それでも尚罪悪感が消えないと言うのならば。殺し合いこそが使命であり、平和な世界にいると違和感があるのならば。
仕方ない。だったら詭弁を使わせてもらう。
「平和を味わうからこそ、失いたくないと力を振り絞れるんだ」
大切なモノの価値さえ知らないで、勝利に全てを捧げられるかよ。
…ぶっちゃけ、俺がここまで戦ってこれたのも、元を正せば日常ラブだったからさ。
ほしいものがあったんだ。今ここで願い叶っている。なら踊らなければ嘘だろう。
「心。心だよ。心さえあれば人はどこまでも強くなれる」
「――ありがとう」
見惚れる程優しい微笑み。目を瞑り、深く噛みしめている姿。
ああ。美しい。こうして見られただけで、ここまでの苦労が報われる。
これで良いんだ。これが良いんだ。萌え萌えである。ふふふ。いやあ良かった良かった。村雨が日常を愛せて良かった。
さあてどうしようかな。何だか眠いし寝てしまおうか。それも自由だ。
いやしかし。折角の機会。エロエロじゃなくても、交流したいが。
「ねえ、提督」
「どうした?」
俺の邪な想いを露も知らず。静かな微笑みで彼女は言う。
「本当にありがとね」
「気にするな。大した事も言えてないさ」
あんまり口も上手くないからな。当たり前にしたい事を、素直な本音を語っただけ。
もう少し口達者だったら、今ごろ村雨はぬれぬれだったろう。口べたな俺が憎い。
まあでも、こうやって笑ってくれている。十二分だ。求めすぎも良くないぜ。
「私、駆逐艦として呼び出されたけどね。平和にいて良いなんて提督に言われたのは、初めてだったから」
微笑みながら語られた言葉は、この世界では当然のことだ。
貴重な戦力を遊ばせる理由はない。肉の楯にしてでも、活用しなければならない。
外道に提督の適性はなく。ブラック鎮守府すらないのに、そうせざるをえない世界。
「…すまない」
俺が、世界の在り方を決めたのかもしれない。俺というキャラが存在するから、こんな二次創作なのかもしれない。
他の世界を知っているから、二次創作の広がりを知っているから。
ふふふ。時雨に続き村雨の雰囲気も、どうにも色々と思い出させてくれる。
戦場の思い出に引きずられて、甘えベタだった時雨。
日常の大切さに引きずられて、不安を抱ている村雨。そっくりじゃないか。
「なんで謝るの? 仲間を守れる力があって、優しい提督を守れる私でいられる」
にこりと力強い笑みを見せて、とっても優しい声で言葉が続く。
「私、幸せだよ。勝手な感情で謝ってほしくないな」
「ふふ。ありがとう」
「どういたしまして!」
花開く満面の笑顔で、彼女は俺へ応えてくれた。