「あっ、私が淹れるよ」
さっそく出来そうな事が出来た。ここで頑張れば、提督も接しやすく思ってくれる?
分からないけど、せっかくこうして会えたんだもの。もう少し普通にお話したい。
仲良くなれるかな。不安だけど、だからこそ私も動くんだ。
「ここは俺に任せておくれ。お菓子の準備もあるんだ」
うきうきとした足取りで、提督が自室へと入ってく。
そのまま手際よく進めていって、お茶会の準備が終わった。
「わあ、すっごく良い感じ!」
光沢が綺麗なチョコケーキ。香り豊かなコーヒーまで。私の分はミルクも混ざって、小さな配慮がとっても嬉しい。
これが二人から聞いた手作りお菓子ね。女子として、ちょっとだけ誇りが傷つくけど。
でも、確かにすごい出来。美しい作りで出来てる。ふふふ。私の為に作ってくれたのかな? だったら嬉しいな。ふふ。
「ならば良かった」
提督の優しい微笑みに見守られて、一口食べてみると。
「甘~い!」
しっとりと口で溶ける甘み。優しい生地がチョコと合わさってる。
素材も良いんだろうけど、上手に作られてるからこそ。うんうん。おいしい。
大げさな言い方だと思ってたけど、時雨姉さんの言った通り。提督ってお菓子上手な人なんだ。
「ふふふ」
笑い声が聞こえて見てみると、嬉しそうに彼が笑ってた。
いたずらが成功した夕立みたいな笑み。したり顔での喜びよう。妙に愛らしい。思っていたイメージと違う。柔らかい雰囲気だった。
…やっぱり。白露姉さんと関わってから、提督の雰囲気って変わったよね。
「提督って、笑えるんだね」
言ってから気付いたけど、なんて失礼な言葉だろう。
慌てて訂正する前に、提督から言葉が返ってくる。
「こんな顔も出来るぞ」
「ぶふっ! ご、ごほごほっ!」
き、気管に入った…! なにあの変顔は!?
表情ってあんな風に動くの? ていうか提督があんな顔して良いの?
喉が灼ける様に痛い。せっかくの美味しいケーキだったのに。
「げほっ、あ、ぅう。ごほ」
涙も出てきた。もうわけが分からなくて、ちょっと泣きそう。
でも、思い出すとまた笑いそうになる。それだけ破壊力がすごかった。
「だ、大丈夫か?」
提督の優しい手のひらが、柔らかく背中をなでてくれる。
不思議と落ち着く。撫で方が良いのかもしれない。白露に似てる? 雰囲気は似ても似つかないのに、なんとなく。
……怒ったかな。悲しくなってないかな。せっかく作ってくれたんだ。
「ごめん、なさ」
ようやく絞り出した謝罪の言葉は、大粒の涙と共に出そうだった。