女性恐怖症の一夏君   作:のんびり日和

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29話

一回戦目を終えた一夏と本音はピットに戻ってくると、ISから降りそれぞれベンチへと座り一息つく。

 

「はふぅ~~~。無事に勝ててよかったねぇ」

 

「は、はい。次の試合までちょっと休憩しましょうか」

 

そう言い一夏はベンチの背もたれにもたれ掛かり、本音もそうだねぇ。と返し同じく背もたれにぐでぇと凭れる。

すると何処からともなく《キュ~~~》と音が鳴り響き、一夏はそっと本音の方に顔を向けるとえへへ。と照れた表情を見せる本音。

 

「お腹空いて鳴っちゃったぁ」

 

「そ、そうですか。えっと、なにかあったかな」

 

そう言いながら一夏は持ってきた鞄の中をガサガサと漁っていると、ある物を見つけ引っ張り出す。

 

「本音さん、これ、食べますか?」

 

そう言って一夏が差し出したのはポッキーの箱だった。

 

「おぉ、食べるぅ!」

 

そう言われ一夏はポッキーの封を開け、袋を差し出すと本音は袋からお菓子を取り出しポリポリと食べ始めた。

 

「(´~`)モグモグ」

 

「モヒ( ・ω・c)モヒ」

 

お菓子を食べながらベンチで暫く寛いでいた二人。するとピットに付いている端末に通信が入る。

本音はベンチから立ち上がり端末のスイッチを押すとそこには千冬が映っていた。

 

「あ、織斑先生。どうかしたんですかぁ?」

 

『うむ、2つほど用事があってな。まずは初戦突破おめでとう2人とも。だがまだ初戦だ、気を抜くんじゃないぞ』

 

「は、はい。頑張ります」

 

千冬からの応援の言葉に一夏は照れた表情で答え、本音ははぁ~い。とのほほんとした表情で返す。

 

『さて、もう一つの用事なんだが次の対戦相手が決まった』

 

「誰なんですかぁ?」

 

『鳳とオルコットだ チッ、一夏と戦う前に負ければよかったのに

 

「? お、織斑先生、何か言いましたか?」

 

『いや、何も言ってないぞ。兎に角二人共頑張るんだぞ』

 

「は、はい頑張ります」

 

「やってやりまぁす!」

 

2人の返事を聞いた千冬はうむと頷いて通信を切った。

 

「それじゃあ準備しよっかぁ」

 

「は、はい」

 

そう言い二人は次の試合の準備に取り掛かった。本音は先程の試合で消費したアサルトライフルの弾の補充と武器の選定を始めた。

 

(うぅ~ん、セッシ―とリンリンが相手だったらライフルの弾を多めに持っておいた方がいいかなぁ?)

 

そう思いながら本音はライフルの弾を多めに拡張領域の中に仕舞って行く。一方の一夏はと言うと、一回戦前同様にタブレットを見ながらアイラと相談をしていた。

 

〈さ、さっきとは違って武装制限が解除されるけど、初手武器はどうしよう?〉

 

〈そうね。さっきと同じライフルでもいいけど、相手は遠距離特化(セシリア)近接特化()の機体。前には本音が出るから彼女の相手は必然的に近接特化と戦う事になるわ。そうなるとアンタは遠距離特化と戦う事になるわね〉

 

〈えっと、それじゃあどうするの?〉

 

〈前みたいに全サブアームを展開して攻撃する手もあるけど、今回はタッグマッチ戦。遠距離に気を取られていると、近接特化が急にこっちに来てに間合いを詰められる可能性があるわ。だからどっちも近付かれない圧倒的存在感のある武器を使いましょう〉

 

〈存在感のある武器?〉

 

アイラの言葉に一夏はコテンと首を傾げた。

それから一夏はアイラの作戦を聞きながら本音と共に準備を進めるのであった。

 

『ではこれより2回戦目を始めたいと思います。選手はアリーナに出て下さい』

 

アナウンスが流れると、一夏と本音はそれぞれISに乗り込みアリーナへと出る。アリーナに出ると同時に向かいのピットからセシリアと鈴が現れた。

 

「一夏ぁ! なんであたしとじゃなくてソイツとタッグを組んでるのよ!」

 

「ちょっと鈴さん! そんな怒鳴ったら一夏さんが怖がるじゃありませんか!」

 

出てきたと同時に一夏に怒鳴り出す鈴に隣のセシリアがそれを咎める。

 

「五月蠅いわね! 今一夏と話してんだから邪魔しないでちょうだい!」

 

「それは此方のセリフですわ! わたくしも一夏さんとお話したいと思ってるのですのよ!」

 

