女性恐怖症の一夏君   作:のんびり日和

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34話

タッグマッチ戦から数日が経ったある日。生徒達は次の行事に早く来ないかと心待ちにしていた。

それは

 

「来週の臨海学校楽しみだねぇ、イッチー」

 

「は、はい」

 

そう1年生初めての学園外の活動、臨海学校である。IS学園内にあるアリーナのような平地ではなく、自然に出来た起伏や海や山からくる風など予想し辛い状況での稼働試験の為、学園が指定している旅館に泊まって行う行事である。

生徒達は修学旅行の気分で大変賑わっているのだ。

 

「最初の一日目は自由行動らしいから、近くの浜辺で思いっきり遊ぶぞぉ!」

 

「ビーチボールとか遊ぶ物持って行かないとね」

 

「あと温泉とか料理も楽しみだなぁ」

 

それぞれ旅館に着いたらやろうとしている事を談笑し合っている中、本音も一夏と着いたら何をするのか談笑し合っていた。

 

「ねぇねぇイッチー、旅館に着いたら何するぅ?」

 

「えっと、僕、釣りがしたいです」

 

「ほへぇ、釣り? どうして釣りなのぉ?」

 

「……僕、浜で遊べないんです」

 

「えぇ~、どうしてぇ? もしかして泳げないから?」

 

「い、いえ。そうじゃ、ないんです」

 

言いづらそうな表情を浮かべる一夏。本音は一夏が言いづらそうになるのは病気の事が関係していると思い、一体なんだろうと考えこむ。するとモッフ<41号>がプラカードを見せてくる。

 

【本音氏。川や海で遊ぶ場合、何に着替える?】

 

「え? そりゃあ水着…あっ!」

 

『あぁっ!?』

 

本音達の会話を聞いていた生徒達も、本音の呟きに声を揃えあげる。

 

「な、なるほど。確かに私達水着に着替えるよね」

 

「確かに。そうなると織斑君の病気の事を考えたら、確かに私達と一緒に遊べないのは納得できる」

 

「そうだね。でも、そうなると織斑君一人で釣りは何だか、ねぇ?」

 

「うん。あの人達がねぇ」

 

そう呟くと全員の頭に問題児5人の顔が浮かび上がる。

 

「そう言えばあの4人いないわね」

 

「あの4人だったらまた織斑先生にお説教を受けてるわよ」

 

「今度は何をしたのよ」

 

「何でも織斑君の部屋の前で口論していた所をモッフさん達に鎮圧されて、織斑先生に引き渡されたらしいわよ」

 

「はぁ~。毎度思うけど、あの人達一体何がしたいんだろ?」

 

「さぁ? 反省って言う言葉が頭に無いんじゃない?」

 

そう呟くと多くの生徒達は有得るかもと、呆れた様な表情を浮かべる。

 

「あの5人については置いておいて、どうやって織斑君のボッチ釣りを回避するかよ」

 

「そうだよね。護衛にモッフさん達も就くんですよね?」

 

【勿論だ。我々は何時如何なる場所でも一夏様のお傍に居る】

 

「それじゃあ、どうしようかな?」

 

「此処はさぁ、シンプルにいかない?」

 

「シンプルって、もしかして…」

 

「そっ! 私達も釣りに行く!」

 

一人の生徒がそう提案すると、おぉ~~!、その手があったか。と声が上がる。そんな中、一夏は困惑した表情を浮かべていた。

 

「あ、あの、そんないいですよ。皆さん、海で泳ぎ遊びたいと思いますし。僕は別に一人で釣りをしてても大丈夫ですから」

 

「いやいや。一人で釣りは流石に寂しいよ」

 

「うんうん。みんなで楽しんでこそ、臨海学校だよ!」

 

生徒達はそう言い一夏を一人ボッチにさせないためにどうするか計画を立て始めようとした所チャイムが鳴り、生徒達は慌てて席へと付いて行く。

チャイムが鳴り止むと同時に千冬、そして真耶が教室内へと入って来た。

 

「諸君、おはよう」

 

『おはようございます!』

 

「お、おはよう、ございます」

 

「えぇ~と、反省房にぶち込まれた4人以外全員いるな? よしSHRを始める。全員知っての通り、来週の月曜から2泊3日の臨海学校がある。最初の1日目は自由行動のため海で遊んでも構わん。但し教員の目の届く範囲に入ろよ。次に「あの織斑先生」ん、なんだ?」

 

「1日目の自由行動なんですけど、海で釣りをしてもいいですか?」

 

「釣りだと?」

 

「はい!」

 

