女性恐怖症の一夏君   作:のんびり日和

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前回登場したメカウサギ、略してメサのイメージはウサビッチのメカネンコ1号を利口にした感じです。


3話

殺伐だった4限目が終わりそれぞれ昼食をとりに食堂へと向かう中、一夏は鞄の中から弁当を取り出していた。

 

「あれ、イッチーは食堂に行かないの?」

 

隣の席の本音は鞄から弁当を取り出す一夏にそう聞くと、一夏はコクンと頷く。

 

「う、うん。その、食堂には、一杯他のクラスの、生徒が来るから」

 

そう言うと、本音は納得のいった表情を浮かべる。

 

「そっかぁ、いっぱい来るもんねぇ。……あ、良いこと思いついたぁ。ちょっとイッチー、ご飯食べるの待っててねぇ」

 

そう言いながら教室を出て行く本音。一夏は何故待っていてと言って出て行ったのか疑問を浮かべながら待つことに。

暫し待っているとビニール袋を持った本音と、同じクラスの鷹月静寐と相川清香がやって来た。

 

「えへへ、お待たせぇ~」

 

「えっと、一緒にご飯食べてもいいかな?」

 

「私もいい?」

 

「あ、は、はい。じ、自分なんかと一緒でいいなら、どうぞ」

 

そう言うと、それぞれ一夏の近くにある席に座りそれぞれ袋から弁当を取り出す。

 

「その、お弁当はどうしたんですか?」

 

「これ? 実は食堂には手製のお弁当も売られてるんだよ」

 

「コンビニとかで売られている物より栄養バランスとかしっかり考えられて作られてるから、外で食べたいって言う人には持ってこいなのよ」

 

「そ、そうなんですか」

 

一夏はそう言いながら自身のお弁当の蓋を開ける。中身は蛸さんウインナー、卵焼き、ホウレン草のお浸し、そして梅干しの入ったご飯だった。

 

「お、織斑君のお弁当凄いねぇ」

 

「し、しかも何気に蛸さんウインナー入ってる」

 

「さ、最近お弁当作りにはまってて。その、料理をしている時が一番落ち着くから」

 

そう言うと、3人は

 

(((か、可愛いぃ)))

 

と、男子にも拘らずそう思ってしまった。だが無理もない。原作の一夏はキリッとしたイケメンであるが、この作品の一夏は原作より身長が若干低く、その上若干幼い顔立ちの為、かっこいいとと言うよりも可愛いと言う言葉が最初に出てきそうな姿なのだからだ。

 

「な、何か?」

 

「う、うんん! 何でも無いよ」

 

「そ、そうそう。何でも無いよ!」

 

「何でもないよぉ。ねぇねぇイッチー、その卵焼き一つちょうだい?」

 

「え? えっと、ど、どうぞ」

 

一夏はお弁当にある卵焼きを差し出すと本音は弁当から卵焼きを掴み口に運ぶ。口にした瞬間本音はトロンとした顔つきになった。

 

「お、おいひぃ~」

 

「ほ、本音がとろけてる」

 

「そ、そんなに美味しいんだ。何か調理中に加えたの?」

 

「い、いえ。み、皆さんが知ってる調理方法で調理したから、その、家で誰もが食べてる味だと思うんだけど…」

 

そう答えるが、2人はうそぉ?と心の中で思いながら惚けた顔を浮かべる本音を眺める3人であった。

 

※その頃食堂では

和気藹々と楽しい会話などが生まれる食堂。だが、ある一か所だけは重苦しい雰囲気の中昼食をとっているところがあった。

其処にはセシリアと箒が座っており、その向かいには千冬が座ってご飯を食べていた。

 

「どうした、全然減っていないではないか。早く食わんと午後からの授業を腹を空かせたまま過ごす気か?」

 

千冬はそう言いながらご飯を食べる。だが2人は千冬から発せられる威圧感に食べようにも食べられずにいた。

 

