「「……」」
滅茶苦茶気まずいぞ。まったくもって会話の種が見つからない。
何だこの感じ。俺ってコミュ障だったか? 提督として頑張ってきたんだ。この程度の苦境なんぞ物の数ではない。頑張るぞ。
「最近どうだ」
ようやく絞り出した言葉。なんだかお父さんみたいな発言である。俺の立ち位置が分からない。時雨との触れあいが影響して、どうにも気分が変だった。
俺の言葉を受けて数秒。沈黙の時間が広がって。
「い、良い感じ」
村雨が何とか絞り出した言葉は、妙に気まずい響きであった。ここに響がいてくれたら。
『……』
駄目だ。彼女が流暢に喋る姿は想像出来ない。そこが良い所だけどね。
「そうか…」
会話終了!! 以上閉廷解散!! ど、どうしよう。どうしようもないぞ。
お菓子大作戦もむせて失敗した感じがある。考えろ。どうすれば。
『提督の! ちょっといいとこ見てみたい!!』
などとからんでもらえるのだ!! 早く仲良くなりたい。ノリ良く生きたいのだ。
滅茶苦茶酒が弱いので、一気飲みは勘弁してほしいけども。ノリを振られたら応えようとも。今後、白露型と飲み会があるかは、彼女とのやり取りにかかっている。
それはそれとして、良い所は幾らでも見せたいのだがね。ううむ。
ケーキを食べ終えて、する事がなくなった。気まずい空気もピークである。
どちらとも相手を窺う感じ。隙を探りあっている。俺は好きを探り合いたいのだ。
「その、提督?」
もじもじと俺を見ながらも、彼女から言葉を出してくれた。
ここで慌ててはならない。下手に攻め込んで逃げられたら、今日を無駄にしてしまう。
「どうした」
静かに問いかければ、何度も躊躇ってから答えてくれる。
「お散歩したい、けど。ね。どう?」
えっ? お○んぽしたいって? 消される消される。落ち着け変態。落ち着くのだ。
でも、さとちって似ているよな。深い意味はないぞ。うん。そんなものはない。
そうだな。赤面しながらの涙目で、先程の言葉はあった。つまりはこうだ。
『お○んぽしたい…』
ふう。深い意味はない。ないからな。うん。
いやしかし。どう答えたものだろう。
ちらりと彼女を見れば、不安そうに返答を待っていた。下ネタに走っている場合じゃない。誠実に向き合おう。思っていたより激しい展開はなさそうだ。
時雨と違う。急激に爆弾をぶちこまれる事もなかろう。
それにまあ想像してみたら、わりと楽しそうである。
「付き合おう」
「…うん!」
邪な俺の考えが浄化されるほど、嬉しそうな笑みを見せてくれたのだった。