千冬は生徒の質問に対し、怪訝そうな顔を浮かべ暫し真剣な表情を浮かべる。その姿に生徒達、そして一夏はもしかして釣りは駄目なのかと不安そうな表情を浮かべ始めた。

 

「岸川」

 

「は、はい」

 

「なんで釣りがしたいんだ?」

 

「えっと、織斑君の持病を考慮したからです。織斑君は持病が原因で水着になった私達と一緒に浜辺で遊べませんので、一人で遊ぶことになってしまいます。釣りだったらそれ用の服装でやる為、織斑君と一緒に遊べると思ったからです」

 

「なるほど」

 

質問してきた生徒から理由を聞いた千冬。未だに真剣な表情を浮かべながらも、次に視線を向けたのは一夏であった。

 

「織斑」

 

「は、はい」

 

「先ほど言った通り遊ぶ場合は教員の目の届く場所でなければならない。その理由は万が一があった場合直ぐに対処できるようにする為だ。それは分かるな?」

 

「はい」

 

「そして釣りをする場合は、砂浜から少し離れた防波堤しかない。其処だと教員の目が届かない。その為釣りは原則禁止にしている」

 

そう千冬が告げると、1組の生徒達は殆んどが落胆した表情を浮かべ、一夏も落ち込んだ表情を浮かべていた。

 

「だが、織斑にはフモッフ達が護衛に付く為教員が居なくても有事の際は対処できると判断できるため、釣りを許可する」

 

『へ?』

 

「ほへ?」

 

突然二ッと笑みを浮かべ許可すると発言する千冬。あまりの突然の事に生徒達は( ゚д゚)ポカーンと言った表情を浮かべ、一夏も(?´・ω・`)と言った表情を浮かべていた。

 

「えっと、織斑先生。OK、なんですか?」

 

「あぁ、許可する。釣りの道具は旅館でレンタルがある。それとちゃんと救命胴衣を着て釣りをするんだぞ」

 

そう言われ、生徒達は漸く許可されたと理解するとヨシッ!と喜ぶ。一夏もホッと一安心した表情を浮かべていた。

 

それからSHRは終わり、千冬達が出て行った後生徒達は当日のスケジュールを計画し始めるのであった。

教室から出て廊下を歩く千冬と真耶。真耶は先程の教室での出来事を千冬に話を振る。

 

「織斑先生、SHRでの事なんですが」

 

「ん、何だ?」

 

「釣りの件です。あれ、本当に良いですか? 勝手に許可してしまって」

 

「あぁ、あれか。あれならもう学園長から許可は貰ってある」

 

「えぇ!? い、何時の間に!?」

 

さも当然と言った表情で千冬は学園長から許可は貰ってあると告げられ、真耶は驚愕の表情を浮かべた。そんな真耶に千冬は呆れた表情を浮かべる。

 

「当たり前だろ。織斑の症状の事を考えれば、浜辺では遊べん。そうなったら浜辺が見えず、遊べる場所と言えば少し離れた箇所にある防波堤で釣りしか無いだろ」

 

「た、確かにそうですね」

 

「生徒一人一人に親身になって教えて行くなら、このくらいしっかり調べておかんといかんぞ」

 

そう言い千冬は職員室へと歩を進め、真耶も後に続く。

それから時間が経ち13時頃。

多くの生徒達が教室から出て行き、寮へと急いで帰って行く。その訳は臨海学校で着る水着や遊具を買いに行く為、学園からほど近い場所にあるショッピングモール『レゾナンス』へと向かう為だ。

1組の教室にいた一夏は鞄に教科書などを仕舞い、背負って教室から出て行こうとすると

 

「ねぇねぇイッチー、ちょっといいぃ?」

 

「は、はい。何でしょうか?」

 

隣の本音が一夏を呼び止めた。

 

「イッチーこの後予定ってあるぅ?」

 

「えっと、レゾナンスで買い物に行く予定ですけど…」

 

「何買いに行くのぉ?」

 

「えっと、釣りの道具を買いに」

 

「釣りの道具なら、旅館でレンタルできるって織斑先生言ってたよぉ」

 

「その、自前の道具が欲しいなぁ、と思って。川釣り用の道具は家にあるんですけど、海釣り用は無くて」

 

「そっかぁ」

 

「あの、それで本音さん、ご用は?」

 

「おっとぉ、忘れてた。実は私も買い物に行こうと思っててねぇ。で、イッチーがお暇だったら一緒に買い物に行かないかなぁ。と思ってぇ」

 

「そう、だったんですか。あの、僕は、別に構いませんよ」

 

「本当ぉ? それじゃあ一緒に行こ」

 

そう誘われ一夏はコクリと頷き二人は談笑を交えながら教室から出て行った。

 