さて、何故この二人と千冬はご飯を食べているか。それは二人共一夏の症状を悪化させる要因になると考えた為である。

箒は今朝、一夏に向かって大声で怒鳴る行為。セシリアは侮辱、高圧的態度で一夏に接した。その為昼休みになれば箒はまた一夏に、情けないやら男ならとか自分の価値観を押し付けようとする。セシリアの方も、もし食堂に一夏が居ればまた侮辱などするだろう。そうすれば学園内に居る女尊男卑の生徒も一緒に一夏を苛めようとするだろう。

もしそうなれば一夏の症状は悪化する。

だから千冬は2人を連れて食堂でご飯を食べているのだ。

 

「あ、あの千冬さ「織斑先生だ。で、なんだ?」そ、その一夏は?」

 

「あぁ。アイツなら教室で布仏達と一緒に昼食をとっている。布仏が一緒に居るから私も安心して任せられる」

 

「……な、なんでアイツなんだ。ギリ」

 

「そんなことお前が気にする事ではない。朝にも言った通りお前は織斑に近付くことは許さん」

 

そう言われ手を握りしめ震える箒。

 

「で、ではな、何故わたくしは織斑先生と昼食を?」

 

「決まっているだろう。貴様は極東が嫌いなんだろ? ならば、日本人である私も嫌いだと言う事だ。私は反感を持つ生徒を教育し直すのが得意でな。いざとなればISを使った殴り合いも行う。手始めにまずは貴様も篠ノ之を交えて昼食をとることにした」

 

そう言いながら茶を飲む千冬。千冬の説明を聞いたセシリアは内心あの時の発言に今更になって後悔していた。

ブリュンヒルデである千冬は日本人。更にISを生みだしたのも日本人である篠ノ之束。

つまりセシリアはその二人に対して侮辱したととられる行為をしたのだ。

セシリアは千冬自身を侮辱した為と考え、こういう罰を行っていると見当はずれな考えに行きつく。

 

その後、結局満足に昼食をとれなかった二人は午後の授業をお腹を空かせながら受けるのであった。

 

昼休みが終わりぞろぞろと生徒達が戻って来て5限目の準備を始めていと、千冬がやってきて一夏の元に向かう。

 

「織斑、1週間後の決定戦だがお前のIS、今持ってるか?」

 

「い、いえ。今、束お姉ちゃんが持ってます。その、1週間後には持って行かせるって、さっきメールが、届きました」

 

「そうか。そう言っていたなら問題無いな」

 

そう言い千冬は教壇へと戻って行き、授業を開始した。

5限目が終わり教科書を片付ける一夏。

 

「ねぇねぇイッチー。もしかして専用機持ってるの?」

 

「う、うん。自分の身を守る為のと、その、僕の症状が少しでもいいから緩和されるようにする為に、束お姉ちゃんが用意してくれたんだ」

 

「おぉ~、篠ノ之博士特製って事なんだぁ。凄いねぇ!」

 

「ぼ、僕はいいって、断ったんだけど、護身用の為って強く言われたから」

 

そう言いながら6限目の準備をする一夏。

 

「そっかぁ。でも博士もイッチーの事大切だと思って渡したと思うから大事にした方が良いよ」

 

「う、うん」

 

本音の言う通り、一夏自身も束が自分の身を案じて作ってくれたのは知っている。そしてそのおかげか、自分の身はある程度自分で守れるくらいにはなっている。だがそれでもいざと言う時、怖いものは怖いと考え込んでしまう。

 

因みにセシリアは一夏が専用機を持っていると分かると、負けるのが見えているから謝ったら許してやる。と高圧的に言おうと向かおうとしたが

 

「オルコット。貴様先程の授業、ちゃんと私の話は聞いていたのか?」

 

と睨むような眼で見てくる千冬に呼び止められ、は、はい!と背筋を伸ばしながら先ほどの授業内容を説明させられた。

 

