浜辺から指揮所へと戻って来た千冬達。
その雰囲気は悪く、重たい空気であった。モニターを監視している真耶達も重い空気の中自分達の仕事をしていく。
すると指揮所の襖が開き中へと入って来た人物に千冬は顔を険しくさせる。
「新山先生、その怪我は?」
「…目標を停止させるために、少々無茶をした代償です。お気になさらず」
新山の腕や脇腹には包帯が巻かれており、若干血が滲んでいたのだ。
「…分かりました。では報告を聞いても?」
「はい。専用機持ち達が離脱後、教師部隊で銀の福音に攻撃しました。中遠距離で攻撃を行い、何とか目標を機能停止寸前まで追い詰めたのですが、自己修復モードに入られて海中に逃げられ、追撃を考えたのですが此方も被害が大きかったため、撤退しました」
「そうですか。被害状況は?」
「8人中3名が重傷、4名が軽傷。ISは3機が大破状態、残り5機は損傷軽微です」
「…此方も手痛い状態だな」
「…はい」
新山からもたらされた報告に千冬やその場にいた全員が苦い顔を浮かべていた。
「それで、専用機持ち達の方は?」
「…こっちは5人は軽傷だが、織斑は重傷で、今も意識不明状態だ」
「そ、そんな…」
「それと、織斑が撃墜された原因が、あの馬鹿共のいらない行動が原因だと判明した為、4名を作戦から外し、学園に戻り次第罰則を与えることになりました」
「また彼女達ですか? こんな時にまで一体何を考えているんですか、彼女達は!?」
「そんな事私が知りたいっ! ……申し訳ない新山先生、突然怒鳴ったりして」
新山の言葉に大声で怒鳴り、直ぐに怒鳴った事を謝る千冬。その姿に新山は、お気になさらず。と言葉を掛ける。
新山自身も、千冬の心情には同情していた。
本来なら無事に戻って来れるはずだった弟が、味方のいらない行動の所為で撃墜となったのだ。苛立ちもするし、不安などで一杯なのだとすぐに察せられた。
「兎に角、次の一手を考えないと。束、あのISを止めるための武器はもう無いのか?」
「あの一丁だけだよ。文句あるならいっくんに誤射してビームライフルを撃ち抜いたあの金髪ドリルに文句を言ってよ」
苛立った表情で告げる束に、千冬はチッと舌打ちを放ち、部屋にいた更識は悲しい表情を浮かべ、新山は誤射と言う言葉に目を見開く。
「ご、誤射って、それに金髪ドリルって、もしかしてオルコットさんの事ですか?」
「そうだよ。あの金髪ドリルが、誤射していっくんが持っていたビームライフルを撃ち抜いたんだよ。結果ビームライフルは爆発、持っていたいっくんは爆風に巻き込まれた。ISがフルスキンだったお陰で、軽度の火傷と打撲で済んだけど、もし皮膚が見えている状態だったら…」
それ以上束が言わなかったが、それだけで新山は想像するのに難しくは無かった。
鈴やオルコットたちの様に肌が露出している状態だったら、もっとひどい状態だったかもしれないと。
「兎に角もうビームライフルが無い以上、今持っている最大限の火力をぶつけるしかないよ」
「……今現状ウチで出せる戦力は、更識と教師部隊の5人だけだ。山田先生、日本の自衛隊とアメリカの軍はまだ来ないのか?」
「はい。到着予定時刻を聞いても曖昧で、しかも指示があちこち飛び交っておりどれが正しい事なのか分からず、右往左往している状態だと」
「……全く何をやっているんだ、政府の連中は」
「はぁ、こう言った事態に想定できても、実際に動けるかどうかと言ったら無理だからね」
「クッ。そうなったらもううちの連中だけでやるしかないぞ」
「だね。しょうがない、束さんは破損したISを出来るだけ修理しておくよ」
「頼む。乗る人物はウチに残っている教師部隊から選出しよう。更識、拡張領域一杯に弾薬やSE回復パックを入れておけ」
「分かりました」
そう言い千冬達は次の一手を取るべく、作戦会議をしていく。
その頃旅館の本館から離れた位置に建てられている離れには入口にモッフ2体が警備して立っていた。彼等が何故其処を警備しているのかと言うと、その建物内にはあの4人が拘束されているからだ。
故意ではないとはいえ、一夏撃墜の原因を作った為4人は千冬から作戦から外された上に、学園に戻り次第政府を交えながら罰則を与えることを告げられたのだ。
普通なら自分達がしでかしたことをしっかりと反省し、大人しくするものなのだが彼女達はと言うと
「あぁ、もう何でこうなるのよ…」
「…仕方がありませんわ。今回ばかりは私達が悪いのですから」
「でも、このまま此処に居たら僕達政府から罰せられるんだよ?」
「そうだな。それだけは何とかしないと」
「……だったらやる事は一つしかないでしょ」
鈴の言葉に3人は顔をしかめる。4人が考えている事、それは銀の福音を自分達の手で墜とす事だった。
「それが出来たらやっておりますわ」
「そうだよ。僕達のISにはSEが無いんだよ」
「…あぁ、そうだった。もうどうしたらいいのよ!」