 

 

 

 

「「「「……」」」」

 

その様子をジッと見つめるストーカー4人がこっそり見ていた事に気付かずに。

 

寮へと帰って来た一夏は鞄を降ろし、事前に作っておいたお昼を手早く済ませた。それから部屋で本音が迎えに来るのを待っていると、ノックする音が鳴り響く。そして

 

『イッチー、お買い物行こぉ!』

 

と声が響き、一夏はスマホと財布、部屋の鍵を持って廊下へと出て行く。

 

「お待たせぇ」

 

「いえ、そんなに待ってないです」

 

そう言っていると、一夏の隣の警備室の扉が開く音が鳴り一夏と本音はモッフ達が来たと思い顔を向けると、其処にいたのは

 

「「ふもっふ!」」

 

と頭に【SP】と書かれた帽子をかぶり、服装も何時ものタクティカルベストではなく黒色のスーツでサングラスをかけたモッフ2体であった。

 

「え、えっと、モッフさん?」

 

「ふも」

 

【あの格好ですと街中では少々目立ちますので、SP装備に変更してまいりました。(`・ω・´)ゞ】

 

「そ、そうだったんですか。それじゃあ本音さん、出発しましょうか」

 

「うん!」

 

本音と一夏はSPモッフ2体と共にレゾナンスへと向け出発した。2人と2体が出発して暫くして、警備室からフモッフと十数体のモッフ達が出てくると、そのまま彼等も何処かに向け出発していった。

 

商業ショッピングモール『レゾナンス』

レゾナンスには様々な店が並んでおり、服や日用品などを売っている店からレジャー用品、更には特別な許可を持った人しか入れない銃器店などが並んでいる。

無論そんなショッピングモールには大勢の人がいる為、一夏にとって危険な場所ではあった。だが、今はモッフ達が護衛として一緒に来ている為、若干安心した表情でレゾナンスへと来ていた。

が、モール内には人々が行きかっており、一夏はモッフ達と離れたりしないか不安になっていると、本音が一夏の不安そうな表情を見て、一瞬首を傾げた後すぐに何かを思いついたのかそっと一夏に手を差し出す。

 

「ほ、本音さん?」

 

「手を繋いで行ったら逸れないし、手繋いで行こ」

 

「は、はい」

 

一夏は照れた表情を浮かべつつ、おずおずと手を差し出し、本音と手を繋いでモールの中を歩き始めた。

モールの中を本音と共に進み、目的地へと向かっていると本音が声を掛ける。

 

「あ、私の目的地とうちゃ~く」

 

「此処、ですか?」

 

本音の目的地、それはアニメやゲームなどで登場した服や装飾品等を手掛け販売している店、言わばコスプレ衣装販売店である。

 

「あの、此処で何を?」

 

「えへへへ、実は前に此処の前を通った時にすっごく気になる水着があってね。それを買いに来たのだぁ」

 

「は、はぁ」

 

「私お店の中に入るけど、イッチーはどうするぅ?」

 

「えっと、僕も入ります」

 

「よぉし、それじゃあ行こぉ!」

 

そう言いお店の中へと入って行く2人と2体。その姿を遠目で見ていた3人がいた。柱の影から上からセシリア、シャルロット、鈴が覗いていた。

 

「……ねぇ」

 

「……なんですの?」

 

「…なんだい?」

 

「あれ、手を繋いでない?」

 

「…えぇ、繋いでますの」

 

「…繋いでるね」

 

「そっかぁ、一夏は私とじゃなくて、別の女と買い物に行く上に手を繋いでるんだぁ。……よし、殺そう!」

 

突如狂気じみた笑みを浮かべ右手を部分展開をする鈴。その光景に通り過ぎていく通行人たちはギョッと驚いた表情を浮かべる。

 

「ふっふふふふ、待ってなさい一夏。今から「させると思っているのか、この馬鹿者が」えっ? ほぎゃっ!?」

 

「り、鈴さん!?」

 

「うぇぇえぇ!? って」

 

「「お、織斑先生ぃ!?」」

 

前のめりに蹴り倒された鈴の背後に居たのは我らが最強で超絶ブラコンこと、織斑先生であった。

 

「全く、お前達は反省と言う言葉を頭にねじ込まれんと分からんのか? ……それより凰」

 

2人に鋭い視線を向ける千冬。次に千冬は鈴の方に更に鋭い視線を向ける。

 

「ひゃ、ひゃい」ガクブル

 

「貴様、また規則を破るとはな。反省房ではなく独居房にぶち込んだ方がよさそうだな。いや、決定だ」

 

