一夏の事を任された本音は出来るだけ一夏の近くに居る様にしていた。
「ねぇねぇイッチー。お菓子食べる?」
「えっと、その、い、頂きます」
一夏がそう言うと、本音は封の開いていないトッポの袋を取り出し封を開ける。
「はい、どうぞぉ」
「あ、ありがとう」
そう言いおずおずと袋の中からトッポを取り出した一夏はポリポリと食べ始め、本音も食べ始めた。その光景にクラスの生徒達は何だか和んだような表情を浮かべていた。すると近くに居た生徒が自分もと、封の開いたピーナッツチョコを差し出す。
「お、織斑君。このお菓子も美味しいよ?」
「え? えっと、その…」
差し出されたお菓子に手を出そうとしない一夏に、生徒はもしかしてとある事に気付く。
「も、もしかしてピーナッツ駄目だった?」
「ち、違うんです。その、ただ…」
中々口にしない一夏に周りはどうしたんだろうと心配そうに見ていると、本音が何かに気付き生徒が差し出したお菓子を1つ口にした。
「うぅ~ん、美味しぃ。いっちー、このお菓子美味しいよぉ」
「あの、それじゃあ、い、いただきます」
そう言い漸くお菓子を食べ始めた。周りは何故だろうと言った疑問で溢れていた。すると本音がそっと生徒の耳元に口を近づける。
「いっちーは多分、封が空いてるから警戒したんだと思うよ」
「封が空いてるから?」
「うん。多分イッチーはミッチーがその気になくても、何か入れられていると考えこんじゃって手が出せなかったんだと思うよ」
そう言われミッチーと呼ばれた生徒は納得のいった顔になる。
「そ、そうだったんだ。織斑君、ごめんね。先に私が食べたのを見せてからすすめれば良かったね」
「い、いえ。あ、貴女は何も悪くないので、気にしないでください」
おどおどした表情で言いながら本音から差し出されたトッポを頬張る一夏。疑問が解消された生徒達はお菓子を上げる際は未開封のものにしようと決めたそうだ。
時刻は過ぎ、3限目の授業が終わった休み時間。一夏は次の授業で使う教科書などを出していると、
「ちょっとよろしくて?」
真横から突然話しかけられたことに一夏は一気に肩を跳ね上げた。
「ヒッ!?」
「なんなんですの貴方! 私、セシリア・オルコットが折角声を掛けたあげたというのに、悲鳴を上げるなど「ちょっとオルコットさん」なんですの?」
高圧的な態度で一夏を見下すセシリアに、周りにいた生徒達は睨んだ視線でセシリアを見据えていた。本音でさえも睨んだ眼だった。
「貴女も織斑先生から言われた事、忘れたの? 高圧的な態度で接しない様にって言われてたじゃない」
「あら、忘れてなどいませんわ。ただ、私の喋り方等は幼少の頃からこれですのでこれで高圧的と言われましても、どうする事も出来ませんわ」
「だったらもう少し声の圧を抑えるとかしなさいよ。流石にあれは誰だって怖がるわよ」
「…ふん、もういいですわ」
女子生徒に注意されたのが気に喰わくなったセシリアは鼻を鳴らしてその場から離れ自分の席に戻って行った。
「あ、あの、ぼ、僕は気にして無いから――」
「そう言う訳には行かないでしょ」
「確かに。あれって明らかに織斑君の事侮辱した態度だったもん」
「本当よ。しかも何よ、幼少の頃からこの口調だから無理って」
そう言いながら席に戻ったセシリアにジト目で睨む生徒達。一夏は自分の所為で空気が悪くなったと思い、若干戸惑った表情を浮かべていた。
「イッチー、大丈夫だよ」
一夏の気持ちに気付いているのか、本音が優しく声を掛ける。
「ほ、本音さん?」
「イッチーが悪いわけじゃないから。気落ちしなくていいから」
のんびりとした口調で諭す本音に、一夏はう、うん。と頷いた。そして4限目の授業を開始するチャイムが鳴り響き、それぞれ席に着いた。教室に千冬と真耶が入り千冬は教科書片手に授業を始めた。
チョークで教える箇所を教えようとした瞬間、何かを思い出したのか体を生徒達の方へと向けた。
「そうだった。実はクラス代表を決めるのを忘れていたんだ。誰かやる者は居らんか? 推薦でも構わんが、分かっているな?」
千冬が最後に付け足した言葉に生徒達の多くは頷いた。そしてそれぞれ隣にいる生徒達は誰かいないかと相談し合い始めた。
「ねぇねぇ、イッチーは誰になって欲しいとかある?」
「ぼ、僕は、特に誰とかは。た、ただ、いじめとかしてこない人だったらいいかな」
「そっかぁ。それだときよきよとかつっきーとかが良いねぇ」
そう談笑し合っている中、教室で手を挙げる者も推薦の声は上がらずただ隣り同士の話し合いしかなかった。その光景に見かねた千冬が案を出した。
「それじゃあやって欲しいと思う者を挙げてくれ。但しこれは推薦ではない。本人がやるかどうかは本人次第だという事忘れない様に」
