女性恐怖症の一夏君   作:のんのんびより

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4話

ピットから飛び出した一夏が乗るバレットホーク。先に出ていたセシリアはようやく出てきた一夏に怪訝そうな顔を浮かべる。

 

「フルスキン? ふん、そんな重そうなISでこのブルーティアーズに勝てるとお思いですの? どうみても勝敗など決しておりますわ。今その場で土下座して許しを請いましたら赦してあげなくもありませんわよ?」

 

実に上から目線の喋りにアリーナに居た多くの生徒達が不快な顔付になっていた。

 

「何よあの上から目線。まだ勝負も始まってもいないのに、勝った気になってさ」

 

「本当よ。まだ織斑君が弱いって決まったわけじゃないのに」

 

「で、でも織斑君女性恐怖症っていうハンディキャップを抱えているんだよ? ほ、本当に大丈夫かな?」

 

一人の生徒がそう零すと、皆顔をしかめながら俯く。

 

「…分からないわ。けど、今は織斑君を信じるしかないじゃない」

 

「う、うん」

 

1組の生徒達は一夏がせめてセシリアに一発お見舞いすることが出来ればそれで上出来だと思っていた。

そんな中、一夏はと言うとただ黙って立っていた。

 

「……何か言ったらどうですの?」

 

セシリアはそう問うが一夏は何も言わずただ前だけを見つめていた。

 

「ッ!? もう怒りましたわ! 完膚なきまで叩きのめしてあげますわ!」

 

怒りの表情を浮かべながら怒鳴るセシリア。そんな姿でも一夏は何も言わなかった。

 

 

その訳が一夏の目からはブルーティアーズに乗っているセシリアは()()()()()()にしか見えていないからだ。更に観客席にいる生徒達も訓練用人形として映っていた。歓声は普通の話し声程度で聞こえるも、セシリアの声は全く聞こえていなかったのだ。

 

〈あ、あの人なんか、怒ってる?〉

 

〈……さぁ? 何言ってるか全然聞こえてないから分からないわ〉

 

一夏は地団駄を踏むような動きをするセシリアに、怒っているのではとアイラに聞くも知らないと返す。だが本当はアイラには聞こえていた。もし今アイラの姿が一夏に見えていたら恐らく怯えた表情を浮かべるだろう。それだけ彼女の顔は怒りの表情で満ちていた。

 

〈(いい度胸ね、金髪。私の相棒に向かって罵声を浴びせた事。後悔させてやるわ)〉

 

そう思い鋭い視線でセシリアを見つめる。

そんな中、一夏が居たピットではと言うと

 

【おのれ、あの金髪ドリルがぁ。あの時坊ちゃまの御慈悲が無ければ死んでいたというのにぃ。今すぐそのドリル引き千切ってやろうかぁ。(▼皿▼メ)ノ】

 

ピットに備えられているモニターを壊さんと両手で掴むメサ。その姿からはどす黒いオーラが噴き出ていた。

 

「わ、わぁ~。め、メサメサがキレてるぅ。お、織斑先生どうし「うむ、オルコットには戻ってきたら私と1対1で模擬戦をするか。よし、そうしよぉ」わ、わ、わぁ~こっちもキレてるぅ」

 

本音は千冬にメサを止めてもらおうとするも、千冬は怒りのゲージが振り切れてしまったのか笑顔を浮かべ恐ろしい事を零していた。

 

『ではこれより、セシリア・オルコット対織斑一夏君との対戦を行います。カウント、3…2…1、試合開始!』

 

アナウンスが入ると同時にセシリアは高く舞い上がり自身のISに搭載されている無線兵器BITを展開する。

 

「さぁ、惨めに墜ちなさい!」

 

そう叫びながら攻撃を開始してくる。一夏はそれを回避しつつ拡張領域からハンターM202-BD60㎜アサルトライフルを構えながら撃つ。

 

「アイラ、あの飛んでるのって、確か…」

 

〈えぇ。脳波を使って操作する物よ。けど、どうやら彼女は未熟みたいね〉

 

「え? ど、どう言う事?」

 

一夏はアイラが何故セシリアを未熟と言ったのか首を傾げると、アイツを見なさいと言われる一夏。

 

〈今のところ、彼女があそこまで上がってから動いた気配はあるかしら?〉

 

「え? えっと、無かったと思う。そ、それじゃあ」

 

〈えぇ。彼女はBITを動かしている最中はまともに機体を動かせないからあそこから動けないのよ〉

 

そう言われ一夏はハッと理解した表情を浮かべる。

 

「そ、それじゃあ彼女に向かって攻撃すれば――」

 

〈えぇ。向こうは避けるので精一杯になる。そうなればBITなんて操縦している余裕なんて無くなるわ。どうすべきか、分かるわね一夏?〉

 

「う、うん!」

 

一夏はアイラの言葉の真意を理解し、ブースターでセシリアの攻撃を躱ししつつ準備を行う。

その頃セシリアは全く自身の攻撃が当たらない事に苛立ちを募らせていた。

 

(な、何故当たりませんの! わ、私はイギリスの代表候補生。そして学年主席ですのよ! そ、それなのにた、たかがIS初心者の男などに手間取るなど!)

