女性恐怖症の一夏君   作:のんのんびより

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20話

家庭科室から出た一夏は部活動で作ったパンが入った袋を大事そうに持ちながらモッフ達と共に千冬が居る寮母部屋へと向かっていた。

 

「お姉ちゃん、喜んでくれるかな?」

 

そう零しながら歩いていると、『寮母室』と書かれた札のかかった部屋に到着し、一夏はそっと扉をノックする。

 

『誰だ?』

 

「あ、あの、織斑です」

 

中から声を掛けられ、一夏は名を名乗ると扉の鍵が開き千冬が現れる。

 

「どうした織斑?」

 

「その、あの…」

 

照れた表情を浮かべ周りを少しきょろきょろとする一夏に、千冬は一夏の持っている物に目が行く。

 

(あぁ、なるほど)「まぁ、立ち話も何だ。中に入れ」

 

何となく訳を察した千冬はそっと部屋の中に一夏を通した。モッフ達は部屋の中までは入らず扉の両脇に立ち銃を胸の所で掲げながら警備を始めた。

 

「それでどうした、一夏?」

 

「その、…はい」

 

周りの目が無くなり、一夏は緊張が若干やわらぎ持っていたパンを千冬へと手渡す。

 

「ほぉ。その、一夏の手作りパンか?」

 

「う、うん。部活の皆と、一緒に作ったの。小麦粉じゃなくて、米粉で作ったミルクパンだけど」

 

「そうか。旨そうだな」

 

「ぶ、部活の皆からは美味しいって褒められた」

 

照れながら伝える一夏に、千冬はそうか。と笑顔を浮かべる。

 

「そ、それじゃあ僕本音さんにも、パンを渡しに行って来るね」

 

「あぁ、いってらっしゃい。それと一夏。今日の初めての部活動はどうだった?」

 

「その、凄く、楽しかった」

 

「そうか。それは良かった」

 

一夏の返答に満足そうな笑顔を浮かべる千冬に、一夏はそれじゃあ失礼しますと言って部屋から出て行った。

一夏が出て行った後、一人ぽつーんと残った千冬はパンを持って奥の部屋へと行き椅子に座って机の上に一夏の手作りパンを置く。

 

「い、一夏が作ったパン! では、いただきます!」

 

そう言い千冬は袋からパンを取り出し緊張した面持ちでかぶりつく。そして

 

「旨すぎるぅううう!!!!」

 

と、部屋の中で叫んだとか。

 

 

 

 

千冬に無事パンを届け、一夏とモッフ達は本音の部屋へと向け歩いていた。

前後にはモッフ達が居る為、すれ違う生徒達と視線が交じるという事は無い為、一夏はモッフの背中を見ながら歩いていた。すると突然前を歩いていたモッフが歩を止める。一夏は突然歩を止めたモッフ(4号)にどうしたんだろうと首を傾げつつ、そっとモッフの背後から前の方を覗き込むと、少し困った表情を浮かべたデュノアが立っていた。

 

「あ、あの、何の、用ですか?」

 

一夏はモッフの背後から警戒心MAXでデュノアに用件を聞く。

 

「いやぁ。僕達ほら、世界に2人しかいない男性操縦者だからさ。親睦を深めるために、これから夕飯一緒にどうかなと思って」

 

デュノアはモッフの背後から覗く一夏に頬を染めながら、一緒にご飯でもどう?と誘う。だが一夏は

 

「す、すいません。僕は部屋で食べるので、大丈夫です。その、急いでいるので失礼します」

 

そう言い一夏はモッフの背をクイクイとひっぱりモッフの護衛の下デュノアの横をすり抜けて行った。

 

「あ、ちょっ…行っちゃった」

 

速足で遠ざかっていく一夏にデュノアはガックシと肩を落とす。

すると手を頬に当てるデュノア。その頬は赤く染まっており、息も若干荒かった。

 

(あぁ、やっとお喋りできたぁ。それにしてもやっぱり生で見ると可愛かったなぁ。よし、このままお喋りを続けて行って仲良くなって、親友になったらあれやこれやしたり…。あぁ~、楽しみだなぁ~)

 

などと、頭の中で妄想を繰り広げるデュノア。

実はこのデュノア、可愛いものには目が無く持ってきた荷物の中に密かに可愛い服やそれを撮るためのカメラを入れて持って来ていた。そして今回の偽装転入にデュノアは当初陰鬱な気分であったが、相手が可愛い子だと知り承諾したのだ。

 

(仲良くなったら、可愛い服を一緒に着て写真撮ったりとか色々したいなぁ)

 

と、本来一夏のISデータを盗む様言われているにも関わらず、本来の任務そっちのけの事を考えるデュノアであった。

 

 

 

 

その頃デュノアから速足で逃げた一夏はと言うと自身の部屋の横の本音の部屋に来ていた。扉の前に立っていた一夏は控えめにノックをする。

 

『はぁ~い、どなたですかぁ?』

 

「あ、あの、一夏です」

 

そう一夏が声を掛けると、パタパタと駆け足の音が部屋の中から聞こえるとガチャリと扉が開かれた。

 

「やっほぉ~、イッチー。どうかしたのぉ?」

 

「あの、これ。その、色々お世話になってるから、そのお礼です」

 

照れた表情で一夏は持っていたパンの入った袋を本音に手渡す。

 

「えぇ~、これもしかしてイッチーの手作りパン?」

 

「う、うん。今日の部活で、初めて作ったの。部員の皆は美味しかったって言ってくれた」

 

「そうなんだぁ。ありがとうね、イッチー!」

 

飛び切りの笑顔でお礼を言う本音に一夏は頬を真っ赤に染めながらコクリと頷いて、それじゃあ。と言って部屋へと帰って行った。

 

本音は一夏が部屋に帰っていくのを見送った後部屋の中へと戻っていく。奥の部屋には相川が予習をしていた。

 

「あ、お帰り。ん? それは?」

 

「これ? イッチーのお手製パンだよぉ。いいでしょぉ?」

 

そう言いながら本音はベッドの上に座り袋からパンを取り出し食べようとする。すると

 

「な、何ですとぉ!? えっと、えっとぉ! ほ、本音、このトッポ一箱で一千切り下さい!」

 

「……2箱寄越しなぁ」

 

「なにィ!? うぅ~。えぇい、持ってけどろぼぉー‼」

 

相川は頭の中でトッポ2箱と一夏お手製のパンを天秤にかけ、貴重性から一夏のお手製パンの方に大きく傾いた為机の中に貯蔵しておいたトッポ2箱を本音に渡した。

トッポ2箱を受け取った本音はパンをほんの少し千切り相川に手渡した。

そして2人はパンにかぶりついた。

 

「お、美味しぃ~」

 

「お店に並んでても可笑しくない程美味しぃ!」

 

一夏のパンに2人は幸せそうな表情を浮かべ、相川はトッポ2箱払って良かったと思いながら小さなパンの欠片を噛み締めながら食べた。




次回予告
朝、何時もと変わらず一夏と本音は一緒にクラスにやって来た。誰もが今日も平穏で和む一日の始まりだと思っていた。だが、突然それは破られた。

次回
レッドアラート‼ ~モッフ、そいつを拘束しろ!~

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