女性恐怖症の一夏君   作:のんびり日和

46 / 67
41話

旅館から専用機持ち達が逃走した頃、旅館のとある一室。其処には武装したモッフ達が最大警戒状態で警戒していた。

部屋の中には布団が敷かれ、其処には一夏が寝かされていた。

旅館へと搬送された後、伊田が治療を施し布団に寝かされるも意識が戻らなかった。

 

意識が無い一夏、実は彼はISの精神世界にいた。

 

「ヒック…うぅうぅうう」

 

涙を流しながら一夏は小さく蹲っていた。ポロポロと涙を流す一夏に、アイラはその傍で寄り添う事しか出来なかった。

 

「一夏…」

 

「うぅうぅう、ご、めんねアイラ。ぼ、僕がもっと気を付けてたら、アイラが傷つく事なんて無かったのにぃ」

 

一夏は墜ちた原因が自分にある、そう思い自責の念にかられていたのだ。

 

「そんな訳ないでしょ! 堕ちた原因はアンタじゃなくてあのオルコットが誤射したのが原因なのよ!」

 

「でも、僕がライフルを拡張領域に仕舞っていれば…」

 

「仕舞っていても誤射を受けるのは確実だったわ! それに例えオルコットの誤射を避けても接近してきていたゴスペルにやられていた可能性だってあったわ。いえ、可能性じゃないわ、確実によ」

 

「……えっ?」

 

「撤退した際、ゴスペルと私たちの間の距離は確実に縮められていたのよ。ライフルが使えない以上手持ちの武器で戦うしかなかったけど、向こうと私達とでは力の差があったわ。だから例え誤射を避けられたとしてもゴスペルとの戦闘で負けていたかもしれないわ」

 

「……そうなんだ」

 

「一夏、アンタはどうしたいの?」

 

「え?」

 

「アンタも聞こえてたんでしょ? あのゴスペルからの悲痛な願いを」

 

アイラの言葉に一夏は小さく頷く。

一夏とアイラが聞いたゴスペルからの悲痛な願い、それは撃墜される前の撤退途中にて聞こえた事だった。

 

『ナタルを…、助け、て』

 

途切れ途切れで聞こえてきそれに、一夏はどうにかしたいという気持ちはあった。だが

 

「僕も、助けたいって思ってるよ。でも、僕の力じゃ…。それに、またアイラが傷つくのは見たくないよぉ」

 

そう言うとまたポロポロと涙を零す一夏。

その姿にアイラは顔を俯かせる。そして、何かを決心し一夏の前に立つ。

 

「一夏、顔を上げなさい」

 

そう言われ一夏はそっと顔を上げると、何かを決意したのか真剣な表情を浮かべたアイラ。顔を上げた一夏にアイラはそっと右手を差し出す。すると突如その右手から光の球が現れた。

 

「あ、アイラ、それは?」

 

「これはバレットホークの単一機能(ワンオフアビリティー)を展開するための鍵よ」

 

「ワンオフアビリティーの鍵?」

 

アイラの突然の言葉に一夏は驚いた表情を浮かべアイラの右手で煌めく光の球を見つめる。光は温かいような冷たいような雰囲気を醸し出していた。

 

「で、でもどうしてワンオフアビリティーに鍵を?」

 

一夏の言葉にアイラは視線を落とし、暗い影を見せる。

 

「……このワンオフアビリティーは他のISに積んであるようなワンオフアビリティーなんかよりも強力で、そして危険な物なの」

 

「危険?」

 

「そう。使い方を間違えれば確実に死人を出してしまうほどのね」

 

その言葉に一夏は絶句してしまう。

 

「そんな危ない物をアンタに渡してしまっては、使いこなせない上にもしかしたら取り返しのつかない事になってしまうんじゃないのか。と思って鍵をかけて封印しておいたの。でも、ゴスペルを止めること。そして乗っているパイロットを助けるためにはこの力が必要だと思った。だからこれをアンタに渡そうと思い立ったのよ」

 

「……アイラは、今の僕にそれを使いこなせると思ってるの?」

 

「正直な話、今のアンタでは無理だと思うわ」

 

「そ、そう「でもね」え?」

 

「アンタには私がついている。どんな障害が来ようともアンタと私となら一緒に乗り越えてきたでしょ?」

 

