女性恐怖症の一夏君   作:のんのんびより

15 / 31
 


12話

「……ん。あれ、此処は?」

 

ぼやける視界から見える真っ白な天井を見て、一夏はアリーナのピットではない場所で寝ていた事に気付く。

寝たまま辺りを見渡すも、何処か分からずにいると

 

「お、目が覚めたみたいだね」

 

そう声が聞こえ一夏はそちらに顔を向けると、黒髪で白衣を着た男性がボードを持って立っていた。

 

「あ、伊田さん。どうして?」

 

一夏はそう言い、伊田と呼んだ男性に問う。

 

「そりゃあ、俺は君の担当医だからね。それに此処の学園には女性の保険医しかいないって千冬に頼まれたからさ」

 

「そう、だったんですか」

 

そう言いながら一夏はベッドから上半身を起き上がらせる。

 

「さて、それじゃあちょっと検査するよ」

 

そう言い伊田は一夏の体の状態を見たり、幾つかの問診を行った。

 

「――うん、大丈夫だ。けど、また無茶しちゃダメだよ?」

 

「はい、気を付けます」

 

問診を終え一夏は制服に着替えて始める。すると

 

「あぁ、そうだ。君のお友達が廊下で待ってるよ。此処に運ばれた後もずっと廊下の前で待ってたんだから、お礼言っておきなよ」

 

「へ? 友達?」

 

伊田の言葉に首を傾げつつも一夏は一礼して廊下へと出る。一夏は辺りを見渡し、その友達を探すとすぐに見つかった。

 

「あ、本音さん」

 

「あ、イッチー! もう大丈夫なの?」

 

「は、はい。ご心配をお掛けしました」

 

申し訳なさそうに謝る一夏に、本音は笑顔で気にしてないよぉ。と言い励ます。

 

「それで、イッチー。もう部屋に帰っても大丈夫なの?」

 

「は、はい。異常は見当たらないから、帰ってもいいそうです

 

「そっかぁ。それじゃあ一緒に帰ろぉ」

 

そう言い歩き始める本音。一夏もそれに続く様に歩き始めた。

 

一夏が医務室から出て行って暫く経ち、伊田は今日の一夏の容態をカルテに書き込んでいると

 

『―――れと言っている!』

 

『それは此方の―――!』

 

『あんた達の方が邪魔に―――!』

 

と扉の前で騒ぐ3人に気付く。

 

「やれやれ、一体何の騒ぎだ?」

 

そう言いながらペンを置き扉の元に向かう。扉を開け廊下へと出ると

 

「だから貴様らは帰れ! 私が一夏の元に行くんだ!」

 

「接近を禁止されているのをお忘れですか、篠ノ之さん。というか、2組の貴女も何故此処に居るんですの!」

 

「あたしは一夏の幼馴染だから居るに決まってるでしょ! アンタ達はお呼びじゃないのよ!」

 

と箒、セシリア、鈴が医務室前で大騒ぎを起こしていたのだ。

 

「はぁ~。ちょっと君達、此処は医務室前だよ。騒ぐんだったら他所でやりな」

 

そう言い3人に解散するよう促すが

 

「一夏の様子を見るまでは帰れるか!」

 

「そちらが向こうに行けばよろしいでしょ!」

 

「一夏の面倒を見るまでは帰れるわけないでしょ!」

 

と言う事を聞く気が無い3人であった。

その姿に伊田は思わずため息を漏らす。仕方ないと言わんばかりおもむろにスマホを取り出す。

 

「そうか。それじゃあ此方も考えが有るから」

 

そう言い伊田は何処かに電話を掛けた。

 

「もしもし。あぁ、俺だけど。悪いんだけど、医務室に来てくれないか? 君の所の生徒と2組の生徒が医務室前でギャーギャーと騒いで、迷惑なんだ。すぐに行くって? それじゃあ待ってるから」

 

そう言い電話を切る伊田。

 

「3人共、今すぐに逃げないと、大変な目に遭うよ」

 

そう言うと3人ははぁ?と怪訝そうな顔を浮かべる。

 

「大変な目って、どいう意味よ?」

 

鈴がそう言うとガシッと彼女の頭が掴まれた。

 

「こういう意味だ、凰。そして残りの馬鹿共」

 

掴まれた鈴。そして残りの箒とセシリアはガタガタと震え出し首を錆びついたかの様にギギギと後ろへと向ける。

そこには般若の面を被った様な表情の千冬が立っていた。

 

