女性恐怖症の一夏君   作:のんびり日和

40 / 66
35話

臨海学校当日の日が昇り始めた頃、一人の生徒がコソコソと寮の廊下を隠れるように歩いていた。

 

「さて、マスターの部屋はもうすぐだな」

 

そう呟くコソコソと動くボーデヴィッヒ。それから暫くして彼女は一夏の部屋近くまで到着。其処から彼女は一夏の部屋を観察し始めた。

 

「ふむ、一見普通の扉そうに見えるが、警備はちゃんとしてあるみたいだな」

 

そう零すボーデヴィッヒ。一夏の部屋に入る為の扉付近には監視カメラが設置されている。更に、扉の方も一見普通の木製の扉に見えるも、実際はスチール製の扉で出来ていた。

 

「まぁ、そのくらいの警備は普通しておくものだな。だが、挿し込み式の錠前を使うとは不用心な」

 

ボーデヴィッヒはそう零しながら扉についている錠前に文句を零す。

すると自身の腕に付けている腕時計からピー、ピー、ピーと小さくアラーム音が鳴り響く。

 

「む。そろそろ起床しておかないといけない時間だな。マスターはもう起きているのか?」

 

そう言い、ボーデヴィッヒは扉に近付き耳を当て中の様子を耳をすませる。中からは物音一つしておらず、アラーム音さえ鳴っていない。

 

「おかしいな。もう起きておかなければならない時間のはずだ」

 

そう零しながらもう一度時計を見るボーデヴィッヒ。

 

 

 

時刻は5時ちょっと進んだくらいだった。

普通に考えてまだ大半の生徒は寝ている時刻である。

因みに集合時刻は6時半に校門前に集合である。

 

「むぅ。そろそろ起きておかなければいけないはずだが、まさかまだ寝ているのか? 仕方ない起こして差し上げるか」

 

そう言いボーデヴィッヒはドアノブを回す。当然の如く扉には鍵がかかっており開く事は無かった。

 

「まぁ、当たり前と言っては当たり前か。仕方ない、開けるか」

 

そう言いながらボーデヴィッヒは懐からピッキング道具を取り出し鍵穴に挿し込む。その瞬間、

 

あばっばばばばっばば!!??!

 

いきなり襲い掛かってきた電流に震えそのままバタンと倒れ意識を失うボーデヴィッヒ。

 

「ふもっふぅ」

 

すると警備室から出てきたフモッフ。フモッフは部下のモッフ達に指示を出しボーデヴィッヒを縄で簀巻き状態にして集合場所である校門前へと放り捨てに行った。

さて、ボーデヴィッヒの身に何が起きたか。それはあの鍵穴にあった。

あの鍵穴、実は偽物でピッキング道具などを中に入れると人を失神させるほどの高圧電流が流れる仕組みになっているのだ。

では、どうやって鍵を開けたり閉めたりするのか。それは、あとで説明しよう。

 

それから時刻は進み、6時前。

 

ピピピッ! ピピピッ!

 

一夏のベッド横に置かれた目覚し時計からけたたましいアラーム音が鳴り響くと、ベッドからもぞもぞと腕が伸びスイッチを押し、アラームを止める。

そしてむくりと一夏は寝ぼけ目で起き上がる。

 

「ふわぁ~~、おはよぉうアイラぁ」

 

<えぇ、おはよう。ほら、さっさと顔を洗いに行ってご飯を食べなさい>

 

「うん」

 

アイラにそうせっつかれながら、一夏はベッドからもそもそと降り洗面台で顔を洗う。そして制服に着替えキッチンで朝食を作り食べ始める。

 

そして時刻が15分になった頃、扉の方からノックする音が鳴り響く。

 

『イッチー、一緒に行こぉ!』

 

「は、はぁい。今行きます」

 

本音の呼ぶ声が聞こえ、一夏は事前に準備していた着替えなどが入ったカバンと、釣具店で購入した釣り具の入ったカバンを持ち扉を開ける。

開けた先には同じく、着替えが入っているであろうカバンと一夏と同じ釣り具の入ったカバンを持った本音、そして

 

