女性恐怖症の一夏君   作:のんびり日和

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15話

千冬が男性に怒りを表す数時間前、千冬は職員室である資料を作成を終えた所であった。

 

「これで良し。さて、後は…」

 

そう呟きながら目当ての人物を首を振りながら探すと、目当ての人物が居るのを発見し資料を持って立ち上がっる。

 

「幸平先生、少しいいですか?」

 

そう声を掛けたのは金髪のロングヘアーで、きりっとした目つきが特徴の女性だった。

 

「あら、織斑先生。どうかしましたか?」

 

「ウチのクラスの織斑が幸平先生の部に入部したとのことで、少しお話が」

 

「あぁ、彼の事ですか。ウチの部長が大興奮で噂の男性操縦士が入部してくれたって大声で連絡してきましよ」

 

苦笑いを浮かべながら幸平はそう言い、千冬もその光景が目に浮かんだのかお疲れ様です、と声を掛ける。

 

「それで、その彼の事で何か?」

 

「あぁ、そうでした。これを部員達に配っておいて貰ってもいいですか?」

 

そう言い千冬が幸平に手渡したのは先程作成した資料であった。

 

「これは…彼に関する注意事項ですか?」

 

「えぇ。幸平先生はご存知かもしれませんが、部員たちは恐らく知らないと思うので一応用意をしたんです」

 

幸平は渡された資料を見つめる。其処には千冬が1組で説明した一夏に関する接し方や気を付けなければならない事が書かれていた。

 

「なるほど。では次の部活動の時に生徒達に配っておきますね」

 

「すいませんが、お願いします」

 

そうお願いしていると、千冬は幸平が優しそうな笑顔を浮かべながらこちらを見ている事に気付く。

 

「あの、なにか?」

 

「いえ、噂通り弟思いのお姉さんだなぁと思って」

 

幸平の言葉に、弟思い?と首を傾げる千冬。

 

「皆噂をしていますよ。弟さんが入学してからというもの、織斑先生が陰ながら弟さんの為に彼方此方走り回ったり、病気の事を考えずに近付こうとしている生徒を睨みつけて追い返しているって」

 

クスクスと笑いながら説明する幸平に、千冬は( ゚д゚)ポカーンといった表情を浮かべていた。

 

「えっ? そんな噂が?」

 

「えぇ。皆最初は驚いていましたが、今はクールでカッコいい教師でもあり、弟思いの優しい教師でもあるって皆、新しい一面を見られたって喜んでましたよ」

 

幸平の説明に千冬は何とも言えない表情を浮かべ、頬も若干赤みを帯びていた。

 

「あら、織斑先生。もしかして照れてます?」

 

「て、照れてはいません! と、とと、兎に角にお願いしますね!」

 

そう言い照れた表情を見せまいと足早に自分の机へと戻っていく千冬。そんな背を幸平はクスクスと笑いながら見つめているのであった。

 

自身の机に戻って来た千冬ははぁ。とため息を吐いた後GW明けの授業の準備をしておくかと思い資料を出そうとした瞬間

 

『織斑先生、学園長がお呼びですので学園長室へお越しください。繰り返します、織斑先生、学園長がお呼びですので学園長室へお越しください』

 

「む? 一体何の用だ?」

 

突然の放送に千冬は怪訝そうな顔付で立ち上がり、職員室を後にした。

暫く廊下を歩き他の部屋とは違う少し高級そうな扉が現れ、千冬は扉をノックする。

 

「織斑です」

 

『どうぞ、お入りください』

 

そう中から聞こえると千冬は失礼しますと一言入れ、中へと入る。中に入り千冬は奥に座っている初老の男性の元に向かう。

 

「学園長、何か御用ですか?」

 

「えぇ、少しGW明けの事でお話があるんです」

 

そう言い初老の男性、轡木学園長にソファにどうぞ。と言われ千冬は学園長が座るソファの向かいのソファへと腰を下ろす。

 

「それでGW明けの事でとはどういうことですか?」

 

「実はGW明けに2人の生徒が転入してくることになりました」

 

そう轡木が言うと、千冬は怪訝そうな顔付となる。

 

「転入生、ですか? やけに遅い転入ですね」

 

「えぇ。実は転入してくる生徒の一人が、どうやらフランスで発見された男性操縦士らしいんです」

 

轡木の口から出た男性操縦士と言う言葉に千冬の眉間にしわが寄る。

 

「男性操縦士が? 明らかに可笑しいですね」

 

「えぇ。織斑君が見つかった後に国際IS委員会が各国の支部に調査をするよう指示を出したと聞いています。今まで何の成果も無かったというのにそれが一企業が発見したというのですからね」

 

そう言いながら轡木は一枚の資料を千冬に手渡す。渡された資料に目を向けると、其処には金髪の女性の様な人の写真が張られ詳細が書かれていた。

 

「シャルル・デュノア。デュノア社社長の息子でデュノア社の企業代表。……まさか、こんな怪しさ十分な者を入れるのですか?」

 

「最初は私も疑問に思ったのですが、確たる証拠がない故拒否はできません」

 

そう言われ千冬は心の中で舌打ちを放ち、鋭い目で資料を見つめる。

 

「そうですか。それで、もう一人の転入生は?」

 

千冬はデュノアの件は後で考えるとして、もう一人の転入生について学園長に問うと、轡木は少し言いづらそうな表情を浮かべる。

 

「実は、もう1人は織斑先生のお知り合いと言っており、織斑先生のクラスに編入させて欲しいと要請がある生徒なんです」

 

「私の知り合い?」

 