セシリアとデュノアの言葉に鈴は悔しそうに顔を歪める。
そう、彼女達が持っている専用機全てSEが無いのだ。
ではここで一つ疑問が浮かぶ。何故問題を起こし、作戦から外された彼女達がSEが無い状態とはいえISを所持しているのか。それはISを取り上げた場合、それを保管しておく場所が無い為だ。
本来だったら反省房や独居房に入れられる際は、ISを使って脱走などを防ぐ為ISを取り上げる。取り上げた後、ISは専用の鍵付きの箱に入れられ、更に学園長と千冬を含む極少数の教師しか番号を知らない特殊な金庫に仕舞い、反省房から出て来るまで保管しておく。
だが、現在彼女達が居るのはそう言った保管場所がない旅館である。教師などが保管しておく事も出来るが、専用機は言わば国家の技術を掻き集めて作られた物である。その為何らかの原因で専用機の秘匿情報が流出してしまった場合、それを保管していた教師及び千冬、そしてIS学園の責任となってしまう。
その為専用機に積んでいたSEを抜き、稼働不可状態にして彼女たち自身に保管させることにしたのだ。
「SEを回復させようにも、ある場所と言えば本館の隅に設置されている、IS備品置き場しかありませんわ。ですがあそこには絶対モッフさんとかが警備されておりますわ」
「そうだね。向こうは戦闘のプロ、こっちはラウラ以外只の一般人だよ。すぐに制圧されるよ」
セシリアとデュノアの説明にで鈴はフガァー!と頭をガシガシと掻く。するとボーデヴィッヒがスッと手を挙げる。
「ならISが使えれば問題ないよな?」
「「「はぁ?」」」
突然の発言に3人はあっけからんと言った表情を浮かべる。
「使えればって、SEをどうするのよ!」
「問題ない。SE回復パックを使えばいい」
「SE回復パックって、確か携行可能なSEを補充させるものだよね? 何で持ってるの?」
「私は軍人だ。軍事作戦の場合、SEを補給をしに戻る余裕などない場合はこう言った回復パックを使って補給して前線で戦い続けるよう訓練を受けている。その為今回の作戦でも使えると思って載せておいた」
「それ、幾つあるのですの?」
「2つだ。一つで半分ほど回復する。でだ、作戦がある。聞くか?」
「……えぇ、乗ってやるわ。あのISを墜とせば、罰なんて無くなるはずだもの」
ボーデヴィッヒの作戦を聞くべく4人は円形となる。
4人がそんな作戦を考えているなど知らないモッフ達は警備を続けていた。すると
『~~~~♪』
と部屋の中から大音量の音楽が流れだした。モッフ(20号)とモッフ(41号)は首を傾げつつ、警戒心を抱きゴム銃を構えつつ部屋の扉を開け、中へと入る。だが、其処には4人の姿は無くもぬけの殻であった。あったのは大音量の音楽が流れているスマホだけだった。
「ふもぉ!?」
モッフ(20号)と(41号)は慌てて部屋中の襖や天井裏を調べるも、居らず直ぐに無線で報告する。すると40号はある可能性を思いつき床に張られている畳の一つを持ち上げる。すると張られている板が外れていた。
外された板の隙間は狭く人一人が入れる程度の隙間しかない為、モッフの図体では入れなかった。其処でモッフは直ぐにサーマルスキャンモードにして穴を中心に、周囲を確認すると離れた位置から4人の人間が床を這って外へと出ようとしていた。
41号は直ぐに20号に脱走している!と言いその後を追いかけ始めた。
脱走に成功した4人は走りISの備品置き場に到着すると、案の定2体のモッフが居りすぐさまライフルを構えてきた。それに対して鈴が
「邪魔っ!」
そう叫びISを部分展開して龍砲を展開する。突如展開された龍砲に2体は驚いた表情を浮かべ回避しようとするも間に合わず龍砲から放たれた圧縮空気に巻き込まれ遠くに飛ばされた。
「ふ、ふもぉおぉ……」
一体は目を回しながら行動不能状態になり、もう一体はギリギリ行動出来るも反撃が出来る様な状態では無かった。その為無線で応援を呼ぶ。
「
無線でそう告げたと同時に機能が停止し、ガクリと倒れる。
無線から届いた脱走した情報、そして備品置き場が襲撃され2体との交信が途絶えた事に、フモッフは目を鋭くさせすぐさま千冬、そして束に連絡を入れた。
「「―――はぁ!?」」
突如近場にて起きた爆音に怪訝そうな顔を浮かべていた千冬達に、フモッフから来た連絡を聞いて驚きの表情を浮かべた。
「あの馬鹿共! 一体何を考えているんだ!」
「脱走した上に、モッフ君を傷付けただと。あいつ等マジで許さねぇ」
2人の怒りにあの4人何やらかしているんだ!とその場にいた教師達と簪は思う。そして千冬は直ぐにフモッフにあの許可を下ろすのであった。
「フモッフ! 実弾の使用を許可する! 但し殺すな!それ以外であればどんな手を使ってでも奴らを拘束しろ!」
『ふもっふ!』
千冬からの指示にフモッフは直ぐに実行に移し始めた。
