少しは緊張が解れてくれたのか、優しい表情で彼女はささやく。
「…白露姉さんから聞いたけど、提督は仲良くなりたいのよね?」
「ああ」
ド直球で言うと変態だな。意味合いはエロスを含んでないけど、仲良くって。
『提督は村雨と仲良くしたいの…?』
これを耳元で囁かれたら、俺は落ちる。仕方ないね。でもコレ系の囁きで一番ヤバいのは、阿武隈の声だと思う。あいつのボイスには神が宿ってるからね。
さて。適当に頭をとろけさせつつも、どうしようか。
「深い意味はないのだがな。君達が俺を恐れていると聞いた」
「う、うん。ごめんなさい」
「謝る必要はない。これまで交流を避けてきたのは、俺の方だ」
もっと言うならば、まともな雰囲気じゃないのも自業自得。
俺の同期も俺並にアレな環境で戦ってたけど、もっと付き合い易い奴らだった。元気にしていると良いがね。っと、話が逸れてた。
「だからこそ、俺から触れ合いたいと思ったのさ」
「ふふふ。ありがと」
嬉しそうな微笑みにこそ、俺はありがとうと言いたい。
それにしても白露のナイスアシストであった。
初めからここまでお世話になりすぎてて、彼女に頭が上がらないぜ。その内にお礼を考えておかないと。…ううむ。水臭いとも怒りそうだがね。
今は村雨と真剣に向き合おう。そうしよう。
「じゃあさ。手、つながない?」
仄かに照れながらの言葉。最高かよ。最高だよ。だがしかし。俺を舐めてもらっては困る。昨日なんて滅茶苦茶抱き合ったのだぞ。今更手つなぎで乱れるかよ!
「む? 分かった」
そうして、躊躇いつつも彼女と手をつなげば。
「わっ大きい手…」
すげえ!! めっちゃすべすべしてる。赤ちゃんの肌? きめ細かい彼女の肌質は、ただ握ってるだけで心地良い。ちっちゃな掌。壊れそうなほどに小さい。
「村雨の掌は小さいな。細くて、女の子の手だ」
素直に変態な感想が出てきた。怒っていないか? 恐る恐る彼女の様子を見た。
「あ、ありがと」
真っ赤な顔で俯いてしまった。微かに声が震えていたけど、恐れとかは感じなくて。
照れている。手をつなぎ立ち止まる俺達。並木道に優しい風が流れた。
その涼しさを強く感じる程度には、顔が熱くなっているらしい。恥ずかしい。
「「……」」
やっぱり言葉が出てこない!! えっ? なにこれ。ちょう満たされるんですけど。
何だよこれ。青春じゃねえか。俺が戦場に置いてきたトキメキを、今胸に取り戻しているぜ。ふっふっふ。先程までとは違う意味で涙が出そうだ。
「歩こうよ、ね?」
「うむ」