女性恐怖症の一夏君   作:のんのんびより

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13話

クラス代表戦の次の日。一夏と本音は1組の教室前に立っていた。

 

「み、皆さん。怒ってないでしょうか?」

 

「大丈夫だよぉ。それより、そんな顔を見せたら逆に皆が心配な表情を向けてくるよぉ?」

 

本音の言葉にそうかなぁ?と返す一夏。一夏が教室に入るのを躊躇っているのは昨日のクラス代表戦の事でだった。

初戦には勝てたが、一夏はその後怒りで普段以上の体力を使ってしまった為、ピットで気を失ってしまいその後の試合を棄権してしまったのだ。

その事で一夏はクラスのみんなの期待を裏切ってしまったのではと思い、気落ちしていたのだ。

 

「ほぉら、イッチー。何時まででも此処に居ても仕方がないから行こ?」

 

本音にそう言われながら手を引っ張られ、一夏はコクリと頷き一緒に教室内へと入って行く。

 

教室内に入ると、ほとんどの生徒達が入って来た一夏達の方に視線を向けており、一夏はビクッと肩を跳ね上げ顔を俯かせる。

すると

 

「織斑君、大丈夫?」

 

「へ?」

 

予想していた言葉とは違う言葉が掛けられ一夏は声を零し、恐る恐る顔を上げると声を掛けたと思われる生徒が心配そうな表情で見ており、他の生徒達も心配そうな表情を浮かべていた。

 

「あ、あの…」

 

「昨日体調不良で棄権したって放送されて、皆心配したんだよ」

 

「そうそう。大慌てになったんだから」

 

「そう、でしたか。その、ご心配をお掛けしました」

 

クラスメイト達を怒らせたと思い込んでいた一夏は、むしろ心配させたことに悪い事をしてしまったと思い頭を下げる。

 

「もう大丈夫なの?」

 

「はい。疲労で気絶してしまっただけなので大丈夫、です」

 

一夏の報告に皆安堵した表情を浮かべ、良かった良かったと笑顔を浮かべ始める。

すると隣にいた本音が笑顔を一夏に向ける。

 

「ほらね、皆イッチーの事怒ってなかったでしょ?」

 

「う、うん」

 

不安な思いが消え、ホッと一息を吐く一夏。

 

 

そんな中その様子を遠くからでしか見れない2人が居た。箒とセシリアである。

 

(うぅ~。か、体がい、痛いですの。せ、折角一夏さんが居られるに、こ、声を掛けられませんの)

 

(ち、千冬さん。ほ、本気で殺すつもりだったのか? あ、あそこまで本気で掛かってきたのって、いつ以来だ?)

 

そう、この二人と隣のクラスに居る鈴は昨日千冬に道場へと連行され、教育という名のお仕置きを受けたのだ。

その内容だが、素手の千冬対武器を持った鈴達との1対3の模擬戦であった。無論1対3、しかも相手は武器を持っているならば1人の千冬は不利と思われる。

だが、千冬は武器を持っている3人を容易く対処し、箒が持っていた模擬用の竹刀を持って3人を追いかけ回し始めたのだ。

逃げることが出来ない訓練は消灯時間ギリギリまで行わされ、その頃には3人はボロボロにされていた。

 

 

 

 

~放課後~

放課後を合図するチャイムが鳴り響き、一夏は教科書やノートなどをカバンへと仕舞って行く。

 

「ねぇねぇイッチー。入部する部活ってイッチーが入っても大丈夫なの?」

 

「うん。その、織斑先生が事前に調べてくれた資料だと、その、怖い人はいないって書いてた」

 

そう言いながらカバンを背負う一夏。本音は一夏の言う怖い人とは女尊男卑の生徒の事だろうなと推測し、そっかぁ。と返す。

 

「それじゃあイッチー。その部活の活動場所まで行こぉ!」

 

本音の元気ある掛け声に一夏は、元気だなぁと思いながら教室を出る。

 

2人の出て行く姿に、セシリアと箒が見逃すはずもなく手早く荷物を纏め痛む体に鞭を打ちつつ付いて行こうと(ストーキング)するが

 

「ちょっと二人とも何処行く気?」

 

と、大勢の1組の生徒達がジト目で二人の行く手を阻む。

 

「ど、何処にって部活に決まっておりますわ」

 

「わ、私も剣道部に行かないといけないんだ。其処をどけ」

 

そう言い部活に行くだけだと説明する。だが

 

「篠ノ之さん。今の貴女の状態で剣道できる訳ないでしょ。同じ剣道部の部員としては無理だと思うわ」

 

「セシリアさんもよ。そんなボロボロな状態でやったら怪我するわよ」

 

そう言い2人と同じ剣道部とテニス部所属の生徒が咎める。正論を言われぐうの音も出ない2人。

 

【バシン!!!】

 

と突然廊下から普段から聞きなれた音以上の打撃音が鳴り響いた。1組の生徒数人が確認すると箒達同様に包帯やらシップが沢山されている鈴が俯せの状態で倒れており、その前には出席簿を携えた千冬が立っていた。

 

「全く、あれだけ説教したというのにまだ分からなんのか、この馬鹿者は」

 

