「村雨の時みたく。我慢出来なくなるのはあるけど」
夕立の笑顔や山風の珍しい甘え姿。春雨の献身に江風の元気さ。
妹達皆が愛らしい。…僕と違って、素直に誰かへ甘えられる優しさ。心の強さ。
そうして、皆を受け止められる白露の強さ。僕は姉妹に恵まれてる。
「ふふふ。今みたいに、ぎゅっとしたのだろう?」
そう言ってから、提督から強く抱きしめてきた。暖かい。力強くて安心する。
ここまで深く、強く抱きしめ合ってるのは提督だけだよ。
なんだかソレを伝えるのは恥ずかしいな。不思議な感じ。
こんなに触れ合ってるのに、まだ照れてるんだ。ああ。本当に不思議。
「暖かかったなあ」
村雨の嬉しそうな顔。甘えてぎゅっと抱きしめ返してくれて。
愛おしい妹。ふふ。本当に可愛い家族だ。
「我慢しなくて良いと言っても、時雨は嫌なんだな」
「……うん」
そう言われても、僕の恐怖は変わらない。なら何を求めて聞いたんだろう?
とても、とても最低な行いなのかな。やっぱりそうだよ。
提督なら甘えさせてくれる。重みを預けたい。軍神の異名と優しい心。利用して、こうして甘えきってる。
そんな風に思っても、受け入れてほしいと願ってる。
僕は弱くなったの? 船の時からは当然として、艦娘として脆くなったのかな。
分からない。分からないけど、思っていたよりも罪悪感はなくて。
本当に笑ってしまう。素直に心が緩んでる。家族には見せられない弱さ。
「分かる。分かるぞ」
「提督も?」
「ああ。意地を張って、格好つけたくなる気持ちは分かる」
皆から評価されて、実際に結果も残してる人だ。
僕と違う。名前だけ受け継いで、意地を張っていても大した力もなく。駆逐艦としての性能しか発揮出来ない。戦場で活躍できない艦娘。
「素直に甘えれば良いんだ。きっと受け入れてもらえる」
どこか遠くに語りかける声。僕にじゃない。提督自身の心の声。
弱さが滲み出てる。白露も見たのかな? 人間としての言葉が聞こえる。
「思っても、強くなりたい心が邪魔をするんだ」
それは彼の全てに聞こえた。それだけで進んだ人の声は、痛々しくも重くしなやかだった。強い。強さを求めて続けて、ここまで至ったんだ。
やっぱり僕とは違う。僕はまだまだ弱い。
こうして、弱さをさらけ出す事も躊躇いながら。提督ほど潔く。自身の弱さは語れなかった。
でも、その意地をはる理由はきっと。
『「だって失いたくないから」』
内心と言葉が重なった。そうなんだ。本当にソレしかなくて。
願いが心を躊躇わせて、強くなりたくて…前を許せない。
「…見通されてるね」