二ッと笑みを浮かべ、一夏を見つめる。アイラの笑みに一夏は茫然と言った表情を浮かべるも、心の中で自然と確かにと気持ちを抱き始める。

 

「…そうだね。うん。アイラ、その鍵、ちょうだい」

 

「えぇ、はい」

 

そう言いアイラは一夏に光の球を差し出す。一夏はそっとその光の球に手を翳す。すると眩い光が一夏とアイラを包む。

 

 

 

「……ん」

 

一夏は目をゆっくりと開け辺りを見渡す。木の天井に柱に一夏は布団に寝かされている事に気付きゆっくりと体を起こす。

 

[起きたわね一夏]

 

「うん。アイラ、ワンオフアビリティーは?」

 

[ロックは解除されているわ。それと、ついでに形態移行もしておいたわ]

 

そう言われえ?と一夏は驚いた表情を浮かべる中、目の前にモニターが表示される。モニターには

 

『形態移行完了。バレットホーク、ワンオフアビリティー用手腕に変形完了』

 

と表示されていた。

 

「ど、どうして形態移行を?」

 

[前の機体だとワンオフアビリティーには耐えきれないのよ。だからワンオフアビリティー用のパーツに変形させる為形態移行させたのよ]

 

「そ、そうなんだ」

 

[えぇ。さぁ、ゴスペルを止めに行くわよ]

 

「うん!」

 

アイラの掛け声に答え一夏は布団から立ち上がり近くにたたまれて置かれていた服に着替え、外へと行こうと襖を開けようとした瞬間

 

「何処に行く気だい、一夏君」

 

「あっ。い、伊田さん」

 

開けようとした襖が突如開かれ、目の前に伊田が立っていた。伊田の登場にアイラはあっちゃー。と顔に手を当て、一夏は驚いた表情を浮かべる。

 

「もう一回聞くよ。何処に行く気だい?」

 

「……ゴスペルを止めにです」

 

「一夏君、今の君の状態は負傷している身だ。主治医としては行かせる訳には「でも、止めに行かないといけないんです! ゴスペルが、そう願ってるから!」っ!?」

 

一夏の口から出た言葉に、今度は伊田が驚いた表情を浮かべ真剣な表情を一夏へと向ける。

 

「ゴスペルの願いって。まさか、ゴスペルの人格が表に出ているのかい?」

 

「…其処までは分かりません。けど、撤退している時にゴスペルの声だと思うのが聞こえたんです。ナタルを助けて。って」

 

一夏の言葉に伊田は真剣な表情で聞き、暫し思案に耽る。そして深い溜息を吐き一夏を見つめる。

 

「一夏君、医者として君を行かせる訳にはいかない」

 

「……でも「けどそれはあくまで医者としてだ。人としてなら行かせるよ」なら!」

 

「彼女が容認するとは思えないけどね…」

 

そう言い伊田は体を横にずらすと、そっと千冬が襖の横から現れた。

千冬は険しい表情を浮かべ一夏を見つめる。

 

「織斑、お前は負傷しているんだ。そんな体で行ったら今度こそ死ぬかもしれなんだぞ」

 

「……」

 

「私は、そんな無茶をしてまで行ってほしくは「お願い、お姉ちゃん。行かせて」っ!?」

 

行かせまいと若干の圧を出しながら話す千冬を遮る様に一夏は千冬の目を見つめて頼み込む。その行動には千冬は驚いた表情を浮かべる。姉とは言え女性と目を合わせるのは女性恐怖症の一夏にとっては自殺行為に等しい。

それは確実に発作を起こすからだ。だが一夏は脚を震わせ、手を強く握りしめながらも真剣な表情で千冬の目を見つめ懇願する。

 

「ご、ゴスペルに頼まれたから。乗っている人を助けてって。だから、行かせて!」

 

その真剣な表情な頼みに千冬は頭の中で色々と葛藤を続ける。現状の戦力だけでは倒せない確率は高い。一夏が行けば僅かながら勝率は上がる。だが行った後今度は負傷だけでは済まない事態になるんじゃないかと言う思いなどで交差していた。

暫しの沈黙が流れた後、遂に千冬が口を開く。

 

