いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

110 / 322
手つなぎドキドキです

 少しは緊張が解れてくれたのか、優しい表情で彼女はささやく。

「…白露姉さんから聞いたけど、提督は仲良くなりたいのよね?」

「ああ」

 ド直球で言うと変態だな。意味合いはエロスを含んでないけど、仲良くって。

 

『提督は村雨と仲良くしたいの…?』

 これを耳元で囁かれたら、俺は落ちる。仕方ないね。でもコレ系の囁きで一番ヤバいのは、阿武隈の声だと思う。あいつのボイスには神が宿ってるからね。

 

 さて。適当に頭をとろけさせつつも、どうしようか。

「深い意味はないのだがな。君達が俺を恐れていると聞いた」

「う、うん。ごめんなさい」

 

「謝る必要はない。これまで交流を避けてきたのは、俺の方だ」

 もっと言うならば、まともな雰囲気じゃないのも自業自得。

 俺の同期も俺並にアレな環境で戦ってたけど、もっと付き合い易い奴らだった。元気にしていると良いがね。っと、話が逸れてた。

 

「だからこそ、俺から触れ合いたいと思ったのさ」

「ふふふ。ありがと」

 嬉しそうな微笑みにこそ、俺はありがとうと言いたい。

 

 それにしても白露のナイスアシストであった。

 初めからここまでお世話になりすぎてて、彼女に頭が上がらないぜ。その内にお礼を考えておかないと。…ううむ。水臭いとも怒りそうだがね。

 

 今は村雨と真剣に向き合おう。そうしよう。

「じゃあさ。手、つながない?」

 仄かに照れながらの言葉。最高かよ。最高だよ。だがしかし。俺を舐めてもらっては困る。昨日なんて滅茶苦茶抱き合ったのだぞ。今更手つなぎで乱れるかよ!

 

「む? 分かった」

 そうして、躊躇いつつも彼女と手をつなげば。

「わっ大きい手…」

 

 すげえ!! めっちゃすべすべしてる。赤ちゃんの肌? きめ細かい彼女の肌質は、ただ握ってるだけで心地良い。ちっちゃな掌。壊れそうなほどに小さい。

「村雨の掌は小さいな。細くて、女の子の手だ」

 

 素直に変態な感想が出てきた。怒っていないか? 恐る恐る彼女の様子を見た。

「あ、ありがと」

 真っ赤な顔で俯いてしまった。微かに声が震えていたけど、恐れとかは感じなくて。

 

 照れている。手をつなぎ立ち止まる俺達。並木道に優しい風が流れた。

 その涼しさを強く感じる程度には、顔が熱くなっているらしい。恥ずかしい。

「「……」」

 やっぱり言葉が出てこない!! えっ? なにこれ。ちょう満たされるんですけど。

 

 何だよこれ。青春じゃねえか。俺が戦場に置いてきたトキメキを、今胸に取り戻しているぜ。ふっふっふ。先程までとは違う意味で涙が出そうだ。

「歩こうよ、ね?」

「うむ」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。