が、互いに口論を始める二人。本音はポカーンと見つめ、一夏は2人は訓練人形としか見えてない上に集音マイクが拾った二人の口論はアイラが聞こえない様にしている為、何をしているのかさっぱり分からない状態であった。

因みに管制室に居た千冬は

 

「……やっぱり反省房にぶち込んでおくべきだったか」

 

と二人をモニター越しに睨みつける。

 

『ではこれより2回戦第3試合を始めます。3…2…1…試合開始!』

 

「おりゃーー!」

 

試合開始の合図と共に鈴は双天牙月を構え突っ込んでくる。本音はそれを迎え撃つようにライフルを構え接近させまいと引き金を引く。

 

「また突撃ですの!? もう少し作戦というのを考えて下さいまし! ……まぁ、いいですわ。さて、私は一夏さんと…え?」

 

突撃していった鈴にセシリアは呆れた視線を向けながら上空へと上がり、一夏と戦おうと顔を向けた瞬間その顔が固まる。セシリアの視線の先には、大型のガトリング砲『アヴァロン』を構えた一夏が居たからだ。

 

〈さぁ一夏、派手にブチかましなさい!〉

 

「うん!」

 

アイラの掛け声と共に一夏は引き金を引く。けたたましい音と共に迫りくる弾丸の雨にセシリアはすぐさま回避行動に移る。

激しい弾幕にセシリアはもはや避ける事しか出来ず、鈴の援護すらできない状況であった。

 

「ちょっとセシリア‼ 援護はどうしたのよ!」

 

「この状況でどう援護しろというのですの!」

 

そう怒鳴り合う二人。

その一方一夏達の方はと言うと

 

「ほ、本音さん大丈夫ですか?」

 

『こっちは大丈夫だよぉ! それよりそれ結構撃ってるけど、弾大丈夫なのぉ?』

 

「えっと…」

 

〈アヴァロンの弾が無くなっても武器はまだ結構あるから問題無いわ〉

 

〈うん、分かった〉「だ、大丈夫です。アヴァロンが無くなっても他の武器がありますから」

 

『そっかぁ。おっと、リンリンが迫って来たから切るね』

 

そう言って本音との通信が切れると、一夏は残弾の少ないアヴァロンの引き金を引き続けた。

 

迫って来た鈴を対処するため、本音は変わらずライフルで引き撃ちを繰り返していた。

本音の引き撃ちに苛立ちを募らせる鈴。遂にその我慢が限界に達したのか、引き撃ちをしている本音に向かって

 

「おりゃああぁああ!!」

 

「うえぇっ!? 投げたぁ!?」

 

自身が持っていた双天牙月の一つを投げつけたのだ。更に何時の間にか展開していた龍砲の出す空気圧を使い、普通に投げるよりも更に速いスピードで本音へと迫る。

本音は突然の事に思わず撃つのを止め回避していると、一気に接近してきた鈴に気付き後方に下がろうとした瞬間

 

「どりゃあぁぁ!!」

 

もう一方の双天牙月で本音の持っていたライフルを破壊したのだ。本音は破壊されたライフルをすぐに放り捨てて後方に下がる。

だがそれをさせまいと斬りかかってくる鈴。遠くに離れようとしてもブースターを吹かしながら接近してくる鈴。

近接特化型で専用機の甲龍と、訓練用機で更に射撃型にしている為機動性が落ちているラファールとでは性能には差が大きく出る。本音は出来るだけその差を操縦技術で補おうとしたが、流石に限界があった。

 

(ど、どうしよぉ。ライフルは壊されちゃったし、この距離だとグレネードランチャーは使えない。かといってナイフで戦おうにも向こうは近接特化だからこっちが負けちゃう)

 

本音は避けながらどうしようか考えるが、そんな猶予は余り無かった。

 

「ふん、ライフルが無くなってどうしようも無いって感じね。このまま墜ちなさい!」

 

そう叫びながら斬りかかってくる鈴。

 

〈---一夏、彼女がヤバいわよ〉

 

「えっ!?」

 

セシリアに残ったアヴァロンの弾を撃ち、弾切れと同時にライフルを構えセシリアに向け攻撃していた一夏。突然アイラからの警告に一夏は驚き声を上げる。そしてモニターに鈴に迫られている本音の映像が映し出された。

 

〈ど、どうしよう。こっちまだ倒せてないよ、このままじゃ!〉

 

〈落ち着きなさい。何もアンタがアイツ()を倒さなくても良いのよ。私がサブアームで本音に武器を投げ渡すから、アンタは気を逸らさせなさい。このまま投げ渡そうとしても、叩き落されるわ〉