「おはよう、織斑君」

 

「おっはぁー」

 

相川と鷹月の2人が居た。

 

「お、おはようございます」

 

そう挨拶を返す一夏。

 

すると警備室からフモッフとモッフ2体が現れた。

 

「あれ、今日はフモッフさんが警備に、着いてくれるんですか?」

 

【肯定だ。本日の行事ではモッフ達だけでは対処できない場合がある為、直接警護に就くことになった。それと、後ろの2体は普通のモッフ達とは違うぞ】

 

フモッフのプラカードに3人は首を傾げフモッフの背後に居るモッフ達を観察する。すると鷹月がある事に気付く。

 

「あれ、ワッペン付けてる」

 

「あ、本当だ。昨日のモッフさん達は付けてなかったのに」

 

3人が気付いたワッペン。そのワッペンは、両手にライフルを掲げ武装したウサギが描かれていた。

 

【彼等はラビットフォースと呼ばれる特殊精鋭部隊の隊員だ。現在いる通常モッフ50体に対し、彼等は16名程いる】

 

「「「へぇ~」」」

 

【それと、今後更に新たな部隊がこちらに到着予定だ】

 

「増えるの!?」

 

「因みに、来る予定の部隊って?」

 

【機甲歩兵部隊、航空ヘリ部隊、UAV部隊を予定している】

 

「い、いっぱい作る気だね」

 

【これもすべて一夏様をお守りするためだ。因みに織斑将軍からは許可は貰っている】

 

その説明に3人はポカーンと呆けた顔を浮かべる。因みにフモッフが千冬の事を将軍と呼ぶのは自分達の上司の為だ。

 

「それじゃあ、行こうっか」

 

「そうだね。織斑君戸締りは大丈夫?」

 

「あ、えっと、待って下さい」

 

そう言い、一夏は扉の方に向かい

 

「い、行って来ます」

 

『行ってらっしゃいませ、一夏様』

 

そう機械音声が流れたと同時に扉に鍵が掛ったのかガチャリと音が鳴り響く。

そう、一夏の部屋の扉の鍵は音声認識による生体認証型になっているのだ。勿論録音や編集された音声で鍵を開けようとした場合、即座に警報が鳴り響きフモッフ達警備部隊が駆け付ける仕組みになっている。

 

そして3人と3体は校門前へと向かう道中談笑を交えながら歩いていると、何時の間にか他の1組の生徒達も交ざって大勢で校門前まで着く事に。そして最初に目についたのが

 

「むー! むぅー!!」

 

簀巻きにされ猿轡をされたボーデヴィッヒが転がっていた。

 

『……』

 

その光景に1組の生徒達はまたか。と言いたげな呆れた表情を浮かべる。

 

「織斑君、あっちの方に行っておこう」

 

「うんうん、なんか見ちゃいけないものが転がってるから」

 

「あっちに行ってよぉ、イッチー」

 

「えっと、あの、はい」

 

周りの生徒や本音に促され一夏はフモッフ達と共にボーデヴィッヒから少し離れた位置へと移動する。

それから他のクラスの生徒達が続々と校門前へと到着してきた。

そして荷物を持った千冬達教員達も続々と到着し生徒達の前に立つ。その時千冬は地面に転がっているボーデヴィッヒの傍に寄る。

 

「おい、ボーデヴィッヒ。貴様荷物は?」

 

「むぅー! むぅーー!」

 

「……はぁ」

 

ため息を吐きながら千冬はボーデヴィッヒの口に着けられた猿轡を外す。

 

「で、どうなんだ? 荷物は?」

 

「えっと、まだ部屋に…」

 

「……さっさと取りに行け。それとも自力で旅館まで来るか? 勿論ISなんざ使わせんぞ」

 

そう言われボーデヴィッヒは「す、直ぐ取りに行きます!!」と叫んで立ち上がろうとしたが、簀巻き状態の為立ち上がれずにいた。すると

 

