先程よりも意識して、歩行のペースを合わせる。それが誰かと隣歩く意識付けになって、つないだ手の熱を強く感じた。暖かい。ぽかぽかと胸も温まる。
良いね。手をつないで歩くなんて、響以来の経験である。
アイツの手よりは、村雨の方が大きいな。駆逐艦でも響は小柄な方だ。白露型より小さい。ふふふ。こうして握っていると、何だか仲良しになった気分。
まだ若干緊張が伝わるけども、悪くない雰囲気ではなかろうか。
「早足じゃないか? 辛ければ教えてほしい」
「ううん。気遣ってくれてありがと」
愛らしい微笑み。から照れた様に俯きながら。
「提督の方こそ、手汗とか、その。大丈夫?」
「大丈夫だ」
美少女の手汗とかご褒美だから。むしろヌレヌレの方が良いからな。
ムレムレも良いと思います。ムラムラします。ここは譲れません。
口に出したら引かれるから、絶対に言わない。しょうがないね。
「今日は良い天気ね」
眩しそうに青空を見上げてる。それでも歩きが乱れない辺り、なんだかんだと艦娘だなあ。肉体性能が段違いだ。
「心地良く過ごしやすい日だ。嫌いじゃない」
春と秋が好きだ。夏は露出が増えて興奮するけど、暑すぎてダレるのだ。
冬は寒いし、こたつは定番アイテムだけども。やはり春と秋が良いね。変態は過ごしやすい季節が好きなのである。ふふふ。意味が分からん。
「ふふ。緑も良い感じ。妖精さんが手入れしてるんだって」
「日々生活を支えてくれている。頭が上がらんよ」
料理もそうだけど、清掃からなにまで。日頃の生活は妖精さんのおかげだ。
最前線でも随分とお世話になった。…まあ、手が足りない所もかなり多かったので。ここ程の快適さはなかったけども。言わぬが花であろう。
「綺麗に整えられた森林は、心の安定をくれる」
「ほんとだ。かなり良い感じ」
静かに微笑む彼女の姿。よしよし。随分と恐怖が薄れているぞ。手をつないでおいてなんだが、距離を感じていたからな。良い傾向。良い感じだ。
「どこへ進んでいるんだ?」
「ん~? 大好きな場所!」
ニコニコと笑って教えてくれなかった。なんだこいつ。めちゃくちゃ可愛いぞ。
いやしかし。こうして手をつなぎながら歩いていると、何でもない森の道も幸せである。
相手と物理的に繋がっているから、自然と気づかいが出来たり。悪くない。とても良い気分だった。
良い匂いもする。仄かに香水の匂い。村雨はおしゃれだ。彼女の香りらしいと言えば、可笑しい気もした。ははは。俺は何を知っているのやら。
これから知っていくのだ。うむうむ。