女性恐怖症の一夏君   作:のんびり日和

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38話

真耶の焦った表情に千冬は一体何事だと思いつつ、その傍へと寄る。

 

「一体どうした?」

 

「アメリカの軍用――」

 

「っ!? それ以上は言うな。機密事項だ、他に聞かれる」

 

真耶が言おうとした内容を察した千冬は、報告を遮り手話で会話を始める。そして顔をしかめながら生徒達の方へと体を向ける。

 

「緊急事態が起きた為一般生徒達は教師達の指示に従って部屋で待機するように。なお部屋から勝手に出ない事。出た場合厳しい処罰が下される。専用機持ちは私についてくるように」

 

そう言われ一般生徒達は困惑した表情を浮かべながらも教師達の先導の元旅館へと帰って行く。

一夏は専用機持ちとして千冬の後に続こうとした所

 

「イッチー」

 

「本音さん、何か?」

 

一般生徒達と共に旅館の部屋に行く途中の本音に呼び止められた。本音は心配そうな表情を浮かべていた。

 

「なんか、嫌な予感がするから気を付けてねぇ」

 

「え? えっと、分かりました」

 

本音の忠告に一夏は頷きながら千冬達に付いて行く。

 

 

 

 

千冬の後に続いて着いたのは旅館の奥にある部屋であった。そこは本来教師達の部屋であるが、今は空間ディスプレイなどを投影して色々な情報などを展開していて物々しい雰囲気であった。

千冬は連れてきた専用機持ち達を適当に座らせ、彼女達の前に立ち厳しい顔を向ける。

 

「ではこれより緊急ミーティングを行うが、その前に一つ聞いておくことがある。この後行われる事はかなり国際的に不味い事であり、更に命の危機に陥る可能性もある。今此処で降りてもらっても構わない」

 

そう言い見渡す。部屋にいる一夏達専用機持ち達は緊張した面持ちではある物の、部屋から出る様子は無かった。

暫く沈黙がつづいた後千冬は覚悟を決めた様な表情に変え、口を開く。

 

「…分かった。では何があったのか説明する」

 

そう言い千冬は背後で椅子に座りながら作業をしている真耶に資料を。と伝えるとディスプレイに一機のISが映し出された。

 

「つい先ほどアメリカ政府からイスラエスとの共同開発で開発した機体、《銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)》が無人のまま突如謎の暴走を起こし試験場から飛び出したとのことだ。勿論アメリカ空軍などが阻止しようとしたが、すり抜けられたらしい。現在は日本に向け飛行しており、アメリカ空軍および日本の航空自衛隊が阻止しようと動いているが、間に合わないらしい。その為政府から我々に撃墜指令が届いた」

 

「げ、撃墜ですか?」

 

「あぁ、そうだ。全く無茶な命令を出しおって」

 

そう言い千冬はチッ。と舌打ち放つ。

 

「兎に角政府は撃墜と言ってきているが、それはあくまでも出来たらだ。我々が出来るのはせいぜい足止めくらいだ。それで作戦だが、各自の持てる火力をもってこれを足止めする。専用機を前面に出し、後方には万が一突破もしくは前線を維持できなかった場合に備え教師部隊を配置する。何か質問はあるか?」

 

「では相手のスペックをお願いします」

 

「…いいだろう、ただし口外はするなよ。した場合国際問題に発展するからな」

 

セシリアの質問に千冬は警告を入れながら銀の福音のスペックを開示する。

 

「広域殲滅型…ですか」

 

「あの、織斑先生。これってアラスカ条約に抵触しないんですか?」

 

「確かにアラスカ条約に違反しそうだが、開発目的が宇宙開発の為という事で抵触していない。そうだろ、束」

 

千冬がそう言うと、天井の一角が突如開き、シュタッと束が降って来た。

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

「うん、軍が主導で開発しているから広域殲滅って書いてあるけど、実際は宇宙空間に漂流している宇宙ゴミなど宇宙ステーションの脅威となる物を破壊するための機体だよ。ところでちーちゃん」

 

「なんだ束?」

 

「作戦だけどさぁいっくんの安全を確保しつつ、なおかつ暴走したISを止める方法が有るんだけどどうする?」

 

「なに? ……どう言った方法だ?」

 

「実は其処に居る金髪ドリルがいっくんに喧嘩を吹っ掛けた時にさ、束さんつい頭にきちゃって大型ビームライフルを作ったんだけど、バススロットをかなり食っちゃうみたいだから入れるのを止めて倉庫に放り込んでおいたんだけど、なんかつかえそうだなぁと思ってねぇ」

 

「なるほど。だが、一夏に持たせる理由は?」

 

「バススロットの関係。それと束さんが作った物を信用できない奴に渡したくない」

 