「あの、織斑先生」

 

「なんだ、デュノア?」

 

「ラウラの荷物なんですが、僕が持ってきました」

 

そう言い自身の荷物とは違う、軍用バッグを千冬に見せてくるデュノア。

 

「…デュノアに感謝するんだな、ボーデヴィッヒ」

 

そう言い離れていく千冬。

 

「え? 縄は?」

 

「自力で解け。軍人だろうが」

 

そう言って今度こそ離れて行った。

残されたボーデヴィッヒは何とか解こうとヤケになるも、結局解けず見かねたデュノアに助けられ何とかなったとか。

 

「よし、全員集合しろ!」

 

千冬の号令に生徒達はそれぞれクラスごとに整列する。

 

「ではこれから各クラス、バスに乗って移動を開始する。全員バスに乗る様に」

 

そう言われ生徒達はバスの荷台に荷物を載せて乗り込んでいく。一夏も荷物を載せに行こうとしたが

 

「あ、織斑待て」

 

そう千冬に呼び止められる。

 

「な、なんでしょうか織斑先生?」

 

「実は織斑だけ、別の車両を用意したんだ。教室は生徒達と間隔が空いている為平気だったと思うが、流石に閉鎖的なバスの中はな…」

 

「そ、そうですね」

 

千冬の説明に一夏は、何処か納得のいった表情を浮かべながらも不安な気持ちを抱いていた。

教室は他のクラスメイトとは距離が空いている上に、いざと言う時に逃げられる道も確保できていた。だが、バスとなればほぼ密閉空間。逃げ場がほぼ無い。

その為千冬は別の車両を用意したのだ。

 

「えっと、それで、その車両は何処に?」

 

「もうすぐ来るはずだが。あぁ、来たようだ」

 

そう言い千冬は車両の駆動音がする方に顔を向けると、一夏もそれにつられて向ける。向かってきたのは赤いオープンカーで、ボンネット付近には何故かウサミミが付いていた。

 

「え? 何あの車?」

 

「見た事ない車だね?」

 

「でも、どっかで見た事ある感じ」

 

『うん、どっかである』

 

1組の生徒達はその姿に見覚えは無いが、雰囲気が何処となくあのロボットに似ている事に気付いていた。お他のクラスの生徒達は変な車と思いながら見ていた。

そして車が到着すると、突如ガシャンガシャンと音を立てながら変形する。そして

 

【お久しぶりでございまぁす、坊ちゃまぁぁぁ!!!v⌒v⌒ヾ((`・∀・´)ノ ヒャッホーィ♪】

 

両腕を上げながら喜びを見せるプラカードを掲げながら一夏の元に駆け寄るメサ。

 

「お、お久しぶりです。メサさん」

 

【はい! 坊ちゃまとこうして再会できて、メサは大変嬉しゅうございますo.+゚。(´▽`o人)≡(人o´▽`)。o.+゚。ウレスィ♪】

 

一夏との再会にメサが喜んでいると、ふとその近くに居たフモッフに気付く。

 

【む? 貴殿が坊ちゃまの護衛を務めているフモッフ殿で相違ないか?】

 

【いかにも。俺が護衛部隊隊長のフモッフだ】

 

そう言い挨拶を交わす2体。暫しの沈黙が流れた後、メサが動く。

 

【因みに聞く。坊ちゃまの可愛いポイントは?】

 

【ウトウトした際のフニャンとした顔、はにかみながらも見せる笑顔、モフモフの動物を見せつけた際の顔】

 

メサの質問にフモッフがそう答えると、メサはフモッフの手を握りしめる。

 

【いいポイントに目を付けている。同士フモッフ!(o・∀・)b゙ イィ!】

 

【そう思ってくれて良かった】

 

2人の会話に周りの生徒達は( ゚д゚)ポカーンといった表情を浮かべている中、千冬だけうんうんと同意するように頷いていた。

 

(確かに、フモッフの挙げたポイントは可愛い。いや、可愛いと言う言葉だけでは片付かんな。例えるなら―――)

 