「ま、待って下さい! これには訳が「言い訳無用。天誅!」ゴヘッ!??!!!」

 

言い訳を言おうとした鈴の頭頂部に向かって千冬は毎度おなじみの出席簿を振り下ろし、鈴の意識を刈り取る。

 

「お前達は今のところ規則を破っている訳では無い為、見逃す」

 

「「ホッ」」

 

「但し、私達教師と一緒に買い物だがな」

 

「「えぇ!?」」

 

「それとこれを付けさせてもらうぞ」

 

そう言い千冬が取り出したのは、警察が犯人を護送する際に使っている腰縄であった。

 

「お前達が勝手にあっちこっち行っては(私が)困るからな」

 

そう言い手早く2人に腰縄をする千冬。

 

「で、ですが織斑先生…」

 

「流石にこれは…」

 

「一応言っておくが、お前達の方はまだ少しマシな方だぞ」

 

そう言われシャルロットとセシリアはえっ?と呆けた表情を浮かべ、千冬は指で自身の背後を指す。2人は千冬の背後を見ると、其処には

 

自分達と同じく腰縄をされ、更には手錠までされた箒とラウラが其処に居た。因みに2人の腰縄のロープを持っているのはヨヨヨッと涙を流す真耶であった。

 

箒とラウラ、この二人だけど何故腰縄のみならず手錠までされているのか。その訳は至って簡単。

箒は一夏と本音を見つけたら辺りを気にせず暴れる恐れがあり、ラウラは軍人故ストーキングが得意なため先に拘束したのだ。

 

「さて、行くぞ」

 

そう言い千冬はセシリアとシャルロットの腰紐を持って歩きだそうとする。

 

「で、でも織斑先生。一夏さんと布仏さん達だけにするのは…」

 

「そ、そうです。あの護衛の着ぐるみも2体しかいませんし…」

 

「……だから?」

 

「だから「お前達の護衛など不要だ。あの2体だけじゃなく精鋭を引き連れたフモッフが既に護衛に付いている」え? ど、何処に?」

 

「お前達が気にする事ではない。ほら行くぞ」

 

そう言い紐を引っ張って2人を引き摺り、鈴は首根っこを掴んで引き摺ってその場を離れていく。

さて、先ほど千冬が言ったフモッフ達だが、彼等が今何処に居るか。

彼等は現在、レゾナンスにある広大な駐車場の一角、大型トラック用の駐車場にある『ラビット運送』と書かれた大型の輸送トラックの中に居た。

コンテナの中にはハッキングしたのか、レゾナンス内にある監視カメラの映像が映ったモニター、更にそれを監視するモッフ数体。奥にはフモッフが遂次報告されてくる情報を整理し、的確な指示出しを行っていた。

そんな指揮所の奥にもう一つ隔てて作られた部屋があり、其処には万が一一夏の身に危険が迫っている場合に対処するための救助部隊、通称『ラビットフォース』と呼ばれる精鋭部隊が居た。

他のモッフ達とは違い性能を一段階上げた力を有しており、主に一夏が買い物に出掛けたり旅行に行く際にフモッフの指揮の元出動する。

 

その頃一夏と本音達はと言うと、目的の物を買い終え店から出て来た所であった。

 

「良かったぁ、水着がまだ置いてあって」

 

「そうですね。でも、それって本当に、水着なんですよね?」

 

「うん、水着だよぉ」

 

本音が買った水着。そう、原作を知っている人ならご存知のあの着ぐるみの様な水着なのである。一夏自身も本当にそれが水着なのだろうかと疑問に思い暫し首を傾げ続けるのであった。

 

それから一夏達は釣り用具専門店へと足を運ぶ。

店に到着し中へと入ると、竿やリールがショーケースに飾られ、壁には様々な魚拓が並べられていた。

 

「うわぁ~、凄いねぇ」

 

「は、はい。それじゃあ、えっと…」

 

店内の光景に驚きつつも店の奥へと進む。すると竿を手入れしている一人の年配の男性を見つけ声を掛ける。

 

「あ、あの、すいません」

 

「ん? あぁ、いらっしゃい。何が欲しいんだい?」

 

「海釣り用の道具が欲しいんですが、初心者向けの一式ってありますか?」

 

「海釣り用のかい? そりゃあ勿論あるよ。色々あるけど、まず場所を聞いてもいいかい?」

 

「えっと防波堤で釣ります」

 

「防波堤ね。それだったら、サビキ釣りかチョイ投げ、つまり重りを付けた仕掛けをチョイッと投げて釣るタイプね。あとはルアー釣りとかもあるけど、初心者だったらサビキ釣りかチョイ投げが良いかな?」