そう言うと、生徒達は隣の生徒達の顔を見合う。そして一人がおずおずと手を挙げた。
「あの、私は織斑君が良いと思います」
「ほう、その理由は?」
「その、えっと…」
生徒が理由を全く述べない姿勢に、千冬は大体理由を察せたのかため息を吐く。
「珍しいからとか、そう言った理由だろ?」
そう問われ、生徒はシュンと項垂れコクリと頷いた。
「他の者達はどうだ? 織斑が良いと思っている者、手を挙げろ」
そう言われ、おずおずと10人程の生徒が手を挙げた。
「はぁ~。物珍しいのは分かる。だが、分かっていると思うが「あ、あの先生」ん? 織斑、どうした?」
「ぼ、僕やってみたいです」
やると宣言する一夏に千冬は若干驚いた表情を浮かべていた。
「ど、どうしてやりたいと言うんだ?」
「そ、その、す、少しずつでもいいから、女性にな、慣れる様になりたい、からです」
一夏は、緊張や不安など色んな思いがありながらも、自身の症状に向き合おうとしている。千冬は不安な表情を浮かべながらも、本人が頑張りたいと言っている姿に拒否しづらく、しばし思案した後決心した。
「分かった。それじゃあ「お待ちください!」…なんだオルコット?」
千冬は突然大声をあげ、机に叩きながら立つセシリアに予感的中と内心チッ。と舌打ちを放つ。
「何故男などにクラスの代表をさせるのですか! 私、イギリス代表候補生であるセシリア・オルコットこそが相応しいのです! 男などに代表を務めさせるなど、私に(以下省略)」
と、長い一夏に対する侮辱発言、そして日本に対する侮辱に日本人の多く生徒が睨むような視線をセシリアに向けていた。そんな中一夏はシュンと沈んでいた。
(ま、また僕が出しゃばったせいで、クラスの空気が悪くなった)
そう思い落ち込んでいた。無論隣にいた本音はその様子に気付いており、何とか元気づけようと考えるがいい方法が思いつかず必死に考えていた。
すると全く言い返してこない一夏に、セシリアは見下したような目つきを向ける。
「あら、何も言い返してこないんですの? 本当、男というは弱いですわね。いっそこのまま此処から出て行かれた方が「だったら貴女が出て行けばいいじゃない」なんですって?」
セシリアの言葉を遮る様に一人の生徒が零す。
「何度でも言ってあげるわよ。貴女が此処から出て行けばいいじゃない。極東が嫌いなんでしょ? だったらイギリスに帰れば良いじゃない。そうすれば織斑君と一緒に授業も受けないんだし」
生徒がそう言いながら立ち上がると、他の生徒達も、そうだそうだ! 帰れば良いじゃない。と同調する。しまいにはクラスのほとんどの生徒達から、帰れ帰れと促され始めた。
「な、なんですの貴女達は! これだから品の無い国は嫌なんですわ。私は出て行くつもりは《ガシャン!!》」
「「「「「ッ!?」」」」」
突然教室の扉が蹴破られるように倒れ、生徒達は先程の殺伐とした空気が一気に変わり全員蹴破られた扉の先を見ると、何かが立っていた。それは胴体が長方形でメカで出来ており、頭には機械のうさ耳をしていた。
それはまさにロボットであった。
ウサギのロボットはガシャン、ガシャンと音を立てながら教室内へと入って来た。生徒達は茫然とその姿を見ていたが、一夏だけは呆けた顔を浮かべていた。
「め、メサさん?」
そう零した。
メサと呼ばれたウサギ型のロボットはセシリアの元まで来てセシリアを見つめていた。
「な、何なんですの?」
黙って見つめてくるロボットにセシリアは言い知れぬ恐怖が出てくるが、高圧的な態度だけは崩さなかった。するとメサは何処からともなくプラカードを取り出した。其処には
【てめぇは、俺を怒らせた。(# ゚Д゚)】
と書かれており、空いている右ハンドを変形させ、チェーンソーを出す。
「ヒッ!??」
ウォンウォンと鳴り響くチェーンソーを近づけられ、セシリアは恐怖から尻もちをつき後ずさる。
「め、メサさん。や、止めて」
そう声が上がる。メサは体を捻り一夏の方を見ると、びくびくしながらも止めようとしている一夏だった。
「ぼ、僕はき、気にしていないから」
そう言われメサはチェーンソーを止め右手を元に戻した。
【坊ちゃまがそうおっしゃるのであれば、止めます】
プラカードをそう一夏に見せた後、セシリアの方にもプラカードを見せる。
【命拾いしたな、雌豚( ゚д゚)、ペッ】
そう書かれたプラカードを見せた後、メサは千冬の元に向かう。
「な、なんだ?」
【博士からお電話です】
そう伝えると顔の部分が回転し画面が現れると、画面に千冬のよく知る人物が映った。
『やっほぉ~、ちーちゃん! 元気してたぁ?』
「た、束。やはりこのロボットを作ったのはお前か」