一人で一夏の可愛いポイント談義をしている千冬は置いておいておこう。

 

 

メサとフモッフが話している中、本音が一夏にある事を聞く。

 

「ねぇねぇイッチー」

 

「は、はいなんでしょうか?」

 

「メサメサってなんで車に変形できるのか?」

 

「……それは、僕もわかんないんです。以前聞いたら」

 

【坊ちゃま。この世は不思議な事が沢山あります。今の体積に対して変形時との体積が違う事、これはもはや不思議な事の一つなのでございます。気になると思われますが、こう言う物だと思って下さい】

 

「そう言われて、結局どうして車に変形できるのかは謎のままなんです」

 

「「「「へぇ~」」」」

 

本音、そして1組の生徒達はそう声を零し、メサの不思議に関心を示すのであった。

 

そして一夏はメサ(車化)に荷物などを載せ乗ろうとすると

 

「おぉ~い、一夏君!」

 

「あ、伊田先生。どうしたんですか?」

 

一夏に声を掛けてきたのは何時もと変わらない白衣を着た伊田であった。

 

「いやぁ、俺もこっち側でね。メサ君、俺もいいかい?」

 

【どうぞどうぞ、まだ載りますよ】

 

そう言われ伊田は自身の荷物をトランクへと積み込み後部座席に乗り込む。

そして全員が乗ったのを確認した千冬は運転手に出発の指示を出すと先頭のバスが走り出しその後を続く様にバスが続き、最後のバスが出た後一夏達のメサ車も出発した。

因みにフモッフ達は一夏達の後から銃座の付いたSUVに乗って付いて来ており、その後ろからは大型トラックが付いて来ていた。

 

街中を走り、そして高速に乗り暫し走った後高速から下りる頃には自然が広がる場所へと着き下道を走る事さらに数時間後、遂に一行は目的の旅館のある海岸へと到着した。

バスが旅館の大型車両用の駐車場に停まると、ぞろぞろと生徒達は自分達の荷物を持ち整列していく。バスと同じく付いて来ていたメサ車からも一夏と伊田も降りて来て荷物を持ち、一夏は列へと向かい伊田は教員達の元へと向かう。

生徒達が全員整列したのを確認した千冬は生徒達の前へと立つ。

 

「よし、全員集合しているな? 本日からお世話になる此処『花月莊』の女将をされている、清州景子さんだ。全員失礼の無い様にするように!」

 

「女将をしている清州景子です。2泊3日ごゆるりとお寛ぎ下さいね」

 

『お世話になります!』

 

「よし、では各自割り当てられた部屋に行くように。その後は自由行動だ」

 

そう千冬が言うと生徒達はぞろぞろと旅館の中へと入っていく。一夏は人が疎らになるまで外で待機していると千冬がその傍へと近づく。

 

「織斑少しいいいか?」

 

「は、はい」

 

「お前の部屋なんだが、伊田と同じ教員部屋にしておいた。男性と同じ部屋なら安心だろ」

 

「ありがとう、ございます」

 

そう話していると清州がその近くへとやってくる。

 

「織斑先生、そちらの男子が」

 

「えぇ、私の弟です。今回は申し訳ありません、お風呂の時間を調整してもらったりなど」

 

「いえいえ、これ位の事構いませんよ。それと、事前にお知らせ頂いた弟さんの接し方については既に従業員全員に知らせております」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

「いえ。では、私はこれで」

 

そう言い清州は旅館の中へと入っていく。

その後一夏は教員達との話し合いを終えた伊田と共に2人が泊まる教員部屋へと向かう。

 

一夏が旅館の中へと入っていくと同時にボヒュボヒュと数体のモッフ達とメサが千冬の元に近付く。

 

「ん? お前達は、先行していたモッフ達か?」

 

「ふもっ!」

 

【旅館の各所、及び一夏様のお泊りされる部屋の安全点検は全て完了済みです】

 

「そうか。それと、防犯対策はばっちりか?」

 

【すべて万事問題無く】

 

