え答え合わせを行っていた。

 

〈10個中7個正解ね。間違えた問題は計算式が若干間違えているだけよ〉

 

「そ、そっかぁ。えっと、此処が×じゃなくて+だったの?」

 

〈そっ。ん? 誰か来たみたいよ〉

 

アイラが突然来客が来たと告げると扉をノックする音が鳴り響く。一夏はそっと顔だけ部屋から扉の方を見つめていると

 

『織斑、私だ。少し話があるから此処を開けてくれ』

 

扉の向こうからは千冬の声が聞こえ一夏は扉の元に向かいチェーンと鍵を解除し、扉を開ける。

 

「ど、どうしました、織斑先生?」

 

「さっきも言った通り少し話があってな。上がってもいいか?」

 

「か、構いません」

 

一夏は千冬を部屋へと上げ奥の部屋へと案内する。千冬は奥の部屋にある椅子の一つに座り持っていた資料を机の上に置く。

すると一夏がお茶と一緒に一切れのレアチーズケーキが載った皿を千冬の前に置く。

 

「ど、どうぞ」

 

「ん? 買ってきたのか?」

 

「う、ううん。その、自分で、作りました」

 

「そ、そうか。それじゃあ用が済んだら一緒に食べようか」

 

「は、はい」

 

千冬は一夏の手作りケーキを今すぐ食べたいと言う気持ちを抑え用件を済ませようと、持ってきた資料を一夏に手渡す。

 

「こ、これは?」

 

「それはこの学園に存在している部活や同好会の紹介資料だ」

 

「ぶ、部活と同好会の?」

 

一夏は手渡された資料をぺらぺらと捲りながら目を向ける。野球部、ソフトテニス部、プラモ同好会、ロボット研究同好会など色々な部活や同好会が書かれていた。だが、運動部や幾つかの文化部や同好会には赤いペンでバツ印が付けられていた。

 

「こ、このバツ印は?」

 

「それは運動部に関しては女子ばかりだから織斑は参加できないという意味で付けたのと、バツ印が付いた文化部や同好会は、その、織斑の事をよく思っていない連中が在籍している為、入るのは止めた方がいいと言う意味で付けた」

 

千冬の説明に一夏はそ、そうですか。と返事を返した。

良く思っていない連中、つまり女尊男卑の生徒がいるという意味だった。千冬は一夏がそんな生徒が居る部活や同好会には入って欲しくないと思い付けたのだ。

 

「無論部活や同好会の参加は個人の自由だ。お前にその資料を手渡したのは少しでも学園生活に慣れて欲しいなと言う教師の思いでだ」

 

優しい笑みで告げる千冬に一夏は、頬を赤く染めながら頭を下げる。

 

「あ、ありがとう、ございます」

 

「うむ。さて、教師の用事は済んだ。今からはプライベートの時間とする」

 

そう言い千冬はフォークを手に取り一夏が作ったレアチーズケーキを口にする。

 

「うむ、旨いな」

 

「そ、そう? は、初めて作ったから、その少し心配だった」

 

「別に心配するような変な味ではないぞ。このまま店に出されても売れるくらいうまいぞ」

 

「そ、そう? お姉ちゃんに言われると、その、嬉しいな」

 

照れた表情で笑顔を浮かべる一夏に千冬は皿に優しい笑みを浮かべながらケーキを食べる。すると思い出したような表情を浮かべ皿を机に置く千冬。

 

「そう言えば今朝の事。大丈夫だったか?」

 

「う、うん」

 

(全く、鈴の奴め。一夏が女性恐怖症だという事を知らんのか?)

 

千冬はそう考えながら出されたお茶を口にする。千冬が凰のことを鈴と呼ぶのは本名は凰鈴音と言う名前だからだ。小学4年の頃からの付き合いの為、鈴と呼んでいる。

 

「そうか。あ、そうだ。学園生活で何か困った事とかは無いか?」

 

「う、ううん。と、特に困ったことは無い」

 

「そうか。教室にいる者達とは仲良く出来そうか?」

 

「う、うん。その、本音さんのお陰で、皆と仲良くしてもらってる」

 

「そうか。それは良かった」

 

一安心した表情でつぶやく千冬。学園の教師である前に一夏の姉である千冬は、一夏が学園生活で困った事が無いか。相談したいことが無いか聞ける時間をつくりたかったのだ。

そして今回の部活の説明があった為、それを利用して聞く時間をつくったのだ。

だが、一夏は特に困ったことは無く、クラスの生徒達とも本音を通して仲良くしてもらっていると聞き安心したのだった。

すると突然扉をノックする音が鳴り、千冬は怪訝そうな顔付を浮かべる。

 