 

怒りを浮かべながら攻撃を続けるセシリア。だが明らかにその攻撃は雑になり始めていた。

 

〈あ~ら、怒りで攻撃が雑になってるわね。一夏、サブアームの操縦権を私に回して〉

 

「う、うん。ぶ、武装出すよ」

 

そう言い一夏は背部にあるウイング、更に肩や腰、さらに脚部からサブアームが出てきてそれぞれのアームの目の前に武器が出される。

 

「なっ!?」

 

その光景にセシリアは驚きの余り声を零す。無論アリーナに居た生徒達も同様だった。突然サブアームが現れそれぞれ武器を手に取っているからだ。

 

「決まれぇ!」

 

そう叫び一夏はトリガーを引くと、それに続いてサブアームの火器も火を噴いた。大量に向かってくる弾丸にセシリアはBITをコントロールするのを止め回避行動に移る。セシリアはBITを自身の周りで飛ばしながら攻撃を行うが、向こうは攻撃しながら回避を行う。更にサブアームは常に自身を狙って攻撃をおこなってくる。

 

(な、何故ですの!? サブアームも同じように脳から送られてくる波長で動かしているはず。だから自身の動きには若干のタイムラグが生まれるはずだというのに、そ、それがい、一切無いとはど、どう言う事なんですの!?)

 

セシリアの見解は確かに正しい。人間は一度に2つの事を考え行動するのは難しい。故にセシリアはBITを動かしている最中は動きが止まってしまうが、BITを使い自身で狙い撃てる位置まで誘導するために絶えず攻撃の手を止めない戦法をとっていた。

だが一夏は機体を動かしながらサブアームを動かしている。つまり自分が出来ない事を平然と出来ていると思い込み、セシリアの表情に焦りの表情が生まれる。

 

だが実際はサブアームを動かしているのはコアにいるアイラであり、一夏は自身の機体だけ動かしているだけに過ぎない。

つまりバレットホークはコアにいるアイラ、そして操縦している一夏。この二人が信頼し合っているからこそ初めて本領が発揮される機体なのである。

 

〈あの金髪、どうやらアンタの動きに驚き過ぎて攻撃が明後日の方向に向かっていたりしているわ。一夏、バタリングラムであいつ叩き落してやりなさい〉

 

「うん」

 

一夏は右腕のアサルトライフルを弾切れになり沈黙していたサブアームに託し、拡張領域から破城槌を取り出す。

そして一気にブースターでセシリアに接近する。近付いてくる一夏にセシリアは恐怖しBITで攻撃しようとするもサブアームの火器によって落される。

 

そして高く飛び上がりバタリングラムを構える一夏。セシリアは引き攣っていた顔から笑みを浮かべる。

 

「残念でしたわね。BITは6機ありましてよ!」

 

そう叫びミサイル型のBITを放ってくる。BITは一夏の元に向かい爆発四散する。

それを見た滲み出ていた汗を流しながら笑う。

その時、爆発した黒煙から目を放した瞬間、セシリアの命運は決まった。

 

「ふ、ふん。ま、まぁここまで出来たことは褒めてあげますが、やはり勝利するのはこの「てやぁああ!」ガハッ!!?」

 

誰も聞いていないにもかかわらず話すセシリアに、一夏は躊躇いもなくバタリングラムを叩き込む。叩き落される直前、セシリアが見えたのは脚部から伸びるアームが持っているマシンガンが自身を狙っている光景だったが、その前に地面に着くのが先で強い衝撃と共にセシリアは意識を手放した。

 

『そこまでぇ! セシリア・オルコットさんが戦闘不能になりましたので、勝者は織斑一夏君です!』

 

アナウンスがそう告げると、アリーナに居た多くの生徒達が歓声を高々に上げた。

音量が下げられているが歓声が上がっている事に一夏は照れた表情を浮かべ、そそくさとピットへと戻ろうとするが、ふと地面に横たわっているセシリアの方に目を向ける。

 

「か、彼女運んだほうが〈教師が来るから放っておきなさい〉で、でも〈い・い・か・ら!〉は、はひぃ!」

 

アイラからの圧力に一夏は涙目で返事してピットへと引っ込んだ。その後セシリアは教師がやってきて回収された。

ピットへと戻って来た一夏。出迎えたのは

 