「分かった。引き続き一夏の護衛を頼む。メサも一夏の傍について世話をしてやってくれ」

 

【畏まりました。Σd(゚∀゚d)】

 

「「ふもっふ!」」

 

敬礼をしたモッフ達はボヒュボヒュと足早にフモッフ達が居るトラックの元に向かい、メサと千冬は旅館の中へと入っていく。

 

~伊田と一夏の部屋~

部屋に到着した一夏と伊田は早速釣りに行くべく服を着替え始める。

暫くして着替え終えた二人、その格好は

 

一夏は釣りキチ三平の主人公、三平の様に麦わら帽子に白のポロシャツにインナーに赤い長袖シャツ、ジーパンをはいていた。

伊田は魚紳の格好だった。

 

「よし、一夏君。いざ釣り場へ!」

 

「お、おぉー!」

 

そう掛け声を出しながら廊下へと出る2人。すると

 

【坊ちゃまと伊田様。釣りに向かわれますか?(-ω- ?)】

 

「うん、行きます」

 

【では、ご一緒します。熱中症対策の為、飲み物や塩分の取れる物をご用意しましたので。(*´ェ`*)っ旦~】

 

「お、それは助かる。熱中症は怖いからね。それじゃあ行こうか」

 

そして伊田、一夏、メサは目的地の防波堤へと向かう。道中釣りに参加する1組の生徒数人と合流し防波堤へと向かう。

釣り場と向かった一夏達とは別に浜辺では釣りに行かなかった残りの1組の生徒達と他のクラスたちが遊んでいた。

 

「ねえねえ、なんで1組の生徒達少ないの?」

 

「そうそう、まだ旅館に居るの?」

 

「あぁ、何人かは釣りに行ったのよ」

 

「えぇ!? 釣りって確か禁止じゃなかった?」

 

「原則はね。けどほら、ウチのクラス織斑君居るじゃん。浜辺では私達と一緒に遊べないからね。それにフモッフさん達も居るから大丈夫って事で織斑先生が特別に許可してくれたの」

 

「えぇ、良いなぁ」

 

「うん。あっ! 後ではその釣り場行ってみるのは?」

 

「あ、それ良い「あぁ~、止めといた方がいいよ」え? どうして?」

 

「釣り場の防波堤にはフモッフさん達が警護についてるんだけど、釣り用の格好じゃないと近づけないよ。無理に通ろうものなら…ねぇ?」

 

1組の生徒は其処から先は言わなかったが、他クラスの生徒達はそれだけで意味を悟った。

 

“恐ろしい目にあう”

 

と。

 

 

他クラスと1組の生徒達を聞いた(盗み聞きした)専用機持ちと篠ノ之箒(問題児達)

 

「釣りに行ったなど、そんな話聞いていないぞ」

 

「全くよ。一夏の奴、何で私にその話をしなかったのよ!」

 

「うぅ、僕達はぶられてるよね?」

 

「間違いなくハブられておりますわ。一体何故ですの?」

 

「むぅ、マスターの護衛に行こうにもフモッフ共が居るのか…」

 

臨海学校の事を知らせたSHRの時は専用機持ちと篠ノ之箒(問題児達)は反省房にぶち込まれていた為、1組の生徒達が釣りに行こうと話し合っていた事など知らなかったのだ。

因みに反省房から出された後も知らなかったのは、1組の生徒達がトークアプリを使って4人を除いたグループを作成し、その中で話し合いを行ったのだ。

その為4人に知られることは無かったし、口で話し合っている訳では無い為情報が洩れる事は無く、2組の鈴にも知られることは無かったのだ。

 

一方その頃釣り組が居る防波堤では一夏達が楽しく釣りをしていた。

1組の生徒達(長袖シャツに長ズボン)は旅館で借りたライフジャケットを着こみ、同じく借りた釣り竿で魚を釣っていた。

 

「おっ! 引いてる、引いてる!」

 

「わぁわぁ! 網、網ぃ!」

 

「ほ、本音さん。アジの尻尾付近は気を付けて下さいね」

 

