女性恐怖症の一夏君   作:のんのんびより

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22話

――カリカリ

 

医務室に備えられている机で書類を作成する伊田。そして

 

「……イッチー」

 

一夏が眠っているベッドの隣で心配そうな表情で椅子に座る本音が居た。

SHRは既に終了しており、1限目が始まる前であった。本音は時間いっぱいまで一夏の傍に居よう。そう思いジッと一夏の傍に居た。

すると

 

「…う、うぅん」

 

そう声が聞こえ本音は驚いた表情を浮かべ一夏の顔を覗き込む。

ゆっくりと瞼が開かれ、ぼぉー。とした表情を浮かべる一夏。

 

「イッチー、大丈夫ぅ?」

 

そう声が横から聞こえ一夏はゆっくりと本音の方に顔を向け頷く。

 

「う、うん。だ、大丈夫」

 

そう言いながら一夏はゆっくりと上体を起こす。

2人の傍に伊田も問診表がはさまれたクリップボードを持ってやって来た。

 

「起きたみたいだね。それじゃあ問診をするよ」

 

「は、はい」

 

伊田の問いに一夏は一つずつ答える。暫くして伊田は書き終えた問診表を見て総合的な結果を診断した。

 

「うん、特に異常は無いかな。もう教室には戻ってもいいけど、体に違和感とか不調を感じたらすぐに医務室に来るんだよ」

 

「は、はい。失礼します」

 

そう言い一夏は一礼して医務室を出て行く。本音もその後に続こうとしたが

 

「あ、君ちょっと」

 

そう伊田に呼び止められ本音は脚を止める。

 

「なにかぁ?」

 

「さっき一夏君には問題無いとは言ったんだけど、実は少し心配事があってね」

 

「な、何でしょうか?」

 

「うぅ~ん、確証がある訳じゃないんだけど、もしかたら症状が少しだけ戻っている可能性があるんだ」

 

「えっ!? そ、それじゃあ……」

 

伊田の説明に本音は顔色を悪くする。

本音はもしかしたら相川達と会っただけで発作が起きるんじゃないのかと思ったのだ。その顔色になった理由を本音は震える唇で伊田に問う。

 

「いやいや、君が想像している様な状態にはならないよ。ただ、もしかしたら入学してきたくらいの状態になってるかもしれない」

 

そう言われ本音は少しだけ安堵したような表情を浮かべる。

 

「それで君にお願いしたいのは、クラスの皆に今まで通り接してあげて欲しいと言って貰いたいんだ」

 

「どう言う事ですか?」

 

「今回の騒動で恐らく皆は一夏君に気を遣ってそっとしておこうとすると思うんだ。そうなると一夏君は迷惑を掛けてしまって距離を置かれていると思い込むと思うんだ。だから今まで通り接してあげた方が彼にとって有難いんだ。無論症状が起きない程度にね」

 

伊田の説明に本音は分かりました!と元気良く返事をして廊下で待っているであろう一夏の元に向かう。

そして廊下でモッフ(8号と5号)と一緒に待っていた一夏と共に教室へと向かった。

 

 

そして教室前に着いた2人と2体。一夏はビクビクしながらも教室に入ろうと取っ手に手を掛けるもすぐに手を引っ込めてしまう。

その姿に本音は、そっと一夏の手を握りしめる。

 

「大丈夫だよ、イッチー。私も付いてるから」

 

そう言い一夏を安心させる本音。一夏はう、うん。と頷きそっと取っ手に手を取って開けて中へと入る。

中に入ると一斉に生徒達は開けた一夏に注目する。その視線に一夏はビクッとしながらも、自分の席に座る。そして視線を遮るように本を開け顔を隠した。

一夏が中に入ったと同時に本音も中に入り自分の席に着き辺りを見渡す。

生徒達の多くは一夏が戻ってきた事に嬉しそうではあるが、今朝の事もあってかどう接したらいいのか分からず困った顔を浮かべていた。

 

本音は伊田の頼まれていた事をどうやって実行しようかと悩んでいると

 

「ねぇ、本音ちょっといい?」

 

と相川と鷹月が困った顔を浮かべながらやって来た。

 

「どうしたのぉ?」

 

「うん。織斑君なんだけど、大丈夫だったの?」

 

「本人に聞きたいけど、今朝の事もあるし聞けなくてさ。本音だったら何か聞いてるかなと思って」

 

2人の問いに本音はそっかぁ。と言いながら、医務室の事を2人に話した。それと伊田に頼まれた事も2人にも話した。

 