そして放課後となり、ぞろぞろと生徒達が帰っていく中、一夏は教室に残っていた。その傍には本音も居り、一緒に談笑していた。

 

「先生、遅いねぇ」

 

「う、うん」

 

おどおどしながらも待つ一夏。すると真耶が教室内へと入って来た。

 

「あ、織斑君。お待たせしました。これが寮のカギになります。無くさない様にお願いしますね。もし無くしたら出来るだけ早く言ってくださいね。鍵の交換など行わなければいけませんから」

 

「は、はい」

 

一夏は真耶から鍵を受け取り、部屋の番号を見ながら手帳に書かれている寮の部屋番号と照らし合わせる。

 

「イッチー、部屋の番号って何ぃ?」

 

「えっと、1539だけど」

 

「おぉ~、私その隣なんだぁ。あれ、でも私の隣元々倉庫だったようなぁ?」

 

「えぇ? じゃ、じゃあ僕倉庫で「そんな訳ないだろ、織斑」あ、お、織斑先生」

 

倉庫で寝泊まりするのかと考え若干青褪める一夏に、突っ込む千冬。

 

「元々倉庫だった部屋を、お前用に改装したんだ。無論一人部屋だから安心しろ」

 

「そ、そうですか。あ、ありがとう、ございます」

 

「気にするな。ほら、荷解きなどあるだろ、早く帰るんだ。布仏、すまんが一緒に帰ってやってくれ」

 

「はぁ~い、了解であります!」

 

そう言い本音は一夏と一緒に寮へと帰って行った。

その後姿を千冬は満足そうな笑みで見送った。

 

「織斑先生、嬉しそうですね」

 

「ん? まぁ今のアイツの周りには同い年の女子はいないからな。布仏から少しずつ増えていってくれればいいんだが」

 

「そうですね。そう言えば職員室で言ってた野暮用は済んだんですか?」

 

「あぁ、簡単に済む野暮用だったからな。さて私達も職員室に戻るぞ」

 

「はい!」

 

千冬の後に続くように真耶も教室から出て行き2人は職員室へと戻って行った。

 

 

 

その頃IS学園の中にある建物の一つである、剣道場内に箒が寝っ転がっていた。何も知らない生徒からすればサボっているように見えるが、実際は気を失っているのだ。

その訳が数十分前まで遡る。

 

~数十分前・昇降口~

昇降口にて箒は一夏が出てくるのを待っていた。その姿は道場着を着ており、その手には竹刀が握られていた。

 

「全く遅いぞ一夏の奴め。出てきたら道場に連れて行って腑抜けた体に喝を入れてやらんと」

 

そう呟きながら待っていると

 

「おい」

 

「五月蠅い、あっち行ってろ」

 

「…誰を待っているんだ?」

 

「一夏に決まっているだろ。分かったらあっちに《ガンッ!》痛っ!? な、何を…ち、千冬さ《バシン‼》」

 

「織斑先生だ、馬鹿者」

 

そう言いながら箒の頭を叩いた出席簿を降ろす千冬。だがその目は睨んだ眼だった。

 

「篠ノ之、貴様懲りずに織斑に近付こうとはいい度胸だ。先ほど私に向かって馴れ馴れしくした事を含めて道場でOHANASIだ」

 

そう言われ箒は逃げ出そうとするもすぐに捕まり、引き摺られながら剣道場に連れていかれ1対1の剣道が行われ千冬の渾身の面が入り、箒は気を失ってしまったのだ。

 

 

~時間は戻ってIS学園にある寮~

本音と共に寮へと到着した一夏。

 

「それじゃあ、私ここの部屋だから何かあったら呼んでねぇ」

 

「う、うん」

 

そして一夏は早速部屋の鍵を開け中へとはいる。

中に入った一夏は扉に鍵とチェーンを掛けると部屋の奥へと向かう。部屋には一人用のベッドに、机。更にキッチンが備えられていた。

 

「き、キッチンも付けてくれたんだ」

 