【流石です坊ちゃまぁ! 坊ちゃまのご勇姿、4K映像で録画しておきましたぁ!ヤッタァー!\(`∇\)(/`∇)/ヤッタァー!】

 

「よくやったぞ、一夏。それとメサよ、その映像後で私にも送ってくれ」

 

「イッチー、カッコよかったよぉ!」

 

と、桜の紙吹雪をまきながら出迎えるメサと普通に喜んで出迎える本音。そして笑顔で迎え、メサが録画した映像を送って貰おうと頼む千冬。

 

 

「う、うん。ただいま」

 

「さて、一夏。専用機を持つ者にはこのぶ厚い本を渡しておく。後で目を通しておけよ」

 

「は、はい」(お、重い…)

 

手渡されたぶ厚い本を渡され一夏はプルプルと腕を震わせるが、直ぐに拡張領域へと仕舞いこむ。

 

「さて、後は教師の『ガンガン!』……一夏、ちょっと此処で待って居ろ」

 

突然ピットと廊下を繋ぐ扉が叩かれ、千冬は直ぐに誰が叩いたのか察し出席簿を片手に扉へと向かい開ける。

扉が開くと其処には箒が立っていた。

 

「一夏! なんだあのた「フンッ!」痛っ!!??」

 

怒りの形相で一夏を怒鳴っていた箒。だが開いた先に居た千冬の出席簿によって思いっきり頭をしばかれ頭を抑えながら蹲る。

 

「まったく。貴様は理解するという言葉を知らんのか? 何度も私の忠告を無視するとはいい度胸だ。説教するから来い。織斑、もう今日は上がっていいぞ。後は教師の仕事だからな」

 

そう言い蹲る箒の首根っこを掴み引きずりながらピットから去っていた。

突然の事に一夏は茫然と言った表情を浮かべ、メサは一夏の前に立っていた。

 

「イッチー、帰ろ?」

 

隣にいた本音にそう言われ一夏はコクリと頷く。するとメサがプラカードを一夏達に見せる。

 

【またしばらくお会い出来ない事は寂しいですが、私もお家へと戻ります。~(mToT)/~~~ サラバジャー】

 

「う、うん」

 

「ばいば~い!」

 

二人に見送られながらメサはピットから出て行った。残った二人もピットから出て寮の部屋へと戻りゆっくりと休んだ。

 

その日の夜、一夏はコアの世界でアイラと会っていた。

 

「そ、それでアイラ。き、今日の戦闘どう、だった?」

 

〈ん? まぁ、60点くらいじゃない?〉

 

「うぅ。今日は60点くらいかぁ」

 

一夏は何時も操縦訓練や射撃訓練をした時にアイラにどうだったか点数を付けて貰っていた。最初の頃は低い点数ばかりだったが、ここ最近は漸く50点を超える様になったのだ。

 

〈攻撃の避け方は加点に値するけど、所々余裕がなくてブースターを吹かしたりしたでしょ? つまり無駄な動きが若干残っている証拠よ。それと最後にバタリングラムを叩き込むとき、アイツにはまだミサイル型BITがあるの忘れてたでしょ?〉

 

「…う、うん」

 

〈止めを刺すとき程油断するな。何回も言ったじゃない〉

 

「ご、ごめん」

 

アイラに叱られ、シュンとなる一夏。その姿にアイラは少し言い過ぎたと思い、照れた表情を浮かべ明後日の方向に顔を向ける。

 

〈ま、まぁ。サブアームが持っている武器が弾切れを起こしそうなのを素早く交換したりしたのは、その、良かったわよ〉

 

「そ、そう? よ、良かった」

 

落ち込んでいた表情からはにかみながら笑顔を浮かべる一夏に、更に照れた表情を浮かべるアイラ。

すると一夏は大きな欠伸を零す。

 

「ごめん、アイラ。そろそろ僕寝るね」

 

〈そう。それじゃあ、お休み〉

 

「うん、お休み」

 

そう言うと一夏の体はすぅーと消える。一人残ったアイラは少し寂しそうな表情を浮かべる。

 

〈はぁ。昔だったら一人は平気だったけど、今は少し寂しいわね〉

 

そう零しながら同じく体を消すアイラ。




次回予告
クラス代表決定戦から翌日。教室でクラス代表が一夏と発表されようとした時、セシリアは己の行動を謝罪した。そして一夏はクラス代表を補佐する副代表を決めることにした。
無論またひと悶着あったが、無事に決まった。
その日の放課後、クラス代表を祝うパーティーが1組の生徒のみで行われた。無論最強の番兵付きで
次回
クラス代表と副代表~モグモグ、おいひぃ~

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