そうダルそうに零す千冬。

 

「織斑先生、その子また何かやらかしたんですか?」

 

「ん? あぁ、また何時もの如く織斑に突撃しようと教室前で待ち構えていたようでな。毎度の如く肉体説教だ」

 

1組の一人に聞かれ、呆れた様子で返す千冬。そしてふとある事を思い出し顔を上げる。

 

「まさかと思うが、ウチのクラスの馬鹿二人もか?」

 

「はい。ボロボロなのに織斑君をストーキングしようと教室から出て行こうとしましたが、クラスの皆で阻止していた所です」

 

そう言われ千冬は重いため息を吐き、出席簿で肩を叩く。

 

「そうか、それはご苦労だった。後は任せて、お前等も部活に行ってこい」

 

「分かりました。皆ぁ、織斑先生が後は任せろだってぇ!」

 

「「「「はぁ~~~い!」」」」

 

そう声が聞こえぞろぞろと教室内から生徒達が出てきて部活動へと向かっていく。千冬は傍を通っていく生徒達に部活動頑張る様に。と声を掛けていく。そして徐に両手を上げ勢いよく振り下ろし傍を通っていこうとする生徒二人を掴み止めた。

 

「貴様らは今から説教だ」

 

「「……」」ガタガタガタ

 

そう言い呼び止めたのは生徒達に紛れて脱出しようとしたセシリアと箒であった。二人は全身をバイブレーションの如く震えさせ、怯えるが千冬はそんな事気にもせず教室へと連行し説教を始めるのであった。

 

 

 

余談ではあるが、千冬によって気絶させられた鈴は2組の生徒達に回収され暫し教室内で寝かされ、気付いたころには月が上がり真っ暗な時刻であった。

 

 

 

 

教室でそんな事が起きているとは知らない一夏達はというと、学園の奥にあるとある教室前へと来ていた。

本音は顔を上げ表札を見ると其処には

 

『家庭科室』

 

と書かれていた。

 

「此処ぉ?」

 

「うん。でも、何だか静かだね」

 

そう言いながら、一夏はそっと扉をノックする。

 

『開いてるわよぉ』

 

そう中から聞こえ、一夏はそろぉりと扉を開ける。家庭科室には上級生のネクタイをした一人の女子生徒が書き物をしていた。

 

「あら、君ってもしかして今噂の男子生徒じゃない。何か御用?」

 

「あ、あの、此処って【料理研究部】で、良いでしょうか?」

 

一夏がそう聞くと女子生徒はニンマリと笑顔を見せて頷く。

 

「えぇ、此処が料理研究部の活動部屋よ。でも今日は部活はやってないわよ」

 

「え? やってないんですか?」

 

「今日は皆、お題に合うメニュー調べで居ないのよ」

 

お題?と女子生徒が言った言葉に首を傾げる一夏と本音。

 

「うん。ウチの部はそれぞれお題を出し合ってその中から一つのお題を選んで、お題に合う料理を調べて作るっていう活動なの。それで、今日のお題は【皆大好き、菓子パン】って言う物なのよ」

 

「「へぇ~」」

 

2人が関心の声を零していると、女子生徒はある事を思い出す。

 

「そう言えばここ来た理由を聞いてなかったわね」

 

「あ、そうでした。あの、僕も此処に入部したいのですが、大丈夫でしょうか?」

 

一夏はおずおずと入部希望の事を伝えると、女子生徒は目を点にさせ何回か目をぱちくりさせる。

 

「えっと、入部ってウチに?」

 

そう問われ一夏は控えめにコクリと頷く。

 

「……」

 

しばしの沈黙が流れる家庭科室。

 

「あ、あの?」

 

「え? あ、ご、ご、ごめんね。ちょっと驚いちゃって。入部ね。え、えぇ問題無いわよ。入部届の紙は?」

 

「あ、はい。こ、これです」

 

そう言い一夏は家庭科室へと入って行き女子生徒に入部届の紙を手渡す。

 

「うん、確かに。それで、そっちの子は?」

 

「あ、私はただの付き添いでぇす」

 

「そうなの? それじゃあえっと、織斑君だったわね。さっき言った通りお題に合った料理を調べて此処で作るから材料と必要ならレシピ等、それとエプロンと三角巾を持ってきてね。次皆が集まるのはGW明けになるからそれまでに準備とかしておいてね」

 

「は、はい。えっとよ、よろしくお願いします」

 

そう言い頭を下げる一夏。その後一夏と本音は家庭科室から退出していく。

 

 

残った女子生徒は2人を見送り、また一人だけになる。

 

「……」プルプル

 

黙り込みプルプルと震え出す女子生徒。そして

 

 

「よっっしゃあーーーーーーーー!!」

 

と声高々に拳を突きあげ喜ぶ女子生徒であった。




次回予告
IS学園はGWに突入し、多くの生徒達が実家に帰ったり学園に残って予習復習を行っている中、一夏も家へと帰って来ていた。
メサと共に家の中の用事を済ませていると、一夏はある事を思い出し友人の家に向かうことになった。

次回
一夏君お家に帰る~【坊ちゃまぁぁぁ!!】~

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