「そこまで元気があるなら、今すぐに道場へ行こうか。久しぶりに体を動かしたい気分だったからな」

 

そう言いながら千冬は鈴の頭を掴んでいた手に力を入れる。鈴は締め付けられる頭に悶え苦しみ意識を失う。

鈴を放り捨てた千冬は残りの二人に目線を向けると、箒とセシリアは逃げ出そうとするも千冬から発せられる威圧に足が縺れ倒れ込む。

 

「さて、逝こうか?」

 

そう言い2人を拘束し鈴を担ぎ上げ道場へと向かう千冬。

その後姿を伊田は苦笑いで見送るのであった。

 

その頃医務室からでて部屋へと戻る途中の一夏達はと言うと、談笑を交えながら歩き寮前へと到着していた。

 

「あ、そうだ。本音さん、少し、良いですか?」

 

「ん~、なぁにぃ?」

 

「じ、実は僕、部活に入ろうと思ってまして。それでその、一人で行くのが怖いので、その、一緒に来てもらえませんか?」

 

「部活にぃ? 別に付いて行くくらいな良いよぉ」

 

「あ、ありがとうございます。それじゃあ、明日行くので、お願いします」

 

そう言い頭を下げお礼をする一夏。

 

 

その日の夜、一夏は何時もと変わらずISコアの世界へと来ていた。

 

「アイラ、今日は本当にごめん」

 

申し訳なさそうな表情で謝る一夏。アイラはそんな一夏の姿を見ずに小説を読み続ける。

 

〈……そうね、確かに心配したわ。でもアンタが謝る事なんて一つも無いでしょ?〉

 

「で、でも僕があの時〈それこそ私が原因でしょ? 集音マイクをさっさと切ればアンタはキレることも無かった〉あ、アイラは何も悪くないよ」

 

そう言い互いに譲ろうとしない状態が続く。

 

~数十分後~

〈はぁ~、この話題何時まで続ける気よ一夏?〉

 

「うっ。だ、だって僕が〈すぐにそうやって自分の所為にしようとしない! もうお互いが悪かった! これでこの話題は終了! 良いわね?〉 で、でも〈お・わ・り!〉は、はひぃ」

 

強い圧で話を切り上げるアイラに一夏は涙目で了承せざる負えなかった。

するとアイラはある事を思い出し一夏に目線を向ける。

 

〈そう言えば一夏。アンタ、ピットで気を失った後の事何か憶えている?〉

 

「え? う、うぅん。気付いたら医務室だった位だけど、何かあったの?」

 

〈別に〉

 

そう言いアイラは目線を本へと戻す。その姿に一夏は何処か不安げな表情を浮かべていた。

暫く静まり返る世界。するとアイラが徐に本を読むを止め一夏の元に近付く。

 

〈ちょっと一夏、其処に座りなさい〉

 

そう言い一夏の背後にソファーを出現させるアイラ。

 

「え? ど、どうして?」

 

〈いいから座りなさい〉

 

鋭い目で睨むアイラに一夏は困惑しながらもソファーの端へと座る。座ったのを確認したアイラは一夏の隣に座ると、そのまま一夏の太ももに自身の頭を置いた。

 

「ふぇっ!? あ、アイラな、何してるの!?」

 

〈何って、アンタの恐怖症治療に決まってるでしょ? ほら、動こうとしない〉

 

突然アイラが自分の太ももに頭を置いてきた事に動揺しまくる一夏。アイラに動くなと言われ顔を真っ赤に染めながらも言われた通り動こうとせずジッとし続けた。

 

それからアイラは本を読み終わるまで一夏の太ももに頭を置いたのだった。その間一夏はずっと顔を真っ赤に染め上げたままだった

 

 

 

人物紹介

伊田洋一

容姿:テイルズオブエクシリア2のジュード・マティス

一夏の専属医師。千冬とは中学からの付き合いで、その伝手で束とも付き合いがある。

母親が医療関係者で、母の姿を見て医療を学び始める。最初は外科治療について学んでいたが、ある時に心に深い傷を負った自殺未遂者が運び込まれ、治療を行ったが再び自殺未遂をしたと言う記事を見て体の傷を幾ら治しても、心の傷がついたままではまた体に傷を作ってしまうと考え、精神科医になる事を決意する。




次回予告
次の日、クラスの皆に心配させたことを謝る一夏。そして放課後、一夏は本音と共に入部したいと思っている部活の活動部屋へと来た。

次回
一夏君入部する~よ、よろしくお願いします~

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。