「一日の殆どを共有して、数年も経っているんだ。家族みたいなものだろう?」
軍隊は家族と言うのだけど。これは本当なのだと思う。好き嫌いはともかく。だから戦死は辛い。
「…見た目の年齢差を考えれば、兄か父だろうな」
駆逐艦の皆は、司令官に父性を求める者も多いけどね。
甘え合いたいのさ。父を求めるには、これまで過ごしてきた時間が邪魔をする。
ちちを求めているのは司令の方だ。などと言えば、解体されそうなので黙っておこう。
「兄さん、とでも呼ぼうか? 司令官にそういう趣味があるとは思わなかったな」
興奮してきた。兄として口うるさいのも良い。お兄ちゃんって呼んだら、どんな顔をするのかな。言いたいけど我慢我慢だ。
そういうからかいは、もっと人数が多い時にするべき。
私一人で司令官をいじめるのはもったいない。
今はパンツだ。間違えてはいけない。
「どういう趣味だ」
「見た目年下の女の子に兄と呼ばせて、悦に浸る趣味さ」
「ふん」
拗ねた様に彼が顔を背ける。可愛い。
にやけそうになってるのも良い。私もにやけそうだ。
「ははは! 怒らないでくれ。親愛を示しているだけだよ」
「そういえば聞こえは良いがね」
おっと。少し声に怒りが含まれているね。――ここだ。
「分かった。悪かった。お詫びをするよ。何が良い? 何でも良いよ」
滑らかに差し込んだ言葉は希望への導き。来るんだ。ここだよ。きて。……来い!!
「ならば、絶対に轟沈するな」
「へえ?」
真面目な対応だった! そうだね! 貴方はそういう人さ!!
これで嬉しいんだから、私も救えないかもしれない。ははは。
「後方勤務。それも資材管理の遠征ばかりだからと、油断は絶対にしないでくれ」
ここの近海なんて、目を瞑っても突破出来る。そもそも私は遠征になんていかない。貴方をサポートしているじゃないか。まったくもう。本当に。ふふふ。
「信頼出来る不死鳥として、生き残り続けてくれ」
私が本気を出した姿。信頼を意味するロシアの艦娘。語られる渾名は最果ての不死鳥。信頼に至りし響として、私は語られている。
ああもう。パンツ見たいくせに。エッチなくせに。変態。馬鹿。大好き。
「…まったく。日常のやり取りで、硝煙と血の臭いを思い出させるなんて」
「悪い」
「ふっ。先にからかったのは私の方さ。――良いだろう」
立ち上がり、創の前に歩みを進める。彼も立ち上がった。真っ直ぐに見つめ合う。
スケベで臆病で、どうしようもなく誰かを愛せる普通の人間で。運命が導いただけの貴方へ。
誓おう。
「私は貴方の側に居続ける。この名に誓うよ」
不死鳥の名は伊達じゃない。我が在り方は貴方と共に。老後も任せて安心。信頼と実績の艦娘さ。ふふん。これで信頼し直しただろう。
外してたら泣く。だばあっと号泣する。そして許さない!
「ありがとう」
――あ、と。えっと。
ず、ずるいよ! なにその笑顔。ダメじゃないか。
最善の提督を続けてきたんだろう? ああもう。本当にずるい。まったく。
私だけが刻んだ記憶。私だけの宝物。
いずれ創は、日常の中で誰かと結ばれるかもしれない。私じゃないかもしれない。
それでも! それでも彼のこの笑顔だけは、私だけが得られたから。うん。良いんだ。
「やれやれ。少し湿っぽくなったかな。何かお腹に入れたら、ゲームでもしようか」
「ふむ」
彼の食事時間を考えると、そろそろ食べたくなるだろう。
もう午前の十時だ。日が大分なじんでいる。
「脳内将棋でいいかい?」
「ああ」
さあて。どうやってお互いの欲望を叶えたものかな。