「えぇ? あ、トゲトゲしてるぅ。ありがとうねぇ、イッチー」

 

【危ないので、トングを使って外しましょう。( ´∀`)つ<】

 

「先生、この魚ってなんですか?」

 

「これはハナダイだね」

 

「へぇ~、綺麗なピンク色」

 

それぞれ釣りを楽しむ中、防波堤の入り口付近ではフモッフを筆頭に警備部隊が巡回していた。すると入り口付近を警備していたフモッフ達の視線にある人物達がやって来た。

 

「えっと、此方でしたわよね?」

 

「うん、釣り出来る場所と言えばここしかないはずだよ」

 

「案の定、フモッフ共がいる様だし、此処で間違いないだろ」

 

「……」

 

セシリア達であった。

彼女達は釣りに行った一夏を追い、防波堤へと来たのだ。しかし来たのは鈴以外のみであった。鈴は

 

「どうせ行った所でフモッフが邪魔して入れないわよ。別の所から行くわ」

 

そう言って何処かに行ったのだ。

そして4人はスタスタと防波堤の入り口に近付くも、フモッフ達が銃を構える。

 

【此処から先は釣り用の装備を着用した者しか入れん。回れ右をして帰れ】

 

「そ、装備って、そんなのありませんわ」

 

「別にそんな物必要ないだろ」

 

「見てるだけだから、通してよ」

 

「邪魔だ、退け」

 

そう言い通ろうとする4人。彼女達は勿論水着の格好であった。

暫し睨み合いがつづき、そして

 

「退けと言っている!」

 

そう叫びながらズカズカと進みだす箒。それと同時に他の3人も進もうとした瞬間

 

ビュン!

 

と風を切る音が鳴りそして

 

「ゴハッ!!?」

 

後頭部に出席簿が直撃、前のめりに倒れる箒。3人はギョッと驚いた後、背後に顔を向けると首から一眼レフカメラをぶら下げたウィンドジャケットとジャージズボンの千冬が立っていた。

 

「何をやっているんだ、貴様等?」

 

「お、織斑先生」

 

「その、僕達防波堤に行こうとしたんですけど…」

 

「あいつ等が邪魔して入れないのです。何とかしてもらえないでしょうか?」

 

3人がそう説明するも、千冬は鋭い視線を送るのを止めない。

 

「お前達の格好で入れるわけが無いだろが」

 

「で、でも釣りをしないなら「釣りをするしないではない。織斑が居る時点で着替えは絶対だ。無いなら浜辺に戻って遊んで来い」で、でも…」

 

「一応警告しておく。これ以上うだうだと屁理屈を吐き続けるなら、旅館の部屋に帰らせるぞ?」

 

駄々をこねる3人に千冬は、そう脅すと流石に旅館に帰らされるのは不味いと感じすごすごと浜辺へと帰って行く。

因みに千冬の投げた出席簿で伸びた箒は、モッフが回収し旅館の部屋に放り捨てられた。

 

3人が浜辺に行ったのを確認した千冬はそのまま防波堤へと入っていく。防波堤では1組の生徒達がワイワイと釣りを楽しんでいた。

 

「あ、織斑先生!」

 

「楽しんでいるようだな、お前達」

 

「はい! 先生は、もしかして写真ですか?」

 

「そんなところだ。ほら撮ってやるから釣った魚を掲げろ」

 

そう言われ生徒は隣で一緒に魚を釣った生徒と共に写真を撮って貰う。そして取り終えた千冬は一夏達の元に向かう。

 

「おぉ、織斑先生。どうしたんだそのカメラ?」

 

「まぁ、なんだ。買ったんだ」

 

伊田の元に近付きながら千冬は本音と一緒に釣りをしている一夏の方を見つめる。

 

「それで、釣れたのか?」

 

「まぁな。いいサイズのカサゴとかカワハギとかが釣れたぞ」

 

そう言い伊田はタックルボックスを開けると、其処には新鮮なカサゴやカワハギが入っていた。

 

「今晩の夕飯は少し豪華になりそうだな」

 