「誰が来たんだ?」

 

「わ、分かんない。その、本音さんだったら、直ぐに声を掛けてくるけど」

 

そう言い首を傾げる2人。すると扉の向こうから

 

『一夏ぁ! 居るんでしょ! 此処を開けなさい!』

 

と今朝一夏に突撃しようとした鈴の声が扉の前から響いてきた。一夏は若干怯えた表情で扉を見つめ、千冬は呆れた様な表情でため息を吐く。

 

「一夏、此処で待ってろ。私が応対してくる」

 

そう言い千冬は席から立ち扉の元に向かう。またドンドンと扉を叩く音が鳴り響く中、千冬は扉の鍵を解除し扉を開ける。

 

「ちょっと一夏! 扉を開け…るのが…ち、千冬さん!?」

 

「織斑先生だ、凰」

 

突然扉が開き一夏だと思い怒鳴る鈴。だが、開いた扉の先に居たのは鋭い視線で見下ろしてくる千冬だった。

 

「な、なんで織斑先生が、い、一夏の部屋に?」

 

「織斑に書類を届けに来ていたからだ。で、凰は一体何の用で織斑の部屋に来た?」

 

「その、一夏ってもしかして相部屋の人に困ってるとか思って私が変わってあげると言いに「残念だが織斑は相部屋ではなく一人部屋だ」えっ! 一人部屋なんですか!」

 

「そうだ。用は以上か?」

 

「あ、いや。その、もう一つあるんですが…」

 

そう言い鈴はチラチラと体をずらして奥の方に目を向ける。その行動で鈴の目的を察する千冬。

 

「はぁ、織斑なら奥に居る」

 

「えっと、上がっても?」

 

「上がるよりも呼んだほうが早いだろうが。織斑!」

 

千冬は奥に向かって一夏を呼ぶと、一夏は奥の部屋から顔を半分だけ見せる。

 

「な、何でしょうか?」

 

「凰がお前に用があるらしいが、其処で用を聞くか?」

 

千冬がそう聞くと一夏は小さく頷く。

 

「は? ちょ、ちょっと待って下さい! な、何でそんな所から話を聞くのよ! こっち来なさいよ!」

 

鈴は大声で呼ぶが一夏はビクッと体を振るわせ怯えた表情を見せる。

 

「馬鹿者! 織斑を怯えさせてどうする!」

 

「そ、そんなつもりは」

 

凰は口を尖らせながら俯く。その表情に千冬はあの懸念が疑問から確信へと変わろうとした。

 

「おい凰。お前の転入時の資料を見たが、代表候補生となって政府に織斑の幼馴染だからだと頼み入学した。間違いないな?」

 

「そ、そうです」

 

「ならお前の所の政府から、織斑に関する説明等されなかったのか?」

 

「せ、説明ですか?」

 

「そうだ。例えば、女性に対し異常な恐怖を抱く等だ」

 

千冬の問いに鈴は暫し目を瞑りながら首を傾げる。

 

「そう言えば役人の人に呼び出された時に、そんな話があったようなぁ」

 

凰の言葉に千冬は盛大なため息を吐いた。

 

「お前と言う奴はぁ。政府からの大事な話を聞き流すな、馬鹿者!」

 

「だ、だって一夏に会えると思って嬉しくて、その…」

 

呆れてものが言えないと言った表情でため息を吐く千冬。

 

「そ、それでその、さっきの例えって、まさか?」

 

「そのまさかだ。織斑は女性恐怖症と言う精神病だ。だから女性とはある程度距離をとらなければ発作が起きる。最近は治療のお陰である程度近くても問題無いが、お前と織斑の間にこれだけ距離があるのは、今朝のお前の行動が原因だ」

 

そう言われ鈴はしまった。と苦い顔を浮かべた。知らなかったとは今朝の鈴の行動は十分一夏に警戒心を抱かせるだけの行動であったためだ。

 

「うぅううぅう」

 

「唸ったところで変わらんぞ。用があるんじゃなかったのか?」

 

そう言われ凰ははぁ。とため息を吐き気持ちを切り替えた。

 

「そうします。その、久しぶりね一夏」

 

「う、うん。ひ、久しぶり鈴音、さん」

 

「鈴で良いわよ。……それで用事なんだけど、その一夏。あの時の約束覚えてる?」

 

「や、約束?」

 

「なに、忘れたの? 空港で、その、言ったじゃない。『料理の腕を上げて帰ってくるから、その時は毎日私が作った酢豚食べてくれる?』って」

 