轡木の言いづらそうな表情に禄でも無い事だなと考えつく千冬。

 

「して、その生徒と言うのは?」

 

轡木は千冬の問いにそっともう一つの資料を千冬に手渡した。その内容を見た千冬は一瞬で顔付が変わり紙を持つ手に力が入る。

 

「こいつは……」

 

「……先方は昔織斑先生にお世話になったと「こいつを世話をした憶えはありません」そ、そうですか」

 

千冬は苛立ちを貸せず学園長に対し少し強めの口調となる。そしてハッとなり顔を資料から轡木の方へと向ける。

 

「まさか、こいつとデュノアを私のクラスに入れるおつもりですか?」

 

「そのつもりで「私は拒否します!」お、織斑先生」

 

「こいつらが私のクラスに入れば、何が起きるか想像できますでしょ!」

 

「それは勿論理解しております。しかし、デュノア社のほうは証拠が無いですしもう一人の生徒は他の教師では手には負えません」

 

「それでも私は納得できません!」

 

そう叫び千冬は拒否の姿勢をとる。そして持っているのが嫌なのか、もう一人の転入生の資料、【ラウラ・ボーデヴィッヒ】と書かれた資料を机に叩きつける。

 

「織斑先生、貴女の気持ちも十分わかります。ですが、この二人に関しては他の教師には荷が重すぎるのです。無論、この二人が問題を起こした場合の裁量は織斑先生にお任せします」

 

轡木はそう言ってどうか。と深々と頭を下げた。千冬自身轡木には幾度か世話になった事がある為、これ以上の我儘はいけないという事は分かっていた。だが心の中でこの二人が一夏に対し、様々なトラブルを持ち込むと目に見えて明らかだった為素直に頷けない。どうしたものかと考えていると、ある事を思いつく。

 

(これだったらこの二人だけじゃなく、他の奴等も牽制できるのでは。 だが許可は下りるだろうか? いや、下ろさせる。絶対に!)

 

何かを決意した表情を浮かべた千冬は、拳を握りしめつつ口を開く。

 

「分かりました、学園長。転入生の件、承諾します」

 

「そうですか、ありが「ですが、条件があります!」……なんでしょう?」

 

「この二人が織斑に対し、何かしらトラブルを持ち込んでくる可能性は大いにあります。ですので彼に護衛を付ける許可をください。それさえ許可してくだされば私は引き受けます。無論殺傷兵器の使用は私の許可なくして使用は禁じさせます」

 

「……できれば殺傷兵器の許可制とかではなく完璧に無しの方が「なら私は引き受けません」……分かりました。ですが、相手の殺傷するのではなく、負傷程度で済ませて下さい。それが最大限の譲歩です」

 

「分かりました」

 

「それじゃあ政府に護衛の派遣の要請を「いえ、私の知り合いに頼みます」し、しかし学園の警備の関係もあります。政府の方が「あんな連中信用できません」ではその知り合いとは、どう言った人物ですか?」

 

「以前織斑に荷物を届けに来たロボット、それを製作した者です。奴なら完璧な護衛ロボを用意してくれます」

 

そう言われ轡木はまさかの言葉に思わず言葉が詰まる。

 

「ま、まさか篠ノ之博士の事ですか?」

 

「これ以上に信用できる者はありません。それに下手に政府が用意した護衛を学園内に入れれば、他国からもと護衛を出される恐れがあります」

 

そう言われ轡木は暫し思案した後、口を開いた。

 

「分かりました、それで構いません」

 

「ありがとうございます。では、失礼します」

 

そう言い席を立ち千冬は一礼した後学園長室から出て行った。一人残った学園長ははぁ。と重いため息を吐いた。

 

学園長室から退室した千冬は廊下を暫く歩き、突然止まり窓辺の柱に凭れる。

 

「聞いていたな? 頼むぞ」

 

誰もいないにも拘らずそう言うと窓の外に生えている草むらからガサガサと動き、束が現れ同じく千冬の背に合わすように同じ柱に凭れる。

 

「あいあいさぁ~。 いっくんが好みそうなプリティーでめっちゃ強い護衛ロボを作るよ!」

 

ケラケラと笑いながら伝える束。すると先程とは違う冷たい気配へと変えた。

 

「それにしてもさぁ。転校してくる奴の一人、懲りないねぇ。あれだけちーちゃんに痛い目にあわされた癖にさぁ」

 

「あぁ、全くだ。奴だけじゃない、他の連中もだ」

 

「だねぇ。それと、もう一人の疑惑だらけの転入生。あれ、男じゃないよ」

 

「だろうな。束、お前の方でも出来るだけ証拠を集めておいてくれ。いざとなったらあの会社もろとも潰す」

 

「ふふ~ん。そう言うと思って既に集め始めてるよぉ」

 

フッ、そうか。と零しながら千冬は凭れていた柱から背を離す。

 

「それじゃあ頼んだぞ」

 

「イエッサァー!」

 

と、そう言い束は草むらの中へと飛び込むとすぐにその気配は消え去った。

束が消え去ったのを確認した千冬は再び歩き出しながら静かに転入してくる一人、【ラウラ・ボーデヴィッヒ】の事を思い返す。

 

「チッ。アイツを思い返すと、あの事件の事を思い出す」

 

苛立ち気にそう零しながら、千冬は思い返す。一夏が女性恐怖症になってしまった、あの(モンドグロッソ)の事を。




次回予告
時間は遡る事、第2回モンドグロッソの時。すべては此処から始まった。

次回
全ての始まり~貴様さえ居なければぁ‼~

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