いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

12 / 322
勝利の布石です

 午前の全部を使っても、パンツを見せてあげられなかった。

 ずっと将棋。ひたすら将棋。もう本当に将棋。楽しいけどさ。楽しいんだけど。

 勝負に熱中しすぎて、パンツを見せてあげられていない。ここまで来てしまうと、是が非でも見せたいんだ。

 

 もう創が見たくなくても、私は絶対に見せる。何度くじけようと折れはしない。

 私の二つ名を知っている彼を前にして、屈するは出来ないんだ…!

「なあ司令官」

「どうした?」

 

「朝から、もう何局もやっているね」

 それが全て布石なのさ。最初から本気でやれば、彼もテンションを上げてくる。

 あえて、手を抜く勝負を続けた。時折勝利を真面目に目指して、分かりづらくしたんだ。ふと冷静になると、何をやっているのだと思いそうで。

 まあ、うん。平和な証拠だろう。

 

「飽きたか」

「違う。そうじゃなくて」

 創との時間は落ち着く。興奮する。二つの矛盾した感情が楽しいんだ。飽きはこないよ。

 飽きたとしても、それはきっと喜ばしい事なんだろうね。

 

「そろそろ、賭けの一つでもしない?」

「何を賭ける」

 よしきた。ここで創に勝利を譲るのは、愚か者のする行いさ。

 彼は臆病で、女性経験がなくて、なんだかんだ優しくて甘い。

 

 提督権限を利用して、スケベをしようと思っても出来ない。ならば私からだ。

 そう。私から道を開けば良いんだ。

「命…はお互いに賭け合ってるから」

 ちょっと口が滑った。我ながらクサイ言葉だ。全部本音だけど。

 

「古典的だが、命令権なんてどうだろう」

「それも互いに、尊重しあっているだろう」

 自惚れでなければ、司令官は私に命令をしない。皆の前で形だけは整えるけど、強制力はないに等しい。

 

 深く繋がっている証拠。嬉しいような、隷属したいような。

『響。裸になって足を舐めろ』

 足どころか股間のソレを。良い。奴隷として扱われるのも悪くな。落ち着こう。うん。

「だからさ」

 

 表情にあまり出てないけど、創がきょとんとしている。可愛い。

「だから、尊重しないことを望み合おう」

 落ち着け。まだ妄想すらしてないけど、そうしないと危ない。

 

 パンツを見られる時に、シミが出来ていたら最悪だ。

 コントロール。セルフコントロールだ。慣れているだろう。

 本気で怒った阿武姉さんを思い出せ――やばい。泣きそうだ。違う意味でシミが出来ちゃう。

 興奮は止まった。ならば良し。

 

「戦場から離れて、退屈しているのか?」

「違う。断じて違う」

 いい加減真面目な感じを止めてよ!! もう。いくじなし!

「日常が楽しいからこそのスパイスだ」

 

 大切な姉妹達がいる。同年代に近い駆逐艦達。面倒見の良い天龍さんとか、頼りがいのある軽巡洋艦の人達。練度は私が隔絶しているけど、そんなのは全然関係ない。

 暖かな日常が愛おしくて、ようやく、バカな生き方が出来るんだ。

 

 楽しみきらなければ嘘でしょう。

「私が勝ったら、そうだな。食事でも奢ってもらおうか」

「それ位なら別に「そうして、食べさせ合おう」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。