接触は恐る恐るです
穏やかな青空。朝の涼しさを頬に感じてる。とっても良い朝。今日みたいな日は、夕立なんかと一緒にお昼寝したら、かなり良い感じなのだけど。
今日は私が――違う。
駆逐艦・村雨が秘書艦を担当する日。村雨の名に恥じない頑張りを、と考えてたけど。
白露姉さんが言うには、いつもの私で良いらしくて。
よく分からない。ふふふ。でも悪い気はしなかった。
朝の準備を終えて、執務室に入室した。
「提督、お邪魔します!」
あ、そうじゃなかった。
「…じゃなくて、お邪魔するね。ふふ。何だか慣れないけど」
静かに提督の様子を見ると、満足そうに微笑んでた。
良かった。けど、本当に表情が柔らかくなったんだ。二人から色々と聞かされてたけど、こうして見ると変化がよく分かる。
ん。私は今の方が好きだ。柔らかくて、接しやすい。
「既に白露から聞いているだろうが」
大げさな話し方で、姉さん達から色々と聞いてるんだ。
えっちな人。愉快な人。優しい人。本当に色んな事を聞いてる。
時雨姉さんはあんまり語ってくれなかったけど、提督は話を聴いてくれる人だって。
「君達の緊張を解くのが本日の目的だ」
「う、うん」
提督本人から言われると、尚の事気になっちゃう。
まだまだ怖い雰囲気を感じる。戦場の臭い。真剣な表情はただそれだけで怖くて、どうにも近寄りがたい人。
この人を見ていると、どうしても戦場を思い出しちゃう。
勝手な言い草だけどね。う~ん。どんな風に接すれば良いのかな。
『はいは~い! 今日のお話相手は村雨にお任せね!』
だめ。いつもの気分で言えばそうなるけど、緊張で言葉が出てきてくれない。
「気にする必要は無い。自然体であれば良い」
言ってくれた言葉は嬉しい。結局だけど、これは私自身の問題だ。
提督に迷惑をかけたくないな。落ち着いてがんばれば、きっと大丈夫よ。ちょっとずつでも良い感じにやろう。
「それでその、私はどうすれば良いの?」
「とりあえずかけてくれ」
「えっと。そうする?」
言われた通りソファーに座った。
あっ。良い座り心地。かなり上質なソファーね。ふふふ。寝転がってお昼寝したら良い感じね。
さすがに駄目かしら。さすがに提督とお昼寝は想像出来ないな。
「うむ。仕事は終わらせてあるからな」
なんだかドヤ顔をしてるような。いや、ないよね。子供じゃないんだ。
「ゆ、優秀なんだ」
適当に言葉を返すと、更にドヤ顔をきめた気がする。
…想像してたよりは愉快な人? まだ分からないけど、少しだけ気が楽になった。
「お茶にしよう」