そう言い束は、どうする?と千冬に問う。千冬は束の作戦と自分が考えた作戦と比べ、どちらが安全かつ任務遂行が出来るのか比べる。しばし考えた後自身の答えを出した。

 

「よし、束の作戦で行く。その大型ビームライフルは今あるのか?」

 

「今手元にはないけど、さっき研究所から持って来て貰うよう束さんのお手伝いに…あ、来た来た」

 

そう言い束は襖を開ける。すると一機のISが舞い降りてきた。その手には大きめのロングライフルが握られていた。

 

「束様。お願いされていた物をお持ちしました」

 

「ありがとうね。クーちゃん」

 

降りてきたISに親し気に話す束に千冬は一体何者かと思い束に尋ねる。

 

「あ、この子は束さんの助手兼娘の」

 

「クロエ・クロニクルと申します」

 

「そうか。で、それが例のライフルか」

 

「うん、そうだよ。いっくん、ISにインストールするからちょっとこっちに来てぇ」

 

「は、はい」

 

束に呼ばれ一夏は束の元に向かう。そしてインストール完了後、千冬は専用機持ち達を連れ砂浜に向かう。オルコットたちが専用機を纏い準備をしている中、一夏もバレットホークを身に纏い照準の確認を行う。

 

「いっくん、照準はどう?」

 

「あ、はい。調整終わりました」

 

「うん。それじゃあそのライフルの注意事項を言うよ」

 

「注意事項だと? おい、危険な物なのか、そいつは?」

 

束の口から出た注意事項と言う言葉に千冬は眉間にしわを寄せ、束に怒気を込めた口調で言う。

 

「落ち着いて、ちーちゃん。注意事項と言ってもそんな大したものじゃないよ。じゃあ言うよ。まずこのライフルだけど長射程で高威力を有してる。今回は無人ISらしいから問題ないけど、人が乗っていたら確実に危険だから。撃つ際は他の奴等が射線に入っていないか確認してね」

 

「は、はい」

 

「次にこのライフルなんだけど、一発撃った後リチャージに凄く時間がかかるの。だから一撃必中で狙ってね」

 

「分かりました」

 

一夏は渡されたライフルの入ったバススロットを見る。すると装備されていた武器がほとんどなく、外付けされているフォールディングナイフ以外に残っているのは近接用のバタリングラムが1本とアサルトライフル2丁のみだった。

 

「あれ、武器が…」

 

「あぁ、ごめんいっくん。さっきも言ったけどこのライフル、バススロットをかなり使っちゃうんだ。だから武器を幾つか下ろさせてもらったよ。あとこれ結構反動が強いから、ライフルを撃つ際はサブアームで機体を固定してね」

 

「はい」

 

束の説明を聞いている最中、考え事をしていた千冬は何かを思いついたのか、束に話しかける。

 

「束、織斑の機体にステルスをつけることは可能か?」

 

「ステルス? そりゃあつけるのは出来るよ。でも何でステルスがいるの?」

 

「万が一の為だ。織斑が狙撃を外した場合、もしくは不測の事態が発生した場合織斑を先に後退させる。唯一大型ライフルを使用できるのは織斑だけだからだ」

 

「なるほどねぇ。それじゃあいっくんちょっと動かないでねぇ」

 

「あ、はい」

 

一夏はその場で静止をすると、束はバレットホークにコネクターを挿し空間ディスプレイとキーボードを出すとポチポチっと何かを打ち込む。そして打ち込むが終了したのか、コネクターを外す。

 

「終わったよぉ」

 

「分かった。それじゃあ全員よく聞け!」

 

千冬がそう大声で言い全員耳を傾ける。

 

「これより作戦を開始する。指揮所で説明した作戦通り、織斑の大型ビームライフルで狙撃しISを停止させる。織斑が狙撃位置に着くまでの間、お前達は時間稼ぎ及び狙撃しようとしている事を悟らせない様陽動だ」

 

「「「「了解」」」」

 

「それと、万が一狙撃失敗、もしくは不測の事態が発生した場合は作戦は中止。先に織斑がステルスを使用して撤退。その間お前達は時間稼ぎだ。勿論教師部隊も向かわせる。教師部隊が到着したら、お前達も撤退しろ。分かったな」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「では作戦開始!」

 

その掛け声と共に専用機持ち達は砂浜から出発した。

 

 

 

 

旅館から飛び立って暫くして、一夏は専用機持ち達から離れ小島へと降り立つ。小島に降りるとバススロットから大型ライフルを取り出し構えると同時にサブアームを展開して木や地面にサブアームを掴んだりし機体を固定する。

 

〈アイラ、やれるかな?〉

 

〈さぁね。けど、アンタには私がついている。わたしはアンタの操縦と射撃の腕に信用するし、アンタは私のサポートを信用しなさい。これまで通りにね〉

 