「―――そっか。症状が戻ってるかもしれないんだ」

 

「うん。でも、さっきも言った通り普段通りに接した方がイッチーの為だって先生が言ってた」

 

「それで織斑君の症状は改善されるの?」

 

「分かんない。でも、距離を置いたらイッチーが一人ぼっちになったと勘違いするかもしれないって先生が…」

 

本音の言葉に2人はそっかぁ。と悲痛そうな顔を浮かべる。そして2人は何か決心したのか顔付を変える。

 

「それじゃあ私達、皆にさっきの事伝えに周ってくるね」

 

「え? いいの?」

 

「当ったり前じゃん。皆も織斑君の事心配してるからね。早いとここのことを伝えに行った方が良いし、織斑君の事も放っておけないからね」

 

そう言って相川と鷹月は他の生徒達の元に向かっていく。2人に本音は心の中でありがとう。と感謝の気持ちを浮かべた。

 

 

 

 

その頃千冬はと言うと、学園の地下に設けられている取調室に居た。

暫く椅子に座りながら待っていると、背後にあった扉が開き2人の人物が入って来た。

 

「来たな、デュノア」

 

入って来たのは、腕に手錠がはめられたデュノアと銃をぶら下げた警備員だった。

警備員はデュノアを千冬の向かいの席に座らせると、そのまま千冬の背後の扉横に立つ。

千冬は机の引き出しから紙束を取り出し机の上に置く。

 

「さてデュノア。単刀直入に聞くぞ。お前が男装で此処に来た理由は織斑のデータを入手する為。そうだな?」

 

「……その、はい」

 

デュノアはもはやどう言い訳をしようと、既に自分がやろうとした事はバレていると考え正直に答えた。

実父と継母が営むデュノア社の命令で男装したこと、一夏からデータを入手することなどデュノアはすべて千冬に告白した。

 

「―――以上が、僕が指示された事です」

 

「分かった。では処分が決定するまでは貴様は独居房に入れられる。取り調べは以上で「あ、あの!」なんだ?」

 

「ど、どうして僕が女だって分かったんですか?」

 

デュノアは教室で告げられた事がずっと引っ掛かっていた。教室で取調室で話すと言ってたためデュノアはその訳を聞くべく声を上げたのだ。

 

「あぁ、取調室で教えてやると言ってたな」

 

千冬はそう言いながら立ち上がって部屋の隅に置かれているプラスチック製のコンテナ箱から段ボール箱を取り出した。

 

「昨日の夕方。お前宛ての荷物が届いてな」

 

「荷物、ですか?」

 

「あぁ。どうやら送り先とは別の場所に行っていたらしく遅れて到着したみたいでな。で、保安上の理由で荷物にX線検査を掛けたら、変なものが映っていてな」

 

そう言い机の引き出しから一枚の紙を取り出した。それはX線を通したであろう荷物の画像であった。

 

「荷物表には服と書いてあり、中身も服だった。だが、この画像に写っている服は何だ?」

 

そう言い画像に写っている服に指をさす。その服はコスプレ用なのかフリフリの付いた可愛らしい服であった。

 

「っ!? えっと、あの…」

 

「まぁ、当初は女装と言う趣味だと思っていた。が、念のため開けたんだ」

 

「えっ!? 開けたんですか!?」

 

「開けるに決まっているだろ。そしたら、これが出てきた」

 

そう言い段ボール箱から引っ張り出すように取り出したのは女性もののブラジャーであった。

 

「流石に女装するのにこれまで必要か?という事で後日お前に問おうとしたら、今朝の事件が起きたという訳だ」

 

以上だ。と言い千冬は説明を終えた。

 

デュノアはガックシと首を落とし、あの時量を減らしておけば良かった。と準備時の事を今更になって後悔するのであった。

そんなデュノアの姿を見つめながら千冬は別の事を思っていた。

 

(まぁ、お前が女だという事は入学以前から束から聞いていたし、フモッフ達からの報告でもすぐにばれていたからな)

 

そう思いながら後ろに居た警備員に独居房に戻すように指示する千冬であった。




次回予告
今朝の事件で迷惑を掛けたと思い落ち込む一夏に、本音や相川達が元気づけるべく話しかけ続けた。
事情を知った生徒達も一夏を元気づけるべくそれぞれの出来ることをする。

次回
一夏君元気づけよう作戦始動! ~皆、お菓子の貯蔵は十分あるか?~

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