一夏は千冬に色々用意してくれたことに感謝し、今度お弁当でも作ってあげようと考えるのであった。

 

そして1週間はあっという間に過ぎ、クラス代表戦の日となった。

アリーナに供えられているピットに一夏は自身用に作られた戦闘機のパイロット用スーツの様なISスーツを身にまとってISが来るのを待っていた。

ピットには一夏以外にも、千冬と許可を貰った本音が居た。

 

そして暫くしてガシャンガシャンと駆動音が聞こえ、扉からメサが現れた。

 

【坊っちゃま、ISをお持ちしましたよぉ!ヾ(*´∀`*)ノ】

 

「あ、ありがとう、ございますメサさん」

 

そう言い一夏はメサから待機形態だと思われる腕輪を受けとる。

受け取った腕輪をはめ展開するよう念じる。

すると目の前が真っ白な光で覆い尽くされた。暫くして光が収まると、周囲は真っ白な世界で覆われていたが、一夏はキョロキョロと何かを探すように辺りを見渡すと

 

〈久しぶりね、一夏〉

 

「ヒエッ!?」

 

突然背後から話しかけられ悲鳴を上げる一夏。

一夏の背後に居たのは、薄茶色のツインテールをした黒色の戦闘服を着ており、頭には猫耳の様なカチューシャをし、目が鋭い少女だった。

 

〈はぁ~。相変わらず怖がりね。この世界に居るのは私達2人だけなんだから、私が来る事くらい分かるじゃない〉

 

「そ、そうだけど、背後からと、突然話しかけないでよ、アイラ」

 

一夏は話しかけてきた少女、アイラに咎めるもアイラはふん。と鼻を鳴らして聞く素振りを見せなかった。

 

〈それで一夏。あんた、あの金髪ドリルに負けるかもしれないとか思って無いでしょうね?〉

 

「お、思ってないよ。た、ただ・・・」

 

〈ただ、何よ?〉

 

「あ、アイラが乗る機体が傷付く姿は見たく《バチン!》痛っ!?」

 

一夏が話している最中にアイラは一夏の額にデコピンをお見舞する。

 

〈何馬鹿な事言ってんのよ。機体が破損したくらい後で修理すれば直るわよ〉

 

「で、でもそれでも…」

 

アイラは一夏の甘さにため息を吐くも、少なからず悪い気はしていなかった。

 

〈だったらアンタがしっかり操縦して被弾を軽減しなさい。私もサポートしてあげるから〉

 

「う、うん」

 

そう言うと一夏の体は消えていった。一人残ったアイラはまた溜息を吐くも、クスリと笑みを浮かべるのであった。

 

〈…本当、甘ちゃんなんだから〉

 

真っ白だった周囲はいつの間にか、ピットに戻っていた。

 

「どうした、織斑?」

 

近くに居た千冬は心配そうにそう聞くが、一夏は大丈夫とだけ答え身に纏っているISの状態を確認する。

武装、姿勢制御、スラスター各部全てオールグリーンと表示されていた。

そして一夏はカタパルトに乗り込む。

 

〈さぁ一夏、あの金髪を叩くわよ〉

 

アイラの声が頭に響き、一夏は小さく頷く。

 

「お、織斑。バレットホーク、出ます!」




・バレットホーク(イメージ:漫画『バスタードレス』ガンホーク)
一夏の為に束が作成したIS。詳しい詳細は次回にて

・アイラ(イメージ:漫画『バスタードレス』原作通りの姿)
バレットホークのコアにいる人格。一夏に対し厳しく接するも搭乗者としては認めている。隠れツンデレで、一夏が見ていないところではデレた表情を見せる。
一夏の症状を緩和できるようにと、治療から悪化防止等を行っている。

次回予告
アリーナへと飛び出した一夏。多くの生徒達は一夏の腕前は初心者だと思い無様に負けてしまう。そう思っていた。だが、その思いは簡単に覆される。

次回
クラス代表決定戦

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