無線からフモッフと千冬から実弾の使用許可が下りた為、4人を追いかけていた41号は直ぐにゴム弾が装填されたライフルからマガジンを抜き、実弾を装填する。そして4人が居る備品置き場に到着し4人を探すと丁度補給を終えようとしているところであった。41号は直ぐ様ライフルを構える。
【おい、ISを解除して地面に伏せろ! 従わない場合は発砲する!】
空中投影でそう警告するも
「邪魔すんな!」
鈴がそう叫び龍砲を発射する。41号はすぐさま物陰に隠れ圧縮空気の砲弾を避ける。空気の砲弾は壁にぶつかり周辺の草木や柵を吹き飛ばす。
41号は反撃するべくライフルを構え引き金を引く。
勿論殺さないために足を狙って撃つも、鈴はすぐさまISを完全展開した為ライフル弾は装甲に弾かれカーンと金属音が鳴り響く。
そんな中、41号から放たれた弾が実弾だったことに鈴達は驚いた表情を浮かべていた。
「ウソでしょ!? アイツ実弾を撃って来たわよ!」
「ま、まさか射殺許可が?」
「そ、そんな!?」
「此処で撃たれる訳にはいかない。行くぞ!」
そう叫び4人はスラスターを吹かして空に飛びあがり海へと向かって飛んで行く。41号は逃がすまいと引き金を引き弾をばら撒くも逃がしてしまった。
4人が備品置き場から飛び立ち旅館前の道路を越えようとしていた。
「急ぐぞ!」
「分かってるわよ!」
「とりあえず回収できるだけの物資は詰め込めましたわ。急いで《ビー、ビー! ミサイルにロックされています。回避を》はぁ!?」
オルコットは機体から告げられる警告に驚きレーザー照射している物を確認すると、それは旅館の近くでFIM-92こと携行型地対空ミサイル発射装置を構えたモッフ達が居り、それぞれミサイルを発射してきた。
放たれたミサイルを4人は回避したり、ライフルでミサイルを撃ち落とす。それでも4人は止まることなく強行して進んでいき遂に射程外に逃げられ、その場にいたモッフ達は怒りの表情を浮かべるのであった。
【申し訳ありません。脱走者4名を取り逃がしました】
千冬に取り逃がした悔しさと不甲斐無いと言った表情を浮かべたフモッフからの報告が入り、千冬達も悔しそうな表情を浮かべるも、奮闘したフモッフ達を労いつつあの4人を確実に退学にしてやると心の中で決心するのであった。
その頃、一夏が眠っている部屋では治療を終えた一夏が布団で眠っていた。
すると一夏の指が僅かにピクリと動く。
次回予告
撃墜し意識不明の状態の一夏。
彼は銀の福音を助けたいと考えていた。だが自分の今の力では助けられない事に嘆いていた。
そんな姿を傍で見守っていたアイラはずっと渡すか迷い続けていた、ある物を一夏の前に差し出す。
次回
墜ちた希望に、新たな翼を
~「一夏、アンタには私が居る。私はアンタを生涯支え続けるって決めているの。こんなところで挫けるんじゃないわよ」~
次回投稿してほしい小説(詳細は活動報告の「次回作一覧」を見てください)
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①IS×ウォーシップガンナー2
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②IS×メタルギア
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③IS×オリジナルストーリー①
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④IS×オリジナルストーリー②
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⑤IS×クロスアンジュ
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⑥IS×タイムクライシス
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⑦IS×オリジナルストーリー③
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⑧IS×人狼 JIN-ROH
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⑨IS×東方project
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⑩IS×オリストーリー④
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⑪IS×R-type
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⑫俺ガイル×IS