女性恐怖症の一夏君   作:のんびり日和

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39話

千冬は真耶の口から出た言葉に理解できなかった。

 

(シグナル、ロスト? 一夏が、墜ちた?)

 

頭の中で一夏が墜ちたと言う言葉が、頭の中で何回も再生される。隣では束が千冬に向かって何か叫んでいるが、千冬には届いていたなかった。

すると束が千冬の肩を掴んで自分の方へと振り向かせると、右腕を振り上げ勢いよく千冬の左頬を叩く。

 

「ちーちゃん‼ しっかりして!」

 

「…す、すまん」

 

束のビンタと叱責に我に返った千冬は直ぐに状況を真耶達に問う。

 

「状況は?」

 

「今しがた教師部隊が織斑君の墜落地点に到着。目標に向け攻撃を開始しました」

 

「織斑先生、教師部隊の新山先生から通信が」

 

「繋げ」

 

千冬の言葉に報告した教師は通信を繋げる。

 

『こちら新山。現場に織斑君の護衛部隊がゴムボートに乗って現れました!』

 

「フモッフ達が? 織斑の救助か?」

 

『恐らくそうだと思います。ゴムボート周辺にスモークを展開してスキューバ装備をした者が海に入って行き、あ! ゴムボートに織斑君を載せています!』

 

 

「っ! 新山先生の視点カメラを出せ!」

 

千冬の指示に真耶はすぐさま新山が乗っているISから捉えた映像がモニターに映し出す。映像にはモッフ達が乗ったゴムボートにスキューバ装備をしたモッフが一夏を載せている光景が映っていた。

 

「よし、教師部隊に告ぐ。織斑が乗ったゴムボートが戦闘区域を離脱するまで時間稼ぎをするんだ。専用機持ちもすぐにそこから離脱しろ」

 

『教師部隊、了解』

『あなた達、早く離脱しなさい! 其処で茫然としていたら死ぬわよ!』

 

無線から聞こえる叱責等を聞きながら、険しい表情を浮かべ続ける千冬。

 

「ちーちゃん、束さんは浜辺に行ってくるよ」

 

「待て、だったら私も行く。真耶、此処を頼む」

 

「分かりました」

 

そう言い千冬と束が部屋を出ると、担架を持ったモッフ達がボヒュボヒュと足音を立てながら浜辺へと向かっていく。

 

「束さん達も急ごう」

 

「あぁ」

 

束と千冬はその後を追う様に早歩きで浜辺へとむかった。

浜辺に到着すると担架を持ったモッフ達と医療箱を持った伊田が待機していた。

 

「お前も来ていたのか、伊田」

 

「まぁな。俺は彼の専属の医師だ。来ない訳が無いだろ」

 

そう言い再び海の方へと顔を向ける。すると波しぶきを上げながら猛スピードでやってくる2隻のゴムボートが地平線から現れた。

 

「来たっ!」

 

「「っ」」

 

束の言葉に千冬と伊田は直ぐに動けるようにスタンバイする。そして暫くしてゴムボートは千冬達の近くで浜辺へと乗り上げて停泊する。

停泊したと同時に陸で待機していた担架を持ったモッフ達が近寄り担架を降ろす。そしてゴムボートから手や足に包帯を巻かれた一夏が下ろされ担架に乗せられ旅館へと運ばれていき、伊田もゴムボートに乗っていたモッフから怪我の状況、治療内容などを聞きながら旅館へと向かって行った。

千冬と束は運ばれていく痛々しい一夏の姿に悲痛な面持ちで見送っていた。

そして今回の事件を引き起こした者に対する殺意を浮かべた。

 

「……ギリッ」

 

「……やった奴、絶対にぶっ潰す」

 

そう決意をする2人。すると近くに居たフモッフが何かに気付き、海の方に顔を向けると専用機持ち達が戻って来た。

5人は千冬達の近くに降りてくるとISを解除する。5人は2人から放たれる殺気にビクビクと怯えながら口を開く。

 

「あの、織斑先生。い、一夏の容体は?」

 

「……今治療中だ。その前に貴様たちに問う」

 

そう言い専用機持ち達の方に体を向ける千冬。束も同様に体を向ける。

2人の顔は真顔であるが、体からは圧力と殺気がにじみ出ていた。

 

「あの場で、一体何があったのか。そして何故織斑が撃墜されたのか報告しろ」

 

「一字一句、本当の事を言え。もし、嘘なんかついていると分かったら―――」

 

 

 

 

 

 

―――殺す

 

束の口から出た言葉に5人はガタガタと震え出す。2人の圧に誰も口を開かない事数分、一人の生徒が口を開いた。

 

「わ、私が、報告します」

 

「よし、聞こう。更識、あの場で何があった?」

 

