「やっぱり、その。あれよね。順を追うごとに過激だから、その」
真っ赤な顔で俯きながら、震える声で紡がれた言葉。確実に潤んでいる瞳。とくとくと加速する彼女の鼓動さえ、聞こえそうな百点満点な照れ姿。
おいおいおいおい。俺は夢で見ているのか? 確実に夢精しちまうぜ。
「ちゅーとか…?」
顔を上げた村雨の表情。頬が赤く。上目遣いの破壊力。
俺を殺す気か? 良いのか? まじでちゅーするぞ。ファーストキスするぞ。
って。いいわけがあるか。何を言っているんだ。唐突すぎてびっくりだ。
まったくもう。からかいのレベルじゃないぞ。マジだったらいかんぞ。
「こら」
額にデコピン。割と本気の力でしてみた。
「いたっ!」
結構な手応え。ガチで装甲を発動していれば別だけど。こうしていれば脆いもんだ。
…俺の指がじんじん痛む。訂正。かなり頑丈な額であった。
「乙女の柔肌に何するの!」
泣き出しそうな表情での怒り。ごっつぁんです。うほほ。
おっと。落ち着け。これがまかり間違って白露の耳に届けば、怒られてしまう。
『……信じてたのに。あたしの妹を…』
ガチ泣き&怒りはやばいって! 俺のメンタルがやられてしまう。
だからこそ、真面目に言葉を返そうか。
「乙女が簡単に色事を許すんじゃない」
俺が言っても説得力がないけど、これが本音であった。
ちゃんとケッコンする相手とするべきだ。
もっと知り合ってから、きちんとした覚悟をもってするべきこと。
ぶっちゃけよう。正直に言おう。ここでキスなんてしてみろ。
止まれないわ。絶対に止まれない。俺は獣と化すだろう。草原に獣、慟哭す。新たな物語が始まってしまう。
それは冗談にせよ…冗談だろうか? 俺は、俺の中の獣を抑えられるだろうか。
ふふふ。もしもの時は響のパンツを想像すれば良い。どういうことだろう。うん。
「でもでも、経験は大事だと思うの」
この世界観の艦娘が言うと、かなり重たい言葉なんですが。
いや。分かるけども。でも男ってのはねえ、勝手でねえ。
童貞は捨てたがるくせに、処女を求めるというか。難しいよね。
「興味があろうと、ちゃんと心身共に向き合える相手と添い遂げなさい」
なんて残酷な言葉だろうか。言っておいてだが、反吐が出そうだ。涙と共に。
「…そんなの待ってたら、いつか死ぬもん」
ああ。こうなるだろうさ。そう言うだろうさ。俺が言わせた言葉だ。
でも責任くらいは取れるよ。取ってみせる。
「時雨にも言ったけど、そうならない為に俺はいるんだ」
だから普通にいちゃつかせて!! 膝枕とかね。最高だったよね。
時雨の抱きつきも良かった。もう満足だった。でも戦争の雰囲気も強くて。
真っ当ないちゃつきで良いじゃないか。まったく。
「逃げても良い。逃げた先にいる俺と響が、絶対に勝たせてみせる」
「…ありがと」
嬉しそうに笑ってくれた。よしよし。妙な雰囲気は消せたぞ。
「どういたしまして」