 

〈わ、分かった!〉

 

アイラの作戦に一夏はすぐさま実行に移すべく、両手に持ったMMP-80に脚部のサブアームに装備したLG5M-BD アサルトカービンをそれぞれセシリアと鈴に向け引き金を引く。

セシリアは先程よりも弾幕が薄くなったから反撃をしてくるが、一夏はそれを避けながらアイラが本音に武器を投げ渡しやすい位置へと移動する。

 

一方鈴は突然の一夏の攻撃にチッ!と舌打ちを鳴らしながら回避する。その隙をついて本音は直ぐに距離をとってグレネードランチャーを取り出そうと考えていると

 

「ほ、本音さん。受け取って!」

 

そう叫ぶ声が聞こえ、その方に顔を向けると一夏がセシリアの攻撃を避けながら自分の元に近付いて来て肩のサブアームが持っていた武器を投げ渡してきた。

本音はそれを受け取るべく腕を伸ばす。

 

「なっ!? させるもんですかぁ!」

 

本音に武器を投げ渡したのを目撃した鈴は被弾を気にせずに本音に向かって間合いを詰める。

だがその前に本音の方が先に武器を受け取り、素早く鈴の方へと銃口を向ける。

鈴はその銃の形を見てライフルだと想像する。

 

(ライフルなら数発受けてもまだ大丈夫。さっさと墜ちてもらう!)

 

そう思いながら双天牙月を振り上げる鈴。だがもしこの時、鈴が銃器特に一夏が乗っているバレットホークの搭載武器をしっかりと把握していれば勝てる可能性はまだ有ったかもしれない。

本音は引き金を引くと銃口から火が吹き上がる。そして()()()()()が鈴に向かって飛び散った。

そう、本音がバレットホークから受け取ったのは『コカトリス』と呼ばれるソードオフショットガンであった。

近距離では絶大な威力を有しているショットガンを、まさに間近それも真正面から受ければ、どうなるか。答えは決まっている

 

『甲龍、SEエンプティ―!』

 

「ウソでしょ!?」

 

ライフル数発は持ち堪えても、近距離からのショットガンの攻撃には耐えられず甲龍はSE切れとなり敗北となった。

 

「なっ!? 何をしてますの鈴さんは!」

 

〈よし、近接特化は墜ちたわ。あとはあそこで狼狽えてる奴だけよ。ありったけの弾丸をお見舞いしてやりなさい!〉

 

〈うん!〉

 

鈴が堕ちて動揺しているセシリアに一夏は直ぐに残ったサブアームを展開、そして武器を持たせ引き金を引く。

 

「イッチー、加勢するよぉ!」

 

そう言いながら本音も合流してグレネードランチャーを装備し、セシリアに向け引き金を引く。

 

「あぁもぉう! これでは避けようがっきゃぁあぁ!?」

 

弾幕の中避けるセシリア。無論本音のグレネードランチャーの弾も避けていたが、運悪く避けたグレネード弾が一夏の放った弾丸に命中。グレネード弾の爆風にセシリアは飲み込まれ、体勢を崩してしまいそのまま弾幕の雨あられを受けてしまった。結果は言わずもがな

 

『ブルーティアーズ、SEエンプティー! 勝者織斑、布仏ペア!』

 

そうアナウンスが流れると『わぁーーー!!』と盛大な歓声と拍手がわき上がる。本音は笑顔を浮かべ、一夏は照れた表情を浮かべながらピットへと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに、鈴とセシリアがピットへと戻ってくると

 

「戻って来たか」

 

と、仁王立ちで背後にモッフ達を引き連れた千冬が立っていた。二人は一体何故千冬とモッフ達が居るのか訳が分からず唖然としていると

 

「鳳、織斑に対して怒鳴った罰として反省房行きだ。あぁ、オルコットも連帯責任として反省房行きだ」

 

「「はぁっ!?」」

 

千冬から告げられたことに2人は驚き固まっている間にモッフ達に麻袋を顔に被せられ、更に体をロープで簀巻き状で雁字搦めにさせられそのまま反省房まで担ぎ運ばれていった。




次回予告
2回戦目も何とか勝てた一夏と本音。
続いての対戦相手は箒とラウラであった。因縁(?)の対決、勝敗はいかに?

次回
タッグマッチトーナメント戦第3回戦
「イッチー、疲れてない?(o・ω・o)?」
「は、はい。大丈夫です(´Д`) =3 ハゥー」











シャル「ぼ、僕の出番は?」
主「え、無いよ。(ヾノ・∀・`)ナイナイ」

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