水色髪の眼鏡を掛けた少女、更識簪はビクビクしながらもあの場で起きた事を報告し始めた。

 

 

 

 

 

~~一夏が墜ちる数分前~~

 

千冬から撤退する指示が出され、一夏は束に載せてもらったステルスを展開し撤退を開始した。

その頃専用機持ち達は銀の福音と対峙していた。

彼女達は千冬に言われていた通りに教師部隊到着まで持ち堪えるべく、銀の福音と戦っていたのだ。

戦っている最中、鈴はイライラとした表情を浮かべていた。

 

「ちょっと、教師部隊まだ来ないの!」

 

「撤退の指示からまだそんなに時間が経っていなんだ。すぐに来れる訳が無いだろ!」

 

鈴の文句にボーデヴィッヒは怒鳴る様に咎めつつ、銀の福音に攻撃を続けた。それから攻撃を続けていたが、遂に鈴の我慢が爆発した。

 

「あぁもう! これ以上待っていられない!」

 

そう叫び一夏が撤退した方角に向かって飛び始めた。

 

「おい、待て!」

 

「お待ちなさい!」

 

「ちょっと待ってよ!?」

 

鈴が勝手に撤退していくのを見たボーデヴィッヒ達はその後を追い始め、残された簪は唖然とした表情を浮かべる。

 

「えぇえ…。あの人達噂に聞いた以上に身勝手すぎる」

 

そう零しながら、自分一人では危険と判断し銀の福音に向けミサイルロックをする。

 

「山嵐、発射!」

 

そう言い8連装のミサイルランチャーを発射した。放たれたミサイルは銀の福音に向かっていく途中、マイクロミサイルをばら撒き、一斉に銀の福音に襲い掛かった。

 

銀の福音は襲い掛かって来たミサイルを回避したり、光弾を発射してミサイルを破壊したりしていく。

 

(暫くの間時間稼ぎになれば良いんだけど…)

 

そう思いながら簪は、自分一人では軍事ISに対抗できないと判断し離脱を始めた。

簪が4人の所に到着すると、いがみあっていた。

 

「なんであんた達もこっちに来るのよ! 一夏の護衛位一人で十分よ!」

 

「護衛ではありませんわ! こっちに戻るのは教師部隊と合流する為ですわ!」

 

「そうだよ。鈴が勝手に離脱を始めたから僕達も離脱しなくちゃいけなくなったんだから」

 

「お前一人離脱してマスターの身に何かあってはいけないから一緒に護衛するだけだ」

 

など言い合っていた。その光景に簪は

 

(……この人達、やっぱり自分勝手だ)

 

そんな事を思っていると、レーダーに背後から迫ってくる銀の福音を捕らえた。

 

「…やっぱり大した時間稼ぎにならなかったか」

 

そうボヤきつつ迎撃しようとする中、背後ではまだ口論をする4人。その事に普段内気な簪でさえも口を荒げる。

 

「ちょっと、いい加減にしてよ! 銀の福音が其処まで来てるんだよ!」

 

そう怒鳴られ4人は慌てて迎撃態勢に入る。迎撃態勢に入っている5人に気付いた銀の福音は光弾を出現させ簪達に向け発射した。5人はその攻撃を避けながら反撃する。

すると突如銀の福音の動きが止まった。

 

「な、なに? 一体どうしたの?」

 

「わからん」

 

そう話していると

 

『最優先ターゲットの確認。現目標の切り替えを実施』

 

そう機械音声が流れると、銀の福音は5人に向かって突貫してきた。5人は一斉攻撃をするも、銀の福音はそれをひらりひらりと避け接近してくる。

近接攻撃範囲に入って来たため、鈴と簪は近接武器で攻撃を仕掛けるも、銀の福音はそれを避け5人を置き去りするかのように飛んで行く。5人は一体何処にと飛んでいく方向に目を向けると、其処には海面近くに透けているものの、海水を被ったのか何かのシルエットが浮かんでいた。

そのシルエットに5人は直ぐに何か理解した。一夏が乗ったバレットホークだと。

 

「まさか、銀の福音の狙いって」

 

「一夏さんですわ!? 急いで止めますわよ!」

 

そう叫び5人は銀の福音を止めるべくライフルやミサイルで攻撃する。

5人の攻撃に銀の福音は飛びながら光弾を生成し、背後から迫る5人に向け発射した。

回避しつつ攻撃するも、銀の福音はスピードを上げながら一夏へと迫る。

5人の中で遠距離攻撃を得意とするセシリアはスターライトMarkⅢで狙いをつける。

 

(絶対に当てますわ!)