何処か見当がついていたのか、それでも呆れた顔を浮かべる千冬。画面の向こうに居る束は、にゃはははは!と笑いながら頷いていた。
『もちのろんじゃん! このロボット、メカウサギくん。略してメサ君はいっくんのお世話ロボットだぜぇ! 機能は多種多様で、洗濯、炊事、掃除などありとあらゆることが出来る万能ロボットだぜ! まぁ、基本はいっくんがやっている事の補助的な事だけどね』
「なんでまた? ……すまん、今の言葉は忘れてくれ」
千冬は束がロボットの開発した理由を聞こうとしたが、直ぐに見当がつき申し訳なさそうに訂正した。
『いいよいいよ。いっくんもちーちゃんが忙しいのは知ってるし、偶に帰って来ていっくんが困っている事が無いか相談とか乗ってあげてるから束さんは特に文句は言うつもりはないし。と、あんまり長居すると授業邪魔だね。メサ君、そろそろお荷物置いてお家にって、駄目だよ。いっくんの傍に居たいのは分かるけど、いっくんも頑張って其処に通おうとしてるんだから。いい? ちゃんと帰ってくるんだよ? それじゃあちーちゃん、いっくんばいびぃ~!』
画面の向こうでメサと何やら口論?の様なことをする束。そして通話が切れたのか画面から束が消えまた顔に戻るメサ。が、メサはしばし其処から動こうとせず一夏の方を見つめる。
「あの、メサさん。ぼ、僕は大丈夫だから、お家の事お願いします」
一夏がメサに向かってそう言うと、メサは考えるポーズをとりプラカードを見せた。
【…分かりました。坊ちゃまが頑張って克服しようとしてらっしゃるのであれば、涙をこらえます。(ρε;) クスン】
クリン【では、坊ちゃまのお部屋にお荷物を届け次第、家の方に戻ります。学業の方、頑張ってくださいρ(′▽`o)ノ゙ ファイトォ~♪】
そしてメサは教室の扉の方に向かい破壊した扉を持ち上げ、はめ直した後出て行った。
「……えぇ~、突然の事が起きたが、クラス代表選びの続きを行う。クラス代表だが、1週間後に試合を行って決めることにする。以上だ」
そう言い授業の続きを行おうとするが、一人の生徒が手を挙げる。
「あの織斑先生、それだと織斑君が不利なんじゃ?」
そう質問すると多くの生徒達が頷く。その質問に千冬はニヤリと笑みを浮かべる。
「根拠は話す事は出来ないが、それは問題ない」
そう言い授業の続きを行おうとしたが、チャイムが鳴ってしまい授業は終了となった。
次回予告
お昼休み。一夏と本音は相川清香と鷹月静寐の4人とでご飯を食べることに。
そして放課後、一夏は本音と共に寮にある自室へと到着し寛ぐ。
時が経ち1週間後、クラス代表戦が行われようとした。
次回
のんびり日和、そして戦い
次回投稿してほしい小説(詳細は活動報告の「次回作一覧」を見てください)
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①IS×ウォーシップガンナー2
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②IS×メタルギア
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③IS×オリジナルストーリー①
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④IS×オリジナルストーリー②
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⑤IS×クロスアンジュ
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⑥IS×タイムクライシス
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⑦IS×オリジナルストーリー③
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⑧IS×人狼 JIN-ROH
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⑨IS×東方project
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⑩IS×オリストーリー④
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⑪IS×R-type
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⑫俺ガイル×IS