 

「そう、ですね。それが良いです」

 

「分かった。それじゃあ、この一式が良い。ルアーもついてるしチョイ投げようの道具がついてる。ところで、そちらのお嬢ちゃんはどうするんだい?」

 

「私ですかぁ? 私も同じのをお願いしまぁす!」

 

「そうかい。それじゃあこの一式と、サビキ釣り用の仕掛けをおまけとしてつけてあげるよ」

 

「えぇ、良いんですか?」

 

「あぁ。ここの所釣りをするお客さんが来なくてね。だから若い子が釣りをするって聞くと、どうしてもサービスしたくてね」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとございまぁす!」

 

2人はサービスをしてくれた店主にそうお礼を言い、釣り道具一式分の代金を払ってお店を後にした。

 

 

 

 

 

一夏達が釣具店で海釣り用の道具を買い終えたその頃、千冬は真耶と5人を引き連れて買い物を続けていた。

セシリア達の手にはビニール袋が握られており、それぞれが臨海学校で使う水着などが入っている。

 

「さて、それぞれ必要な物は買えたな。それじゃあ『プルルプルル』ん? ちょっと待て」

 

そう言い千冬はポケットにしまっていたスマホを取り出し画面を見る。それを見た後千冬はスマホを仕舞い、セシリア達の腰ひもを解く。

 

「よし、買い物に付き合ってもらって感謝する。帰ってもいいぞ」

 

そう言われセシリア達は、やっと解放されたと心の中で安堵し荷物を持って学園へと戻って行った。

が、

 

「あの、千冬さん?」

 

「なんだ、凰?」

 

何故か鈴だけは腰ひもと手錠を掛けられたまま残されていたのだ。

 

「何であたしだけ残されたんでしょうか?」

 

「決まっているだろう。貴様は臨海学校前日までは独居房行きだからだ。真耶、済まんが学園に戻り次第独居房に放り込んでおいてくれ」

 

「分かりましたけど、先輩は?」

 

「私は買い忘れた物があったから、それを買いに行ってくる」

 

「そうですか。では、先に戻りますね。凰さん、行きますよ」

 

そう言い真耶は凰に若干怒った口調で促し学園へと戻って行く。一人残った千冬は歩を進め、ある店の前へと到着し中へと入って行く。

千冬が入った店、それは多種多様なカメラが置かれたカメラ店であった。

 

「いらっしゃいませ。どう言ったカメラをご要望で?」

 

「防水性と防塵性の優れたアウトドア用のカメラはあるか? 出来れば高性能で高画質の」

 

「はい、ございます」

 

そう言い店員はショーケースから一台の一眼レフカメラを千冬の前に出す。

 

「此方のカメラでしたら、過酷な環境であっても問題無く使え、更に高画質で一瞬のシャッターチャンスも逃さず撮れる優れものでございます」

 

「ふむ、これの撮った写真などはあるか?」

 

「勿論ございます」

 

そう言い店員はノートパソコンを取り出し画面を千冬の方へと向ける。

 

「片方は別のカメラ、もう片方がこちらのカメラで撮った写真になります」

 

「ほう、此処まで画質が違うのか」

 

「勿論でございます」

 

「よし、このカメラを買おう」

 

「ありがとうございます。お支払いはカードで宜しいですか?」

 

「あぁ。クレジットの一括で」

 

「……えっと、一括で?」

 

「そうだ。あぁ、ついでに拡大レンズと保存用のメモリカード、予備のバッテリーパックもくれ」

 

「ア、ハイ」

 

そう言い店員は、高額なカメラに加えてレンズにバッテリー、メモリーカードまで買う千冬に、大丈夫なのか心配となった。

そして合計金額は50万程となった。

 

「あの、本当に一括払いで宜しいのでしょうか?」

 

「あぁ、構わん」

 

そう言い千冬はクレジットカードを差し出し、会計を済ませ千冬は買ったカメラの入った袋を持って帰って行った。

 

その日の夜、千冬は買ってきたカメラを箱から取り出し拡大レンズを取り付けたりバッテリーを充電したりと準備をする。

 

「よし、これでいいな。さぁ、当日は一夏の釣り姿やら浴衣姿を思う存分撮るぞぉ!」

 

そう意気込む千冬であった。




次回予告
遂にやって来た臨海学校。旅館に到着し、一夏は早速海釣りへ。勿論1組の生徒達も一緒にだ。
さぁ、一夏君はどんな魚を釣るのだろうか?

次回
臨海学校~前編~

【坊ちゃまぁぁぁぁ。三ヾ(*´ω`)ノ゙ ウッヒョヒョ♪】

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