 

そう思い、銀の福音にのみ集中する。そして狙いが定まり引き金を引こうとした瞬間

 

「セシリア、危ない!」

 

「えっ? っ!?」

 

デュノアからの警告にセシリアが顔を向けると、其処には自分に向かってくる光弾がもう間近と迫っており回避不可能であった。

光弾はセシリアへと命中し爆発、衝撃で飛ばされるセシリア。それと同時にセシリアが持っていたスターライトMarkⅢからレーザーが発射された。

レーザーは銀の福音に命中することなく、その横をすり抜けた。だが着弾地点が最悪だった。

着弾したのは一夏が乗ったバレットホークであった。着弾した瞬間…

 

どっかーーーーーーん!!!???!!!

 

と大きな爆発が発生したのだ。

突然の事に場は一瞬時が止まったように静寂に包まれた。爆発地点には一夏の姿は無く、何かの部品などが海面に浮かんでいるのみであった。そして教師部隊とフモッフ達が到着、呆然としていた専用機持ち達は教師達の怒声に我に返り、離脱したのだ。

 

 

 

 

 

「――――ということです」

 

ビクビクと震えつつ、若干涙目の簪からもたらされた報告に千冬と束は黙っていた。

暫しの沈黙の後、千冬が口を開いた。

 

「……今更識が報告した内容に嘘などはあるか?」

 

威圧しつつ簪の報告に虚偽があるか4人に問う千冬に4人は

 

「「「「……」」」」

 

誰一人口を開くことなく、否定も肯定もしなかった。その行動だけで、千冬と束は理解し、そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺意を抱いた。

 

 

「……更識、お前は補給と整備を受けろ。完了次第指揮所にて待機しておけ」

 

「えっと、私、だけですか?」

 

「そうだ。早く行け」

 

「は、はい」

 

千冬の淡々と言った指示に簪はビクビクしながら旅館へと向かう。行く際中、4人からは置いて行かないで。と言わんばかりの顔を簪へと向けてくるも、威圧する千冬と束がいる場に長居したくないと感じた簪は足早にその場を離れた。

残された4人は二人から放たれる威圧に足をガクガクと震えさせ、一刻も早くこの場から離れたいと思っていた。だがそれを2人は許さなかった。

 

「……これほどまでに貴様達を殺したいと思った事はないぞ」

 

「束さんもだよ。今すぐこの場でお前等を八つ裂きにして魚の餌にしてやりたいと思った事はないよ」

 

その言葉に4人は先程まで以上に体を振るわせ、奥歯をガチガチと鳴らし始めた。

 

「……だが、私も一人の姉の前に教師だ。お前等を殺す事はしない。だがそれ相応の罰を与える」

 

そう言い千冬はギロリと4人を睨みつける。

 

「まず現時刻をもってお前達4人を作戦から外す。指示あるまで別室で待機させる」

「次に、お前達が今まで起こした問題行動をお前達の政府に報告する。その後政府と学園上層部とで話し合いを行いお前達の罰則を決める」

「最悪退学か、代表候補生資格剥奪はあるとは考えておけ。そしてISの取り上げ、これは確実にあると思え!」

 

「ま、待って下さい! なんで私達だけなんですか!?」

 

「そ、そうです! さっきの更識さんだって命令違反を犯していますわ!」

 

鈴達は自分達だけではなく、簪も悪いと言うも

 

「更識はお前達が勝手に離脱したから、一人では軍事ISに対抗できないと判断したうえでの離脱だ。故にあいつに罰則はない! お前等は一人で軍事ISと戦える技量を持っているのかっ?」

 

そう怒鳴られ4人は何も言えず押し黙ってしまった。

 

「兎に角、貴様等は作戦から外す。フモッフ、こいつらを何処かの空き部屋に放り込んでおけ!」

 

「ふもっふ!」

 

千冬の指示にフモッフ達はライフルを鈴達へと向け、旅館に向かって歩く様に指示して連行していった。




次回予告
作戦は失敗に終わり、一夏負傷と言う結果となった。
指揮所に戻った千冬と束は帰還した教師部隊と次の一手を考えることに。
そんな中、別室に連行された専用機持ち4人は、作戦を外された事に納得できず独自で動き出す。

次回
省みない者達


「実弾の使用を許可する! 奴らを止めろ!!」

次回投稿してほしい小説(詳細は活動報告の「次回作一覧」を見てください)

  • ①IS×ウォーシップガンナー2
  • ②IS×メタルギア
  • ③IS×オリジナルストーリー①
  • ④IS×オリジナルストーリー②
  • ⑤IS×クロスアンジュ
  • ⑥IS×タイムクライシス
  • ⑦IS×オリジナルストーリー③
  • ⑧IS×人狼 JIN-ROH
  • ⑨IS×東方project
  • ⑩IS×オリストーリー④
  • ⑪IS×R-type
  • ⑫俺ガイル×IS
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