「そうだな。ところで一夏の方はどうなんだ?」

 

「まぁ、アジとか簡単に釣れる魚を釣ってたよ。まぁ初心者だし、そんな「い、伊田先生ぃ!!」どうした?」

 

千冬と喋っていた伊田を大声で呼ぶ本音。その表情は焦った表情だった。

 

「い、イッチーの竿に魚が掛ったんですけど、引きが強いんですぅ!」

 

「メサはどうした?」

 

「今イッチーを支えてます!」

 

「分かった、見に行こう」

 

そう言い伊田と千冬は本音と共に一夏の元に向かう。

3人が一夏の元に着くと、一夏はまだ魚と格闘していた。メサも一夏の後ろから竿を支え、一夏が海に引っ張り落ちない様にしていた。

 

「一夏君、かなりデカい魚が掛ったみたいだね」

 

「は、はい。メサさんのお陰で何とか支えられているんですけど、なかなかリールが巻けなくて」

 

「無理に回さなくていい。出来るだけど魚を泳がせて疲れさせるんだ。けど、こっちも一夏君の身の安全の事があるからね。危険と判断したら、糸は切るよ」

 

「はい」

 

伊田は一夏が頑張っているのを傍で見守りつつ、いざと言う時に行動できるよう準備を始め、千冬は一夏の釣り姿の写真を撮る。そして本音は

 

「フレ~! フレ~! 頑張れイッチー!」

 

と応援していた。

 

<結構強い引きね>

 

<うん。アイラ、残りの糸ってどのくらいあるか分かる?>

 

<まぁ、大体は分かるわ。遂次報告してあげるから、釣りに集中しなさい>

 

<うん>

 

アイラの報告を聞きつつ、一夏はメサと共に竿を立てながら魚との格闘を繰り広げる。

 

 

 

その頃防波堤と浜辺との中間あたりでは、鈴が海の中を泳ぎ進んでいた。目的地は勿論防波堤である。

 

(どうせフモッフが入れてくれるわけがない。だったら泳いでコッソリと行けばいいのよ)

 

息継ぎをできるだけ少なくして顔を出す回数を減らし、出来るだけ水上から見えない様深く潜りながら進んでいた。

暫し進んでからそぉと顔を出して覗くと防波堤で1組達が釣りをしていた。

 

(よしよし、まだバレてない様ね。フフフ、待ってなさい一夏)

 

そう思いながら再度潜り、防波堤へと近づこうとしたが突如頭を何かで掴まれそのまま海へと引き上げられた。

ザパンと吊り上げられた鈴は一体何がと思っていると、体を回された。その先には

 

「ふもぉ」

 

ゴムボートに乗ったラビットフォース所属のモッフが釣り竿を持って鈴を睨みつけていた。

釣竿を持ったラビットフォースのモッフ、R1号がプラカードを掲げる。

 

【残念だが、GAME OVERだ。(☝◉ਊ ◉)☝バーカ!!】

 

そう見せた後、隣にいたR2号が銃を構え引き金を引く。銃口からはダーツの様な矢が飛び出て鈴のデコに命中。

 

「フニャッ!?…ふわぁ」

 

ダーツが命中した鈴は突然眠気に襲われ、そのまま眠りにつく。

眠った鈴を縄で簀巻きにしてそのままボートで運び砂浜に転がし近くにプラカードを挿す。

 

【お好きにしてどうぞ By凰鈴音】

 

そう書かれたプラカードを残しラビットフォースのモッフ達はゴムボートに乗り込み再び一夏の護衛へと向かった。

 

 




次回予告
時刻は夕方!
旅館の豪華な夕飯を取った後は温泉!
女子生徒達が入った後は遂に一夏の時間。
大きな温泉に満喫する一夏。その裏で起きている事に気付かずに。

次回
臨海学校~温泉編~
【奴らは夜に動くはずだ。各自何時でも動けるよう待機していろ】

「「「「「ふもっふぅ!!」」」」」(`・ω・´)ゞ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。