「ぎゅってしたら、僕だけじゃなくてお姉ちゃんも嬉しい?」
これも恥ずかしい質問。あまりに提督の返答が嬉しすぎて、心の枷が壊れてる。
顔が赤く染まってるのが分かる。それでも、白露の愛情を肯定してもらって、嬉しい気持ちが心を満たしてく。
堪らない。幸せ。こうして抱きついて話してると、一体感が強くて良い。
「程度によるとは思うがな」
僕の問いかけに苦笑してる。何を今更、とまでは言わないけど。
提督の優しい微笑みにまた照れて、顔を俯かせた。ちらりと見上げれば、愛おしそうに笑ってる。
何度繰り返しても飽きないやり取り。受け入れてほしい。
やっぱり僕は欲張りだ。お姉ちゃんもいるのに、お兄ちゃんもいてほしいと思ってる。
「少なくとも時雨を慰める為に、嫌な想いを我慢はしていないと断言しよう」
いっつも元気いっぱいで楽しそうな白露。僕を抱きしめて、照れながら。
『あったかい! よしよし。可愛い妹だ!!』
なんて言ってから、わしゃわしゃと頭を撫でてくれるんだ。
小さな力で抱きしめ返したら、驚きながらも受け入れてくれたり。大切な姉さん。
「甘えたら迷惑じゃない?」
逆に妹達に甘えられて、僕が迷惑と思うのか。なんて言われたら。
そんなわけがない!! とっても幸せな気分になるんだ!! ……すっごく矛盾してるけど、これが僕の本音だった。
で、でも僕は皆ほど可愛くないもん。
というか、皆の破壊力が凄い。皆もうほんと可愛すぎる。
「仲良くし過ぎて、気が緩みすぎて、皆が戦場で沈まない?」
絶対に嫌だ。想像しただけで泣きそうになる。
何度も繰り返した言葉の問いかけを、嫌な顔もしないで言ってくれる。
「――俺と響が守る。安心しろ。俺達を疑うか?」
輝く双眸の力強さ。威風堂々とした在り方は不動。弛まぬ努力の結晶が見える。
軍神の指揮能力。駆逐艦の常識を覆した伝説の不死鳥。
全鎮守府に伝達され、士気向上の元となった二人の功績。それを成し遂げつつも、人の優しさを忘れなかった彼の強さ。
『いっちば~ん!』
白露の笑顔を思い出した。僕達の大切な長女は、提督みたいに格好良い笑みを見せる人だった。だというのに、僕が弱さを引きずって、これ以上変に意地をはるのは可笑しい。
目を瞑って、彼に体を預けきった。身を寄せきってるのに緊張はなく。
ただただ落ち着いて、するりと言葉が紡がれる。
「ううん。――それなら、それなら安心だ」
「ああ」
武骨な返答は提督らしく。奇妙な微笑ましさを感じながら、心にしみ入った。