〈……うん! 分かった〉

 

アイラの言葉に一夏は力強く返しライフルを構える。暫くしてから無線が入った。

 

『こちらボーデヴィッヒ。目標のISと接敵! 攻撃を開始する!』

 

そう聞こえ一夏はライフルに備えられているスコープを覗き込む。其処には翼の様な背部ユニットを搭載した一機のISがおり、専用機持ち達の攻撃を避けながら反撃をしていた。

 

〈来たわね。一夏、しっかり狙うのよ〉

 

〈うん〉

 

アイラの言葉に一夏はライフルの握る手に自然と力が入りつつもしっかりと狙いを定める。すると、戦っている銀の福音にある違和感を感じる。

 

〈ねぇ、アイラ。あのIS、無人なんだよね?〉

 

〈え? えぇ、千冬はそう言ってたわよ。なんでよ?〉

 

〈なんか、あのバイザーの隙間から髪が見えた気がして…〉

 

一夏の言葉にアイラははぁ?と声を漏らしつつも、一夏の目線から入手した映像をコマ送りで再生する。そしてほんの少しだが太陽の光に反射する金髪が見て取れた。

 

〈嘘でしょ!? 一夏、あの機体は無人機なんかじゃない、人が乗っているわ!〉

 

〈そ、そんな!? ど、どうしよ?〉

 

〈すぐに千冬に連絡しなさい! 作戦は中止よ!〉

 

アイラの言葉に一夏は直ぐに千冬に連絡をとるべくチャンネルを開く。

 

 

 

「―――なんだと!?」

 

一夏から届いた通信に千冬や他の教員達は驚愕の表情を浮かべ、傍に居た束は一夏の言葉に何かを調べるべく空間デュスプレイとキーボードを展開する。

 

『さ、作戦は?』

 

「中止だ! 織斑、直ぐにステルスを展開して其処から撤退しろ。他の専用機は時間稼ぎを行え! 教師部隊、すぐさま前線に向かえ!」

 

『教師部隊、了解!』

 

千冬の指示に教師部隊から了解の返答が届く。そんな中、千冬は苛立ちの表情を浮かべていた。

 

「政府の連中め、無人機など言いやがって、人が乗っているではないか」

 

「ちーちゃん、恐らく政府の連中も無人機だと思ってたかもよ」

 

「? どういう事だ、束」

 

千冬の近くで調べ物をしていた束からそう声を掛けられ、千冬は怪訝そうな顔付を浮かべる。

 

「いっくんの言葉で調べてみたんだけど、アメリカが日本に送った電文にも無人機と書かれてた」

 

「だったらアメリカの連中か?」

 

「うぅん。アメリカが日本に送った電文には改竄されていた痕跡があった。改竄される前は有人機と書かれてた」

 

「っ!? つまりアメリカ政府内の誰かが仕組んだという事か?」

 

「恐らくね。そして狙いは…」

 

「…一夏の暗殺か」

 

ギリッと奥歯を力強く噛む千冬。

 

「…兎に角有人機と分かった以上、作戦は救出作戦に変更だ。束、一夏が戻ってきたらライフルの出力を調整できるか?」

 

「出来るよ。けど、暴走を止める必要があるから軽傷程度の出力まで下げるからね」

 

「あぁ、それでいい。暴走を止めるためだ、軽傷位我慢して「お、織斑先生っ!」どうした、山田先生?」

 

束と会話をしていた千冬に大声で呼ぶ真耶。その顔は青白く染まっていた。

 

「お、織斑君の…」

 

「織斑がどうした?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑君の、バレットホークがシグナルロストしました」




次回予告
指揮所に届いた一夏撃墜の報告。千冬は一瞬取り乱しそうになりながらも、なんとか指示をする。
そして一夏が戻って来てから暫くして専用機持ちも帰還。
千冬は溢れる上がる怒気を必死に抑えながら現場で起きた事を問いただす。

次回
墜落の希望

「一体、あそこで何があったのか、一字一句真実を報告しろ」

「ちょっとでも、嘘言ったら、どうなるか、わかるよね?」

次回投稿してほしい小説(詳細は活動報告の「次回作一覧」を見てください)

  • ①IS×ウォーシップガンナー2
  • ②IS×メタルギア
  • ③IS×オリジナルストーリー①
  • ④IS×オリジナルストーリー②
  • ⑤IS×クロスアンジュ
  • ⑥IS×タイムクライシス
  • ⑦IS×オリジナルストーリー③
  • ⑧IS×人狼 JIN-ROH
  • ⑨IS×東方project
  • ⑩IS×オリストーリー④
  • ⑪IS×R-type
  • ⑫俺ガイル×IS
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