「……分かった。だが織斑、絶対に生きて帰って来い。危険だと思ったら直ぐに逃げろ。これは絶対命令だ。いいな?」

 

「はい!」

 

「なら、砂浜に行け。今教師部隊と更識が出撃準備をしている。合流して一緒に行け」

 

「分かりました」

 

そう言い一夏は一礼して部屋から出て行き足早に砂浜へと向かう。残った千冬と伊田はその背を見つめる。

 

「強くなったな、一夏は」

 

「あぁ、お前に面と向かって懇願したんだ。成長しているよ、アイツは」

 

遠くなっていく一夏に千冬は嬉しさと悲しさの気持ちを抱きつつも、息を思いっきり吐き気持ちを切り替える。

 

「それじゃあ私は指揮所に戻って私が出来ることをする」

 

「じゃあ俺も万が一に備えて負傷者を受け入れられるよう準備しておくよ」

 

「頼んだ」

 

そう言いそれぞれやるべき事をするべく行動を開始しる。

指揮所へと戻って来た千冬は現状の戦力を確認するべく真耶に頼み戦力リストを表示してもらう。

 

(現状戦力は一夏と更識の専用機が2機、そして教師部隊の5機。計7機。それとSE回復パックは6個か。…チッ。あの馬鹿共が)

 

リストの表示に険しい表情を浮かべる千冬。臨海学校でのIS訓練用にと持ってきた物資のほとんどが脱走した鈴達に強奪された為、SE回復パックが6個しかない上に教師部隊の一部はグレネードランチャーやライフルの弾が不足している状態だった。破損したISや訓練用のISに搭載されている武器からも掻き集めたが、それでも弾薬は足りなかったのだ。

 

険しい表情でリストを見ていた千冬に真耶は通信が入っている事を告げられ、繋ぐように指示するとディスプレイに新山の顔が表示される。

 

『こちら新山。これより出撃します』

 

「了解した。2人の事を頼みます新山先生」

 

『勿論です』

 

そう言い通信が切られ、表示されているモニターの一つにあるレーダーから砂浜から飛び発つISが表示される。

千冬達は無事に彼女達が戻ってくる事を祈る。すると部屋の襖が開かれ、千冬はそちらに顔を向けると束が其処にいた。

 

「束、一体どうした?」

 

「ちょっとお願いがあるんだぁ」

 

「お願いだと? 悪いが今お前の願いを聞いてる暇は「いっくん達を無事に帰って来て貰う為の事なの」…分かった。山田先生、少し離れます」

 

「はい、分かりました」

 

そう言い千冬は断りを入れてから部屋を出て廊下の端に束と対峙する。

 

「それで願いとは何だ?」

 

「ちょっとある子を物資置き場に連れて来てほしいんだぁ」

 

「ある子だと? そんな頼みで一夏達を無事に帰ってくるのか?」

 

「勿論。だって――――」

 

束の言葉に千冬は驚いた表情を浮かべた後、鋭い視線を向ける。

 

「…分かった。だが本人が決める事だという事を忘れるなよ」

 

「勿論。駄目だったら他の手を考えるよ」

 

そう言われ千冬は束に頼まれた事を叶えるべくその場を離れていく。残された束は先程と打って変わって笑顔から真剣な表情を浮かべる。

 

「君なら引き受けてくれるよね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()




次回予告
突如千冬に呼ばれた本音。そして連れて来られた物資置き場には束が居り彼女からある願いを頼まれる。
束の願いとは一体? そして無事に帰ってくるための方法とは?

次回
思いだけでも、力だけでも。

~「イッチーやかんちゃん。私の大切な人を守りたい!」~

次回投稿してほしい小説(詳細は活動報告の「次回作一覧」を見てください)

  • ①IS×ウォーシップガンナー2
  • ②IS×メタルギア
  • ③IS×オリジナルストーリー①
  • ④IS×オリジナルストーリー②
  • ⑤IS×クロスアンジュ
  • ⑥IS×タイムクライシス
  • ⑦IS×オリジナルストーリー③
  • ⑧IS×人狼 JIN-ROH
  • ⑨IS×東方project
  • ⑩IS×オリストーリー④
  • ⑪IS×R-type
  • ⑫俺ガイル×IS
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。