照れた表情で鈴は一夏に告げる。隣にいた千冬はジト目で味噌汁のあれか?と言いたげな表情を浮かべていた。

そんな中、一夏は顔半分だが困惑した表情を浮かべていた。

 

「その、ぼ、僕、そ、そんな約束、した憶え無い」

 

オドオドしながらも憶えていないと告げる一夏。

その言葉に鈴は驚愕の表情を浮かべ、しかめっ面を浮かべる。

 

「お、憶えてないって、どう言う事よ!」

 

「ヒッ! だ、だって、僕、鈴音さんが、ひ、引っ越した時風邪で寝込んでたから」

 

一夏の訳にはぁ?と言葉を零す鈴。すると隣にいた千冬が思い出したように語り出した。

 

「そう言えば、あの時織斑は風邪で寝込んでいたな。確かあの時は国家代表の強化練習がある時だったが、織斑が風邪で寝込んだから早めに切り上げて帰って来たからな」

 

千冬の説明に、鈴は若干茫然と言った表情を浮かべていた。

 

「で、でも私確かに一夏に「信用できんと言うなら、五反田とかに聞けばいいじゃないのか? 確か織斑の代わりに私が行けない事を連絡したから、憶えているはずだ」」

 

千冬の説明に鈴は何も言えない表情で俯く。

 

「…わかりました。だったら!」

 

そう言い勢いよく顔を上げる鈴。その顔は決意に染まった顔だった。

 

「一夏! 私と付き合って!」

 

突然の告白。その光景に流石の千冬も若干驚いた顔を浮かべていた。だが一夏の返事は

 

「ご、ごめん、なさい。む、無理です」

 

怯えながらも断りの返事を返す一夏。

 

「な、なんでよ!」

 

「だ、だって、怖いもん」

 

「はぁ~? あたしはアンタの幼馴染でしょうが! 何処が怖いのよ!」

 

「今のお前の状態だっ!」

 

怒りの表情で声を荒げる鈴に隣にいた千冬は鈴の頭を叩いた。バシンと音が鳴り響き鈴は頭に手を置きながら涙目で千冬を見上げる。

 

「幼馴染みでも、今の織斑は女性のほとんどが恐怖の対象なんだ。怖いと思っても仕方がないだろうが」

 

「な、何ですかそれ! そんなの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

鈴の言葉に千冬は目を見開くも、直ぐに鋭い視線となり、拳を握りしめる。

千冬は一夏がどれ程辛い目に遭ったかも知らないのに、気合で克服しろと言う鈴の言葉に自制心が崩壊し拳を握りしめた右手が震える。その姿に気付いた一夏は振るえる唇を開く。

 

「お、お姉、ちゃん。だ、ダメ」

 

その言葉が千冬の耳に届くと怒りの気持ちは少しずつ落ち着きだした。

 

「…凰、部屋に帰れ」

 

「な、なんで「いいから帰れと言っている!」」

 

今まで浴びせられた事が無い程の怒声を浴びせられた鈴は体を強張らせ足早に部屋から飛び出していった。鈴が出て行った後千冬は肩で息をしていると、一夏が傍に近付き千冬のスーツの袖を掴む。

 

「だ、大丈夫?」

 

「……怖い姿見せて、済まない一夏」

 

「ぼ、僕は、大丈夫、だから」

 

そう言われ千冬は若干涙を浮かべるが、一夏に見られまいと顔を上げ見えない様にした。

 

「そ、それじゃあ私も帰るな。何かあったら隣の布仏か私の携帯に連絡しろ。いいな?」

 

「う、うん」

 

一夏の返事を聞いた千冬はそれじゃあな。と言い部屋から出て行った。




次回予告
多くの生徒が待ちに待ったクラス代表戦当日。
一夏はクラスメイトたちから応援されつつピットへと向かう。
そして対戦相手が発表されると、なんと2組の鈴と対戦することに。

次回
クラス代表戦part1

次回投稿してほしい小説(詳細は活動報告の「次回作一覧」を見てください)

  • ①IS×ウォーシップガンナー2
  • ②IS×メタルギア
  • ③IS×オリジナルストーリー①
  • ④IS×オリジナルストーリー②
  • ⑤IS×クロスアンジュ
  • ⑥IS×タイムクライシス
  • ⑦IS×オリジナルストーリー③
  • ⑧IS×人狼 JIN-ROH
  • ⑨IS×東方project
  • ⑩IS×オリストーリー④
  • ⑪IS×R-type
  • ⑫俺ガイル×IS
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